改・教皇、米ニューヨーク大司教に同郷出身のヒックス司教を任命ー初仕事は3億ドルの性的虐待被害者補償の基金の監督(Crux)

(2025.12.18  Crux   Nicole Winfield,  Associated Press)

 ローマ発―教皇レオ14世が18日、これまでで最も重要な米国の司教人事を行い、イリノイ州ジョリエット教区長のロナルド・ヒックス司教(58)をニューヨーク大司教に任命した。同大司教区は米国最大級であり、トランプ政権とその移民取り締まり政策との関係を模索する中で指導力を発揮することになる。Archbishop Ronald Hicks, the new Archbishop of New York

 ヒックス新大司教は、米国カトリック教会で保守派の重鎮として知られるティモシー・ドーラン枢機卿の後任となるが、先週、同枢機卿が性的虐待被害者に対する補償金支払いのための3億ドル(約450億円)の基金をニューヨーク大司教区に設立する計画を最終決定した直後でもある。ドーラン枢機卿は今年2月、司教定年である75歳になったため、辞表を教皇に提出していたが、大司教区の性的虐待問題と被害者補償に区切りがつくまで、辞表の受理が保留になっていた。

 同枢機卿の大司教退任は、教会にとって重要な新章の始まりだ。シカゴ生まれのプレボストがが初の米国人教皇、レオ14世として新時代を切り開く中、教皇と米国カトリック教会指導部は既に移民問題などでトランプ政権に異議を唱える姿勢を示しており、ヒックスはまさに”レオ派の司教”と見なされている。

 

 

 

*移民との連帯を呼びかける

 ヒックス新大司教はイリノイ州サウスホランドで育った。ここはレオ(旧名ロバート・プレヴォスト)が幼少期を過ごしたシカゴ郊外の自宅から近い場所だ。ペルーで20年間宣教師を務めたプレヴォスト同様、ヒックスもエルサルバドルで5年間活動し、ラテンアメリカとカリブ海地域の9か国で運営される教会系孤児院プログラムを統括した。

 「ニューヨーク大司教という新たな職責は重大だが、ヒックス司教ならその任務に十分耐えられる」と語るのは、1980年代半ばからヒックスを知り、シカゴ大司教区神学校であるマンデレイン神学校で共に働いたエウゼビウス・マルティス神父だ。

 「ニューヨークは彼を得て幸運だ。彼は素晴らしい人物。常に思慮深く、神学生が必要としていることに気を配っている」と、ローマのベネディクト大学付属サンタンセルモ典礼神学研究所の秘跡神学教授マルティスは電子メールで述べた。

 昨年11月、ヒックスはトランプ政権の移民一斉摘発(特にシカゴを標的としたもの)を非難する米国カトリック司教会議の特別声明を支持した。カトリック教徒にこのメッセージの共有を促す声明の中で、ヒックスは「このメッセージは、私たちの懸念、反対、希望を明確かつ確信をもって表明し、すべての兄弟姉妹との連帯を確かなものとする。それは人間の尊厳に関するカトリック社会教説への教会の揺るぎない献身と、有意義な移民改革への呼びかけに根ざしている」と強調した。

*教皇レオ14世に近い出身、宣教師としての経験

 教皇とヒックスは二人ともシカゴ出身だが、ヒックスが将来の教皇と初めて会ったのは2024年だった。当時プレヴォスト枢機卿がヒックスの管轄教区の一つを訪問し、一般市民との質疑応答に参加した際のことである。最前列に座っていたヒックスは、その日、プレヴォストが将来どのような教皇になるかを悟り、公の場での発言と、その後の一対一の会話の両方に好感を抱いたと語る。

 「二人の会話は、5分が10分に、10分が15分に、15分が20分になりました」と、ヒックスはレオの5月の選出後、地元シカゴのWGN-TVニュースに語った。彼は、互いの共通の背景と「架け橋を築く」という優先事項を認識したと語った。「文字通り同じ半径内、同じ地域で育った。同じ公園で遊び、同じプールで泳ぎ、同じピザ屋が好きでした」。

 ヒックスはシカゴで教区司祭を務め、マンデレイン神学校の教育部長を経て、2015年にシカゴ大司教ブラズ・クピッチによって大司教区の副司教に任命された。3年後、ヒックスは補佐司教に任命され、2020年に、教皇フランシスコによってジョリエット教区司教に任命された。同教区は7郡にまたがり、約52万人のカトリック信者を管轄している。

 米国教会内で進歩派と見なされるクピッチは、教皇フランシスコと教皇レオ14世の2人の側近として知られ、ヒックスの重要なポストへの任命は、クピッチの推薦なしには実現しなかった可能性が高い。

*ニューヨーク大司教区は

 

 ニューヨーク大司教区は国内最大級で、ニューヨーク市のマンハッタン、ブロンクス、スタテンアイランドに加え、北部の7郡にまたがる約250万人のカトリック教徒を管轄している。

 社交的なドーラン枢機卿は、米国で最も知名度の高いカトリック指導者の一人であり、同市における有力な発言者だ。ドーランは保守派と見なされることが多く、2018年にはウォール・ストリート・ジャーナル紙に「民主党はカトリック教徒を見捨てた」と題するコラムを寄稿した。しかし2023年には、LGBTQ+カトリック教徒向け支援プログラムを称えるフォーダム大学での会議に歓迎のメッセージを送り、市の聖パトリックの日パレードへのLGBTQ+参加も歓迎している。

 ドーランは、トランプ共和党政権ともつながりがある。ニューヨーク大司教として、カトリックの慈善団体に数百万ドルもの寄付を集める毎年恒例の「アル・スミス・ホワイトタイ・ディナー」を主催した。このディナーは、伝統的に、選挙日を前に、両党の候補者が気さくな冗談を言い合う場となってきたが、2024年は、民主党の候補者カマラ・ハリスが招待を辞退したため、ドナルド・トランプだけが参加した。

 故郷のニューヨーク市と長年のつながりがあるトランプは、後にこの枢機卿に就任式で祈りを捧げさせ、ドーランを自身が設立した「宗教の自由委員会」に任命した。ドーランは、教皇フランシスコの後継者としてトランプが選んだ人物だった。しかし、5月のコンクラーベ(最終的にレオが選出された)の前に、カトリック教徒ではないトランプが教皇の衣装を着たAI生成の画像を共有した大統領を、ドーランは批判した。

 ドーランは、ミルウォーキーの大司教を務めた後、2009年2月に教皇ベネディクト16世からニューヨークの大司教に任命された。2012年に枢機卿に任命され、2010年から2013年まで米国司教会議の議長を務めた。

 

 

*大司教としての初仕事は、虐待被害者への和解金支払いの監督

 ヒックスが最初に担う最大の任務の一つは、ドーランが最終決定した虐待被害者への和解金基金の実施を監督することだ。この基金は、大司教区の予算削減と資産売却によって賄われる。目的は、大司教区に対して未解決の約1300件の虐待被害者請求のほとんど、あるいは全てに対する和解金を支払うことにある。ヒックスは虐待スキャンダルの後始末に慣れている。前任者たちが率いたジョリエット教区とイリノイ州の他の教会は、2023年に州司法長官から痛烈な批判を受けたからだ。

 5年間にわたる調査で、1950年から2019年にかけてイリノイ州で451人のカトリック聖職者が1,997人の児童を虐待した事実が判明した。ヒックスは2020年にジョリエット教区の長に任命された。司法長官の報告書は、教区の現行の児童保護方針を概ね肯定的に評価したものの、前任のジョリエット教区長らが既知の虐待者を転任させ、被害者を貶め、虐待を助長した自らの役割に対する責任を認めなかった複数の事例を文書で記録している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2025年12月19日