
(2023.10.23 Vatican News By L’Osservatore Romano)
バチカン広報省のルッフィーニ長官は23日午後、シノドス総会の進行状況などについての定例記者会見で、今総会のSynthesis Document(総括文書)が28日夕に発表されることを明らかにした。
長官は、23日朝の総会全体会議でシノドス事務局長のマリオ・グレック枢機卿がこの文書の原案を説明すると、参加者全員が拍手で支持した、と説明。グレック事務局長は「全体会議で若干の修正や追加、特に様々な言語への翻訳に関する提案があり、受け入れられた。さらに追加の提案があれば23日午後6時まで受け付けることになっている」と述べた。
これらの修正、追加をもとに、28日までに総括文書の最終案をまとめ、総会での承認を得て、同日夕の発表となる予定だ。
また長官の説明によると、総会そのものは週初の23日朝、聖ペトロ大聖堂で、ヤンゴン大司教のチャールズ・マウン・ボー枢機卿主宰のミサが捧げられたあと、16回目となる全体会議が教皇はじめ350人が参加して開始。この場で総括文書原案が提示され、意見交換がされた。
この定例会見には、ウィーンのクリストフ・シェーンボルン枢機卿、メキシコシティのカルロス・アギアル・レーテス枢機卿、 マルセイユのジャン=マルク・アヴリーヌ枢機卿、そしてCongregation of the Sisters of the Sorrowful Motherの総長でグレゴリアン大学教授のシスター・サミュエラ・リゴンが同席した。各氏の発言など以下の通り。
*シェーンボルン枢機卿「ラーナー師の『公会議で信望愛が生まれなければすべてが無駄になる』という言葉は、今開かれているシノドス総会にも当てはまる」
シノドス事務局の常任理事会でウィーン大司教のクリストフ・シェーンボルン枢機卿は、過去のシノドス総会での経験とともに、第二バチカン公会議末期の1965年、当時20歳の神学生だった自身の記憶を思い起こし、「公会議で、高名な神学者、カール・ラーナー師の講演を聞きましたが、『この公会議で信、望、愛が生まれなければ、すべてが無駄になる』という彼の最後の一言が心に残りました。今開かれているシノドス総会でも、同じことが言えるでしょう」と語った。さらに、「シノドス発足50周年を経た今、私たちは、『教会におけるミサ聖祭をいかに生きるか』を問いかけられている、という印象を持っています。それは言い換えれば、信仰の交わり、唯一にして三位一体の神との交わり、信者同士の交わり、そして、すべての人に開かれた交わりです」と指摘。
そして、「いかに生きるか」の問いに対せいて、「シノダリティ(共働性)が最良の答えです。教会の偉大な神秘を語る公会議の『教会憲章』が示したビジョンを再考することです。教会は神秘であり、教会は神の民であり、それを前提にして初めて、教会のメンバーたちの階層構造について語ることができるのです」と強調した。
また、枢機卿は、「欧州は、もはや教会の中心ではありません」と言明。「今のシノドス総会で日々明らかなように、ラテンアメリカ、アジア、アフリカそそれぞれの大陸レベルシノドス会合が主役となる一方で、欧州の司教たちは司教協議会連盟などがもつ潜在的な可能性を生かすことができていない。欧州大陸で、私たちは活発な会合の開催に少し遅れをとっています。刺激が必要です」と述べ、実例として、欧州司教協議会連盟が移民・難民の問題について統一した見解を一度も表明していないことを挙げた。
最後に枢機卿は、東方教会が「ミサ典礼なしにシノダリティ(共働性)はない、ということを常に経験してきた」ことを指摘。自分たちも、まずミサを祝い、それから討議を行うという、信仰の在り方を育てる必要があります」と語った。
*アギアル・レーテス枢機卿「2012年の『新たな福音宣教』シノドス総会で、信仰の伝達が断たれた後、教皇フランシスコの下で”復旧”された」
メキシコ・シティ教区長のカルロス・アギアル・レーテス枢機卿は、ベネディクト16世教皇が2012年に、「新たな福音宣教」を課題に招集したシノドス総会を回想し、「その総会で、信仰の伝達が断絶した、と結論付けられました」と述べた。
そして「家庭内では、新しい世代に話しかけることができなくなりました。教皇フランシスコが就任されて最初のシノドス総会が『家庭』に捧げられたのは、そのような背景があったのです。 そして、若者たちに手を差し伸べ、協力することが重要だとされ、2018年の次のシノドス総会は「若者」がテーマになった。当時、私はトラルネパントラ司教区にいましたが、若者世代との友好を育てる集まりを、様々な社会階層の若者たちを持ちました。対話を目的として、さまざまな社会階級の若者たちと会合を持ちました。信仰は、信仰に生きる若者たちを通して伝えられねばなりません。 その後、教皇はアマゾン地域シノドス総会を招集され、気候変動と創造物の保護の重要性を確認し、子供たちや若者の環境への感受性を信頼することが重要だという認識を共有しました。気候変動などの問題に関する神の言葉を理解できるように、若者たちを助ける必要があります」と語った。
最後に、メキシコシティ司教区での”シノドスの道”の歩みに関しては、「新型コロナウイルスの世界的大感染の影響で開始が延ばされ、2021年10月からのスタートとなりましたとなった。 現場を訪問した経験 、対話、そして互いに耳を傾け合うなどのやり方で、成果は社会の要請に応えるために蓄積されています」と説明した。
*ジャン=マルク・アヴリーヌ枢機卿「フランスでは誰もが”シノドスの道”の歩みに加わっているわけではない。より多くの傘下に努力する余地がある」
仏マルセイユ大司教のジャン=マルク・アヴリーヌ枢機卿は、このシノドス総会で経験したことなどについて、「 総会が始まる前、世界中の人々と会い、互いの経験を分かち合うことに好奇心をもっていましたが、総会開会と共に始まり、日増しに悪化していく戦争の動きにも関心を持たざるを得なくなった」と述べ、こうした悲劇的な出来事の中で、「教会は神の愛のメッセージを世界にさらに強力に広める責任を負わなければならない、と痛感しています」と語った。
また、「私の国では、信者の誰もが”シノドスの道”の歩みに加わっているわけではない。より多くの人がこの歩みに参加するためには 努力の余地がある、という思いがある」ことを認めたうえで、「私たちの『共通の責任』を反映する、今総会の総括文書に多くの期待が高まっています。今週は、さまざまな問題について合意し、相違点を解決しようとする重要な段階を迎えています。今後数か月は、私たちが蒔いた果実を刈り取る月となるでしょう」と総会の成果に期待を表明した。
*シスター・リゴン「 すべての人にとって世界をより良い場所にするために、私に何ができるだろうか?」
シスター・サミュエラ・マリア・リゴンは、まず、 「私は祈りの中で、洗礼を受けたキリスト教徒で、修道女として、このシノドス総会に召される、という神の呼びかけを受け入れました」とし、「今回のシノドス総会に参加できたことは、教会の普遍性に触れる、非常に豊かな経験であることが証明されつつあります。 この経験は、謙虚さへの招待状であり、私の視点は美しいモザイクを構築するのに役立つ、地平線上の窓です」と語った。
そして、「私は昨日以来、ミサ聖祭から、使徒パウロが、勤勉な信仰、熱心な慈善活動、イエス・キリストへの希望の堅固さについて語った三つの言葉を持ち歩いています。もしも、この言葉がこの総会で出てきたなら、私たちは、良い意味での本当の革命を起こしていたでしょう。それは、私たちが、神と共に成長でいる重要な種を受け取ったからです」と述べ、 この原則に基づいて、「今日、私は、これまでとは違うキリスト教徒として歩み始めます。 全員がこれを実行すれば、私たちは変革を遂げることになるでしょう」と強調した。
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この後、記者からの質問を受け、総括文書について、ルッフィーニ長官は「最終決定のための投票方法はまだ決まったいません。いずれにしても、28日の夕方には発表し、文書を配布することを予定しています」と説明した。
*一般信徒が議決権を持つシノドス総会は、これからも続くのか
また、「今後開かれるシノドス総会では、これまでの各国の代表司教のみが参加する形から、今回の総会のように変わるのか」との問いには、アギラール・レーテス枢機卿は、「この総会で議論され、経験されたことが実践につながれば、変わることはあるでしょう。今後のシノドス総会の形がどうなるか、その すべては、参加者たちが、自分の教区に戻ったときに何が達成されるかにかかっています」と答えた。
関連して、「今回の総会で選ばれた形(司教だけでなく、司祭や一般信徒も議決権を持って参加する形)が、教会のあらゆるレベルの会合で適用され、一般信徒と女性の教会の意思決定への参加を広げる可能性」を聞かれた シェーンボルン枢機卿は、「エルサレム公会議から始めて、公会議が採用したのは、何よりもまず聴くこと、つまり神が歩く経験を通して示されることに耳を傾けることでした。 シノドス総会の結論は、この傾聴と共通の認識から得られます」とし、「私のウィーン大司教区では、すでにそうしたやり方に慣れています。2015年から今日まで、1400人が参加する5つの教区集会が開かれました。これは神の民全体の表現でです。 たとえ投票による議決が行われなかったとしても、傾聴と交流は経験されました。重要なのは、最終的には決断が下されなければならない、ということ。エルサレム公会議は教会の歴史にとって根本的な決定を下し、そこに到達する方法は、使徒言行録に書かれている通りです。 この方法の特徴は、『傾聴』『沈黙』『議論』の 3 つにあります」と指摘した。
*「シノドス総会の本質は『聴くこと』にある」「『シノドス』であることに変わりはない}
シスター・リゴンも同様の意見で、「シノドス総会の本質的な側面は、『聴くこと』にあります。 職場や家庭、教会共同体で、誰もがこの側面を再発見する必要がある。 誰もが共有し、耳を傾ける機会を持たなければなりません」と述べた。
また、「一般信徒が議決権を持って参加している今回のシノドス総会」に疑念を示す記者の意見には、シェーンボルン枢機卿が、この総会には司教以外の信者も参加していますが、シノドス(世界代表司教会議)であることに変わりはありません。私は、このことは問題ではないと思う。合議的な責任を行使する機関としての、性質は変わっていません。 参加者が拡大されただけであり、前向きな変化です。これまでも、シノドス総会には一般信徒の専門家が存在し、いくつかの非常に重要な決定には事実上参加して来ましたが、今総会はその”緊密度”が増した、ということです」と答えた。