・30日からの教皇訪問直前の23日、イスラエルがレバノンの首都・ベイルート空爆(CRUX)

(2025.11.24 Crux    Fadi Tawil,  Kareem ChehayebAssociated Press)

 レバノン・ハレット・フレイク発―イスラエルが23日、6月以来初めてレバノンの首都を空爆し、イスラム教シーア派の政治・軍事組織ヒズボラの参謀長ハイサム・タブタバイを殺害したと発表した。レバノン保健省によると、ベイルート南郊でのこの攻撃で5人が死亡、25人が負傷している。

 教皇レオ14世は27日から就任後初の外国訪問としてトルコ、レバノンを訪問され、レバノンには30日から12月2日まで滞在される予定だが、訪問への影響が懸念される。

 ヒズボラは直ちにコメントしていないが、イスラエルとヒズボラの停戦からほぼ1年後に攻撃が再開されれば、「戦闘の激化を招く恐れがある」とこれまでに表明していた。

 一方、イスラエルのカッツ国防相は声明で「北部の住民とイスラエル国家への脅威を防ぐため、今後も断固たる行動を続ける」と述べた。

 同国政府報道官のショシュ・ベドロシアンは、攻撃前に同盟国である米国に通告したか否かについては言及せず、「イスラエルは独自に判断する」とだけ述べた。イスラエルは避難勧告を出さなかった。

 殺害されたタブタバイはヒズボラの精鋭、「ラドワン部隊」を指揮していた。イスラエル軍は、彼が「ヒズボラ部隊の大半を指揮し、イスラエルとの戦闘に備えた武力回復を進めていた」と説明。イスラエル外務省は「ヒズボラが停戦合意を繰り返し破った結果の殺害だ」と述べた。

 2016年、米国は、タブタバイをテロリストに指定し、「シリアとイエメンでヒズボラの特殊部隊を率いる軍事指導者」し、彼に関する情報に対して最高500万ドル(約5億5000万円)の報奨金をかけた。

 タブタバイは、昨年9月にイスラエルの攻撃で殺害されたイブラヒム・アキルの後継者だった。その攻撃では、長年の指導者ハッサン・ナスララを含むヒズボラの上層部の大半が抹殺されている。

 23日攻撃現場では、ヒズボラの政治評議会副議長であるマフムード・カマティが記者団に対し、「ヒズボラの指導部は対応策を検討しており、適切な決定を下すだろう」とし、「今日の南部郊外への攻撃は、レバノン全土での攻撃の激化につながる」と警告した。

 イスラエルと米国がレバノンに、ヒズボラの武装解除を迫る中、ここ数週間、イスラエルによるレバノン南部への空爆は激化している。イスラエルは、ヒズボラがレバノン南部で軍事力の再構築を図っていると主張しているが、ヒズボラの武装解除を目的とした軍部の計画を承認したレバノン政府は、こうした主張を否定。レバノンのジョセフ・アウン大統領は声明で23日の空爆を非難し、「イスラエルが停戦合意の履行を拒否している」と述べるとともに、関係国や国際機関に対して「レバノンとその国民に対する攻撃を止めるため、強力、真剣に介入する」よう求めた。

 イスラエル軍は声明で「わが国とレバノンが合意した了解事項を今も遵守している」と反論している。

 23日に攻撃を受けた繁華街ハレット・フレイク地区では煙が確認され、ソーシャルメディアで拡散された動画には、攻撃現場周辺に数十人が集まる様子が映っており、攻撃対象はアパートの4階部分とみられる。救急隊員が到着すると、群衆を解散させる銃声が聞こえた。ヒズボラのアリ・アンマル議員は「ここは明らかに民間人の住む地域で、軍事施設は一切存在しない。特に我々が立っているこの地区には」と語った。

 被災地区に住み、攻撃音を聞いたというある女性は「彼らは、私たちの武器を奪おうとしているが、武器は奪わせない。今回のイスラエルの攻撃は、私たちに、尊厳を守るさらなる決意と力を与えるだけだ」と述べた。

 また、レバノンと国連平和維持軍は、同国におけるイスラエルの継続的な攻撃を批判し、停戦合意違反だと非難している。アウン大統領は先週、「ヒズボラを含む国内の非国家主体の武装解除に尽力する」「空爆停止とレバノン領内に占拠する5つの丘の拠点からの撤退に向け、イスラエルとの交渉に入る用意がある」と表明していたが、イスラエルが応じるかは不明だ。

 

 直近のイスラエル・ヒズボラ戦争は2023年10月8日に始まった。ハマスがイスラエル南部を攻撃した直後、ヒズボラがハマスへの連帯を示す形でイスラエルへロケット弾を発射したのがきっかけとなった。イスラエルは昨年、ヒズボラを著しく弱体化させる大規模なレバノン爆撃を実施し、その後、地上侵攻を行った。世界銀行によると、これまでにレバノンで4000人以上が死亡、うち数百人が民間人だった。被害額は推定110億ドルに上る。イスラエルでは127人が死亡し、うち80人が兵士だった。

 18日には、イスラエル軍の攻撃により、南部都市シドン近郊のパレスチナ難民キャンプ「アイン・エル・ヒルウェ」で13人が死亡。停戦発効後で最も犠牲者の多い攻撃だった。イスラエル軍は「パレスチナ武装組織ハマスが所有する軍事施設を標的とした」と発表したが、ハマスは「過密状態のキャンプ内に軍事施設は存在しない」と否定している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2025年11月24日