・「性的虐待被害者支援の責任を果たせなかった者への対応方法にできる限りのことを行う」教皇、聖職者による虐待被害者支援の国際団体代表に約束

 (2025.10.21 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ発 – 教皇レオ14世が20日、バチカンで聖職者による性的虐待被害者を支援する国際団体「聖職者による虐待終結(ECA)」の代表たちとお会いになった。虐待被害関係団体と公式にお会いになるのは5月に教皇に就任されて初めてだ。

 1時間以上に及んだ面談には、自身が聖職者による性的虐待被害者でありECA理事長のカナダ人、ジェマ・ヒッキー氏をはじめ、ウガンダ出身のECA理事副会長ジャネット・アグティ、米国出身のECA共同創設者兼理事ティム・ロー、 ドイツ出身のECA共同創設者兼理事マティアス・カッシュ、カナダ出身のECA共同創設者兼理事エブリン・コルクマズ、アルゼンチン出身のECA理事セルヒオ・サリナス、ペルー出身のECA共同創設者兼理事ペドロ・サリナスの各氏が参加した。

 彼らは面談冒頭でECAを代表して声明を読み上げ、「怒りではなく希望を持ってここに来ました。説明責任、癒やし、持続的な変化への希望です… 私たちの使命は被害者を支え、脆弱な立場にある者を擁護し、偉大な善を行う能力を持つ組織に説明責任を果たさせることです」と述べた。

 その後、各自の体験談を共有し、具体的な問題点について言及した。その中で、最近公表された教皇庁未成年者保護委員会(PCPM)の年次報告書も取り上げられ、教会法典に普遍的なレベルで「ゼロ・トレランス・ルール」を明文化することを求める意見も出た。

 面談後の会見でヒッキー氏は、教皇に面談を求めた理由について、「私たちは真実、正義、癒しへ向けて共に歩む態勢を整えた架け橋として教皇に面会を求めた。性的被害をめぐって教会内部が大きく分断されているからこそ、私たちがすべきことは腰を据えて対話することだからです」と説明。教皇の印象について「非常にオープンな会話ができた。温かい人柄で、耳を傾け、ユーモアのセンスがあり、非常に謙虚な方だった」と述べた。

 またカッシュ氏は「教皇は、私たちに時間を割いてくださり、一人ひとりの発言を注意深く聴いてくださった… 世界規模の組織を統括する人物にとって1時間は決して短くありません。今回の面談で、教皇が『集まって話し合うことが次の歴史的ステップ』だ認めてくださったことで、開かれた対話の雰囲気が醸成された」と説明した。

 また、同氏によると、教皇は今後も連絡を保ち「対話の開かれた経路」を維持する意向を示され、「教会内での児童性的虐待の癒やし、被害者の支援、そして責任を果たせなかった者への責任追及の方法を見出すために、できる限りのことを行う」と約束された、という。

 同氏は「教皇は現在、これらの問題をどう扱うべきか模索している段階にある。(聖職者による性的虐待問題は正解の教会に及び)その規模が非常に大きいからです… 教皇はアウグスチノ会総長時代、ペルーだけでなくアフリカや世界の多くの地域で被害者の声に耳を傾けてきた豊富な経験をお持ちであり、今回の面談で希望を感じました。できることを尽くそうとする姿を見ました」と語る一方、「教皇は自らのペースで前進しておられます。それは、非常に緩やかであり、被害者にとっては耐えることが難しいかもしれませんが、組織改革には時間がかかるのです」とも述べた。

 ECA共同創設者のコルクマズ氏は、カナダのクリー族の先住民寄宿学校で性的虐待被害に遭った経験を持つが、「聖職者による虐待との闘いには、まだ長い道のりが必要」と認めつつ、「教皇が被害者との対話や教会の制度改善に真剣に取り組んでおられる印象を持った… 教皇に私たちの声が届いたと感じました」と語った。

 そして、カナダにおける虐待被害者への癒しと賠償のプロセス、2022年に同国を訪問した教皇フランシスコが寄宿学校制度における教会の制度的役割とそれに伴う虐待について謝罪した経緯について述べ、「教皇は和解の道を歩み続けられるでしょう。非常に謙虚な方で、私たちの問題も、ECA(カナダ先住民協会)の使命も理解してくださった。先住民問題について、ようやく私の声が届いたと感じまたし」と述べた。

 ウガンダのアグティ氏は、「面談で、教皇は、教会内には物事を認識する様々な方法がある、とされ、文化的差異が聖職者による虐待問題の対応に影響を与えることを認められた」と指摘。

 「文化が特定の施策実施の障壁となり得ることは、私たち皆が承知していますが、こうした状況は時間こそかかるものの、変革と実施が可能だと理解しています。教皇は、アフリカにも虐待が存在することを認識しておられる。教皇はアフリカで虐待被害者と直接お会いになった経験から、『アフリカには性的虐待は存在しない』と言う一部の教会関係者の声が嘘だとご存じです」とし、「今回の教皇との面談は、私たちにとって大きな一歩であり、歴史的瞬間だと確信しています」と語った。

 米国のロウ氏は、今回の面談で、教皇に「ゼロ・トレランス(性的虐待者を容赦無く罰する)ルール」の世界的な実施の必要性を訴えたのに対し、教皇は「”ただペンを取り出して署名する”わけにはいきませんが、取り組むべき課題だと認識しています」と述べられ、団体側は「この議論が行われる場に参加したい、対話の一員でありたい」と希望した、という。

 同氏は、 「教皇は『このような普遍的規範の実施には、大きな抵抗がある』ことを認めつつ、導入の必要性に理解をされたものの、『実現には時間がかかるでしょう』とも語られました」と語ったと述べつつ、「信頼性のある聖的虐待の告発は、時期を問わず、必ず司祭や高位聖職者を職務から解く結果となるべきです… ゼロトレランスの公的ルールが存在しないこと、そして(教皇の口から)『(実現に教会内部からの)抵抗がある』と言われたのはショックですが、教皇自身が導入に抵抗しているわけではありません」と言明した。

 今後の対応について、ヒッキー氏はECAが今回の教皇との面談のフォローアップとして、「ゼロ・トレランス・ルール」に関する提案書や教会の安全対策方針に関するその他の文書を教皇に送付する考えを明らかにした。「面談は前向きな雰囲気で終了し、教皇は、対話の継続を約束された」とし、教皇との年次会合を通じて対話を続ける希望を表明した。

 アグティ氏も今回の面談を「希望に満ちたもの」とし、「教皇の傾聴の姿勢と、ご自身が被害者たちと共に歩んできたという認識を持たれているのは、問題の本質を理解しおられる証左す」と評価した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年10月22日