Pope Francis with Maoz Inon and Aziz Abu Sarah at the “Arena of Peace” event in Verona (VATICAN MEDIA Divisione Foto)
(2025.2.26 Vatican News Roberto Cetera in Jerusalem )
2024年5月にイタリア北部の都市ヴェローナで開催された「平和の舞台」イベントに参加し、教皇フランシスコから直接抱擁を受け、支援を受けた2人の平和活動家、イスラエルのマオズ・イノン氏とパレスチナのアジズ・アブ・サラ氏が、バチカン機関紙「L’Osservatore Romano」のインタビューで、平和に対する共通のビジョンについて語った
「10月7日、私は父と母を失いましたが、兄弟を得ました」とマオズは言う。その恐ろしい朝、ネティヴ・ハ・アサラにある自宅で、マオズの両親はハマスが発射した焼夷ロケットによって命を落とした。その日以来、50歳のイスラエル人観光事業家であるマオズ・イノン氏は、悲しみを戦争反対と2つの民族間の平和実現に向けた断固とした勇気ある取り組みに注ぐことを決意した。そして、他者の苦しみにも目を向けた。
彼が「新しい兄弟」と呼ぶ人物は、アジズ・アブ・サラという45歳のパレスチナ人観光業者だ。アジズは、エルサレムとヨルダン川西岸地区の境界にある町、ベタニアとして知られるアル・アイザリア出身である。アジズがまだ9歳のとき、18歳だった彼の兄弟、タイセアが、イスラエルのナンバープレートをつけた車に石を投げたと疑われ、イスラエル兵に逮捕された。タイセアは約1年間、イスラエルの刑務所に収監された。ようやく釈放されたものの、拘留中に受けた拷問による内臓の損傷により、それから数週間後に亡くなった。
アジズにとっても、この苦しみは2つの民族間の平和に対する揺るぎない献身へとつながった。マオズはL’Osservatore Romanoに次のように語っている。「10月7日、家族に悲劇が起こったことを知らされた後、最初に弔意と心からの支援の電話をくれたのはアジズだった。平和のための戦いが、血縁関係よりも強い絆で私たちを結びつけたのだ。
しかし、マオズとアジズが平和の絆で結ばれるまでの道のりは、10月7日に始まったわけではない。観光事業で成功を収めていたマオズは、占領下のパレスチナ地域を含む旅程を組んでいた。彼のツアーは斬新な内容で知られており、そのためイスラエル国内では批判の声も上がっていた。アジズは兄の死後、身分証明書を手に入れるためにエルサレムに移住した。そこでファタハの青年運動に参加し、幼少期からの根深い怒りとフラストレーションを原動力に、イスラエルの占領者に対する辛辣な文章を書き、その名を知られるようになった。 これらの文章が原因で逮捕され、6ヶ月間投獄された。 しかし、エルサレムに住んでいたことで、イスラエル社会を直接体験し、ヘブライ語を学び、キリスト教系の大学に通うことができ、それらの経験が、紛争を異なる視点から捉えることを可能にした。
その後、紛争で愛する人を失ったイスラエル人とパレスチナ人の家族が、復讐ではなく和解、平和、寛容を求める団体「Parents Circle Families Forum(PCFF)」に参加した。
10月7日以来、マオズとアジズの平和活動は彼らの生活の中心的な優先事項となり、メッセージを伝えるために世界中を旅している。5月18日には、ヴェローナで教皇フランシスコに謁見した。
「教皇にお会いして、励ましの言葉をいただいて、私たちの平和への献身がさらに強まり、深まりました。教皇は私たちを深く感動させてくれました」とアジズは言う。「既存の分裂を悪化させる極端な考え方によって引き裂かれた世界にあって、教皇のお言葉は、対話、尊敬、そして平和に向けられた唯一の真の言葉として際立っています。教皇は、新しいヒューマニズムを提唱する唯一の世界的指導者です」とマオズは付け加える。
「私たちは、このインタビューを通じて、彼が早期の回復を願う私たちの気持ちを受け取ってくれることを願っています。私たちが毎日彼のために祈っていることを知ってください」と、2人は語っている。
彼らの活動はすでに大きな成果を挙げている。それは、和平実現のために活動するイスラエルとパレスチナの60の組織が連合を結成し、今やイニシアティブ「It’s Time(今こそ)」のもとに結束していることだ。この名称は、対話を再開し、武器を黙らせ、緊張を鎮め、互いの苦しみを認め合う時が来たことを意味している。
マオズ氏によると、It’s Timeは現在、「イスラエルとパレスチナの歴史上最大の平和デモ」を5月8日と9日にエルサレムで行うことを計画している。
「私たちの組織に加えて、世界中の市民社会、政治、宗教コミュニティのメンバーにも参加を呼びかけています。聖地におけるキリスト教各派の代表者もすでに参加を表明しています。イベントは2日間にわたって、旧市街を含む東西の複数の会場で行われる予定です。最終イベントとして大規模な集会も計画しています」とアジズ氏は説明する。
そして、マオズ氏は次のように結論づけている。「イスラエル人とパレスチナ人の大半はもはや戦争を望んでいない。彼らはこれ以上の悲しみや暴力、苦しみを望んでいない。政治指導者たちがこれを理解すべき時が来たのです」。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)