(2026.3.5 Kimberlee Kruesi, Crux Staff |Associated Press)

(ロードアイランド州クランストンの聖マリア教会(撮影:チャールズ・クルパ/AP通信)
プロビデンス(ロードアイランド州)発 ―米国 ロードアイランド州のカトリック司祭たちが数十年にわたって数百人の児童を標的にした性的虐待を繰り返していたにもかかわらず、これまで隠蔽されきた。背景には、司教たちによる”スキャンダル最小化”優先の体制と、多くの被害者の証拠を隠蔽する秘密文書保管庫の存在があった。
これらのことは、同州のピーター・ネロンハ司法長官主導によるプロビデンス教区への複数年にわたる調査結果として4日が発表された報告書で明らかになった。
報告書は、米国で最も人口の少ない州でありながら、州民に占めるカトリック信徒の比率が約40%と最多をしめる同州で長年明らかにならなかった虐待問題に対する「完全な清算」を促すことを目的としている。
被害者たちは、近隣のボストン教区で聖職者による信徒などへの性的虐待がボストン・グローブ紙のスクープで表に出されて20年以上経つ今も、十分な対応がなされていない。と訴えている。
自身もカトリック教徒のネロンハ州司法長官は報告書で「州の歴史におけるこの痛ましい一章について、透明性と説明責任、そして制度的な改革をもたらす包括的な検証が、今になってようやく行われた。これにより、プロビデンス教区内だけでなく、地域社会全体において、将来の児童性的虐待の可能性が低減されることを願う」と語っている。
報告書によると、1950年以降これまでに、75人の司祭が300人以上の被害者に性的暴行を加えたことが確認された。だが、「実際の被害児童数と加害司祭数は、これよりもはるかに多い可能性がある」と強調した。
一方、プロビデンス教区は4日、報告書の発表を受けて声明を出し、「司法長官による報告書そのものが、プロビデンス教区が前例のない自発的合意により並外れた透明性を確保した結果だ。法的強制力、刑事・民事行政手続き、あるいは政府権力による強制の結果として作成されたものではない。この自主的な記録調査が実現したのは、教区が2019年の覚書(MOU)を通じて司法長官に自由にアクセスを許可し、正当な法的異議を差し控え、75年以上にわたる資料について6年半に及ぶ執拗な要求を自ら進んで受け入れたからこそだ」と述べた。
*教区は被害者の訴えをもとに綿密な調査もせず、司法当局にも通報しないまま虐待司祭を転任させた
だが、報告書によると、調査対象となった教区記録から、告発を受けた司祭について、教区は綿密な調査をせず、法執行機関にも通報しないまま、頻繁に転任させていた事実が明らかになった。”転任先”には、教区が1950年代に開設した「黙想形式の施設」も含まれ、複数の告発司祭が職務復帰を目的とした治療のために送られた。
こうした措置は、司祭による虐待が「精神衛生上の問題」である可能性を判断した後、告発された司祭をより正式な「治療センター」に送る形へと発展した。だが、報告書は、教区が「治療センター」に対して抱いた「過度の依存と誤った信頼」は、「馬鹿げた楽観主義」だったと指摘している。
*告発された司祭を「休職」扱いにも
1990年代には、告発された司祭を休職扱いとするケースもあった。報告書によれば、1992年、13歳の被害者家族から性的虐待の告発を受けたロバート・カーペンティア神父は虐待の事実を認めたが、コネチカット州の「治療センター」に送られ、最終的にボストンカレッジで休職期間を過ごした。2006年に正式に引退するまで「休職」状態を続け、2012年に死亡するまで教区から支援を受けていた。
そして、告発された司祭たちが関与した事件の大半は、法執行機関と教区双方の責任追及を免れた。報告書によると、2020年から2022年にかけて教区で奉職中に性的虐待を行ったとされる現職あるいは元司祭4人を起訴したが、うち3人は現在も公判待ち、1人は裁判に応じる能力なしと判断された後、死亡している。1950年代からでは、性的虐待が特定された司祭全体のわずか26パーセント、20人が刑事訴追され、有罪判決を受けたのは14人。告発された司祭で聖職を剥奪されたのは12人にとどまっている。
*被害者の一部は虐待前に加害司祭に洗脳されていた
報告書に登場するある生存者は、1981年にクランストンの「無原罪の御宿り教会」に奉職していたジョン・アラード神父による性的虐待の前に「彼に洗脳されていた」と語った。
匿名のこの被害者は、神父が中学1年から2年の間に自分に関心を向け、「身体的な愛情」を示し、9年生になると、司祭の寝室に連れ込み、衣服を脱がせて陰茎をもてあそび始めた。「彼は『ハグが欲しいか』と尋ねたことは一度もなかった。『お前にはハグが必要だ』と強制的だった。その言葉は今でも鮮明に耳に残っています」と、この被害者は2013年に当局者に語っている。
教区の調査委員会は被害者の訴えに信憑性があると判断したが、当時のプロビデンス教区長、トーマス・トビン司教が介入し、バチカンの性虐待問題担当の教理省に「アラードの司祭職を取り上げず、引退させる」よう要請。教理省はこれを認めた。
だが、教区で調査を担当した者自身が、加害者だった。2021年、フランシス・サンティリ神父はロードアイランド教区調査委員会での職務を果たした後で、児童性的虐待で訴えられた。だが、2014年と2021年に追加の虐待で訴えられた後も、現役司祭として活動し続け、司祭職を解かれたのは2022年になってからだった。報告書は「明らかに取るべき措置がなぜ、これほど遅れたのか、教区だけが説明できるだろう」と記している。
*司祭による性虐待の全体像はまだ解明されていない
ロードアイランド州のネロンハ司法長官が調査を開始したのは2019年。前年に米国史上最も広範な児童性的虐待調査報告の一つとされるペンシルベニア州大陪審報告書が1940年代以降、同州で約300人の司祭による1000人以上の児童虐待を明らかにしてから、ほぼ1年後だった。だが、ロードアイランド州の法律では大陪審報告書を公開できない。
ネロンハ長官はこの障壁の撤廃を長年訴えてきたが実現せず、代わりに教区との取り決めで数十年にわたる数十万件の虐待記録へのアクセスを得た。教会側は70年にわたる「秘密アーカイブ」—内部調査記録、性的虐待事件の民事和解記録、治療費など—を提出したが、「重大な制限や遅延が伴った」と長官は指摘する。「教区の調査や児童性的虐待疑惑への対応を監督する責任者への事情聴取を、私のチームが繰り返し要請したが、教区はこれを拒否した」。
また、被害者のうち何人かは告発前に死亡した可能性が高い。また、虐待の疑いのある司祭に関する教会の記録の一部は紛失、あるいは破棄されている。児童性的虐待の被害者が自らの体験を告発するまでに数十年を要することも珍しくない。
*プロビデンス教区は「40年前に起きたことを現代の基準で評価するのは適切ではない」とも主張
だが、教区は声明で、「報告書は教区の初期対応を繰り返し批判している。その際、報告書は半世紀近く前に起きたことを現代の基準・慣行・認識を適用している。当時は世界が全く異なっていた」と弁明。「時代は変わった。医療界や社会全体の理解が深まり成熟するにつれ、教区の対応と認識も進化した。今日の基準を過去の行為に適用するのは適切ではない。にもかかわらず報告書は教区の対応を評価する際に、繰り返しそうしている」と述べている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)