・新型ウイルスでミサに与れないローマの人々の過ごし方

(2020.3.14 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen)

With no Mass, Catholics in Rome turn to other forms of prayerA woman wearing a mask poses for photos at the bottom of the Spanish Steps, in Rome, Thursday, March 5, 2020. (Credit: Andrew Medichini/AP.)

ローマ発ーイタリア政府と教会当局の両方が新型コロナウイルスの感染拡大を止めようと国内の規制を強化している。そうした中で永遠の都に住むカトリック教徒はソファに座っているだけでなく、インターネットでミサの動画配信を受け、祈りの時間にあてるなど、様々な工夫をしている。

*自宅での祈り、聖書、ロザリオ…

 ローマに住む弁護士のピエトロ氏は、教会の閉鎖など頻繁に打ち出される措置について、「最近の突然の教会閉鎖には、とくにコメントするつもりはありません。家で聖書を読んだり、ロザリオを唱えることもできますし」と言い、「皆で集まって祈る、ということはできませんが、自宅にいて、家族とのつながりを強めることができる。教会のミサに出ることができないのは辛いが、犠牲を払わねばならない時は払います」と語った。

 イタリアの司教団は3月8日に、聖週間の直前の4月3日まで、すべての公開ミサを中止すると発表した。この決定は、国内の全部の学校、大学、博物館、劇場など、そしてニューススタンドやタバコの販売所、食料品店、薬局を除くすべての店舗の閉鎖など、イタリア政府による一連の予防措置に沿って行われた。

 バチカン市国も、教皇フランシスコによる日曜正午の祈りと説教、と毎週水曜の一般謁見の一般観客を含むすべての行事を4月3日まで中止した。居宅であるサンタ・マリア館での教皇のミサは初の試みとして、毎日動画配信されている。

 さらに、12日に、ローマ教区管理者のアンジェロ・ド・ドナティス枢機卿が市内の全教会の閉鎖を4月3日まで行うと発表したが、教皇は翌日の朝のミサで、こうした思い切った措置が「必ずしも良いとは限らない」と語り、司祭たちが信徒を孤独にしない方法を見つけることができるように祈られた。

 そして、教区慈善活動室を主管するコンラート・クライェフスキ枢機卿は13日、ローマ教区の決定に公然と”反抗”し、市内にある彼の名義教会、サンタ・マリア・インマコラータを祈りと崇拝のために開き、「家はいつも子供たちの為に開かれていなければならない」と主張。ド・ドナティス枢機卿も13日朝の教皇のミサの直後に、全教会の閉鎖という前日の決定を撤回する旨の声明を出し、「本日朝、教皇とお会いした結果」と説明した。

*”バーチャル・ミサ”に与る

 Crux は、ローマ在住の数人のカトリック信徒に教会のついての規制についての意見とミサに参加することが選択肢に入らなくなった日曜の過ごし方について聞いた。ほとんどの人が、規制措置を、積極でないにしても受け入れ、”バーチャル・ミサ”への積極的な参加の姿勢をもっているようだった。

 法医学の特別研修中の医師で、生命倫理の博士号を持っているバーバラ・コルサーノ氏は、医師でカトリック教徒である者として「教会の閉鎖に賛成です。感染リスクが最も高い脆弱な人やお年寄りの健康を守ることが最優先ですから」と語った。

 そして、医療面から見て、多くの人がいる場所に出て行くことを制限することは妥当な措置であり、それは、新型コロナウイルスが罹患率も含めて、「まだ良く知られていない感染症」であるためだ、と説明。

 精神面から見ると、毎日、テレビでミサの動画を見ることは「教会が共にあり続け、自分の信仰を育てる貴重な機会」になり、「四旬節を普通とは違うやり方で体験するーイエスの荒れ野での40日に自分の手で触れるーことができるでしょう」と語り、彼女の小教区共同体は毎朝、その日の聖書の朗読箇所についての省察を信徒たちに伝えている、と具体的な対応についても説明した。

 ロザリオが唱えられ、ミサが教皇によるものだけでなく、あらゆる場所で動画中継されることで、「教会の閉鎖は、信仰を閉じることや教会であることを止めることを意味しなくなります… それは、教会を発見し、最も傷つきやすい人々の世話をするための、通常とは異なる別の方法なのです」とコルサーノ氏は前向きに対応しようとしている。

*家族で祈る機会に、オンラインでミサ動画配信する教会が広がっている

 夫と2人の娘の4人でローマに住んでいる米国人、アン・ヘリング夫人は、これからの3週間、「私たち家族で祈りを続け、ローマの米国人のための聖パトリック教会の”バーチャル・ミサ”に参列する計画だ」という。教会から送信されるメールを自宅のパソコンにアップロードすることで、毎日ミサに与ることができる。日曜のミサにはミュージシャンの協力で聖歌の演奏も付いている、という。

 教会からのメールは、「目標は、私たちがとてもお会いしたいと思う、あなた方全員とのつながりを維持することです」と述べ、「気を強く持ち、元気でいてください。あなた方全員の為に、私たちはロウソクを灯しています」と教区民を激励している。

 他でも、イタリア人も外国人も、同様にオンラインでミサに参加し、”霊的聖体拝領”をすることを計画している。

 ローマに本拠を置き、カトリックの旅行会社を経営するマウンテン・ブトラック氏は、いったん閉じられた教会が祈りのために再び開かれたことに満足してとおり、ミサに与れない問題はあるが、「他の色々なやり方で、与ることができます」と言う。「教皇が、ミサを動画配信してくれています。史上初めてのことですが、誰でも、教皇のミサに与れるのです。他の教会も同じようなことをしています」と言う。彼が知っている多くの小教区では、伝統的なラテン語のミサも含めて、教区民のためのミサの動画配信を始めている。

 「実際に教会でミサに与ることに取って代わるものではありませんが、それでもミサに与る機会を与えてくれているのです」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年3月14日