・「女性の助祭職に”積極的に判断”する余地はまだない」ーシノドス総会第2会期の初日に、バチカン教理省長官(Crux)

(2024.10.3   Crux   Senior Correspondent    Elise Ann Allen)

 世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会の第2会期初日、2日午後の全体会議で、バチカン教理省のビクトル・マヌエル・フェルナンデス長官(枢機卿)が、2021年10月の”シノドスの道”の始まりから議論になってきた女性の助祭職について、”積極的”な判断をする余地がまだない、との判断に達したことを明らかにした。

 長官は、全体会議の参加者たちに対して、女性の助祭職について「我々がこれまで検討してきた次の結果を、この場で共有したい」としたうえで、「教皇が設置された女性の助祭職に関する二つの委員会での検討結果を考慮に入れたうえで、教理省は、女性の助祭職に関し、教導職が、叙階に踏み切るという積極的な決定をする余地はまだない、と判定する」と述べた。

 教皇フランシスコは、女性の助祭職の問題を研究するために2つの異なる委員会を設けたが、いずれの委員会も最終的には結論に至らず、検討結果だけを教皇に提出していた。

 女性の助祭叙階は、昨年のシノドス総会第1会期の会合でも最も熱く議論されたトピックの1つであり、関連して、司祭の独身制、女性の司祭の叙階、LGBTQ+コミュニティの広範な受容など、他のデリケートな問題にも触れられていた。

 だが、教皇は今年5月、これらの問題をシノドス総会での議論のテーブルから外し、代わりに、シノドスの議論中に浮かび上がったさまざまな点について引き続き熟考するために自身が設置した10の検討グループにそれらを委ねた。同じ月に放映された米CBSニュースとのインタビューで、「女性が助祭となり、教会の聖職者として参加する機会」があるのかとの問いに、「それが聖なる使命をもつ助祭を指すのであれば『ノー』です。しかし、そうならなくても、女性はこれまでも助祭としての機能を持っていたと言えるではありませんか。女性は、聖職者としてではなくても大きな奉仕をしています」と語っていた。

 3月にシノドス事務局が発表したように、10の検討グループには以下のテーマが割り当てられている。

 ①東方カトリック教会とラテン教会の関係 ②貧しい人々の叫びに耳を傾ける ③デジタル環境におけるミッション ④宣教師シノドスの視点から見たRatio Fundamentalis Institutionis Sacerdotalisの改訂 ⑤特定の聖職者形態に関する神学的および教会法上の事項 ⑥シノドス宣教師の観点から、司教、奉献生活、および教会協会との関係に触れた文書の改訂  ⑦司教の人物と聖職のいくつかの側面(司教職の候補者を選ぶための基準、司教の司法機能、アドリミナ・アポストロラム訪問の性質とコース) ⑧宣教師シノドスの視点における教皇代表の役割  ⑨論争の的となる教義的、司牧的、倫理的問題の共有識別のための神学的基準とシノドスの方法論  ⑩教会の実践におけるエキュメニカルな旅の果実の受容

 世界中から集まった教皇庁の職員や専門家で構成されるこれらのグループは、シノドス総会第2会期に提出する作業計画を策定する任務を負い、来年6月までに検討結果をまとめ、教皇に提出することを目標にしている。

 女性の叙階職の検討は、上記⑤の「特定の聖職者形態に関する神学的および教会法上の事項」に関する検討作業の一部として教理省に委ねられた。その作業部会のメンバーは発表されていないが、教理省のフェルナンデス長官以下、規律部門担当次官、ジョン・ジョセフ・ケネディ大司教、次官補のフィリップ・クルベリエ大司教、そして数人の女性、それに同省非常勤次官のチャールズ・シクルナ大司教(マルタ教区長)もメンバーになっている。

 フェルナンデス長官は、このグループが検討テーマに関する文書の起草を進めることを決めており、女性助祭問題を研究した2つの委員会の研究結果の「最も興味深い」部分が含まれることになる、とし、「教会の意思決定プロセス、そして指導的地位における女性の地位を適切に発展させるために、この文書は一連の異なる主題に焦点を当てる」と述べ、「これらの主題には、秘跡の力の性質、聖体に由来する秘跡の力との関係、そして、宣教を視野に入れた神の聖なる民の世話と成長に必要な他の教会の奉仕活動との関係が含まれている」と説明。

 また、奉仕活動の起源、教会のカリスマ性、聖なる叙階の秘跡を必要としないさまざまな教会の機能や奉仕の探求、奉仕としての聖なる叙階、そして「教会の権威の誤った概念から」生じる問題も含まれる、という。

 そして、このような課題について検討を重ねた後で、「教会の活動と指導的立場への女性の参加、という差し迫った問題に適切な注意を払うことが可能になる。それには、女性が助祭職にアクセスできるかどうかの問題も含まれる」と述べた。教理省がこれまでに実施した研究は、「教会の使命を支援する真の権威と力を持つ女性」の活動について詳細な分析を行うことを求めている、とも指摘。それは、秘跡に直接関係しないが、洗礼と堅信に根ざした「カリスマまたは教会奉仕の役割の確立」に関するものだ、と述べた。

 長官はさらに、カノッサのマチルダ、ビンゲンのヒルデガルト、スウェーデンのブリジット、シエナのキャサリン、アビラのテレサ、フアナ・イネス・デ・ラ・クルス、エリザベス・アン・シートン、マリア・モンテッソーリ、アルミダ・バレッリ、ドロシー・デイ、マドレーヌ・デルブレルなどの歴史に名を残す女性たちを挙げ、「彼女たちと同じ様に、神の民の中で主導的な役割を果たしている今日の女性たちや、彼女たちが属する教会に耳を傾けることが極めて重要になる… その意味で、女性の助祭職の問題は別として、「彼女たちのキリスト教徒としての多面的な証しを深く研究することは、今日、深い洞察力をもつ女性に教会における広範な役割を果たす機会を生み出すことのできる新しい形の奉仕を想定するのに役立つ」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年10月5日