改・教皇、米ニューヨーク大司教に同郷出身のヒックス司教を任命ー初仕事は3億ドルの性的虐待被害者補償の基金の監督(Crux)

(2025.12.18  Crux   Nicole Winfield,  Associated Press)

 ローマ発―教皇レオ14世が18日、これまでで最も重要な米国の司教人事を行い、イリノイ州ジョリエット教区長のロナルド・ヒックス司教(58)をニューヨーク大司教に任命した。同大司教区は米国最大級であり、トランプ政権とその移民取り締まり政策との関係を模索する中で指導力を発揮することになる。Archbishop Ronald Hicks, the new Archbishop of New York

 ヒックス新大司教は、米国カトリック教会で保守派の重鎮として知られるティモシー・ドーラン枢機卿の後任となるが、先週、同枢機卿が性的虐待被害者に対する補償金支払いのための3億ドル(約450億円)の基金をニューヨーク大司教区に設立する計画を最終決定した直後でもある。ドーラン枢機卿は今年2月、司教定年である75歳になったため、辞表を教皇に提出していたが、大司教区の性的虐待問題と被害者補償に区切りがつくまで、辞表の受理が保留になっていた。

 同枢機卿の大司教退任は、教会にとって重要な新章の始まりだ。シカゴ生まれのプレボストがが初の米国人教皇、レオ14世として新時代を切り開く中、教皇と米国カトリック教会指導部は既に移民問題などでトランプ政権に異議を唱える姿勢を示しており、ヒックスはまさに”レオ派の司教”と見なされている。

 

 

 

*移民との連帯を呼びかける

 ヒックス新大司教はイリノイ州サウスホランドで育った。ここはレオ(旧名ロバート・プレヴォスト)が幼少期を過ごしたシカゴ郊外の自宅から近い場所だ。ペルーで20年間宣教師を務めたプレヴォスト同様、ヒックスもエルサルバドルで5年間活動し、ラテンアメリカとカリブ海地域の9か国で運営される教会系孤児院プログラムを統括した。

 「ニューヨーク大司教という新たな職責は重大だが、ヒックス司教ならその任務に十分耐えられる」と語るのは、1980年代半ばからヒックスを知り、シカゴ大司教区神学校であるマンデレイン神学校で共に働いたエウゼビウス・マルティス神父だ。

 「ニューヨークは彼を得て幸運だ。彼は素晴らしい人物。常に思慮深く、神学生が必要としていることに気を配っている」と、ローマのベネディクト大学付属サンタンセルモ典礼神学研究所の秘跡神学教授マルティスは電子メールで述べた。

 昨年11月、ヒックスはトランプ政権の移民一斉摘発(特にシカゴを標的としたもの)を非難する米国カトリック司教会議の特別声明を支持した。カトリック教徒にこのメッセージの共有を促す声明の中で、ヒックスは「このメッセージは、私たちの懸念、反対、希望を明確かつ確信をもって表明し、すべての兄弟姉妹との連帯を確かなものとする。それは人間の尊厳に関するカトリック社会教説への教会の揺るぎない献身と、有意義な移民改革への呼びかけに根ざしている」と強調した。

*教皇レオ14世に近い出身、宣教師としての経験

 教皇とヒックスは二人ともシカゴ出身だが、ヒックスが将来の教皇と初めて会ったのは2024年だった。当時プレヴォスト枢機卿がヒックスの管轄教区の一つを訪問し、一般市民との質疑応答に参加した際のことである。最前列に座っていたヒックスは、その日、プレヴォストが将来どのような教皇になるかを悟り、公の場での発言と、その後の一対一の会話の両方に好感を抱いたと語る。

 「二人の会話は、5分が10分に、10分が15分に、15分が20分になりました」と、ヒックスはレオの5月の選出後、地元シカゴのWGN-TVニュースに語った。彼は、互いの共通の背景と「架け橋を築く」という優先事項を認識したと語った。「文字通り同じ半径内、同じ地域で育った。同じ公園で遊び、同じプールで泳ぎ、同じピザ屋が好きでした」。

 ヒックスはシカゴで教区司祭を務め、マンデレイン神学校の教育部長を経て、2015年にシカゴ大司教ブラズ・クピッチによって大司教区の副司教に任命された。3年後、ヒックスは補佐司教に任命され、2020年に、教皇フランシスコによってジョリエット教区司教に任命された。同教区は7郡にまたがり、約52万人のカトリック信者を管轄している。

 米国教会内で進歩派と見なされるクピッチは、教皇フランシスコと教皇レオ14世の2人の側近として知られ、ヒックスの重要なポストへの任命は、クピッチの推薦なしには実現しなかった可能性が高い。

*ニューヨーク大司教区は

 

 ニューヨーク大司教区は国内最大級で、ニューヨーク市のマンハッタン、ブロンクス、スタテンアイランドに加え、北部の7郡にまたがる約250万人のカトリック教徒を管轄している。

 社交的なドーラン枢機卿は、米国で最も知名度の高いカトリック指導者の一人であり、同市における有力な発言者だ。ドーランは保守派と見なされることが多く、2018年にはウォール・ストリート・ジャーナル紙に「民主党はカトリック教徒を見捨てた」と題するコラムを寄稿した。しかし2023年には、LGBTQ+カトリック教徒向け支援プログラムを称えるフォーダム大学での会議に歓迎のメッセージを送り、市の聖パトリックの日パレードへのLGBTQ+参加も歓迎している。

 ドーランは、トランプ共和党政権ともつながりがある。ニューヨーク大司教として、カトリックの慈善団体に数百万ドルもの寄付を集める毎年恒例の「アル・スミス・ホワイトタイ・ディナー」を主催した。このディナーは、伝統的に、選挙日を前に、両党の候補者が気さくな冗談を言い合う場となってきたが、2024年は、民主党の候補者カマラ・ハリスが招待を辞退したため、ドナルド・トランプだけが参加した。

 故郷のニューヨーク市と長年のつながりがあるトランプは、後にこの枢機卿に就任式で祈りを捧げさせ、ドーランを自身が設立した「宗教の自由委員会」に任命した。ドーランは、教皇フランシスコの後継者としてトランプが選んだ人物だった。しかし、5月のコンクラーベ(最終的にレオが選出された)の前に、カトリック教徒ではないトランプが教皇の衣装を着たAI生成の画像を共有した大統領を、ドーランは批判した。

 ドーランは、ミルウォーキーの大司教を務めた後、2009年2月に教皇ベネディクト16世からニューヨークの大司教に任命された。2012年に枢機卿に任命され、2010年から2013年まで米国司教会議の議長を務めた。

 

 

*大司教としての初仕事は、虐待被害者への和解金支払いの監督

 ヒックスが最初に担う最大の任務の一つは、ドーランが最終決定した虐待被害者への和解金基金の実施を監督することだ。この基金は、大司教区の予算削減と資産売却によって賄われる。目的は、大司教区に対して未解決の約1300件の虐待被害者請求のほとんど、あるいは全てに対する和解金を支払うことにある。ヒックスは虐待スキャンダルの後始末に慣れている。前任者たちが率いたジョリエット教区とイリノイ州の他の教会は、2023年に州司法長官から痛烈な批判を受けたからだ。

 5年間にわたる調査で、1950年から2019年にかけてイリノイ州で451人のカトリック聖職者が1,997人の児童を虐待した事実が判明した。ヒックスは2020年にジョリエット教区の長に任命された。司法長官の報告書は、教区の現行の児童保護方針を概ね肯定的に評価したものの、前任のジョリエット教区長らが既知の虐待者を転任させ、被害者を貶め、虐待を助長した自らの役割に対する責任を認めなかった複数の事例を文書で記録している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2025年12月19日

・聖職者の性的虐待で『神言会裁判」第12回ー被告側の不誠実な対応が如実に

(2025.12.2 カトリック・あい)

 聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が、所属(当時)修道会・神言会に損害賠償を求める裁判の第12回が12月1日、東京地方裁判所で、原告支援者など30人を超す人々が傍聴する中で開かれた。次回は来年の2月9日、次々回は3月11日で、原告、被告の証人尋問はそれ以降となる。

 この日の裁判のやり取りは、原告、被告双方が事前に提出した準備書面をもとに行われた。被告・神言会側が出した書面について、原告側が「引用されている文章に、出典が明らかにされていない。これでは証拠にならない」などと指摘したのに対し、説得力のある答えはなかった。

 また、前回の裁判で、被告側が、準備書面で、性的虐待を働いたとされる神言会所属の司祭(当時)について、2019年に長崎教区の教会から東京教区の吉祥寺教会に異動したが、この異動は「本裁判で取り上げられている件に関連してなされたものではなかった」との趣旨が述べられていた。

 これについて、原告側は、「関連してなされたものでない、と言うなら、それを裏付けるような異動の基準が神言会にはあるはずではないか」などと説明を求めたのに対し、被告側は即答できず、「確認してから答える」と説明を先延ばしていたが、今回の裁判に提出した書面では、「知らない」という答えに留まっている。

 このように、第三者から見れば、不誠実と見られる被告・神言会側の対応には、これまで12回の裁判に苦しみをこらえて毎回出廷している原告に対して一度も出廷したことのない被告当事者の神言会の「原告・被害者の長年にわたる苦しみを全く理解しようとしない姿勢が露骨に現れている」と批判する声も、傍聴した原告支援者の間から強く出された。

 裁判後の支援者たちへの説明で、原告代理人の秋田一惠弁護士はこれまでの裁判で浮かび上がって来た神言会の対応の問題点について整理した。

 第一に、原告が問題にしている被告・神言会の司祭(当時)の行為は、読書や散歩のように”業務外”の行為で、会があずかり知らぬこと、と被告側が主張していること。修道会司祭は、神と人に一日24時間奉献することが”業務“とされているはずであり、このような”新“解釈が、カトリック教会として認められることは、ありえないのではないか。

 第二に、加害司祭は、原告・被害者の女性の告解を聴き、その内容を性的虐待に利用したが、告解の秘跡をそのように悪用することは言語道断の行為ではないのか。

そして第三に、加害司祭に対して、事件が発覚した後、会は100万円を渡して、海外に出したことが、内部文書で明らかになっている。裁判で被告側はたびたび「どこにいるか知らない」としていたが、会は本人とたびたび連絡を取っており、その後、本人は司祭を辞めて、日本に戻り、被害者とは関係のない女性と結婚し、その女性から会に報告があった後も、「どこにいるか知らない」と言い続けた。あげくに、居場所が知られると、今度は「彼は原告が主張するようなこと(性的虐待)はしていない」と言い方を変えるなど、主張に一貫性が無く、説得力もない、などを挙げている。

原告代理人は、神言会は、原告・被害者を苦しませ続けている自らの対応について反省するどころか、もみ消しを図ろうとする意図が、裁判を重ねることに明確になっている、とし、今後は証人喚問などを通して、被告・神言会の非をさらに追及していく方針だ。

2025年12月2日

・教皇、性的虐待疑惑で調査中のスペインの司教の辞表を(CRUX)

(2025.11.22  Crux   Nicole WinfieldAssociated Press)

2025年11月23日

・「少年への性的虐待でスペインの司教が教皇に辞表を受理される可能性」とスペイン司教協議会会長

 (2025.11.18 Crux  Fionn Shiner)

(スペイン・カディスの大聖堂=クレジット:ウィキメディア)

    スペイン司教協議会(CEE)会長のルイス・アルグエロ大司教が16日、教皇レオ14世が、少年たちに性的虐待をした同国カディス・セウタのラファエル・ソルノサ司教に対する調査が行われていることをご存じで、司教の辞表を「間もなく受理される可能性がある」と述べた。Pope Leo is aware of investigation into Spanish Bishop of Cádiz

 ソルノサ司教に対する調査についてアルグエロ大司教が説明したところによると、同司教は1990年代、ゲタフェ教区司祭兼神学校長在任中に14歳から21歳までの少年を性的虐待した疑いで教会法上の調査を受けている。

 大司教は「現時点では、推定無罪の原則により、告発者の主張の真実性を判断するための手続きが進行中だ」とし、「教皇はこの件を承知されている。当然ながら、これは教会法に基づく対応だ。民事裁判では時効が成立しているため、これが正しい処置であると確認された」と説明。

 ソルノサ司教の辞表の受理の可能性については「教皇本人からではなく別の筋から、辞表が近く受理される可能性がある、との情報を得ている… 辞任を受諾し、後任者や管理者を任命するのは教皇であり、当然、この件は教皇は報告される」と付け加えた。

 また、アルグエロ大司教は、教会は「もはや世俗化されていない、脱世俗化したスペイン社会」で活動しているにもかかわらず、「最近のスペインにおける福音宣教の取り組みから得られた多くの良い成果を教皇に伝えた。例えば、今年、神学生の数が昨年より100人以上増えたことなどだ」と述べた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年11月19日

(評論)教皇、ベルギーの性的虐待被害者と3時間の面談ー”ルプニク”の被害者はいつまで”忍耐”を求められるのか(Crux)

 教皇レオ14世が8日、聖職者による性的虐待の被害者15名のグループと面会した。全員がベルギー人で、未成年の時期に虐待を受けた。その多くは2024年9月の教皇フランシスコの同国訪問時に面会に参加していた。

 バチカン報道局が8日夕に記者団に送付した声明によると、面会は「約3時間」にわたり、「被害者との親密さ、深いながらも痛みを伴う傾聴と対話の雰囲気」の中で行われた。

 バチカンの公式報道機関であるVatican Newsによると、教皇庁未成年者・弱者保護委員会(PCPM)のメンバーは8日、被害者たちの教皇との面談に同行。それに先立って、PCPMが別途、被害者たちと会い、7月にPCPM代表団がベルギーを訪問した際に始まった対話を継続したという。

 

*教皇は聖的虐待被害者たちに「忍耐」を求めた

 

 教皇はこれより前、4日に教皇別邸カステル・ガンドルフォからバチカンに戻られる際、記者団の聖職者による虐待被害に関する質問に、被害者たちに忍耐を求める発言をした。その率直さゆえに衝撃的だったが、いくつかの関連する理由から、その衝撃が示す以上に非常に被害者たちに対する大きな要求でもあった。

 記者団に教皇はこう語った—「被害者の方々に忍耐を求めるのは非常に難しいことだと承知しています… しかし教会は、全ての人々の権利を尊重せねばなりません。 『有罪が証明されるまでは無罪』という原則は教会においても真実です」と。

 この発言は誤りではないが、(多くの人、特に被害者にとって)いかに不快に響いたかを理解するには、彼が答えていた質問の背景を知る必要がある。それは、数十年にわたり司法の裁きを逃れ、今もなお司祭としての地位を保ち、告発内容にもかかわらず司祭としての権限を完全に保持しているように見える、悪名高い有名芸術家の存在だ。

 つまり教皇の発言の具体的文脈は発言内容そのものと同等に重要であり、彼が特に言及した被害者たちが「教会において、司法の歯車が全く動いていない」と疑うのには、当然の理由があるのだ。

*記者団は性的虐待で悪名高い「ルプニク」の扱いについ質問したのだが…

 

 教皇の発言は、スロベニア人司祭で元イエズス会士、現在は母国のコペル教区に所属しているが、ローマ在住と報じられているマルコ・ルプニク神父の事件に関する記者の質問に答えたものだった。

 ルプニクは複数の証人(バチカン自身の調査官によれば「極めて信頼性が高い」とされる)から、約30年間にわたって、数十人(大半が女性修道者で、うち数名はルプニクが母国スロベニアで設立に関わった修道会に所属)に対し、精神的・心理的・性的虐待を繰り返し行った、として告発されている。

 

 

*イエズス会やバチカンの有力者は”ルプニク”に目をつぶり、放置し、被害者たちをさらに傷つけた

 

 ルプニクは、モザイク教会芸術家として、また講演者、黙想指導者として、非常に人気の高い霊的指導者として、世界的な名声を得ていた。その一方で、性的虐待行為が根深いものであると信憑性のある主張がなされている。一方、イエズス会やバチカンの有力者たちは、彼に対する苦情に目をつぶるか、あるいは(これもまた主張されていることだが)告発者たちの信用を傷つけるために積極的に動いた。

 要するに、ルプニクを告発した者たちは数十年にわたり忍耐強く待ってきた。世界中の他の被害者たちも同様だ。レオ14世(教皇フランシスコ)が前任者から不浄な混乱を引き継いだのは事実であり、特にルプニク事件に関してはそう言える。ルプニクを告発した者たち、そして被害者全般が、教皇の言葉が被害者やスキャンダルに憤る信徒の忍耐力を過大評価していると受け取ったとしても、それは許されるかもしれない。たとえ彼らが、被害者や憤慨した信徒の忍耐力の欠如を示唆する意図がなかったとしても。

 ルプニクが、「かつて所属したイエズス会の元上司たちや、自身がイエズス会士である教皇フランシスコを含むバチカン当局者から、並外れて寛大に扱われている」という不満が頻繁に、そしてあらゆる基準で合理的に提起されている。フランシスコはルプニクを私邸に招き、ルプニクの事件の深刻な詳細が公けになった後も、アパレシーダでのマリア会議参加者へのビデオメッセージでルプニクを”小道具”として利用したことがある。

 「「マルコ・ルプニクが告発されている非常に深刻な犯罪について、信頼性のある告発がなされた場合、英国の法律では、その人物は裁判を待つ間、拘置所に勾留されることになっている」と、英国を拠点とする被害者支援団体LOUDfenceの活動家アントニア・ソボッキはCruxに語った。

 「これは『推定有罪』ではない。公衆を保護するための適切な注意義務の履行です… こうした行為で信憑性のある告発を受けた人物を地域社会で自由な状態に置くことは、中立的な行為ではありません。無実の人々を危険に晒すからです」。

 

 イエズス会は2023年、ルプニクを「不服従」を理由に(告発された犯罪への罰ではなく)除名したが、この元イエズス会士は、母国で彼を司祭として受け入れる教区をすぐに見つけた。2020年にはローマ教皇庁の四旬節黙想会で説教した。説教者が受け得る最高の栄誉と広く認められているものだ。バチカンの秘密の調査委員会が密かに「第六戒に反する罪の共犯者を赦免」と判定した後でのことだった。つまり、何らかの不法な性的関係を持った人物に「秘跡的赦免」を与えたのだ。そして、その後、秘密の裁判官たちが秘密裏に破門を宣告し、また秘密裏に解除した。

 イエズス会はルプニクに秘密裏に制限を課したが、彼は公然とそれを無視した。かつての上司たちがそれを強制することを躊躇し、バチカンがこの件全体を秘密にしておきたい、としていると、”正しく”推測したからだ。彼は世界を駆け巡り、講演を行い、テープカットをし、称賛を集めた。

 ルプニクの信じがたいほど陰惨な物語のすべての恐ろしい紆余曲折を語るには一冊の本が必要だ。だがここでは、不名誉な元イエズス会士であるスロベニア人が、教皇フランシスコを含む数人の非常に高位の教会関係者による不可解な決定なしには可能ではなかったにせよ、「ほぼ逃げおおせるところだった」と述べるに留めよう。

*正義が行われるのが遅すぎる

 

 結局、フランシスコ教皇は、自身の「未成年者・弱者保護委員会」からの持続的な圧力と、世界的な激しい怒りに直面して、時効を放棄し、ルプニクに対する訴訟を進めることを決定した。これは2023年のことだった。事件が正式にバチカンに届けられてから4年以上(ローマや各地のイエズス会・バチカン関係者の間で疑惑が囁かれ始めてから数十年)、世間に明るみに出てから、ほぼ1年が経過していた。

 フランシスコ教皇が死去した時点でさえ、バチカンの教理省規律局は、事件を審理する裁判官の選定に苦慮していた。ルプニク裁判の5人の裁判官全員を選任した、とバチカンが発表したのは、ようやく先月、10月13日のことだった。

 被害者や支援者から「レイプ・アート(強姦芸術)」と頻繁に非難されるルプニクの作品の撤去を求める声が、被害者や支援者、スキャンダルに憤る信徒たちから続いている。

 「ルプニクの芸術作品への対応」という狭義の問題から一歩引いて見ると、関係者の間には、財務不正の疑いで告発されたジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチュ枢機卿に対する教皇フランシスコとバチカンの対応と、ルプニクが受けた扱いとの間に著しい不一致があることを指摘する声もある。

 フランシスコ教皇は、正式な起訴がされる前にベッチュ枢機卿をバチカン高官職から辞任させ、枢機卿としての権利を剥奪した。さらにバチカン市国の法律を改正し、同国内の刑事裁判所での裁判を可能にした。裁判でベッチュ枢機卿を有罪とされたが、彼は一貫して無罪を主張しており、現在も判決を不服として控訴中だ。バチカンは、いずれの過程においても裁判官を確保するのに何ら困難はなかったようだ。

 

*教皇は、正義の天秤をどう測ろうとしているのか

 教皇レオ14世は就任以来、週の初めをローマ郊外の別荘で過ごしており、月曜日にバチカンを離れ火曜日の夜に帰還することが多い。彼には考えるべきことが山積している。

 ルプニク事件の未解決問題—教会指導部が虐待と隠蔽の危機に対処できない根深い無力さの縮図と見なされることが多い—は、主にレオの前任者が「司法の天秤に指を挟むこと」を好んだ結果だ。

 外部から見れば、教会の指導者たち(少なくとも近年においては教皇を含む)は、金銭窃盗の疑いで告発された枢機卿を有罪とするためなら天をも動かす覚悟がある一方で、虐待加害者が決して裁かれないよう、足を引っ張るどころか、それ以上のことをいとわないように見える。

 レオ14世も、他のいかなる指導者も、同じ天秤に自らの指を置くことでこの問題を解決することはできない。

 要するに、教皇の記者たちへの答えがニュースになった理由は、ここにある。

 記者の一人、記録のために言えばEWTNニュースのマグダレナ・ウォリンスカ=レイディ―は、このように教皇に質問したのだ—「一部の虐待被害者や支援者たちは、ルプニク神父の芸術作品がバチカンを含む世界中の重要な教会や聖地に展示されていることが、彼らや多くの人々にとってトラウマであり、またスキャンダラスだ、と訴えています… 教会は、こうした芸術作品を覆い隠すか、あるいは撤去してもらいたい、という彼らの要望に、どのように敏感に対応できるでしょうか?」と。

*”ルプニク事件”の性的虐待犠牲者の忍耐は限界に達しつつある

 この質問に、教皇は、「確かに多くの場所で、被害を訴えた人々への配慮が必要だからこそ、(ルプニクの)作品は覆い隠されてきました( その一例がルルドの聖地だ。だが、バチカンを含む他の場所では、ルプニク作品が今も聖域を飾っている)。ウェブサイトからも削除されています」と答えた。これはバチカンのホーム・ページからルプニク作品が静かに消えたことを言っていると解釈される。

 続けて教皇は「新たな裁判が最近始まりました… (裁判官の任命も含めて)司法手続きには長い時間がかかります」と述べ、「始まったばかりのこの裁判が、関係者全員に明確さと正義をもたらすことを願っています」とした。

 ルプニク作品が存在する聖堂や礼拝堂の責任者が作品を覆い隠すか撤去したいと望むなら、それは彼らの判断だ。この一連の騒動がもたらす動揺と不祥事は、被害者だけでなく、多くの人にとって、確かに苛立たしいものだ。

 教皇は『贖いの母』礼拝堂のルプニク作品を覆うよう命じることもできたはずだ。しかし、そうした行為は必然的に、そして極めて当然ながら、注目を集める裁判に影響を与える意図でなされたものと解釈されるだろう。その裁判の結果に対して、彼は公式かつ実質的に中立を保たねばならないのだ。教皇の思いが”純白の雪”のように清らかであったとしても、その行為自体が世論に影響を与え、裁判官の判断力に少なからず影響を及ぼす可能性が高い。

 ルプニク事件において教皇レオが成し得る最も重要なことは、「正義が実行され、それが実行されたと認識されることを保証すること」だ。

 とはいえ、遅れた正義は正義とは言えず、ルプニク事件における正義の実行はすでに長すぎるほど遅れている。無数の聖職者による虐待の被害者たちにとって、忍耐は限界に達しつつある。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年11月10日

☩教皇、ベルギーの聖職者による性的虐待被害者たちと「深い傾聴と、痛み」を伴う対話

VATICAN-POPE-JUBILEE-AUDIENCE

2025年11月9日

・教皇庁の未成年・弱者保護委員会が第二次報告で、日本の司教団に性的虐待対応で「被害者支援」「教区と修道会の連携」など17件の改善勧告・要請

(2025・10.22 カトリック・あい)

 教皇庁未成年・弱者保護委員会が10月16日に世界の教会における聖職者の性的虐待に関する第二回年次報告を発表した。その200ページに及ぶ報告書では、第一部で欧州、アジア、アフリカから最近司教団のバチカン定期訪問があった18か国・地域、男女各1の修道会について、現状、課題、それに基づく勧告がされており、その中に、日本についても6ページわたって報告。 その内容として、現在東京地裁で継続中の神言会に対する、会員司祭(当時)による女性信徒への性的虐待の賠償請求訴訟などを念頭に置いたと思われる勧告も含まれている。

 

 

「女性と子供の人権保護デスク」、「未成年者及び脆弱な成人保護ガイドライン」や「性的虐待被害者・生存者のための祈りと悔い改めの日」はあるが…

 

 それによると、日本の現状について、聖職者などからの性的虐待から未成年・弱者を保護する主要な機関として各教区に「女性と子供の人権保護デスク」が設けられており、「未成年者及び脆弱な成人保護ガイドライン」の制定、毎年の「性的虐待被害者・生存者のための祈りと悔い改めの日」も定められ、日本における『Memorare initiative』注¹ の導入にも関心を示している、としている。

 今後に残された課題・問題として、保護に関する5年ごとのアンケートの完遂、保護担当部門などにおける教皇フランシスコの自発教令『Vos estis lux mundi』第2条 注²の要件の完全な遵守、聖職者養成危機に直面する東京教区が他教区から司祭を受け入れているが、審査プロセスの問題への対処、脆弱な立場にある成人の定義の明確化など保護ガイドラインの改訂、ガイドラインへの行政当局との協力に関する規定の明記、現在は存在しない加害者の管理・治療を行う施設の導入を挙げた。

 さらに、性的虐待被害に対処する経験のある弁護士・法務実務者の教区における深刻な不足など、人的・財政的資源の不足、聖職者および司牧者に対する明文化した行動規範の欠如、聖職者たちの『Vos estis lux mundi』への認識・理解の不足、日本で非常に存在感のある修道会に関して、司教たちは説明責任と監督体制の複雑かつ不明確な力学について懸念を表明したが、修道会の会員による虐待疑惑を巡る司教と修道会の間の効果的な協力の欠如、「女性・児童の人権保護デスク」による「監査ガイドラインの検討」が行われたが検討の範囲は不明確で監査メカニズムが整備されていない—などを指摘した。

 

 

*未成年・弱者保護に関する実態調査の完全実施、司教たちと修道会責任者との連携強化、海外や他教区からの司祭の審査厳格化、全国ガイドラインへの被害者支援や行政当局との連携などの規定追加など勧告

 

 そのうえで、、司教協議会に対し17件の改善勧告・要請を行っている。

 内容は、保護対策に特化した5年ごとの実態調査の完全実施。そして、性的虐待被害への対処で、司教たちと修道会の上級責任者との連携不足があることを前提に、その克服のため、(教会が性的虐待の被害者にとって安全な避難所となれるように支援する活動である)『Memorare initiative』の導入、保護対策における「一つの教会」アプローチのための協力を促進する基盤として「司教と修道者合同委員会」の活用検討、「性的虐待被害者のための祈りと償いの日、各教区が安全確保への取り組み声明を発表する提案の実行を勧告。

関連して、外国人司祭や他教区から来た司祭による性的虐待への対処に問題がある、との認識をもとに、海外から来て日本で活動、あるいは教区間で異動する修道会、教区の聖職者、司牧担当者についての審査手順を厳格化する方向での見直しと公表、教区の青年司牧担当、司祭継続養成担当、および女性・児童の人権保護デスク間の緊密な連携を提起。

 未成年者及び脆弱な成人保護の全国ガイドラインへの、「被害者への支援の提供、行政当局との連携」に関する規定の追加、同ガイドライン実施を監督する委員会の構成員、権限範囲、定款に関する情報の公表、 聖職者及び司牧者に関する行動規範の策定、聖職者向けに『Vos estis lux mundi』の具体的な内容を網羅した啓発活動の実施、教会の保護体制に対し強固な監査メカニズムを構築が必要としている。

 さらに、「賠償」が金銭的損害賠償の提供を超えた幅広い実践を含むことを念頭に、教会における賠償の実践事例について同委員会に報告することを司教協議会に要請している。

*日本における聖職者の性的虐待は少ないと手を抜くべきでない

 最後に、「外部情報源からの調査結果として、日本政府は、児童性的虐待に関する逮捕件数について、2015年117件、2014年150件、2013年103件、2012年112件、2011年96件。2015年度に児童相談所が対応した性的虐待に関する相談件数が1521件であったと報告しているが、国連児童の権利条約市民社会組織連合は、「日本では性的虐待は、欧米よりもはるかに少ないと考えられているが、統計的な証拠はない… 欧米でも以前は同様の見方がされていたが、実際は多数に上っており、このことは日本の性的虐待の件数が実際には、はるかに多い可能性を示唆している」と指摘している、とし、日本の教会が、明らかになった件数が少ないことをもって、誤った安心感を持ち、対応に手を抜いていることについて、間接的に警告している。

*日本の司教団への改善勧告・要請など全文以下の通り

・・・・・・・・・・

【(司教団の説明による)保護に関する概要】

・標準的な5年ごとのアンケート調査は非常に包括的だった。当委員会は、司教協議会が補足的な保護に関する5年ごとのアンケート調査を完遂するという約束を歓迎する。司教協議会は日本における『Memorare initiative』 に関心を示した。司教協議会はユニバーサル・ガイドライン・フレームワークに関心を示し、会議が同フレームワークのパイロットプログラムに参加する意思があることを表明した。

・「女性と子供の人権保護デスク」は、名古屋教区のマイケル・ゴア・松浦司教の指導のもと、国内における保護活動の主要機関である。

・駐日教皇大使フランシスコ・エスカランテ・モリーナ閣下は保護活動に深く関与している。大阪大司教区と東京大司教区には強力な教区保護事務所が設置されている。

・委員会は、現地教会の保護活動における指導的役割を果たす現地司教たちに感謝するとともに、これらの教区事務所における特に優れた実践例(24時間通報電話の設置、通報受付における信徒専門家との連携など)を指摘する。

・全国ガイドライン文書「未成年者及び脆弱な成人保護ガイドライン」は2021年に発効した。委員会は、申し立てへの対応及び加害者管理に関する特に強固な手順を特に評価する。特筆すべきは、この文書が教皇フランシスコの自発教令『Vos estis lux mundi(あなたがたは世の光)』² に定められた更新された保護関連規定を具体的に参照している点である。委員会はまた、新ガイドライン実施状況を監視する委員会の設置を評価する。

・司教協議会は青少年司牧部門を設置している。多くの教区で青少年育成が優先課題として確立されている。司教協議会は司祭継続養成部門も有する。特に優れた実践例として、司教協議会が毎年開催する「性的虐待被害者・生存者のための祈りと悔い改めの日」が挙げられる。この祈りと悔い改めの日については、司教協議会ウェブサイトのホームページでも広く周知されている。

・さらに司教団は、「性的虐待被害者のための祈りと悔い改めの日」において、各教区が保護への取り組みに関する声明を発表することを提案した。日本カトリック正義平和委員会は、地方教会におけるジェンダー不平等とLGBTQ差別に対処するための具体的な取り組みを検討している。

・委員会はまた、司教協議会が「人権アプローチによる部落差別撤廃委員会」を通じて行っている称賛に値する反差別活動にも言及している。委員会は、ジェンダー不平等、反LGBTQ差別、反部落差別といった問題が、保護対策において重要な意味を持つことを指摘している。

・2022年8月20日、教会法典第6編を改正する使徒憲章『Pascite gregem Dei(神の群れを養いなさい)』の日本語訳およびその後の公表。

・委員会はこれを良き実践例として強調し、この文書を現地教会が利用可能にした。神学生向け研修コースが設けられており、カリキュラムには人間の尊厳、司祭の性との関わり、司祭の牧会活動における期待などが含まれる。

・2019年「聖職者・修道者による未成年者への性的虐待への対応に関する司教調査」。同会議は各教区に対し、児童保護に関する取り組み及び報告された虐待疑惑について、年次内部報告書を作成するよう要請している。

・・・・・・・・

 *「カトリック・あい」注

 1:「Memorare initiative」は、カトリック教会が性的虐待の被害者にとって安全な避難所となれるように支援する2023年にルワンダで開始された活動。各教区の文脈に合わせた支援を提供し、リソースの有無にかかわらず、すべての人を保護するという教会の神聖な義務を果たすことを目指す。

 2:『Vos estis lux mundi』は教皇フランシスコの自発教令の形をとった使徒的書簡。「聖職者などによる未成年者に対する性的虐待との戦い」に努められた教皇フランシスコは、2019年2月に未成年者・弱者保護に関する世界各国・地域の司教協議会会長による会合を開かれ、真実と透明性をもって行動する教会の意志を確認。それをもとにこの自発教令を発出、被害者たちが虐待や暴力を届け出るための新しい手続きを定め、司教や修道会の長上らにとるべき態度を周知することに努められた。

・・・・・・・・

【今後への課題】

・当委員会は、司教協議会が保護対策に関する5年ごとのアンケート調査を完全に行う必要がなおもあることを指摘する。司教協議会は全教区に保護対策デスクを設置していると報告しているが、特に現地教会が直面する重大な課題を考慮すると、これらの組織が『Vos estis lux mundi』第2条・注₃・の要件の完全な遵守はなおも課題として残っている。

・東京大司教区は聖職者養成危機に直面しており、教区所属変更を希望する司祭を受け入れている。これにより、所属変更を希望する聖職者に対する適切な審査プロセスの問題が生じている。

・全国ガイドラインは良好な定義を提供しているが、特に脆弱な立場の成人に関わる事例が増加していることを踏まえると、脆弱な立場にある成人の定義が明確にされているのか、疑問が残る。

・司教協議会は、より明確な事例管理手順を含めるため、保護ガイドラインの更新が必要であることを認めている。

・多くの教区では信徒向け養成講座を開講しているが、これらの講座に安全対策に関する規定が含まれているかは不明である。

・当委員会は、非日本人移民が奉仕活動に参加・主導する際の、異なる複雑な文化的力学を指摘する。

・ある教会管区では、被害者がカウンセリングやセラピーを受ける際の困難を明示的に報告している。

・2021年に決められた未成年者及び脆弱な成人保護の全国ガイドラインには、被害者への伴走支援に関する規定が不十分である。司教協議会は日本の法令に基づいて行政当局と全面的に協力する姿勢を表明しているが、当委員会は、この全国ガイドラインに行政当局との協力に関する正式な規定が欠如していると判断する。

・日本には多くの外国人司祭・信徒が存在するため、全ての保護関連資料において言語的課題の克服が必要である。沖縄には約2万5000名の米軍兵士が駐留しており、この地域における牧会活動に複雑性を加えている。当委員会は、虐待疑惑への対応における司教協議会の情報発信基準を認識しつつも、虐待問題に関する効果的かつ文化的配慮のある広報活動を実施するための具体的な手順の欠如を指摘する。

・加害者の管理・治療を行う施設が存在しないため、加害者を他国へ治療目的で送致する際、言語的課題が生じている。

・当委員会は、教区における訓練を受けた弁護士・法務実務者の深刻な不足、および教区裁判所が設置されていない複数の教区があると判断する。被害者中心の堅固なアプローチで虐待事例に対処する人的資源は限られている。日本の多くの教区は小規模で、財政的資源が極めて乏しい。

・当委員会は、聖職者および司牧者に対する明文化した行動規範が欠如しているを指摘する。司教たちは、聖職者たちが教皇フランシスコの教導権の一部を認識していないことについて懸念を表明した。これは聖職者たちが『Vos estis lux mundi』をどこまで認識・理解しているのかについて疑問を投げかけるものである。

・司教たちは、日本で非常に存在感のある多くの修道会に関して、説明責任と監督体制の複雑かつ不明確な力学について懸念を表明した。当委員会は、修道会の会員による虐待疑惑を巡る司教と修道会の間の効果的な協力の欠如について懸念を表明する。

・委員会は、2021年10月に「女性・児童の人権保護デスク」による「監査ガイドラインの検討」が行われたことを確認した。この検討の範囲は不明確であり、監査メカニズムが整備されている兆候はない

・司教協議会は、虐待疑惑に関する年次データ収集について教区に送付する質問票の更新が必要であると表明した。委員会は、この必要性に対処する司教協議会の取り組みを歓迎する。

 

*「カトリック・あい」注

 3:Vos estis lux mund第2条では、報告の受理及びデータ保護に関して、「各教区は、単独または共同で、Vos estis lux mundi発効から1年以内に、報告提出のための公的・恒久的・容易にアクセス可能なシステムを一つ以上設置しなければならない」などと定められている。

 

【勧告】

1.司教らは、保護対策に特化した5年ごとのアンケート調査を速やかに完遂すべきである。

2.司教協議会は、修道会の上級責任者と緊密に連携し、(教会が性的虐待の被害者にとって安全な避難所となれるように支援する活動である)『Memorare initiative』を日本において採用すべきである。委員会は、保護対策における「一つの教会」アプローチのための協力を促進するプラットフォームとして、司教協議会内の「司教と修道者合同委員会」の活用を検討することを勧告する。『Memorare initiative』が特に、被害者への伴走支援という現地教会の取り組み強化に焦点を当てることを推奨する。

3.司教たちは、性的虐待被害者のための祈りと償いの日に、「各教区が安全確保への取り組み声明を発表する」という提案を実行すべきである。委員会は本イニシアチブへの伴走支援を継続する用意がある。

4.当委員会は、地方教会の保護活動における協働に向け、当委員会、司教協議会、教皇大使館による共同協議を推奨する。

5.当委員会は、日本国内の教会で活動する国際的聖職者(修道会・教区双方)及び司牧担当者の厳格な審査手順の見直しと公表を推奨する。教区間異動・転任時にも同手順を適用すべきである。

6.異なる教区からのメンバー間の情報交換と交流促進を目的とするカトリック青年連絡協議会は、保護政策策定への青年の貢献を求めるために活用されるべきである。

7.当委員会は、青年司牧担当、司祭継続養成担当、および女性・児童の人権保護デスク間の緊密な連携を推奨する。

8.当委員会は、2019年の教皇フランシスコの日本訪問のテーマが「すべての命を守る」であったことに留意し、訪問中の教皇の教えが、現地教会の保護活動にどのように霊感を与え、活気づけるかについて、司教協議会が考察することを推奨する。

9.信徒向けのすべての養成課程には、保護に関する基本単位を含めるべきである。

10. 司教協議会は「未成年者及び脆弱な成人保護の全国ガイドライン」に、被害者への支援の提供及び行政当局との連携に関する追加規定を含めることで改訂すべきである。当委員会は本ガイドライン見直しへの協力を継続する用意がある。

11. 同ガイドライン実施を監督する委員会の構成員、権限範囲、定款に関する情報を、司教団は公表すべきである。

12. 当委員会は、虐待対応において効果的かつ文化的配慮のあるコミュニケーション手順を策定することを推奨する。これは司教協議会が既に有するコミュニケーション基準を実質的に発展させるものであるべきである。委員会は本取り組みへの協力を継続する用意がある。

13. 聖職者及び司牧者に関する行動規範を策定すべきである。

14. 当委員会は、聖職者向けに『Vos estis lux mundi』の具体的な内容を網羅した啓発活動の実施を推奨する。

15. 司教協議会は「2022年日本における常任助祭養成実態調査」及び「日本教会司祭生涯研修プログラム」の結果を当委員会と共有し、共同研究と考察を行うべきである。

16. 教会の保護体制に対し、強固な監査メカニズムを構築すべきである。当委員会は本取り組みの伴走を継続する用意がある。

17.当委員会は、教会における賠償の実践事例について、司教協議会側からの提供を謹んでお願いする。当委員会による「回心的正義」の研究は、賠償の概念が金銭的損害賠償の提供を超えた幅広い実践を含むことを強調している。当委員会は、教会内における性的虐待の被害者への加害行為の修復を、地方教会がどのように伴走できるかについて、日本カトリック司教協議会が示した知恵を歓迎する。これは、委員会が全世界の教会を対象に継続している研究を補完するものである。

 

【外部情報源からの調査結果】

委員会は、児童の権利委員会による日本の定期審査(前回審査は2019年)から以下の関連調査結果を指摘する。

・ 日本政府は、児童性的虐待に関する逮捕件数について、2015年117件、2014年150件、2013年103件、2012年112件、2011年96件と報告している。また、2015年度に児童相談所が対応した性的虐待に関する相談件数が1521件であったと報告している。

・国連児童の権利条約市民社会組織連合(市民社会組織)は、「日本では性的虐待はごくわずかであると推定されており、欧米よりもはるかに少ないと考えられているが、統計的な証拠はなく、欧米でも数十年前は『ごくわずかだ』と信じられていた。これは日本の性的虐待の実態が実際にははるかに多く、少なくとも数倍は多い可能性を示唆している」と指摘している。

・児童の権利に関する条約総合研究所(市民団体)は次のように述べている。「2016/17年度に児童相談所に報告された児童性的虐待事例は1622件であったが、児童性的虐待を理由とした逮捕件数は2016年にわずか162件に留まった…児童性的虐待が隠蔽され続ける理由の一つは、適切な手法(法医学的面接)で被害児童の聴取を行える専門家の不足にある」

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

*英語原文は以下の通り。

【ATHOLIC BISHOP’S CONFERENCE OF JAPAN Profile Japan is a nation with 15 dioceses. It relies on the Catholic Bishops’ Conference of Japan as its episcopal conference. The Commission met with the Conference on 11 April 2024】

 

*Recommendations

1. The bishops should promptly complete the safeguarding-specific quinquennial questionnaire.

2. The Conference should adopt the Memorare Initiative in Japan, in close collaboration with the men and women religious major superiors. The Commission recommends exploring the Conference’s “Combined Committee for Bishops and Religious” as a platform to promote this collaboration for a One Church approach to safeguarding. The Commission recommends that the Memorare Initiative particularly focus on enhancing the local Church’s offer of accompaniment to victims/survivors.
3. The bishops should implement their proposal for each diocese to publish a statement of their safeguarding commitment on the Day of Prayer and Reparation for Victims of Sexual Abuse. The Commission remains available to accompany this initiative.
4. The Commission recommends a joint conversation among the Commission, the Conference, and the Apostolic Nunciature to collaborate on the local Church’s safeguarding ministry.5. The Commission recommends the review and publication of the procedures in place for scrupulously vetting international clergy (both religious and diocesan) and pastoral agents working in the Church in Japan. The same procedures should apply for interdiocesan assignments or transfers.
6. The Liaison Council of Catholic Youth, which aims to exchange information and to facilitate interaction among its members from the different dioceses, should be leveraged to solicit youth contributions to safeguarding policy development.
7. The Commission recommends close collaboration between the Section of the Pastoral Care of Youth, the Section for the Ongoing Formation of Priests, and the Protection of the Human Rights of Women and Children Desk.
8. The Commission notes that “Protect All Life” was the theme of Pope Francis’s apostolic visit to Japan in 2019, and recommends that the Conference reflect on how Pope Francis’s teachings during his visit might inspire and animate the local Church’s safeguarding ministry.
9. All formation courses for lay people should include safeguarding modules.
10. The national guidelines should be updated to include further provisions for the offer of victim/survivor accompaniment services and collaboration with the civil authorities. The Commission remains available to accompany this guideline review.
11. The Conference should publish information regarding the membership, scope, and statutes of the new committee established to oversee the implementation of the new guidelines.
12. The Commission recommends the development of an effective and culturally responsive communication protocol in addressing abuse, one that can meaningfully build on the Conference’s existing criteria for communications. The Commission remains available to accompany this initiative.
13. A code of conduct should be developed to formalize behavioural expectations for the clergy and pastoral agents.
14. The Commission recommends a sensitisation campaign for the clergy covering the specifics of Vos estis lux mundi. dence, and in Europe and the U.S. the number was believed to be very low some tens of years ago. It could imply that the actual number of sexual abuses in Japan may well be much larger, several times larger at least”. The General Research Institute of the Convention on the Rights of the Child — Japan (civil society organisation) noted, “While 1,622 cases of child sexual abuse were reported to child guidance centres in 2016/17, the number of arrests on the ground of child sexual abuse was limited to 162 in 2016… One of the reasons why sexual abuse of children remains hidden is the lack of professionals who can conduct interviews of child victims in appropriate manners (forensic interviewing)”.
15. The Conference should share with the Commission the results of the “2022 Survey on the Formation of Permanent Deacons in Japan” and the “Lifelong Training Programme for Priests in the Churches of Japan”, for joint study and reflection.
16. A robust audit mechanism should be developed for the local Church’s safeguarding framework. The Commission remains available to accompany this initiative.
17. The Commission kindly requests examples from the Conference on the local Church’s experiences with reparations. The Commission’s study of Conversional Justice emphasises the broad range of practices included in the concept of reparations, beyond the provision of financial damages. The Commission welcomes the Conference’s wisdom on how the local Church can accompany the repair of harm caused to victims/survivors of sexual abuse in the Church, to supplement the Commission’s ongoing study across the Universal Church.

Findings from external sources

・The Commission notes the following relevant findings from the Committee on the Rights of the Child’s periodic review of Japan (last reviewed in 2019):

The Government of Japan reported 117 arrests in 2015 for child sexual abuse; 150 arrests in 2014; 103 arrests in 2013; 112 arrests in 2012; and 96 arrests in 2011.

The Government of Japan reported 1,521 consultations on sexual abuse handled by child consultation centres in fiscal year 2015.

The Citizens and NGOs Association for the U.N. Convention on the Rights of the Child Japan (civil society organisation) noted, “Sexual abuse has been estimated to be very low in Japan, and is believed to be much lower than in Europe and the U.S. However, there is not any statistical evidence, and in Europe and the U.S. the number was believed to be very low some tens of years ago. It could imply that the actual number of sexual abuses in Japan may well be much larger, several times larger at least”.

The General Research Institute of the Convention on the Rights of the Child — Japan (civil society organisation) noted, “While 1,622 cases of child sexual abuse were reported to child guidance centres in 2016/17, the number of arrests on the ground of child sexual abuse was limited to 162 in 2016… One of the reasons why sexual abuse of children remains hidden is the lack of professionals who can conduct interviews of child victims in appropriate manners (forensic interviewing)”.

2025年10月22日

・「性的虐待被害者支援の責任を果たせなかった者への対応方法にできる限りのことを行う」教皇、聖職者による虐待被害者支援の国際団体代表に約束

 (2025.10.21 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ発 – 教皇レオ14世が20日、バチカンで聖職者による性的虐待被害者を支援する国際団体「聖職者による虐待終結(ECA)」の代表たちとお会いになった。虐待被害関係団体と公式にお会いになるのは5月に教皇に就任されて初めてだ。

 1時間以上に及んだ面談には、自身が聖職者による性的虐待被害者でありECA理事長のカナダ人、ジェマ・ヒッキー氏をはじめ、ウガンダ出身のECA理事副会長ジャネット・アグティ、米国出身のECA共同創設者兼理事ティム・ロー、 ドイツ出身のECA共同創設者兼理事マティアス・カッシュ、カナダ出身のECA共同創設者兼理事エブリン・コルクマズ、アルゼンチン出身のECA理事セルヒオ・サリナス、ペルー出身のECA共同創設者兼理事ペドロ・サリナスの各氏が参加した。

 彼らは面談冒頭でECAを代表して声明を読み上げ、「怒りではなく希望を持ってここに来ました。説明責任、癒やし、持続的な変化への希望です… 私たちの使命は被害者を支え、脆弱な立場にある者を擁護し、偉大な善を行う能力を持つ組織に説明責任を果たさせることです」と述べた。

 その後、各自の体験談を共有し、具体的な問題点について言及した。その中で、最近公表された教皇庁未成年者保護委員会(PCPM)の年次報告書も取り上げられ、教会法典に普遍的なレベルで「ゼロ・トレランス・ルール」を明文化することを求める意見も出た。

 面談後の会見でヒッキー氏は、教皇に面談を求めた理由について、「私たちは真実、正義、癒しへ向けて共に歩む態勢を整えた架け橋として教皇に面会を求めた。性的被害をめぐって教会内部が大きく分断されているからこそ、私たちがすべきことは腰を据えて対話することだからです」と説明。教皇の印象について「非常にオープンな会話ができた。温かい人柄で、耳を傾け、ユーモアのセンスがあり、非常に謙虚な方だった」と述べた。

 またカッシュ氏は「教皇は、私たちに時間を割いてくださり、一人ひとりの発言を注意深く聴いてくださった… 世界規模の組織を統括する人物にとって1時間は決して短くありません。今回の面談で、教皇が『集まって話し合うことが次の歴史的ステップ』だ認めてくださったことで、開かれた対話の雰囲気が醸成された」と説明した。

 また、同氏によると、教皇は今後も連絡を保ち「対話の開かれた経路」を維持する意向を示され、「教会内での児童性的虐待の癒やし、被害者の支援、そして責任を果たせなかった者への責任追及の方法を見出すために、できる限りのことを行う」と約束された、という。

 同氏は「教皇は現在、これらの問題をどう扱うべきか模索している段階にある。(聖職者による性的虐待問題は正解の教会に及び)その規模が非常に大きいからです… 教皇はアウグスチノ会総長時代、ペルーだけでなくアフリカや世界の多くの地域で被害者の声に耳を傾けてきた豊富な経験をお持ちであり、今回の面談で希望を感じました。できることを尽くそうとする姿を見ました」と語る一方、「教皇は自らのペースで前進しておられます。それは、非常に緩やかであり、被害者にとっては耐えることが難しいかもしれませんが、組織改革には時間がかかるのです」とも述べた。

 ECA共同創設者のコルクマズ氏は、カナダのクリー族の先住民寄宿学校で性的虐待被害に遭った経験を持つが、「聖職者による虐待との闘いには、まだ長い道のりが必要」と認めつつ、「教皇が被害者との対話や教会の制度改善に真剣に取り組んでおられる印象を持った… 教皇に私たちの声が届いたと感じました」と語った。

 そして、カナダにおける虐待被害者への癒しと賠償のプロセス、2022年に同国を訪問した教皇フランシスコが寄宿学校制度における教会の制度的役割とそれに伴う虐待について謝罪した経緯について述べ、「教皇は和解の道を歩み続けられるでしょう。非常に謙虚な方で、私たちの問題も、ECA(カナダ先住民協会)の使命も理解してくださった。先住民問題について、ようやく私の声が届いたと感じまたし」と述べた。

 ウガンダのアグティ氏は、「面談で、教皇は、教会内には物事を認識する様々な方法がある、とされ、文化的差異が聖職者による虐待問題の対応に影響を与えることを認められた」と指摘。

 「文化が特定の施策実施の障壁となり得ることは、私たち皆が承知していますが、こうした状況は時間こそかかるものの、変革と実施が可能だと理解しています。教皇は、アフリカにも虐待が存在することを認識しておられる。教皇はアフリカで虐待被害者と直接お会いになった経験から、『アフリカには性的虐待は存在しない』と言う一部の教会関係者の声が嘘だとご存じです」とし、「今回の教皇との面談は、私たちにとって大きな一歩であり、歴史的瞬間だと確信しています」と語った。

 米国のロウ氏は、今回の面談で、教皇に「ゼロ・トレランス(性的虐待者を容赦無く罰する)ルール」の世界的な実施の必要性を訴えたのに対し、教皇は「”ただペンを取り出して署名する”わけにはいきませんが、取り組むべき課題だと認識しています」と述べられ、団体側は「この議論が行われる場に参加したい、対話の一員でありたい」と希望した、という。

 同氏は、 「教皇は『このような普遍的規範の実施には、大きな抵抗がある』ことを認めつつ、導入の必要性に理解をされたものの、『実現には時間がかかるでしょう』とも語られました」と語ったと述べつつ、「信頼性のある聖的虐待の告発は、時期を問わず、必ず司祭や高位聖職者を職務から解く結果となるべきです… ゼロトレランスの公的ルールが存在しないこと、そして(教皇の口から)『(実現に教会内部からの)抵抗がある』と言われたのはショックですが、教皇自身が導入に抵抗しているわけではありません」と言明した。

 今後の対応について、ヒッキー氏はECAが今回の教皇との面談のフォローアップとして、「ゼロ・トレランス・ルール」に関する提案書や教会の安全対策方針に関するその他の文書を教皇に送付する考えを明らかにした。「面談は前向きな雰囲気で終了し、教皇は、対話の継続を約束された」とし、教皇との年次会合を通じて対話を続ける希望を表明した。

 アグティ氏も今回の面談を「希望に満ちたもの」とし、「教皇の傾聴の姿勢と、ご自身が被害者たちと共に歩んできたという認識を持たれているのは、問題の本質を理解しおられる証左す」と評価した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年10月22日

・教皇庁未成年者・弱者保護委員会第2回年次報告概要

教皇庁未成年者・弱者保護委員会第2回年次報告-「回心の正義」の柱に焦点を当てて:賠償に関する調査・分析-概要(2025.10.16)

 教皇フランシスコは在位中、教会が性的虐待という惨劇に断固として対応するよう求め続けてきた。これは、悪から離れ、傷ついた者たちの癒しへと向かう継続的な回心という教会の使命に合致するものである。
 昨年のパイロット版年次報告書において、委員会は教会が歩む本質的な回心の道程を伴走する司牧的・神学的枠組みとして「回心の正義」を採用したことを詳述した。パイロット版年次報告書で説明されている通り、回心の正義は以下の四つの相互に関連する柱から構成される:

 委員会は年次報告書の各版において、これらの様々な柱を継続的かつ輪番制で研究することを約束した。

 本年次報告書は、委員会による賠償に関する詳細な研究とその牧会的・神学的基盤(すなわち、被害者/生存者の癒しと修復の旅路を伴走する教会の責任として理解されるもの)の成果を提示する。

 本第二回年次報告書は、償いとその牧会的・神学的基盤に関する委員会の詳細な研究結果を提示する。償いは、被害者/生存者の癒しと修復の旅路を伴走する教会の責任として理解される。本研究は、現地教会における既存の償い実践と包括的償いを実現する上での持続的課題から知見を集めた。

 委員会年次報告書被害者/生存者焦点グループは、被害者/生存者からの直接的な意見を通じて、本研究に不可欠な洞察をもたらした。本研究の結果は、金銭的補償の部分的かつ往々にして不十分な役割を超え、教会が償いの重要な手段としてさらに取り入れなければならない具体的な実践を特定している。
委員会は、償いの実践を継続的かつ輪番制で研究することを約束した。本第二回年次報告書は、償いの詳細な研究とその牧会的・神学的基盤に関する委員会の

 グループは、被害者/生存者からの直接的な意見を取り入れながら、本調査に不可欠な洞察をもたらしました。
本調査の結果は、包括的な賠償アプローチにおいて金銭的補償が果たす部分的で往々にして不十分な役割を超え、教会が賠償の重要な手段としてさらに積極的に取り入れるべき具体的な実践を特定している。例えば、制度改革。被害者が教会当局に聴かれ、信じられるための「声を歓迎する聴取センター」の設置保証、専門的な心理的支援サービスの提供、公的な承認と謝罪、被害者との積極的かつ透明なコミュニケーションによる事件の進捗状況の適時な共有、教会の保護方針・手順策定への被害者の参画、被害者からの学び:委員会が継続的に拡大する傾聴の奉仕など。

 委員会は、虐待の被害者/生存者から直接傾聴する中で得た10年以上にわたる知見の恩恵を受けてきた。被害者/生存者中心のアプローチに沿い、委員会は年次報告書被害者/生存者焦点グループ(ARフォーカスグループ)を設立し、第1回年次報告書において1地域でその手法を試験的に導入した。

 同時に委員会は、パイロット実施から得た知見に基づき、ARフォーカスグループ手法の拡大に取り組むことを約束しました。この約束を忠実に守り、委員会は第2回年次報告書においてARフォーカスグループ手法を全4地域に拡大した。委員会は、ARフォーカスグループ参加者として惜しみなく貢献してくださった被害者の皆様に深く感謝している。

 彼らの視点と意見は、年次報告書の「対話的正義」に関する議論の直後に設けられた専用セクションにまとめられている。彼らが共有した経験は、本年次報告書全体、特に特定の教会組織に対する委員会の勧告に関する分析に直接反映されている。

 委員会は、シノダルの段階を超えて、今後の年次報告書の作成過程の様々な段階において、被害者の貢献をさらに拡大する、という継続的な取り組みを改めて表明する。

 

主な所見と観察:普遍的教会の保護活動への同行

 本年次報告書は、委員会が主要な所見と観察結果を体系的に要約し、教皇、被害者、現地教会、そして神の民全体と共有する機会を再び提供する。

 今年の主要な所見と観察事項は以下の通り:

 委員会による専門研究に基づく、教会内虐待被害者/生存者への賠償に関する実践的指針の要素。この手引書は、教会が被害者/生存者に対する基本的義務を果たすためにさらに取り組むべき6つの領域に知見を集約している:(1) 受け入れ、傾聴、ケア、(2) コミュニケーション:公的・私的謝罪、(3) 精神的・心理療法的支援、(4) 経済的支援、(5) 制度的・規律的改革、(6) 教会共同体における保護活動。

 虐待や過失事例における教会指導者・職員の辞任・解任に関する簡素化された手順の重要性。委員会は、パイロット版年次報告書からの知見と、賠償に関する研究によってさらに裏付けられた結果に基づき、虐待や過失事例に関連する決定がなされた場合、辞任・解任の理由を公に伝えることの重要性を強調する。このような手順及び関連するあらゆる情報伝達は、プライバシーと無罪推定に関する原則を適切に尊重するものである。

 人権、虐待防止、保護を専門とするカトリック系大学研究センターを含む学術ネットワークを構築し、報告書対象国・地域における関連データを収集することの価値。パイロット年次報告書からの知見をさらに発展させ、委員会は、このようなネットワークが年次報告書の方法論における情報源の多様化に寄与すると指摘する。

 現地教会の保護活動に関する体系的かつ義務的な報告メカニズム構築の重要性。教会は独自の組織構造に基づき、長年にわたり様々な活動に関する情報を文書化・収集する能力を有してきた。委員会は、教会が定期報告の強力な伝統を活用し、保護方針とその実施状況を含めることで、透明性と説明責任の向上を促進できる能力を指摘する。

 現地教会と共に歩む使徒座大使の果たす重要な役割。委員会は、世界中の聖座外交団との緊密な連携の重要性を認識している。同外交団は、現地教会における保護活動への奨励・支援・同行において独自の立場にある。
 

年次報告書の構成

 年次報告書の各セクションでは、以下の内容を提示することで複数の教会組織を分析する:1. 詳細な概要 2. 保護活動の概観 3. 委員会による保護課題への批判的所見 4. 委員会による提言

 年次報告書の各段階では、記載された教会機関それぞれに対し、協議的かつ実践的なアプローチを採用している。対話的正義に則り、本年次報告書対象の教会組織には積極的な参加が求められます。委員会は、この第二回年次報告書作成プロセスに真摯に取り組んだ全ての教会組織に感謝する。その関与は、様々な司教協議会、修道会、教皇庁部局、信徒団体にまたがる共通の保護活動への意義ある献身を示した。

 

第1章:焦点となる地方教会

 

 教皇庁の安定した機関として、委員会は地方教会や修道会の保護活動に同行する独自の立場にある。委員会はその同行の使命を、主に三つの経路を通じて継続的に遂行しています:(1) 標準的なアド・リミナ訪問プロセス、(2) 特定の司教協議会または修道会からの積極的な要請、(3) 委員会の地域グループからの特別要請。
 

 第1章の目的は、地方教会および修道会における保護活動と課題、ならびに委員会によるその後の提言を報告することである。第1節は、地方教会・修道会との間で、保護をめぐる持続的かつ継続的な対話、教育、優良事例の共有、連帯の動員を図るためのツールとして機能する。

 本年次報告書では、第1節の方法論に二つの主な進展が含まれている。第一に、対象国ごとに、委員会は国連児童の権利委員会の報告メカニズムからの所見(市民社会組織によるシャドーレポートを含む)を提示する。委員会は、当該国内の現地教会における保護活動に関連するあらゆるデータを精査し記録する。これは、教会当局から提出されたデータを相互参照し、文脈化・検証するための強力な外部データセットとなる。

 次に、シノダル段階において、委員会は司教協議会および修道会に対し、各組織の実情を提示した草案の検討とコメントを体系的に要請しています。この手法はさらに拡充され、関連する現地教会に駐在する教皇大使にもシノダル段階での並行コメント提供を要請するようになった。これにより、現地教会指導者から提出されたデータに対する追加的な検証メカニズムが提供されている。。

本年次報告書で対象とする修道会は以下の通り:
• 聖ガブリエル・モンフォール会(男子)
• アフリカの聖母宣教修道女会(女子)

 

第2章:大陸各地域における教会の保護活動

 委員会が地域教会における保護活動に密接に関与していることは地域グループを通じて一貫して示されている。委員会のメンバーは出身国別に地域グループに編成されている。
メンバー及び地域スタッフが世界各地で活動していることから委員会は常に、教会の主要な地域保護専門家からの分析を収集している。

 第2章の目的は、地域保護の実情に関する専門知識と知見に基づき、委員会地域グループによる第一線の分析を提示することにある。特に、委員会が現地レベルで被害者/生存者と関わる活動から得られた知見が反映されている。

 本第2回年次報告書における賠償に関する調査・分析は、第2章で特に顕著に示されている。実際、委員会は各地域における教会内の賠償に関連する既存の実践と課題の幅広い範囲を提示している。

 アメリカ大陸、ヨーロッパ、オセアニアの教会の一部は賠償への重要な取り組みを示しているが、金銭的補償への過度の依存は被害者/生存者に対する修復と癒やしの包括的な理解を妨げている。

 教皇庁未成年者保護委員会
 本年次報告書において、委員会は以下の事項に関する分析と提言を提示する
 2024年度報告期間中にアド・リミナ訪問を行った以下の司教協議会:
• イタリア(地域別内訳を含む)• ガボン• 日本• 赤道ギニア• エチオピア• ギニア(コナクリ)• ボスニア・ヘルツェゴビナ• ポルトガル• スロバキア• マルタ• 韓国• モザンビーク• モザンビーク• レソト• ナミビア
• 北アフリカ司教協議会(アルジェリア、モロッコ、西サハラ、リビア、チュニジア)• マリ• ケニア• ギリシャ

 中南米、アフリカ、アジアの多くの地域では、被害者・生存者への支援に充てる十分な専用資源が依然として不足している。

 最後に、各地域の様々な地方教会から、償いのための示唆に富む実践例が生まれている。トンガの伝統的な共同体による癒しの実践「フルイフィ」、米国における被害者・支援サービスの詳細な年次報告、ケニア・マラウイ・ガーナで進行中の保護ガイドライン見直しプロセス、そしてイタリア・ボルツァーノ=ブレッサノーネ教区による注目すべき真実を語る報告書『Il coraggio di guardare(見つめる勇気)』などが挙げられる。

 

第3章:地方教会への奉仕におけるローマ教皇庁の保護政策と手続き

 ペトロの務めへの奉仕において、委員会は「政府全体」アプローチを推進するため、ローマ教皇庁の様々な保護関連権限を検討する。委員会は特に、保護に関連する聖座の政策、手続き、管轄権に関する理解と透明性の向上を目指す。

 第3節では、教会生活における各部署の固有の権限に基づき、委員会が特定の教理省の保護活動への関与を明示する。
本第2回年次報告書では、福音化省(初伝道・新個別教会部門)の分析を含みます。同部門は宣教地域における地方教会支援において極めて重要な機能を果たしており、その統治と保護活動の監督も含まれる。その管轄下にある地方教会は約1,200の教区に及ぶ。
 

 委員会は同部局の保護活動への強い取り組みを確認し、年次報告書作成プロセスへの積極的な関与を歓迎する。委員会は本年次報告書に含まれる提言の実施について、同部局との協力を期待している。

 

第4章:社会における教会の保護活動
 

 年次報告書の各版において、第4章は広範な社会の人々に届く教会の多様な側面を探求する。本章では、委員会は教会の社会奉仕活動(しばしば子どもや脆弱な立場の成人の権利擁護を担う)に焦点を当てると同時に、それらの活動実施における適切な保護基準の確保の重要性を強調する。

 本年次報告書において委員会は、使徒職の特定の側面を推進するために協力する信徒の公式かつ公認の団体である信徒協会の研究を開始する。聖ヨハネ・パウロ二世は『信徒キリスト者』使徒的勧告において、「『文化的』効果は、個人単独によるよりもむしろ、 個人を『社会的存在』として、すなわち集団・共同体・団体・運動の一員として活動させることによって達成される。このような働きこそが、周囲や社会を変革する源であり原動力となる…」と述べている(29項、太字は筆者)。
 使徒憲章『福音宣教』によれば、これらの信徒団体は信徒・家族・生命省の管轄下にある。これに基づき、委員会は信徒・家族・生命省がこれらの信徒団体の保護活動面を支援するためのパイロット手法を開発した。

 本年次報告書は、そのパイロット手法と、一つの信徒団体「マリアの業―フォコラーレ運動」における初期実施事例を提示する。

 委員会は、フォコラーレ運動が最近実施した重要な保護改革を歓迎する。具体的な勧告を指摘しつつ、委員会は特に優れた実践例として以下を強調する:フォコラーレ運動内の虐待事例対応のための独立中央委員会の設置、児童及び脆弱な成人に対する性的虐待に関するコミュニケーション方針、性的虐待事例における支援及び金銭的賠償に関するガイドライン。

メモラーレ・イニシアチブ

 委員会は、グローバル・サウス地域の現地教会における保護能力構築イニシアチブとして、被害者/生存者向けメモラーレ・イニシアチブの拡大を継続している。

 現在、委員会は世界各国の現地メモラーレ・イニシアチブ向けに20件の協定を締結しており、さらに12件が交渉中である。

 

財務報告
 

 委員会は毎年、活動内容と支援者からの支援状況に関する簡潔な財務報告を提出しています。2024年度報告期間における委員会の財務報告は、本第2回年次報告書の付録に掲載されている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年10月18日

(評論)バチカンの報告書は、聖職者による性的虐待被害者の癒やしに賠償と加害者への具体的な制裁が必要としているが…(Crux)

(2025.10.16 Crux  By Nicole WinfieldAssociated Press)

   ローマ発―教皇庁未成年・弱者保護委員会が、15日発表した賠償問題を主題とする第2回年次報告書で、カトリック教会には聖職者による性的虐待被害者の癒しを支援する「道義的義務」があるとし、「金銭的賠償と加害者及び共犯者への制裁」が不可欠な救済策だと指摘した。

 委員会が二回目の年次報告書で賠償問題に焦点を当てたのは、これがカトリック教会にとってしばしば敏感な話題であり、聖職者階層に課される財政的・評判的・法的影響を考慮すれば、当然だ。そして、数十人の被害者からの意見を踏まえて作成された報告書は、被害者が虐待のトラウマから回復するために必要な治療やその他の支援を提供するには金銭的和解が不可欠、と強調した。

 さらに、報告書は、「教会が被害者、より広くは教会共同体、そして神に対して負う負債は、はるかに大きい」と指摘。「教会指導部は、被害者の声に耳を傾け、精神的・司牧的支援を提供すべきだ」とし、「教会指導者は加害行為についての被害者への謝罪、加害者への処罰措置、将来の虐待防止策を被害者に説明せねばならない」とも強調した。

 そして、「教会は、権威ある立場にある者によって行われ、助長され、誤って処理され、あるいは隠蔽された性的暴力によって被害者が負わされた深い傷を癒す道徳的・精神的義務を負っている… すべてのキリスト教徒が求められる正義と兄弟愛の原則は、責任の承認だけでなく、具体的な償いの措置の実施をも要求する」と言明している。

 

 

*教皇レオも性的虐待問題が教会にとって依然、危機であり、被害者への癒しの必要を認めている

 

 報告書は2024年までの被害、教会が行った対応などを対象とし、教皇レオ14世が選出される前の期間をカバーしている。史上初の米国人教皇は、虐待スキャンダルが教会にとって依然として「危機」であり、被害者の癒やしには金銭的賠償以上のものが必要であること認めている。

 彼は、虐待防止のベストプラクティスについて教会に助言するため2014年に教皇フランシスコによって設立された委員会への関与を示している。設立から10年間、委員会はバチカン内部で足場を固めるのに苦労した。バチカン関係者は虐待危機と向き合うことに抵抗を示し、被害者中心の政策を支持することに敵対的だったからだ。

 しかし近年、委員会はバチカン官僚機構における自らの立場を確立。7月にはレオ教皇が新たな委員長として、米国のショーン・オマリー枢機卿の後任に、フランスのティボー・ヴェルニ司教を任命した。

 

 

*教会内部の秘密主義的対応が、被害者に”再度のトラウマ”を引き起こしている

 

 今回の報告書は、「具体的な説明責任を伴わない秘密主義的なプロセス」に基づく教会の内部での性的虐待への対応そのものが、被害者に”再度のトラウマ”を引き起こしている、と指摘。

 「教会が数十年にわたり、被害者を放棄・無視・恥辱・非難・烙印を押すなど、報告を誤って処理してきたパターンが、継続的な害として被害者にトラウマを永続させていることを改めて強調せねばならない」と述べた。

 これは、教会が内部の教会法典に基づいて虐待事件を処理する場合の機能不全的な方法を指している。現法典では、連続強姦犯の司祭に科される最も重い罰は、「解雇」に過ぎない。

 しかも、このプロセスは秘密主義ノベールに包まれており、被害者は事件の結果を知る権利しか持たず、その結果すらも、長年の待機期間を経てようやく通知されることが多い。被害者が取れる実質的な手段は、自らの体験を公にすることだけだが、それは被害者に再度のトラウマを引き起こす可能性がある。

 報告書は「犯罪の重大さに比例した具体的な制裁」を求めた。児童・弱者を強姦した司祭には俗人化(司祭職剥奪)の可能性もあるが、教会は司祭を完全に排除することをしばしば嫌う。深刻な虐待事件であっても、現役司祭職からの一時的な離脱といった軽い制裁を与えることが頻繁にある。

 司教が事件処理の失敗で解任されても、公には「引退した」とだけ伝えられる。報告書は教会に対し「辞任または解任の理由を明確に伝えること」を求めた。

 

 

アフリカ、アジアの教会からバチカンへの虐待事例の報告は「ごく少数」しかない

 

 報告書は十数カ国における児童保護政策・実践、ならびに二つの修道会、信徒運動団体、バチカン事務局の監査結果を提示した。

 調査結果では、教区が監査に積極的に協力した国々を称賛し、協力しなかった国々を指摘した。報告書はフォローアップのための提言を行い、国連や独立報告書など他の情報源からのデータも提供し、世俗社会における虐待の取り扱い状況という地域的文脈を示した。

 報告書は、アフリカ・アジア・発展途上地域について、これらを担当するバチカン福音宣教省の部局が虐待事件対応の人的・物的資源を有しているが、実際に現地教区から報告されるのは「ごく少数の事例」に留まるとし、バチカンの法令で報告が義務付けられている虐待事件の報告・処理において、「アフリカ・アジアの教会は西欧より数十年遅れている」ことを示唆している。

 報告書によれば、同省の部局が虐待事件を不適切に処理した司教の事例を扱ったのはわずか2件のみ。対象地域の広大さを考慮すれば、この数字は驚くほど低い。

 こうしたデータは、特に同性間虐待が社会全体でタブー視され、教会が戦争・紛争・貧困といった広範な課題に直面する地域において、バチカンには依然として長い道のりが残されていることも示唆している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年10月18日

・被害者が望むのは、まず話を聴いてもらうこと、教会に歓迎され、支えれていると感じることも」ー教皇庁未成年者・弱者保護委員会の報告書担当者が語る

 16日に発表された教皇庁未成年者・弱者保護委員会の「教会における未成年者保護政策・手続きに関する第2回年次報告書」を担当した法学者モード・デ・ボア=ブキッキオ氏がVatican Newsとのインタビューに応じ、第二回報告書から浮かび上がった主要な要素を強調した。

 報告書では、金銭的補償を超えた賠償の重要性、被害者との対話と傾聴の必要性、教会内の性的虐待問題に対処するためのデータ収集の必要性、そして地理的地域ごとに異なる進捗状況が示されたが、これらは、未成年者保護教皇庁委員会が木曜日に発表した「教会における未成年者保護政策・手続きに関する第2回年次報告書」から浮かび上がった重要な側面の一部であり、同報告書作成作業部会の責任者を務める法学者マウド・デ・ボア=ブキッキオ博士が強調した点だ。。

 国際機関での児童保護の豊富な経験を持つブキッキオ博士は、この第2回報告書が賠償に焦点を当てた背景について、世界中の現地教会が被害者との対話を継続し、その声に耳を傾けることを支援するのが目的と強調した。

 

 インタビューの要旨は次の通り。

。。。。。。。。。。。。。。

 

*賠償問題への取り組みの手引書-金銭補償が被害者に必要な唯一の解決策ではない

 

Q:この第2回年次報告書から浮かび上がった主な要素は何ですか?

A:今回の報告書は世界中の教会による性的虐待対策の評価と進捗の観点から非常に重要な前進です。今年は”移行期正義”の概念(教会文脈では「対話的正義」と呼称)の中でも特に「賠償」という側面に焦点を当てることを決定しました。従来の手法に従い、様々な関係者との対話を通じて、賠償問題への取り組み方に関する現地教会向けの実践的ツール『手引書』を開発しました。

 全ての提言を要約するつもりはありませんが、重要なのは、金銭的補償が賠償や被害者のニーズへの唯一の解決策ではないことを明確に示している点です。私たちは被害者とその声に非常に注意深く耳を傾けました。これが報告書作成の方法論のもう一つの側面です。彼らが言うのは、基本的に「私たちが望むのは、話を聴いてもらうことだ」ということです。金銭的補償を受けること以上に、歓迎され支えられていると感じることが重要な場合もある。これが第2回年次報告書の極めて重要な側面です。

 本報告書ではデータ不足への懸念も強く表明しました。データは極めて重要です。データがなければ問題も存在しないから。教会自体や教皇庁省庁を通じて入手した内部データを超え、あらゆる可能な情報源から追加データを収集しようと努めました。

 

 

*今回報告書の主要テーマは「賠償」、次回は「正義と司法へのアクセス」

 

Q: 第1回報告書から第2回報告書の間の進展は?

A;私たちは極めて重要な課題に取り組んでいます。変化が一夜にして起こることを期待できません。必要なのは、この対話を継続し、提言のフォローアップを行うことです。それはローマでの議論だけでなく、当然ながら現地教会との間でも行われねばなりません。前述の通り、対話を継続することで彼らを支援しています。

 まず第一に、被害者と向き合う必要性に対する認識と理解が深まっていることが確認できました。この点では一定の進展が見られます。十分とは言えませんが、初年度報告書の影響が確実にこのレベルで感じられると確信しています。もちろん、被害者・生存者の状況はそれぞれ異なり、状況に応じた対応が必要です。事情が大きく異なるため、その判断は現地教会に委ねられます。

 民事当局への通報の必要性についても、国によって大きく異なります。義務化されている場合もあれば、通報者の判断に委ねられる場合もあります。この点については、確実に実施されていることを確認する必要があります。しかし全体として、ゆっくりと、一歩一歩、進歩していると考えています。

 第二回年次報告書は、第1回年次報告書を発表した時点で既に計画されていました。そこでは、対話的正義の概念がいくつかの柱から成ると説明しました。私たちのアプローチは各柱を個別に扱うことで、今年は「賠償」が対象でした。来年は正義と司法へのアクセスがテーマとなります。これも明らかに非常に重要な報告書となるでしょう。そして最後に、制度改革と真実の問題があります。なぜなら、真実こそが私たちがここで主張するすべての基盤ではないでしょうか?

 

 

*「地域」と言うよりも「教会」の中に対応が進んでいるところがあるが、対応に差

 

Q: 本報告書は、様々な国や教区における教会の保護方針と手続きに焦点を当てています。改善や進展が見られた地域はどこですか?また、まだ課題が残っていると思われる地域はどこですか?

A:この点では、教会は三つのカテゴリーに分けられます。ここで言う教会には修道会も含まれます。かなり進んでいる「地域」というよりも、「教会」があると言えます。そうして教会は、ガイドラインを公表し、被害者からの聴き取りのための適切な手続きやプロトコルを整えているなど、転換の道においてかなり先を行っているのです。

 次に、この問題が新しい概念であるため、取り組みを始めたばかりの教会があります。従来は制裁や懲戒手続きが中心で、加害者に焦点が当てられ、被害者は完全に無視されていました。そして残念ながら、それよりもさらに初期段階にある教会も存在します。当然ながら、ローマの教皇庁機関と連携し、これらの教会をその道へと導くことが極めて重要です。

 以上のように教会は三つのカテゴリーに分類されますが、地域的な位置付けはできません。グローバル・サウス(発展途上地域)の方が遅れているという見方は当然ながら、例外も存在します。報告書でも指摘したように、非常に興味深い地域的な実践例があります。例えばトンガでは、被害者への地域社会ベースの支援が非常に重視されており、これは非常に興味深い事例です。同時に、グローバル・ノース(先進地域)の欧州においても、一部の教会は非常に優れた取り組みを行っている一方、他の教会はそうでないという状況です。非常に多様な状況が展開されています。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年10月17日

・「アジア・アフリカ・中南米の多くの地域の教会では、性的虐待被害者を支援する人的、物的援資源が依然として不十分」-教皇庁未成年者・弱者保護委員会が報告書

2024.10.29 Rapporto Annuale Tutela Minorum inglese(2025.10.16 Vatican News  Edoardo Giribaldi)

 教皇庁未成年者・弱者保護委員会が16日、 「カトリック教会における保護政策」に関する第2回年次報告書を発表。被害者への「情報に基づく傾聴」と経済的・心理的・精神的支援の指針を示す一方、透明性の高い情報発信、教会の公的な責任受諾、報告体制の効率化の必要性を強調した。

 第2回年次報告書は、実際に虐待を受けた人々の声に積極的に耳を傾けることで作成され、世界の現地の教会にとって実践的な手引書となるもの。

 教会共同体が「回復的措置」を実施するのを支援することを目的とし、報告プロセスを段階的に追跡し、全般的に簡素化することを求めている。

 勧告事項には、初期段階での被害者に対する「情報に基づく傾聴」、事件に関する情報へのアクセス、経済的・心理的・精神的支援が含まれ、これら全ては、「引き起こされた被害を認める」透明性のある公式声明と、公的な責任の引き受けを伴うべきだ、としている。

 教皇が7月に教皇庁委員会委員長に任命されたティボー・ヴェルニ大司教は、この使命を「永遠の巡礼」と表現した。

 

被害者及び非教会組織に直接、訴えを聞く

 この報告書は、第1回年次報告書と同様、虐待被害者で構成される年次報告書フォーカスグループとの協議を経て作成された。自発的に結成された同グループのメンバーは、年齢・性別・民族的背景の多様性を考慮して選ばれ、世界4大陸からの参加者が含まれた。非教会組織からも追加データが収集されたが、浮上した主要課題には「より傾聴する教会の必要性」と「報告・内部告発のための明確な体制の欠如」があった。

 

被害を認める教会の公式声明の発表、責任の受け入れ

 報告書の前半は、被害者への回復的措置に焦点を当てている。これは「情報に基づく傾聴」に基づき、被った被害に見合ったものだ。

 地域の教会共同体のための手引書としては、まず第一に、被害者が自らの経験を共有できる「安全な空間」の創設を求めていることを指摘。これには教会当局との直接的な対話も含まれる。

 報告書は「償い」の概念を分析しています。回勅Dilexit nos(私たちを愛している)はこれを「個人の義務であると同時に、ケアと相互尊重の環境を育むことを目的とした、被害者を除く共同体全体の共有責任」と定義しており、教会は、「引き起こされた被害を認める公式声明」を発表し、自らの責任を公に受け入れるよう求められる。

被害者の専門的カウンセリングと霊的支援

 報告書は次に、被害者に対する専門的なカウンセリングと霊的伴走を「特に長期的視点に留意しつつ」確保するため、複数の分野にわたって展開される支援の問題に取り組むことを明記。これには、医療・心理ケアを含む虐待に起因する費用に対する適切な経済的支援が含まれる。また、虐待を実行または助長した者に対する重大な制裁を課すことで被害者保護を強化するよう求め、被害者は「虐待の加害者、およびそれを可能にした者や隠蔽した者による責任の所在について、不確かな状態に置かれてはならない」としている。

被害者が自身の事件に関する情報へのアクセスを可能にする

報告書は、被害者が自身の事件に関する情報にアクセスできることの「基本的」必要性を強調し、これは癒しの過程における重要な要素であると指摘。また「集団的癒しの過程」を促進するため、聖職者・修道者・信徒を対象とした認識向上プログラムを求めている。

不作為により被害者に二次被害をもたらした教会指導者の解任手続きの簡素化と情報公開

 

 その他の重要な提言として、委員会は「過去の行政上の措置および/または不作為により被害者/生存者にさらなる害をもたらした」教会指導者の解任に向けた「簡素化した手続き」の重要性を再確認している。

 また、辞任や解任の理由に関する「明確な情報伝達」と、現地教会や修道会が安全対策方針の実施において達成した進捗の効果的な評価を推奨。この目的のため、委員会は人権・虐待防止・保護を専門とするカトリック大学が参加する「国際学術ネットワーク」の創設を提案し、報告書対象国における関連データ収集を提言している。

保護機関による体系的、義務的な報告メカニズムの確立

 報告書はさらに、地域レベルの保護機関が使用する「体系的かつ義務的な報告メカニズム」の確立を提案。

 教会共同体は、教皇フランシスコが「現状と改善すべき点を信頼性をもって報告し、権限ある当局が行動できるようにする」と求めた方針に沿い、「透明性の向上と制度的説明責任の行使を促進する」能力を有すると報告書は指摘する。

 最後に、報告書は「保護の奉仕」における支援と伴走役として、現地教会における教皇大使の重要な役割を再確認している。

調査対象の現地教会

 第1節では、イタリア、ガボン、日本、赤道ギニア、エチオピア、ギニア(コナクリ)、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポルトガル、スロバキア、マルタ、韓国、モザンビーク、レソト、ナミビア、マリ、ケニア、ギリシャ、ならびに北アフリカ司教協議会(アルジェリア、モロッコ、西サハラ、リビア、チュニジアを含む)など、複数の国の現地教会における保護活動を検証している。

 データは、委員会による各国司教団のバチカン定期訪問プロセスを通じて収集された情報の分析に基づき、その他の情報源で補完されている。

イタリアの状況

 イタリアに関しては、ラツィオ、リグーリア、ロンバルディア、サルデーニャ、シチリア、エミリア=ロマーニャ、トスカーナの各教区を訪問した。報告書は、長年にわたり、予防と保護のための「統合されたツールと政策」の開発において著しい進展があったと指摘している。

 委員会は、イタリア司教協議会(CEI)が「調整、研修、監督」のための多層的システム(国家、地域、教区、教区間)を構築した取り組みを評価している。これは専門的かつ適切に訓練された人材で現地教会を支援することを目的としている。

 同会議は、16の地域保護サービス、226の教区・教区間サービス、108の相談センターが存在し、牧的支援を提供し報告を受け付けていると報告している。

 しかしながら課題は残る。委員会は、一部の地方教会が市民社会との先駆的な取り組みや協働を進めているものの、「地域間の格差」が依然として存在し、報告の受理・分析を行う中央集権的な事務局が欠如している点を指摘している。これは一貫性のある効果的な事例管理を確保するために必要な構造である。

大陸別教会の評価と模範的実践

 

 報告書は世界的に見て、米州・欧州・オセアニアの一部教会が賠償への強いコミットメントを示す一方、「金銭的補償への過度の依存」が癒しのプロセスに対する「包括的理解」を制限するリスクがある、と指摘。さらに中南米・アフリカ・アジアの多くの地域では、被害者への伴走支援資源が依然として不十分である。

 しかしながら、いくつかの模範的事例が強調されている。例えば:トンガの伝統的共同体癒し実践Hu Louifi、米国における被害者支援サービスの年次報告書、ケニア・マラウイ・ガーナにおける継続的なガイドライン見直しプロセス、ボルツァーノ=ブレッサノーネ教区における真実究明プロジェクト「見つめる勇気」(Il coraggio di guardare)などである。

ローマ教皇庁と省庁間連携

 報告書の第三節では、保護問題における教皇庁の権限と省庁間連携の促進について考察。特に、福音宣教省・初伝道・新個別教会課の貢献を検証。同課は各地の教会共同体を支援し、一般行政だけでなく保護活動も監督している。約1200の教会管轄区域を支援し、本報告書作成に積極的に参画した。

 

社会奉仕活動と保護

 第四節は教会の社会的側面を分析し、未成年者及び脆弱な立場の成人の権利を促進する取り組みを強調する。

 今回の報告書では、信徒団体「マリアの業-フォコラーレ運動」に適用されたパイロット手法が紹介されている。委員会は同運動が最近採択した改革を歓迎しており、具体的には:虐待事例管理のための独立中央委員会の設置、性的虐待に関する情報方針、被害者支援と金銭的補償に関するガイドラインなどが挙げられる。

メモラーレ・イニシアチブ

 報告書の最終部では、メモラーレ・イニシアチブの進捗状況に焦点を当てている。2022年に委員会によって設立されたこのイニシアチブは、司教協議会、修道会、慈善財団から専用資金を集め、資源が限られているグローバル・サウス(南半球)の教会を支援している。

 現在、世界中の地域メモラーレ・イニシアチブを支援するための20の協定が締結されており、さらに十数件が交渉中である。

 参加地域は次の通り。

 ルワンダ、ベネズエラ、メキシコシティ大司教区(メキシコ)、AMECEA – 東アフリカ司教協議会連合、チュブート教区管区(アルゼンチン)、ホンジュラス、ウルグアイ、ハイチ、モンバサ教区管区(ケニア)、サン・ルイス・ポトシ教区管区(メキシコ)、トンガ、中央アフリカ共和国、マラウイ、パラナ教区管区(アルゼンチン)、パラグアイ、IMBISA – 南アフリカ司教地域間会議、パナマ、サンタフェ教区(アルゼンチン)、コスタリカ、ジンバブエ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年10月17日

・ボリビアで30人の未成年者を性的虐待した元司祭が、18年の逃亡の末にウルグアイで逮捕

(2025.10.6  Crux  Contributor   Eduardo Campos Lima)

Ex-priest accused of abusing 30 boys finally detained in Uruguay after 18 yearsThe house in Uruguay where Juan José Santana Trinidad lived for 18 years after fleeing Bolivia.

 ブラジル・サンパウロ発 – 2005年から2007年にボリビア中東部のタパカリでカトリック宣教師をしていた男が、当時、未成年者30人に性的虐待をしたとして、ウルグアイの国家警察に逮捕された。

 この男は、元司祭フアン・ホセ・サンタナ・トリニダード。18年にわたる逃亡の末、9月26日にウルグアイ・サルト市の実家で国家警察に逮捕された。引き渡し手続きを終えた後、ボリビアへ移送される見通しだ。

 サンタナは、司祭・宣教師としてタパカリにあるアンヘル・ヘルミ寄宿学校を運営していた当時、8歳から17歳までの70人以上の寄宿生のうち30人を性的虐待した。このことは、2007年、地元の修道女が、性的虐待の現場に遭遇して明らかになった。当時、サンタナは38歳だった。

 被害者たちは、捜査当局の調べで、サンタナの行為の恐ろしさを明らかにした。少年たちを寄宿舎の自室に連れ込み、ドアを施錠したうえで、自慰行為から肛門性交に至るまで、様々な性的行為を強要した。

 当時、寄宿学校を管轄していたコチャバンバ教区のティト・ソラリ大司教は、事件発覚を受けて、司法当局への協力を約束し、被害者への支援も表明。2011年にサンタナの司祭職を剥奪した。

 サンタナは犯罪発覚直後にボリビアを脱出し、ウルグアイにある実家にこもった。散歩のため数分間だけ外出する日々を送っていたが、記者たちが少なくとも3回、サルトで彼を見つけ接触した。

 直近では8月、ウルグアイ紙『エル・パイス』の記者が同市で彼に話を聞いたが、サンタナは毎回、「全ては昔の話。語るのが難しい」と繰り返し、被害者やその家族への謝罪の言葉は一切聞かれなかった。「打ちのめされている。言えるのはこれだけだ。あの事件以来、生きる意味を見失った…言葉が出ない…家族や両親のことばかり考えて、彼らと共にこの苦難を乗り越えようとした。どうにもならない状況もある。自分の力ではどうにもならないことが」とサンタナは2023年、ボリビア紙『エル・デベル』の記者エリック・オルテガに語った。

 ボリビアの捜査当局が国際刑事警察機構(インターポール)に彼の逮捕を正式に要請し、ジャーナリストが彼の居場所を容易に突き止めたにもかかわらず、ウルグアイの捜査当局は当時、彼を逮捕しようとしなかった。ウルグアイのカトリック教会の最高位聖職者であるダニエル・ストゥルラ枢機卿は、「犯罪は、ボリビアで発生しており、ウルグアイの教会はサンタナに対する苦情を一切受けたことがない」と報道陣に語っっていた。

「有罪なら、彼は自らの行為に責任を取らねばならない」とストゥルラ枢機卿は地元テレビ局Canal 12のニュース番組Telemundoで語り、ボリビア司教協議会の法律顧問スサナ・インチ・サインツはCruxに対し、「教会はスキャンダル発生時にサンタナの責任追及のために可能な限りの措置を講じたが、彼を拘束する権限は持たない」と弁明。「当時、ソラリ大司教は事件を知ると捜査当局に直ちに報告し、全面的な協力を約束した。しかし、当時捜査対象だった人物の拘束は保証されなかった」と述べた。

 また、「当時、この種の状況への適切な対応に関する教会法上の規定は、今日のように明確ではなかったが、ソラリ大司教は、この事件を公にして捜査当局に通報し、司祭職はく奪の教会法上の手続きを踏んだ… 教会は自由の権利を制限できず、拘束や投獄の権限も持たない。それは裁判所の専属管轄権であり、この場合はボリビア司法の管轄です。被告の居場所が報道を通じて既に判明していたにもかかわらず、ボリビアの捜査当局が、当時もその後も必要な予防措置が取られなかったのは不可解です」とも語った。

 ボリビア教会性虐待被害者ネットワークのスポークスマン、エドウィン・アルバラドは『Crux』の取材に対し、サンタナが長期間にわたって処罰を免れてきたことに疑問を呈するとともに、「今回の逮捕は真実と正義に向けた重要な一歩です。身柄引き渡し手続きを経てボリビアに移送されたことで、ようやくボリビアで裁判にかけられ、被害者たちに対する何らかの正義が実現すると考えている」とし、地元市民団体からも支援を受けている被害者たちと連絡を取り合っており、今後もこの事件の経過を見守っていく、と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2025年10月9日

・「司教協議会、修道会の兄弟的協力が鍵だ」-教皇庁未成年者・弱者保護委員会が総会で保護対策推進を再確認

Tutela Minorum Plenary Assembly in KrakowTutela Minorum Plenary Assembly in Krakow 

 

 

Pontifical Commission for Protection of Minors advances safeguarding at Plenary

The Pontifical Commission for the Protection of Minors concludes its Autumn Plenary Assembly held in Krakow, Poland.

The Pontifical Commission for the Protection of Minors concluded its Autumn Plenary Assembly in Krakow on Friday, marking five days of dialogue, strategic planning, and reflection focused on advancing safeguarding within the Church.

Held from 29 September to 3 October, the gathering brought together Commission members, experts, and regional representatives to advance the body’s mandate as outlined in Praedicate Evangelium. This was the first Plenary Assembly held under the leadership of Archbishop Thibault Verny, appointed President earlier this year.

First Assembly under new presidency

In his inaugural address, Archbishop Verny called for a renewed commitment to safeguarding as integral to the Church’s identity and mission. He outlined four strategic aims: fostering a universal safeguarding culture, developing a shared language through the Universal Guidelines Framework (UGF), strengthening regional networks through the Annual Report, and deepening dialogue with civil institutions.

Acknowledging both progress made and systemic gaps that persist, Archbishop Verny highlighted listening to victims and survivors, promoting transparency, and building accountable structures. He encouraged Commission members to act “with courage and compassion,” noting the urgency of unresolved safeguarding challenges and the global expectation for moral clarity and pastoral care from the Church.

Universal Guidelines Framework in final draft

A major focus of the Plenary was the Universal Guidelines Framework, which has been tested over the past year in pilot projects across four continents — in Zimbabwe, Tonga, Poland, and Costa Rica — and enriched by a synodal listening process.

Members reviewed the final draft of the Framework, which incorporates theological and canonical insights. The text will now be submitted to the Commission President for dialogue with relevant Dicasteries of the Roman Curia before being presented to the Holy Father.

Victim-Survivor engagement

The Commission reaffirmed its commitment to centring the voices of victims and survivors through enhanced protocols and formation in outreach. Discussions focused on “Conversional Justice,” a framework emphasising truth, justice, reparations, and institutional reform as essential elements of healing.

Victims and survivors continue to play a key role in shaping the Commission’s work, particularly in the upcoming Second Annual Report, which highlights their contributions and perspectives.

Second Annual Report to focus on reparations

The Commission’s Second Annual Report on Church Policies and Procedures for Safeguarding (Reporting Year: 2024) will be released on 16 October in five languages. Continuing its exploration of Conversional Justice, the report focuses on reparations and introduces new external data sources to support transparency and accountability.

The Plenary also reviewed the Instrumentum Laboris for the Third Annual Report (Reporting Year: 2025), which will enter a synodal phase of dialogue and further data collection.

Building safeguarding capacity through the ‘Memorare Initiative’

Members assessed progress on the Memorare Initiative, which aims to strengthen local safeguarding capacity and is closely aligned with both the UGF and Annual Report.

Seventeen active projects are underway across the Americas (10), Africa (6), and Asia (1), contributing to a global ecosystem of safeguarding.

Collaboration with the Polish Bishops’ Conference

The Assembly concluded with a meeting with members of the Polish Bishops’ Conference, reinforcing the Commission’s commitment to accompany local Churches in their safeguarding efforts.

Reflecting on the decision to hold the Plenary in Poland, Archbishop Verny highlighted the importance of listening to victims and survivors and engaging local communities:

“It is about listening, walking humbly with victims. It is through and by the victims/survivors that we journey and discern. The Church is not separate from society—it walks with society; it is embedded in society. This culture of safeguarding must be lived in dialogue with society, learning from it in terms of foresight and protection.”

Archbishop Verny also stressed the importance of mutual learning across regions, noting that safeguarding advances in some parts of the Global South provides valuable lessons for other contexts:

“We must not assume that we are safe from the risk of further abuse happening because we have published policies and set up offices. Safeguarding complacency, safeguarding fatigue is setting in, and this is a major risk factor in bad decisions being made. We must continue to learn from one another and never oppose one another. Subsidiarity and fraternal collaboration with episcopal conferences and religious congregations are key.”

2025年10月4日

・会員聖職者(当時)による性的虐待の『神言会裁判』、三年目に

(2025.10.1  カトリック・あい)

 聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が、所属(当時)修道会・神言会に損害賠償を求める裁判が二回目の年を越し、三年目に入ることが確定した。

 10月1日午後4時から東京地方裁判所第615法廷で開かれた11回目の裁判で、今後の日程について、12回目は12月1日、13回目は年を越して2月9日に開くことが決まったもので、これまで原告側が希望していた来年春の結審は、担当裁判長の移動も予定されていることから断念せざるを得なくなった。

 裁判の日程は、裁判長が原告、被告双方と調整して決めることになっているが、7月の10回目まではほぼ毎月開かれていたが、7月の段階で裁判長が来春に転出することが明らかになってから、傍聴席からやり取りを見る限り、被告の神言会の代理人弁護士側の都合で間隔を二か月以上に延びる結果になっている。このため、傍聴していた原告支援者からは、故意に引き延ばしを図り、聖職者の性的虐待の現状に理解のある現在の裁判長に判断させないようにしているのでは、との見方も出ている。

 また、1日の裁判では、被告側が、「教区と修道会などの組織などについてもう少しはっきりと説明するように」との裁判長の指示を受けた形で提出した二枚の準備書面に関して、原告側から質問があった。準備書面では、教区長が高見大司教だった長崎教区の教会性的虐待を働いたとされる神言会所属(当時)の司祭は、同教会に2016年から2019年まで務め、2019年4月に東京教区の吉祥寺教会に異動した。「この異動は、この裁判で取り上げられている件に関連してなされたものではなかった」との趣旨が述べられている。

 これについて、原告側は、「関連してなされたものでない、と言うなら、それを裏付けるような異動の基準が神言会にはあるはずではないか」、また神言会が長崎教区の教会から東京教区の教会に異動させた場合、東京教区にその人物についての報告は「当然されるものではない」と準備書面にあるが、「絶対に報告してはならない」と言うような決まりでもあるのか、と被告側に説明を求めた。これに対し被告側は即答できず、「確認してから答える」と説明を先延ばしした。

 また、準備書面では、長崎教区長について当時の、高見大司教を実名で出しているのに対し、東京教区長については(神言会の会員である菊地大司教という)実名を出していない、ことに違和感を覚える関係者もいたようである。

2025年10月1日