「教皇の使徒的勧告『愛の喜び』の修正は不要」と教理省長官(CRUX)

(2017.1.9 CRUX バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)

 バチカンの教理に関するトップ、ゲルハルト・ミュラー教理省長官は1月8日に放送されたイタリアのテレビ番組「Tgcom」に登場し、レイモンド・バーク枢機卿が昨秋、教皇フランシスコに他の三人の枢機卿と共同で書簡を送り、使徒的勧告「愛の喜び」の修正を求めるた問題に触れ、この米国人聖職者の指摘にかかわらず、教皇の勧告は教理上、まったく疑いのない内容であり、このような行為は〝まったく的外れ〟だと考えを明らかにした。

  4人はこの書簡で、教皇に対して、勧告に書かれた離婚し民法上の再婚をした人々への教会の対応について具体的に示すように迫ったことについて、ミュラー長官は、誰にも、とりわけ枢機卿たちには教皇に書簡を送る権利がある、としたうえで、「彼らが送った書簡が公にされ、それによって、教皇にイエスかノーかの返答を迫ったことに、驚いている。私はこのようなことを好まない」と語った。

 書簡は個人的なものであったはずが、教皇が返答しなかったことから、4人は書簡を新枢機卿を任命する10月の枢機卿会議の直前に、報道機関に持ち込んだ。バーク枢機卿らが言明した教皇が書簡に対する返答と拒み続ける場合の、勧告の文言についての修正の可能性について、長官は「聖トマスが語ったような信仰の危機に関わることではないので、そのような可能性はない」と否定した。

 「愛の喜び」の離婚・再婚者への教会の対応についての内容に関して、これが、彼らに聖体拝領を認める道を開いたものと解釈する見方があるが、これについては「教理の観点からは極めて明確だ。我々は、結婚に関するイエスの教え全体、教会の2000年の歴史の中で行われてきた教え全体から読み取ることができるのです」と言明した。

 長官は一か月ほど前に、ドイツのウエブサイトとの会見で、「このような論争に加わるのが教理省の仕事ではない。教皇の権利をもって語ることが役割だ」と答えていたが、8日のテレビ番組では、「教皇は、

結婚に関する教会の教えにそぐわない生活を送っている人たちについて、彼らの置かれている状況を見分け、判断し、秘跡を授け、教会に再び迎え入れてもらえる道を見つけることができるように助けるように、と求めれおられます」と強調した。さらに、「一方に、結婚に関する明確な教えがあり、もう一方には困難な状況にある人々を心にかける教会の義務があるのです」と付け加えた。(南條俊二訳)

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2017年1月13日