西欧カトリック教会の深刻な衰退と対応 ①ドイツ教会の誤れる‶豊かさ”(CRUX)

(2017.8.13 Catholic News Agency /Crux)  Catholic News Agencyドイツ版のAnian Christoph Wimmer編集長が、10日付けの英国のカトリック紙The Catholic Heraldに寄稿し、ドイツのカトリック教会が何を誤っているのかについて持論を述べた―財政的には豊かだが、信徒数を急激に減らしており、教会に留まっていてもミサに行かない信徒も急増している、と。

 ミュンヘン発―ドイツのカトリック教会は「霊的に貧困化し、衰えている。だが、物的には富んでいる」。それが、Wimmer編集長の診断結果だ。

 ドイツ司教協議会によると、2016年の改宗者が2574人にとどまったのに対し、教会を離れた信徒は16万人にのぼった。司祭は200人減って、13856人。堅信と婚姻の秘跡を受ける信徒の数も減っている。告解の秘跡を受ける信徒数について、司教協議会は明らかにしていないが、Wimmer編集長は「告解の秘跡は多くの小教区から事実上、姿を消している」としている。

 このような現状から、持てる富を社会の福音化に活用できるのでは、と考える人もいるだろうが、「そうすることが教会を避けているように見えます。お金はたっぷり持っているのに。福音を広げ、羊たちを世話し、育っていく群れが神をよりよく知り、愛し、神に奉仕するよう助けるという教会の仕事とは別になっている」。 ドイツで日曜日のミサに出る信徒の数は1950年代から1960年代は年間1150万人から1170万人で安定していたが、その後、2015年までに250万人まで減った。総信徒数は2380万人だが。

 教会は、ドイツ国内で最大の雇用者の一つであり、財政的に豊かなお陰で、教会数も維持することが可能だ。ドイツの税制では、カトリック信徒として登録されている人は、所得税額の8ないし9パーセントを教会に納める、と定められている。総額は、2016年に約71億ドルと記録的額となった。さらに、教会の多くの活動も各州から財政援助を受けており、教育機関から大部分の司教たちの給与もそれに含まれている。

 「ドイツ経済が活況を続けているおかげで、‶納税者”の信徒激減にもかかわらず、(所得の増加による納税額の増加のために)教会の財政収入は落ち込んでいません」とWimmer編集長と語る。

 信徒の減少は地域によって差があり、旧東ドイツ地域にはそれほど減っていない教区もあるが、ミュンヘン大司教区の名誉大司教、フリードリッヒ・ウェッター枢機卿は「信仰が蒸発している」とWimmer編集長に述べている。

宗教改革500周年を機に教会刷新へ

 このようなドイツの教会の現状を何とか改めようと、関係者から幾つかの改革案が出されてはいる。「教会税を廃止すべきだと提案する人もいます。お金で問題が解決しないなら、収入減を無くしてしまえば問題が解決するのではないか、と考えているようです」。提案には一理あるが実現可能性はほとんどない。異端的な解決策も提案されている。司祭の童貞制の廃止、女性の司祭叙階、その他の制度改革だ。

 Wimmer編集長は、これらとは異なり、レーゲンスブルクのルドルフ・フォデルホルツァー司教の提案を支持する。それは、宗教改革500周年を機にした教会刷新だ。司教は「宗教改革500周年を機にした教会刷新でまず手を付けるべきは、神聖な義務を果たす日々の努力です。神の言葉を聞き、そうして教会の改革を始める準備をすることです。教会改革は、信仰の内面からの刷新―洗礼と堅信で私たちに刻まれる神の似姿、キリストの回復です」と語っている。「それが、神の恩寵によって私たちに与えられたところで、私たちはまた現在の人々にもう一度、信仰について関心をもってもらうようにします。そうして、私たちは、自分たちを満たす希望の証し人になることができるでしょう」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2017年8月15日