(評論)バチカンの報告書は、聖職者による性的虐待被害者の癒やしに賠償と加害者への具体的な制裁が必要としているが…(Crux)

(2025.10.16 Crux  By Nicole WinfieldAssociated Press)

   ローマ発―教皇庁未成年・弱者保護委員会が、15日発表した賠償問題を主題とする第2回年次報告書で、カトリック教会には聖職者による性的虐待被害者の癒しを支援する「道義的義務」があるとし、「金銭的賠償と加害者及び共犯者への制裁」が不可欠な救済策だと指摘した。

 委員会が二回目の年次報告書で賠償問題に焦点を当てたのは、これがカトリック教会にとってしばしば敏感な話題であり、聖職者階層に課される財政的・評判的・法的影響を考慮すれば、当然だ。そして、数十人の被害者からの意見を踏まえて作成された報告書は、被害者が虐待のトラウマから回復するために必要な治療やその他の支援を提供するには金銭的和解が不可欠、と強調した。

 さらに、報告書は、「教会が被害者、より広くは教会共同体、そして神に対して負う負債は、はるかに大きい」と指摘。「教会指導部は、被害者の声に耳を傾け、精神的・司牧的支援を提供すべきだ」とし、「教会指導者は加害行為についての被害者への謝罪、加害者への処罰措置、将来の虐待防止策を被害者に説明せねばならない」とも強調した。

 そして、「教会は、権威ある立場にある者によって行われ、助長され、誤って処理され、あるいは隠蔽された性的暴力によって被害者が負わされた深い傷を癒す道徳的・精神的義務を負っている… すべてのキリスト教徒が求められる正義と兄弟愛の原則は、責任の承認だけでなく、具体的な償いの措置の実施をも要求する」と言明している。

 

 

*教皇レオも性的虐待問題が教会にとって依然、危機であり、被害者への癒しの必要を認めている

 

 報告書は2024年までの被害、教会が行った対応などを対象とし、教皇レオ14世が選出される前の期間をカバーしている。史上初の米国人教皇は、虐待スキャンダルが教会にとって依然として「危機」であり、被害者の癒やしには金銭的賠償以上のものが必要であること認めている。

 彼は、虐待防止のベストプラクティスについて教会に助言するため2014年に教皇フランシスコによって設立された委員会への関与を示している。設立から10年間、委員会はバチカン内部で足場を固めるのに苦労した。バチカン関係者は虐待危機と向き合うことに抵抗を示し、被害者中心の政策を支持することに敵対的だったからだ。

 しかし近年、委員会はバチカン官僚機構における自らの立場を確立。7月にはレオ教皇が新たな委員長として、米国のショーン・オマリー枢機卿の後任に、フランスのティボー・ヴェルニ司教を任命した。

 

 

*教会内部の秘密主義的対応が、被害者に”再度のトラウマ”を引き起こしている

 

 今回の報告書は、「具体的な説明責任を伴わない秘密主義的なプロセス」に基づく教会の内部での性的虐待への対応そのものが、被害者に”再度のトラウマ”を引き起こしている、と指摘。

 「教会が数十年にわたり、被害者を放棄・無視・恥辱・非難・烙印を押すなど、報告を誤って処理してきたパターンが、継続的な害として被害者にトラウマを永続させていることを改めて強調せねばならない」と述べた。

 これは、教会が内部の教会法典に基づいて虐待事件を処理する場合の機能不全的な方法を指している。現法典では、連続強姦犯の司祭に科される最も重い罰は、「解雇」に過ぎない。

 しかも、このプロセスは秘密主義ノベールに包まれており、被害者は事件の結果を知る権利しか持たず、その結果すらも、長年の待機期間を経てようやく通知されることが多い。被害者が取れる実質的な手段は、自らの体験を公にすることだけだが、それは被害者に再度のトラウマを引き起こす可能性がある。

 報告書は「犯罪の重大さに比例した具体的な制裁」を求めた。児童・弱者を強姦した司祭には俗人化(司祭職剥奪)の可能性もあるが、教会は司祭を完全に排除することをしばしば嫌う。深刻な虐待事件であっても、現役司祭職からの一時的な離脱といった軽い制裁を与えることが頻繁にある。

 司教が事件処理の失敗で解任されても、公には「引退した」とだけ伝えられる。報告書は教会に対し「辞任または解任の理由を明確に伝えること」を求めた。

 

 

アフリカ、アジアの教会からバチカンへの虐待事例の報告は「ごく少数」しかない

 

 報告書は十数カ国における児童保護政策・実践、ならびに二つの修道会、信徒運動団体、バチカン事務局の監査結果を提示した。

 調査結果では、教区が監査に積極的に協力した国々を称賛し、協力しなかった国々を指摘した。報告書はフォローアップのための提言を行い、国連や独立報告書など他の情報源からのデータも提供し、世俗社会における虐待の取り扱い状況という地域的文脈を示した。

 報告書は、アフリカ・アジア・発展途上地域について、これらを担当するバチカン福音宣教省の部局が虐待事件対応の人的・物的資源を有しているが、実際に現地教区から報告されるのは「ごく少数の事例」に留まるとし、バチカンの法令で報告が義務付けられている虐待事件の報告・処理において、「アフリカ・アジアの教会は西欧より数十年遅れている」ことを示唆している。

 報告書によれば、同省の部局が虐待事件を不適切に処理した司教の事例を扱ったのはわずか2件のみ。対象地域の広大さを考慮すれば、この数字は驚くほど低い。

 こうしたデータは、特に同性間虐待が社会全体でタブー視され、教会が戦争・紛争・貧困といった広範な課題に直面する地域において、バチカンには依然として長い道のりが残されていることも示唆している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年10月18日