・バチカンの未成年・弱者保護委員会が総会で「性的虐待からの弱者保護を教会の使命の中心課題とすること」を確認

File photo of tMons Thibault Verny with Pope Leo XIV(File photo of tMons Thibault Verny with Pope Leo XIV )
(2026.3.20 Vatican News)

 バチカンの未成年者・弱者保護委員会が20日、5日にわたる春季総会の幕を閉じた。総会には、世界中から委員やスタッフが集まり、「被害者との関わりを深め、世界的な保護基準を推進し、教会生活のあらゆるレベルでの協力を強化するこト」を確認した。

 また、教会の世話に委ねられたすべての子供、青少年、そして弱い立場にある人々の尊厳を守る、という中心的な使命を再確認する上で、教皇レオ14世が示した指導力に対し、深い感謝を表明した。

*困難な時代における責任を共有

 今総会は、世界中で紛争が続き、最も脆弱な人々に影響を及ぼしている状況下で、未成年者・弱者保護へ新たな決意と協力の必要性について考察。ティボー・ヴェルニー委員長は、保護の文化と体制を強化する現地教会に寄り添うよう促された教皇の言葉に呼応し、「注意深く耳を傾けること、謙虚さ、そして共有された責任の必要性」を強調。

 専門家や関係団体代表たちからは、保護に関する課題の複雑さと、教会と市民社会の主体との協働の重要性が指摘され、こうした現実に効果的に対応できる「開かれた共働性の精神」を育むことの緊急性が確認された。

*被害者や生存者の声に耳を傾けているか

 総会で話し合われた主たる課題にひとつは、教会の保護活動を進めるうえでの被害者たちの役割で、出席者たちからは、性的虐待被害者のトラウマに配慮した手続きを検討し、彼らの証言が政策、研修、報告にどのように一貫して反映されるかを検証。被害者との関わりが「保護活動の一つの側面にとどまらず、あらゆる行動の中心的な指針である」ことを改めて確認した。

 最近の性的虐待に関する報告は、「被害者が被った甚大な被害、そして教会内でその被害を引き起こした重大な過失を痛切に思い起こさせるもの」と受け止め、委員会として、「耳を傾け、寄り添い、被害を受けた人々への保護、説明責任、透明性、そしてケアが教会の生活の中心であり続けるよう支援する」決意を再確認するとともに、「なすべきことは、まだ多く残されている」ことも認めた。

*普遍的ガイドラインの策定と推進

 

 また、世界的な保護活動を支援するための重要な手段である『普遍的ガイドライン・フレームワーク』の策定にも大きな注目が集まった。

 委員たちは現在の進展状況を検証し、ガイドラインを「どのようにすれば、利用しやすく、文化的に適応可能で、霊的に根ざしたものにできるか」について検討。様々に異なる状況下にある現地の教会にとって具体的に役立つツールとなり得るよう、明確さと実用性を確保することが必要との認識で一致した。

 委員会は、今年後半に教皇にガイドラインの最終案を提出するのに先立ち、「福音の価値観に忠実でありつつ、専門的な基準にも沿った指針を提供する」決意を新たにした。

*世界的な取り組みを広げる

 

 総会ではまた、現在、世界の複数地域の18の現地教会を支援している「Memorare Initiative」の進捗状況についても検討した。同イニシアティブは、「評価、実施、検証」という体系的なモデルを通じて、報告体制、研修、および保護能力の強化を継続するもので、カトリック教会が性的虐待の被害者にとって安全な避難所となれるように支援する2023年にルワンダで開始され、各教区の文脈に合わせた支援を提供し、リソースの有無にかかわらず、すべての人を保護するという教会の神聖な義務を果たすことを目指している。

 このイニシアティブの推進には、これまでのところ、説明責任の仕組みが限られていることや資源の制約といった課題は残るものの、特にアフリカやラテンアメリカにおける前向きな進展があると評価した。

*説明責任を果たし、被害者と伴走する

 

 委員会が毎秋発表している年次報告書については、「世界的な説明責任のツール」であると同時に「伴走の仕組み」としてもその役割を拡大している点が、委員会から強調された。

 地域グループから共有された知見は、各国、各地域の性的虐待問題に対応する人的・物的資源の格差、データ収集体制の不備、そして変化し続ける法的状況が指摘される一方で、被害者からの貢献が、報告書の分析と提言に直接反映されていることが確認された。

 新たなパートナーシップや広範なデータ収集によって強化される継続的な取り組みは、教会生活の様々な分野における懸念に対処するとともに、委員会が「各地方教会および奉献生活におけるケアの文化への道のりの定着」と表現したものを支援することを目指すことが確認された。

*”オンライン虐待”など新たな形の虐待に対応を急ぐ

 

 最後に、総会は、個別課題の研究グループの報告をもとに、多面的な脆弱性やオンライン虐待の脅威の高まりなど、新たに浮上している課題に目を向けた。

 「脆弱性に関する研究グループ」が提示した学際的な枠組みは、関係性、文化、制度的な文脈においてこの問題を考察し、教会法上の実践と司牧の実践の両方に向けた示唆を提供。「オンライン虐待に関する研究グループ」は、デジタル上のリスクの特定や、予防・対応のための実践的なツールの開発において進展があったと報告した。

 そして、総会では、「世界的に見て、子どもや脆弱な立場にある人々に対するオンライン虐待の規模を考慮すれば、デジタル上の安全確保は緊急の優先事項とする必要がある」という見解で一致した。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2026年3月23日

・14回目の”神言会裁判”で「できる限り年内に結審、遅くとも来年3月に判決」と裁判長が明言

(2026.3.11 カトリック・あい)

 聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が加害司祭(当時)が所属していた神言会に損害賠償を求める裁判の第14回が3月11日、東京地方裁判所で原告支援者など約30人が傍聴する中で開かれた。

 今回は原告、被告双方の代理人弁護士から事前提出された準備書面について、双方と裁判長から特に目立った意見は出されず、次回裁判は7月9日(木曜)午前11時に708号法廷で開かれることになった。

 原告側は7月の裁判で、「性的虐待を犯した司祭も問題だが、これは個人の犯罪でなく、所属修道会である神言会の”犯罪”。それがこれまでの神言会側の不誠実な対応で明確になった。この問題を個人でなく、組織による犯罪として告発していく」と述べている。

 11日の裁判で、注目されたのは、裁判長から裁判の今後のスケジュールが明らかにされたこと。それによると、判決を遅くとも来年3月に出すことを前提に、証人訊問は10月ないし11月に行い、できる限り今年12月に結審したい、というものだ。

 これによって、被告の神言会が所属司祭による女性信徒への繰り返し性的虐待を加えたことの責任を言を左右にして認めようとせず、2023年1月に始まった審理を際限なく引き伸ばそうとしてきたこの裁判の道筋が、ようやく見えてきたことになる。裁判後に弁護士会館で開かれた支援集会には一般信徒、司祭、修道女など30人以上が参加し、これまで3年以上も、裁判での神言会の不誠実な対応に苦しんできた原告被害者の努力を称えるとともに、最後まで被害者に寄り添うことを誓い合った。

 

2026年3月11日

・米国のカトリック・エルパソ教区、性的虐待・損害賠償請求訴訟に「教区の支払い能力を超えている」と破産申請、テキサス州の教区で初

(2026.3.8  カトリック・あい)

 米国の有力カトリック・ニュース-スサイトEWTN News ewtnnews@ewtn.comエルパソ教区が聖職者による性的虐待で18件の訴訟を受け、破産を申請することになった。教区長のマーク・サイツ司教が発表した。テキサス州には2つの大司教区と13の教区があるが、性的虐待への補償を理由に破産申請したのは、エルパソ教区が初めてだ。

 3月6日に同教区の信者に送ったメッセージで、サイツ司教は「1956年から1982年にかけて発生したとされる性的虐待に関する18件に上る訴訟に直面している」と述べた。そして、「申し立てを受けている虐待は、自らの組織内で児童虐待が行われている事実とその規模を認識するはるか以前に発生し、教区がこうした犯罪を防ぐために強力な児童保護方針と実践を導入するはるか以前に起きたもの」としつつ、「司祭や教区職員との協議、祈りを込めた熟考を経て、教区が連邦破産法第11章の適用を申請することを決断した」と説明。

 これを「最も賢明な行動方針」とし、その理由として「現在、教区に対して求められている損害賠償の請求額が、教区の支払能力を超えている」ことを挙げ、「教区として、被害を受けた人々への公平な補償に努めるとともに、教区内の教会の本質的な奉仕活動を継続し、教会に頼る全ての人々のニーズに応え続けるための教区の保有資産は非常に限られている… 破産申請により虐待補償計画を破産裁判所の監督下で単一のプロセスに統合することで、教区が安定した財政基盤の上で前進することが可能になる」と説明した。

 教区関係者による被害者に対する性的虐待について謝罪したサイツ司教は、このプロセスが「困難な道のり」となることを認めつつも、「どんな試練が訪れようとも、心を尽くして主に仕え続ける」と誓っている。

2026年3月8日

・米ロードアイランド州のカトリック司祭たちによる数十年にわたる性的虐待を、州司法長官の報告書が明らかに

 

(2026.3.5   Kimberlee Kruesi,  Crux Staff |Associated Press)

2026年3月5日

改・「告解」を利用した性的虐待で訴えられたスペインの司教について、教会裁判所が教会法上の刑事手続き開始を勧告

(2026.2.20  Crux  Fionn Shiner)

 スペインの司教による「告解」を利用した性的虐待を当時未成年者の神学生だった被害者が訴えている問題で、現地の教会裁判所は事前審理の結果をもとに、正式な教会法上の刑事手続きを開始するよう勧告した。

 現地新聞El País が20日伝えたところによると、控訴院がスペインのカディス・セウタ教区のラファエル・ソルノサ名誉司教に対する疑惑について行った調査で、複数の証人を尋問し、信憑性のある証拠を発見した。証人の一人は、「司教が元神学生とベッドにいるのを目撃した」と証言した。この元神学生は、「14歳から21歳の間にソルノサ司教から性的虐待を受けた」と主張している。

 事前審理は先週終了し、現在は刑事手続きが開始されるかどうかの判断を待っている状態。ソルノサ司教が告発されている犯罪は公訴時効が成立しているため、民事裁判所では起訴できないが、教会法の下では裁判が可能だ。

 バチカン教理省は昨夏に最初に申し立てを受けた際、その内容を信憑性があると判断し、セビリア大司教区(カディス・セウタは同大司教区の属教区)に調査開始を指示。セビリアのホセ・アンヘル・メネセス大司教はその後、教会の手続きをマドリードの教会裁判所に付託した。これは特に複雑な事件において教区が取ることができる措置だ。控訴院は報告書をセビリア大司教区に送付し、同区が教理省に審査を依頼する手配を進めている。

 被害者の申し立てによれば、虐待は1990年代にヘタフェで発生した。当時ゾルノサは現地神学校の校長を務めていた。被害者は最終的に神学校を退学した。これに対して、事件関係者によると、ゾルノサは自身の無実を主張し、「教会に裏切られた」と感じていると言い、「教会は私を見捨て、裏切り、孤独にさせた。取り調べは試練だった」と語っている。

 昨年11月、El País紙が初めてこの疑惑を報じた際、ゾルノサは「不当で虚偽の告発」と反論したものの、直ちにカディス・セウタ教区司教を辞任した。教皇レオ14世も本件を認識しており、司教の辞任を受理したことを確認し、「司教自身が説明責任を負い、無実を主張している。調査が開始された以上、その進行を待つ必要がある。結果次第では対応が取られるだろう」と述べている。

 昨年夏に被害者からの手紙を含め教理省に通知された内容によると、「夜中に彼が部屋に来て、私は虐待を受けた。私のベッドに入り、撫で回し、キスをした。朝も同様に目を覚ました。当時は彼に何も言えず、恐怖で身動きが取れなかった… 彼は『君の傷』(そう言って私の同性愛を指した)が物事を見えなくさせているから、自分を信じろと言った」と訴えている。

 被害者によると、性的虐待は1994年(当時14歳)に始まり、21歳まで続いた。18歳で神学校に入り、ゾルノサは1994年当時45歳だった。

 被害者はバチカンに最初に送った告発状で、ゾルノサが「告解を、自分を操作し支配する手段として利用した」と主張、「告解で彼に、同性愛行為を告白した後、私はベッドに入った。数分も経たないうちに彼が私のベッドに入り、愛撫してきた」と述べた。また、神学校を退学してから10年後、被害者はゾルノサ司教にメールを送り、「自分があなたに虐待され、操作されていた、と感じている」と訴えたが、司教からは返答が無かった。その後、ゾルノサ司教と直接会った際、司教が「操作と虐待を認めた」と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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Full canonical penal process may be opened against Spanish bishop accused of sexual abuse

By
A preliminary investigation by the Roman Rota into the allegations against a Spanish bishop accused of sexual abuse of a minor has recommended that the Vatican open a full canonical penal process.

According to reports in the investigation carried out by the Roman Rota tribunal in Madrid into the allegations against Bishop Emeritus Rafael Zornoza of Cádiz and Ceuta interviewed a number of witnesses and found credible evidence.

Reportedly, one of the witnesses testified that they saw the bishop in bed with the former seminarian who alleged that Zornoza sexually abused him while he was between 14 and 21 years old.

 

The tribunal finished last week and is now waiting to hear whether the penal process will be opened.

The crime Zornoza is accused of is time-barred, so civil courts cannot prosecute him, but under canon law he can be tried.

When the Dicastery for the Doctrine of the Faith initially received the allegations last summer they deemed them credible and ordered the Archdiocese of Seville, of which Cádiz and Ceuta is a suffragan, to open an investigation.

 

Archbishop José Ángel Meneses of Seville then referred the canonical proceedings to the tribunal of the Roman Rota in Madrid, a step dioceses can take for particularly complex cases.

The Rota has sent its report to the Archdiocese of Seville so that it can send it to the Dicastery for the Doctrine of the Faith for review.

The allegations say the abuse took place in the 1990s in Getafe, when Zornoza was the rector of the seminary there. The complainant eventually left the seminary.

According to sources close to the case who spoke to Religion Digital, Zornoza maintains his innocence and has said that he feels betrayed by the Church.

 

“The Church has abandoned me, betrayed me, left me alone and the interrogation has been an ordeal,” he has been saying, according to sources close to the case.

In November, when the allegations were first published in El País, Zornoza referred to them as “unjust and false.”

However, Zornoza immediately stepped down from his role as bishop of Cádiz and Ceuta. Pope Leo XIV also confirmed that he was aware of the case and accepted the bishop’s resignation.

“The bishop himself has had to respond and maintains his innocence. An investigation has been opened, and we must allow it to proceed; depending on the results, there will be consequences,” the pontiff said.

RELATED: Pope Leo is aware of investigation into Spanish Bishop of Cádiz

The allegations were first sent to the Dicastery for the Doctrine of the Faith last summer which included a letter from the complainant.

“It was at night when he came to the room and I suffered the abuse. He got into my bed, caressed me and kissed me. In the mornings I also woke up the same way. At that time, I never said anything to him, paralysis controlled me,” he said.

“He told me that ‘my wound’ (that’s how he referred to my homosexuality) did not let me see things and to trust him,” he added.

The complainant alleges that these abuses began in 1994 when he was 14 and continued until he was 21 – he entered the seminary aged 18. Zornoza was 45 in 1994.

In the information initially sent to the Dicastery, the complainant alleges that Zornoza used confession as a means to “manipulate and control” him.

“After confessing my homosexual acts I would go to bed, and within minutes he would get into my bed and caress me,” he said.

Ten years after leaving the seminary, the complainant says he sent an email to Zornoza telling the bishop that after some time coming to terms with it, he felt that he’d been abused and manipulated. He said the bishop didn’t respond.

He later met in person with Zornoza and the complainant says that the bishop “acknowledged the manipulation and abuse.”

2026年2月21日

・米国の聖職者による性的虐待被害者への賠償支払いは11教区・1修道会だけで4500人以上に円換算約5700億円に

(2026.2.19 Crux  By Associated Press)

  米国 ニュージャージー州のフィラデルフィア郊外のカムデン教区が19日までに、聖職者による性的虐待被害者との和解金として1億8000万ドル(約200億円)の支払いに合意した。これは20年以上前に発覚した教会スキャンダルの最新事例だ。和解案は現在、破産裁判所の承認待ちとなっているが、教区は州の大陪審調査に対して長年抵抗した後、昨年ようやく受け入れたもの。

 カムデン教区は、全米で見られるように、時効が緩和された後の被害者訴訟の急増を受けて、破産を申請した。以下は、米国のカトリック教会の教区が合意した、その他の大規模な聖職者虐待和解金のリストだ。これらを合計するだけで、米国の聖職者による性的虐待賠償支払いは11教区・1修道会で4500人以上の被害者に総額37憶ドル(5700億円)に上ることになる。

【フィラデルフィア大司教区】

 フィラデルフィア大司教区は、2022年時点で聖職者による性的虐待被害438件の和解金として7800万ドル以上を支払った。2023年には追加の性的虐待事件の和解金として350万ドルの支払いに合意している。

【ロサンゼルス大司教区】

 

2024年、ロサンゼルス大司教区は、数十年に遡る聖職者による性的虐待の被害者1000人以上に8億8000万ドルを支払うことで合意した。サンタバーバラ郡、ベンチュラ郡、ロサンゼルス郡を管轄する同大司教区は、これまでに被害者へ7億4000万ドル以上を支払っており、総支払額は15億ドルを超えている。

【ニューオリンズ大司教区】

 

ニューオリンズ大司教区は、昨年12月に連邦判事が承認した和解案に基づき、聖職者による性的虐待の生存者数百人に対し、少なくとも2億3000万ドルを支払うことで合意した。この和解は数年にわたる交渉の末に成立し、将来の虐待防止策も含まれている。同大司教区は500件以上の虐待申し立てを個別に処理するのを避けるため、2020年に破産を申請した。

【サンディエゴ教区】

 

カリフォルニアのサンディエゴ教区は2007年、140件以上の聖職者による性的虐待申し立てを解決するため1億9800万ドルの支払いに合意した。同教区は2024年、数十年前における司祭らによる児童性的虐待を主張する追加訴訟約400件に対応するため破産申請を行った。これらの訴訟は、カリフォルニア州が2019年に児童性的虐待申し立ての時効を撤廃した後に提起されたものである。

【米国北西部のイエズス会】

 

イエズス会オレゴン管区は2011年、米国北西部で同会が運営する学校で虐待を受けた450人以上の先住民およびアラスカ先住民に対し、1億6600万ドルの支払いに合意した。また2007年、アラスカ州フェアバンクスにおける別の110件の性的虐待申し立てを解決するため、5000万ドルの支払いに合意している。

【オレンジ教区】

 

カリフォルニア州のオレンジ教区は2004年、約90人の性的虐待被害者と1億ドルの和解に達した。3年後、同教区はさらに4件の性的虐待訴訟を解決するため、700万ドルを追加支払うことに合意した。

【ポートランド教区】

オレゴン州のポートランド大司教区は2004年、100件以上の訴訟を解決した後、性的虐待疑惑をめぐりカトリック教区として初めて破産申請を行った。破産手続きが完了した3年後までに、同大司教区は300件以上の請求を和解し、請求額と弁護士費用として約9000万ドルを支払った。2019年には、聖職者による性的虐待の追加8件の請求を和解するため、約400万ドルの支払いに合意した。

【ボストン大司教区】

 

ボストン大司教区は2003年、500件以上の聖職者による性的虐待訴訟を和解するため8500万ドルの支払いに合意した。ボストンにおける性的虐待問題の規模は、米国および世界中で、司祭による広範な虐待と教会による隠蔽工作を明るみに出した。

【コビントン教区】

 

2006年、ケンタッキー州のコビントン教区は200人以上の性的虐待被害者に対し、法廷和解で8100万ドル以上を支払った。2020年に教区が発表した報告書によれば、1950年代以降、59人のカトリック司祭と教会関係者31人が児童への性的虐待を行っていた。

【ウィルミントン教区】

 デラウェア州およびメリーランド州東海岸を管轄するウィルミントン教区は、2011年に約150人の聖職者による性的虐待被害者に対し7700万ドルの支払いに合意した。

【オークランド教区】

 カリフォルニア州のオークランド教区は2005年、性的虐待被害者56名との間で5600万ドルの和解金を支払うことで合意した。その後、児童性的虐待訴訟の時効を一時的に延長する州法が施行され、300件以上の児童性的虐待訴訟が提起されたため、同教区は2023年に破産を申請した。

2026年2月19日

・聖職者の性的虐待の『神言会裁判』3年目に入るー「被告側の不誠実な対応の繰り返しは『信義則』に反する」と原告弁護人

(2026.2.9 カトリック・あい)

 聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が、所属(当時)修道会・神言会に損害賠償を求める裁判が3年目に入り、第13回が2月9日、東京地方裁判所で、原告支援者など約40人が傍聴する中で開かれた。

 この日の裁判では、まず裁判長から、先に述べていた「4月異動」がなくなり、次の異動まで自身が審理を続ける旨の説明があった。また原告弁護人から、「訊問を聞いた裁判長に判決文を書いてもらいたい」と要望があったのに対して裁判長は、「訊問を行い、それが終結すれば、その後裁判長が異動になっても、訊問した裁判長が(判決文を)書くと思う」と述べた。

 これまで裁判長から4月異動の可能性が示唆され、2年間の審理でカトリック教会や修道会である神言会の事情などに理解を深めた裁判長が異動した場合、次期裁判長の下での裁判指揮に不安を持つ関係者もいたが、当面、そのような懸念はなくなり、6月以降に想定される被告の神言会の責任者の証人訊問も現裁判長が取り仕切る方向で進むことになった。

 続いて、原告、被告双方が事前に提出した準備書面をもとに審理がされた。原告側から「当方の質問に対し、これまで、はっきりしない回答が続いている」とし、例として、原告被害者は最初に、加害司祭(当時)が所属していた教会を管轄す長崎教区の性的被害者のための)人権相談窓口に訴えているが、それに対する加害司祭が属していた神言会の対応を挙げ、「被告弁護人は『神言会は何も知らない』『対応はちゃんとやった。教区の相談窓口は組織として会と関係が無い』など、答えになっていない」とし、このような不誠実な対応の繰り返しは「最高裁の判決で決まっている『信義則』に反するものだ」と批判が述べられた。

 被告・神言会の代理人弁護士は、「人権相談窓口は長崎教区にある。司祭は、神言会から長崎教区に派遣されたもの。長崎教区は神言会とは別法人で、形式的には関係が無い」などと反論。

 これに対して原告側は、カトリック教会は、一つで、修道会もその中にある、というのが一般の見方であり、法人が別だから‥ 修道会と教区の関係をあたかも”派遣会社”と”受け入れ先”の関係だから(無関係)、というのは理解できない、とし、「神言会もバチカンからOKを取って活動しているのではないか」と疑問を呈したのには、明確な説明はなく、ただ、「(バチカンと神言会?は)まったく無関係ではない」とだけ述べた。「使用者責任は否定しないのか」と裁判長から尋ねられたことには、否定しないことを認めた。

 裁判長から、こうしたやり取りを引き取る形で、「原告は、分からないとし、分かるような答えを検討するよう求めている。被告側は、改めて書面にして回答するように」と指示された。

 裁判後、青山外苑弁護士事務所で開かれた支援者集会には、原告被害者の田中時枝さんが所属する東京教区をはじめ横浜教区、さいたま教区などの一般信徒、司祭、シスターなど30人以上が参加。田中さんへの激励の声の一方で、「なぜ、神言会は、被害者の訴えを認めず、組織を守ろうとし続けるのか、理解できない」「被告弁護人の対応は、余りにも不誠実で、お粗末」「司祭を信じる気持ちを使っての性的虐待は最悪」「カトリックの雑誌を編集している私のところにも、他の被害者からの訴えが寄せられているが、修道会などの対応は皆同じだ。日本の教会、特に高位聖職者には問題意識が感じられない」と修道会や日本の教会の聖職者の性的虐待への対応に批判が続出。「知人のシスターから、修道会司祭から虐待を受けたが、声を上げられずにいる、という苦しみを訴えられた。”事なかれ主義がいまだに横行している」と訴える声も出された。

 次回は3月11日午後2時半から同裁判所615法廷、次々回は6月3日午後3時から開く予定だ。

2026年2月9日

☩「性的虐待事件への対応で、真実、正義、慈愛を守るように」ー教皇、バチカンの教理省総会参加者に指示

(2026.1.30 Crux   Nicole Winfield, Associated Press)

 ローマ 発— 教皇レオ14世は1月29日、バチカン教理省の総会での挨拶で、「聖職者による性的虐待事件を裁決する際には、真実、正義、慈愛を堅持するように」と求められた。これは、世界中でカトリック教会の信頼性を傷つけたスキャンダルに対処するための慎重なアプローチを確認するものだ。

 教皇は挨拶で、虐待問題についてごく一部にしか触れなかったが、言わなかったことは、彼が言ったことよりも重要だった。被害者に全く言及せず、教理省は”司牧事務所”ではなく、”教会裁判所”として機能すべきだと考えていることを示唆した。

 バチカンの未成年者・弱者保護委員会は、性的虐待被害者の主な相談窓口となっている。前任のフランシスコ教皇はこの委員会を教理省の一部としたが、レオ14世は両者を機能的に分離させる意向のようだ。29日の教皇と教理省幹部・職員の会見には、同委員会の関係者は誰も参加しなかった。

 教皇は29日の挨拶で、若年者に性的虐待・暴行をした司祭に対して教会法に基づく調査・処罰責任を負う宗教上の上長を歓迎し、支援すべきだ、とし、「これは非常に繊細な司牧領域であり、正義・真実・慈愛の要件が常に尊重されることが不可欠です」と言明した。

 教会法専門家のレオ14世が今週初め、ローマ法廷(ローマ・ロタ)と呼ばれるバチカン裁判所と会談した際にも、同様の点を指摘し、「真実の探求において正義と慈善のバランスを取る必要性」を訴えた。

 教皇の母国米国で聖職者による虐待スキャンダルがマスコミに暴かれてから20年が経った今、教皇は虐待事件への対応で概して慎重な姿勢を示しているように見える。「教会指導者は被害者の声にもっと耳を傾けるべきだ」と主張する一方、「司祭の権利がより適切に保護されること」にも関心を示している。

 だが、世界各国の枢機卿を招集しての1月7,8日の臨時枢機卿会議で、教皇は「虐待危機は決して終わっていない」と述べ、「教会指導者は被害者に真に積極的に耳を傾け、寄り添う努力を強化すべきだ… 私たちは、目も心も閉ざしてはならない」と語った。「被害者の苦痛は、受け入れられず、声を聞いてもらえないと感じたために、しばしばより大きなものとなっている」とも。

 

*性的虐待と隠蔽で問題を起こした修道会の関連信徒団体と会見した教皇は…

 偶然かもしれないが、教皇は29日のバチカン教理省の総会参加者への挨拶の後、修道会Legion of Christ religious orderの関連の信徒団体、Regnum Christiの総会参加者たちとの会見に臨んだ。

 メキシコを拠点とするこの修道会は、20世紀のカトリック教会における聖職者による性的虐待と隠蔽の最も悪質な事例となった。バチカンは2006年、創設者マルシャル・マシエル神父に終身の悔い改めと祈りを命じたが、その決定は、マシエルが小児性愛者、詐欺師、薬物依存者、宗教的詐欺師であるという50年にわたる信頼できる報告を無視した後のことだった。

 教皇は総会参加者たちへの挨拶で、Legion of Christ religious orderには触れず、創設者で2008年に死去したマシエルについても言及しなかったが、マシエルの犯罪が発覚した2010年にバチカンが命じた改革が、依然として進行中であることを示唆した。「Regnum Christiは、その存在を正当化する独自の霊的霊感(教会用語でカリスマと呼ばれるもの)をより明確に定義し、新たな統治様式を見出す必要がある」と指摘した。

 バチカンによるLegion of Christ religious orderとRegnum Christiの調査では、権威の乱用や上層部による権力行使の方法など、カルト的組織に根深い問題が確認され、「浄化」のプロセスが必要だ、とされている。

 教皇は「真に福音的な統治は、常に奉仕に向けられている。それは各メンバーを支え、伴走し、救い主に日々近づくよう助けるものだ」と述べ、「新たな統治モデルを試みることを恐れるべきではない。むしろ、権力行使の独自の様式を共同で模索することは、社会と個人を豊かにし、共通の使命への帰属意識と参加意識を強める道を開くのだと心に留めておくのが良い」と強調している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年1月31日

・数十人の女性から告発されたブラジルの元司祭、まず、3歳児への強姦罪で有罪判決(Crux)

(2026.1.21 Crux   Contributer  Eduardo Campos Lima

 サンパウロ発―ブラジルで数十人の女性から性的虐待で訴えられている元司祭が、2016年に3歳の女児を強姦した罪で先週、懲役24年9ヶ月の判決を受けた。また別の被害者に対しては、3万ブラジルレアル(約5580米ドル)の賠償金を支払うよう命じられた。

 元司祭は78歳のベルナルディーノ・バチスタ・ドス・サントス。幼児強姦は、女児がミナスジェライス州ティロス市にある元司祭の所有する田舎の別荘を訪れた際に起きた。彼女は母親に被害を伝え、複数の目撃者が被害者の泣き声を聞いたと証言した。母娘は現在ブラジル国外に居住している。当初、司祭を告訴するのをためらっていたが、別の幼い子供が虐待されていることを知って、告訴に踏み切った。

 ドス・サントスの有罪判決は、34歳の弁護士でこの男の被害者でもあるカロリナ・ロシャを喜ばせた。彼女は同司祭を告発した女性グループのリーダーでもある。「彼が有罪判決を受けるなんて、夢にも思わなかった」とロシャはCruxに語った。性的虐待を受けたのは1999年、わずか8歳の時だった。「私の家族は熱心なカトリック信者で、ベロオリゾンテのドス・サントスが司祭を務める教区の活動に積極的に参加しており、両親は彼と友人関係にありました」。

 ところが両親が離婚することになり、彼女と母親は近隣の家族と共に、司祭から牧場へ招待されて宿泊し、「朝、母がパンを買いに出かけた後、司祭が、まだ寝ていた私に突然、覆いかぶさり、性器を触り始めた。怖くて逃げ出し、母親が戻るまで木々の間に隠れていた。被害を知った母親が司祭に抗議すると、「子供は”想像”するものだ」と認めようとしなかった。彼らはその後も教会に通い続けたが、母親は二度と彼女を司祭と二人きりにしなかった。「絶望的な状況だった。教会で彼と会わねばならず、死ぬほど怖かった。初聖体の式が間もなくありましたが、涙を止められなかった」とロシャは語った。

 ドス・サントスはあらゆる機会を利用して子供を虐待したという。牧場への訪問、自宅や教会の聖具室での出会い、告解の時など。助任司祭としての職務に加え、ドス・サントスは教区付属の私立学校の校長も務めていた。「彼はいつも子供たちに、告解のために一人で部屋に入るよう要求したが、私の場合は、あの事があった時以後は、母が一緒に来てくれた」という。

 年月が経つにつれ、彼女は虐待の悪い記憶を押しやり、やがて考えることさえやめようとした。時にはそれが「ただの夢だった」とさえ思うこともあった。だが、多くの感情的な問題を抱えるようになり、摂食障害やパニック障害に悩み、長期にわたって精神科医の処方する薬を飲まなければならなかった。そして数年前、セラピーのセッションでようやくその出来事を話すことができた。

 2021年になってロシャはドス・サントスを称賛するブログ記事を見たが、彼が「性的捕食者」だと批判するコメントも多く載せられていた。そこで、自分の電話番号を載せ、他の被害者に、自分と連絡を取るよう呼びかけ、被害者グループが出来上がった。「記者が私の呼びかけをブログで読み、取材を受けました。その記事がきっかけで、警察はドス・サントスに対する捜査を始めたのです」。警察の捜査と並行して、ベロオリゾンテ大司教区も同司祭に対する調査を開始、2021年11月に司祭職を停止した。

 事件報道を受けて彼女に連絡する女性が増え、これまでに73人の被害者がドス・サントスの犯罪について彼女に話したという。ロシャによれば、2024年にドス・サントスが逮捕された時、これまで、何の連絡もしてこなかったベロオリゾンテ大司教区が彼女に接触してきた。当時、教会側は「司祭は既にバチカンによって聖職を追われている」として責任を回避しようとしたが、ニュースサイト『G1』が2024年版の大司教区名簿にドス・サントスの名前が掲載されていることを見つけ、それが報道されてから、彼の名前は名簿から削除された。

 ドス・サントスの被害者を代理するアナ・カロリーナ・オリベイラ弁護士は「ほとんどの事件がすでに時効を迎えている。ドス・サントスは1975年に児童への虐待を始めた。多くの被害者は、こうした性的犯罪について心を開くまでに何十年もかかります」とCruxに語った。「被害者たちの年齢は犯罪発生当時3歳から11歳だった。大半は少女でしたが、ここ数年で数名の男性もドス・サントスによる虐待を訴えている」という。

 「ドス・サントスの有罪判決後、さらに被害者が名乗り出てくるでしょう。そしておそらく、まだ時効にかかっていない犯罪が裁判に持ち込まれるでしょう。賠償金の支払いを命じた判決についても控訴します。200万ブラジルレアル(約37万2千米ドル)の賠償金支払いを求めたが、判決の額ははるかに少なかった。しかし調査中に彼がティロスに持っていた不動産を400万ブラジルレアル(約74万4千米ドル)で売却した事実を突き止めました。支払い能力は十分あります」とオリベイラは語った。

 また彼女は、大司教区が数十年前からドス・サントスが性的虐待を犯していたことを知りながら、何の対応も取らなかった、と述べた。「私たちは、大司教区が2000年代初頭から事態を把握していた証拠を入手しています。ですから、この元司祭だけでなく教会も対象とした集団訴訟を計画中です」と述べた。

 ドス・サントスは現在自宅軟禁中だ。弁護人のレオナルド・ディニズはCruxに声明を送り、「ティロス地方裁判所が言い渡した判決の根拠となった事実は一切発生していないことを、技術的かつ慎重な方法で示す控訴を準備中だ。判決の完全な覆しと、それに伴う被告人の無罪判決を求める」とし、「被告の有罪判決は不当。被害者とされる人物が警察捜査中も法廷でも一度も聴取されず、事件記録に彼女自身の直接証言が一切存在しないからだ。検察側の立証根拠は全て被害者の家族による供述に限定され、不可欠な技術的証拠や直接的証言証拠が全く提出されていない」と主張。

 ディニズによれば、検察庁自体が「被害児童の聴取請求を取り下げた。その理由は、彼女が現在ブラジル国外に居住しているため、事実関係の有効な認定が不可能となり、対審手続と完全な防御権が著しく損なわれるという事情による。ドス・サントスは被害者とされる人物すら知らない」と指摘した。

 カロリナ・ロシャをはじめとする多くの被害者は、ドス・サントスに対する訴訟を今後も見守り続ける。「加害者は、今も教区近くに住んでいる。今でも教区の多くの人々が私を侮辱する。コミュニティは私に反発した。数多くの精神的後遺症と向き合い続けねばなりません。信仰は失わなかったが、今では教会の話を聞くことすらできず、ミサや洗礼式に出席すると気分が悪くなる」とロシャはCruxに訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2026年1月22日

改・教皇、米ニューヨーク大司教に同郷出身のヒックス司教を任命ー初仕事は3億ドルの性的虐待被害者補償の基金の監督(Crux)

(2025.12.18  Crux   Nicole Winfield,  Associated Press)

 ローマ発―教皇レオ14世が18日、これまでで最も重要な米国の司教人事を行い、イリノイ州ジョリエット教区長のロナルド・ヒックス司教(58)をニューヨーク大司教に任命した。同大司教区は米国最大級であり、トランプ政権とその移民取り締まり政策との関係を模索する中で指導力を発揮することになる。Archbishop Ronald Hicks, the new Archbishop of New York

 ヒックス新大司教は、米国カトリック教会で保守派の重鎮として知られるティモシー・ドーラン枢機卿の後任となるが、先週、同枢機卿が性的虐待被害者に対する補償金支払いのための3億ドル(約450億円)の基金をニューヨーク大司教区に設立する計画を最終決定した直後でもある。ドーラン枢機卿は今年2月、司教定年である75歳になったため、辞表を教皇に提出していたが、大司教区の性的虐待問題と被害者補償に区切りがつくまで、辞表の受理が保留になっていた。

 同枢機卿の大司教退任は、教会にとって重要な新章の始まりだ。シカゴ生まれのプレボストがが初の米国人教皇、レオ14世として新時代を切り開く中、教皇と米国カトリック教会指導部は既に移民問題などでトランプ政権に異議を唱える姿勢を示しており、ヒックスはまさに”レオ派の司教”と見なされている。

 

 

 

*移民との連帯を呼びかける

 ヒックス新大司教はイリノイ州サウスホランドで育った。ここはレオ(旧名ロバート・プレヴォスト)が幼少期を過ごしたシカゴ郊外の自宅から近い場所だ。ペルーで20年間宣教師を務めたプレヴォスト同様、ヒックスもエルサルバドルで5年間活動し、ラテンアメリカとカリブ海地域の9か国で運営される教会系孤児院プログラムを統括した。

 「ニューヨーク大司教という新たな職責は重大だが、ヒックス司教ならその任務に十分耐えられる」と語るのは、1980年代半ばからヒックスを知り、シカゴ大司教区神学校であるマンデレイン神学校で共に働いたエウゼビウス・マルティス神父だ。

 「ニューヨークは彼を得て幸運だ。彼は素晴らしい人物。常に思慮深く、神学生が必要としていることに気を配っている」と、ローマのベネディクト大学付属サンタンセルモ典礼神学研究所の秘跡神学教授マルティスは電子メールで述べた。

 昨年11月、ヒックスはトランプ政権の移民一斉摘発(特にシカゴを標的としたもの)を非難する米国カトリック司教会議の特別声明を支持した。カトリック教徒にこのメッセージの共有を促す声明の中で、ヒックスは「このメッセージは、私たちの懸念、反対、希望を明確かつ確信をもって表明し、すべての兄弟姉妹との連帯を確かなものとする。それは人間の尊厳に関するカトリック社会教説への教会の揺るぎない献身と、有意義な移民改革への呼びかけに根ざしている」と強調した。

*教皇レオ14世に近い出身、宣教師としての経験

 教皇とヒックスは二人ともシカゴ出身だが、ヒックスが将来の教皇と初めて会ったのは2024年だった。当時プレヴォスト枢機卿がヒックスの管轄教区の一つを訪問し、一般市民との質疑応答に参加した際のことである。最前列に座っていたヒックスは、その日、プレヴォストが将来どのような教皇になるかを悟り、公の場での発言と、その後の一対一の会話の両方に好感を抱いたと語る。

 「二人の会話は、5分が10分に、10分が15分に、15分が20分になりました」と、ヒックスはレオの5月の選出後、地元シカゴのWGN-TVニュースに語った。彼は、互いの共通の背景と「架け橋を築く」という優先事項を認識したと語った。「文字通り同じ半径内、同じ地域で育った。同じ公園で遊び、同じプールで泳ぎ、同じピザ屋が好きでした」。

 ヒックスはシカゴで教区司祭を務め、マンデレイン神学校の教育部長を経て、2015年にシカゴ大司教ブラズ・クピッチによって大司教区の副司教に任命された。3年後、ヒックスは補佐司教に任命され、2020年に、教皇フランシスコによってジョリエット教区司教に任命された。同教区は7郡にまたがり、約52万人のカトリック信者を管轄している。

 米国教会内で進歩派と見なされるクピッチは、教皇フランシスコと教皇レオ14世の2人の側近として知られ、ヒックスの重要なポストへの任命は、クピッチの推薦なしには実現しなかった可能性が高い。

*ニューヨーク大司教区は

 

 ニューヨーク大司教区は国内最大級で、ニューヨーク市のマンハッタン、ブロンクス、スタテンアイランドに加え、北部の7郡にまたがる約250万人のカトリック教徒を管轄している。

 社交的なドーラン枢機卿は、米国で最も知名度の高いカトリック指導者の一人であり、同市における有力な発言者だ。ドーランは保守派と見なされることが多く、2018年にはウォール・ストリート・ジャーナル紙に「民主党はカトリック教徒を見捨てた」と題するコラムを寄稿した。しかし2023年には、LGBTQ+カトリック教徒向け支援プログラムを称えるフォーダム大学での会議に歓迎のメッセージを送り、市の聖パトリックの日パレードへのLGBTQ+参加も歓迎している。

 ドーランは、トランプ共和党政権ともつながりがある。ニューヨーク大司教として、カトリックの慈善団体に数百万ドルもの寄付を集める毎年恒例の「アル・スミス・ホワイトタイ・ディナー」を主催した。このディナーは、伝統的に、選挙日を前に、両党の候補者が気さくな冗談を言い合う場となってきたが、2024年は、民主党の候補者カマラ・ハリスが招待を辞退したため、ドナルド・トランプだけが参加した。

 故郷のニューヨーク市と長年のつながりがあるトランプは、後にこの枢機卿に就任式で祈りを捧げさせ、ドーランを自身が設立した「宗教の自由委員会」に任命した。ドーランは、教皇フランシスコの後継者としてトランプが選んだ人物だった。しかし、5月のコンクラーベ(最終的にレオが選出された)の前に、カトリック教徒ではないトランプが教皇の衣装を着たAI生成の画像を共有した大統領を、ドーランは批判した。

 ドーランは、ミルウォーキーの大司教を務めた後、2009年2月に教皇ベネディクト16世からニューヨークの大司教に任命された。2012年に枢機卿に任命され、2010年から2013年まで米国司教会議の議長を務めた。

 

 

*大司教としての初仕事は、虐待被害者への和解金支払いの監督

 ヒックスが最初に担う最大の任務の一つは、ドーランが最終決定した虐待被害者への和解金基金の実施を監督することだ。この基金は、大司教区の予算削減と資産売却によって賄われる。目的は、大司教区に対して未解決の約1300件の虐待被害者請求のほとんど、あるいは全てに対する和解金を支払うことにある。ヒックスは虐待スキャンダルの後始末に慣れている。前任者たちが率いたジョリエット教区とイリノイ州の他の教会は、2023年に州司法長官から痛烈な批判を受けたからだ。

 5年間にわたる調査で、1950年から2019年にかけてイリノイ州で451人のカトリック聖職者が1,997人の児童を虐待した事実が判明した。ヒックスは2020年にジョリエット教区の長に任命された。司法長官の報告書は、教区の現行の児童保護方針を概ね肯定的に評価したものの、前任のジョリエット教区長らが既知の虐待者を転任させ、被害者を貶め、虐待を助長した自らの役割に対する責任を認めなかった複数の事例を文書で記録している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年12月19日

・聖職者の性的虐待で『神言会裁判」第12回ー被告側の不誠実な対応が如実に

(2025.12.2 カトリック・あい)

 聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が、所属(当時)修道会・神言会に損害賠償を求める裁判の第12回が12月1日、東京地方裁判所で、原告支援者など30人を超す人々が傍聴する中で開かれた。次回は来年の2月9日、次々回は3月11日で、原告、被告の証人尋問はそれ以降となる。

 この日の裁判のやり取りは、原告、被告双方が事前に提出した準備書面をもとに行われた。被告・神言会側が出した書面について、原告側が「引用されている文章に、出典が明らかにされていない。これでは証拠にならない」などと指摘したのに対し、説得力のある答えはなかった。

 また、前回の裁判で、被告側が、準備書面で、性的虐待を働いたとされる神言会所属の司祭(当時)について、2019年に長崎教区の教会から東京教区の吉祥寺教会に異動したが、この異動は「本裁判で取り上げられている件に関連してなされたものではなかった」との趣旨が述べられていた。

 これについて、原告側は、「関連してなされたものでない、と言うなら、それを裏付けるような異動の基準が神言会にはあるはずではないか」などと説明を求めたのに対し、被告側は即答できず、「確認してから答える」と説明を先延ばしていたが、今回の裁判に提出した書面では、「知らない」という答えに留まっている。

 このように、第三者から見れば、不誠実と見られる被告・神言会側の対応には、これまで12回の裁判に苦しみをこらえて毎回出廷している原告に対して一度も出廷したことのない被告当事者の神言会の「原告・被害者の長年にわたる苦しみを全く理解しようとしない姿勢が露骨に現れている」と批判する声も、傍聴した原告支援者の間から強く出された。

 裁判後の支援者たちへの説明で、原告代理人の秋田一惠弁護士はこれまでの裁判で浮かび上がって来た神言会の対応の問題点について整理した。

 第一に、原告が問題にしている被告・神言会の司祭(当時)の行為は、読書や散歩のように”業務外”の行為で、会があずかり知らぬこと、と被告側が主張していること。修道会司祭は、神と人に一日24時間奉献することが”業務“とされているはずであり、このような”新“解釈が、カトリック教会として認められることは、ありえないのではないか。

 第二に、加害司祭は、原告・被害者の女性の告解を聴き、その内容を性的虐待に利用したが、告解の秘跡をそのように悪用することは言語道断の行為ではないのか。

そして第三に、加害司祭に対して、事件が発覚した後、会は100万円を渡して、海外に出したことが、内部文書で明らかになっている。裁判で被告側はたびたび「どこにいるか知らない」としていたが、会は本人とたびたび連絡を取っており、その後、本人は司祭を辞めて、日本に戻り、被害者とは関係のない女性と結婚し、その女性から会に報告があった後も、「どこにいるか知らない」と言い続けた。あげくに、居場所が知られると、今度は「彼は原告が主張するようなこと(性的虐待)はしていない」と言い方を変えるなど、主張に一貫性が無く、説得力もない、などを挙げている。

原告代理人は、神言会は、原告・被害者を苦しませ続けている自らの対応について反省するどころか、もみ消しを図ろうとする意図が、裁判を重ねることに明確になっている、とし、今後は証人喚問などを通して、被告・神言会の非をさらに追及していく方針だ。

2025年12月2日

・教皇、性的虐待疑惑で調査中のスペインの司教の辞表を(CRUX)

(2025.11.22  Crux   Nicole WinfieldAssociated Press)

2025年11月23日

・「少年への性的虐待でスペインの司教が教皇に辞表を受理される可能性」とスペイン司教協議会会長

 (2025.11.18 Crux  Fionn Shiner)

(スペイン・カディスの大聖堂=クレジット:ウィキメディア)

    スペイン司教協議会(CEE)会長のルイス・アルグエロ大司教が16日、教皇レオ14世が、少年たちに性的虐待をした同国カディス・セウタのラファエル・ソルノサ司教に対する調査が行われていることをご存じで、司教の辞表を「間もなく受理される可能性がある」と述べた。Pope Leo is aware of investigation into Spanish Bishop of Cádiz

 ソルノサ司教に対する調査についてアルグエロ大司教が説明したところによると、同司教は1990年代、ゲタフェ教区司祭兼神学校長在任中に14歳から21歳までの少年を性的虐待した疑いで教会法上の調査を受けている。

 大司教は「現時点では、推定無罪の原則により、告発者の主張の真実性を判断するための手続きが進行中だ」とし、「教皇はこの件を承知されている。当然ながら、これは教会法に基づく対応だ。民事裁判では時効が成立しているため、これが正しい処置であると確認された」と説明。

 ソルノサ司教の辞表の受理の可能性については「教皇本人からではなく別の筋から、辞表が近く受理される可能性がある、との情報を得ている… 辞任を受諾し、後任者や管理者を任命するのは教皇であり、当然、この件は教皇は報告される」と付け加えた。

 また、アルグエロ大司教は、教会は「もはや世俗化されていない、脱世俗化したスペイン社会」で活動しているにもかかわらず、「最近のスペインにおける福音宣教の取り組みから得られた多くの良い成果を教皇に伝えた。例えば、今年、神学生の数が昨年より100人以上増えたことなどだ」と述べた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年11月19日

(評論)教皇、ベルギーの性的虐待被害者と3時間の面談ー”ルプニク”の被害者はいつまで”忍耐”を求められるのか(Crux)

 教皇レオ14世が8日、聖職者による性的虐待の被害者15名のグループと面会した。全員がベルギー人で、未成年の時期に虐待を受けた。その多くは2024年9月の教皇フランシスコの同国訪問時に面会に参加していた。

 バチカン報道局が8日夕に記者団に送付した声明によると、面会は「約3時間」にわたり、「被害者との親密さ、深いながらも痛みを伴う傾聴と対話の雰囲気」の中で行われた。

 バチカンの公式報道機関であるVatican Newsによると、教皇庁未成年者・弱者保護委員会(PCPM)のメンバーは8日、被害者たちの教皇との面談に同行。それに先立って、PCPMが別途、被害者たちと会い、7月にPCPM代表団がベルギーを訪問した際に始まった対話を継続したという。

 

*教皇は聖的虐待被害者たちに「忍耐」を求めた

 

 教皇はこれより前、4日に教皇別邸カステル・ガンドルフォからバチカンに戻られる際、記者団の聖職者による虐待被害に関する質問に、被害者たちに忍耐を求める発言をした。その率直さゆえに衝撃的だったが、いくつかの関連する理由から、その衝撃が示す以上に非常に被害者たちに対する大きな要求でもあった。

 記者団に教皇はこう語った—「被害者の方々に忍耐を求めるのは非常に難しいことだと承知しています… しかし教会は、全ての人々の権利を尊重せねばなりません。 『有罪が証明されるまでは無罪』という原則は教会においても真実です」と。

 この発言は誤りではないが、(多くの人、特に被害者にとって)いかに不快に響いたかを理解するには、彼が答えていた質問の背景を知る必要がある。それは、数十年にわたり司法の裁きを逃れ、今もなお司祭としての地位を保ち、告発内容にもかかわらず司祭としての権限を完全に保持しているように見える、悪名高い有名芸術家の存在だ。

 つまり教皇の発言の具体的文脈は発言内容そのものと同等に重要であり、彼が特に言及した被害者たちが「教会において、司法の歯車が全く動いていない」と疑うのには、当然の理由があるのだ。

*記者団は性的虐待で悪名高い「ルプニク」の扱いについ質問したのだが…

 

 教皇の発言は、スロベニア人司祭で元イエズス会士、現在は母国のコペル教区に所属しているが、ローマ在住と報じられているマルコ・ルプニク神父の事件に関する記者の質問に答えたものだった。

 ルプニクは複数の証人(バチカン自身の調査官によれば「極めて信頼性が高い」とされる)から、約30年間にわたって、数十人(大半が女性修道者で、うち数名はルプニクが母国スロベニアで設立に関わった修道会に所属)に対し、精神的・心理的・性的虐待を繰り返し行った、として告発されている。

 

 

*イエズス会やバチカンの有力者は”ルプニク”に目をつぶり、放置し、被害者たちをさらに傷つけた

 

 ルプニクは、モザイク教会芸術家として、また講演者、黙想指導者として、非常に人気の高い霊的指導者として、世界的な名声を得ていた。その一方で、性的虐待行為が根深いものであると信憑性のある主張がなされている。一方、イエズス会やバチカンの有力者たちは、彼に対する苦情に目をつぶるか、あるいは(これもまた主張されていることだが)告発者たちの信用を傷つけるために積極的に動いた。

 要するに、ルプニクを告発した者たちは数十年にわたり忍耐強く待ってきた。世界中の他の被害者たちも同様だ。レオ14世(教皇フランシスコ)が前任者から不浄な混乱を引き継いだのは事実であり、特にルプニク事件に関してはそう言える。ルプニクを告発した者たち、そして被害者全般が、教皇の言葉が被害者やスキャンダルに憤る信徒の忍耐力を過大評価していると受け取ったとしても、それは許されるかもしれない。たとえ彼らが、被害者や憤慨した信徒の忍耐力の欠如を示唆する意図がなかったとしても。

 ルプニクが、「かつて所属したイエズス会の元上司たちや、自身がイエズス会士である教皇フランシスコを含むバチカン当局者から、並外れて寛大に扱われている」という不満が頻繁に、そしてあらゆる基準で合理的に提起されている。フランシスコはルプニクを私邸に招き、ルプニクの事件の深刻な詳細が公けになった後も、アパレシーダでのマリア会議参加者へのビデオメッセージでルプニクを”小道具”として利用したことがある。

 「「マルコ・ルプニクが告発されている非常に深刻な犯罪について、信頼性のある告発がなされた場合、英国の法律では、その人物は裁判を待つ間、拘置所に勾留されることになっている」と、英国を拠点とする被害者支援団体LOUDfenceの活動家アントニア・ソボッキはCruxに語った。

 「これは『推定有罪』ではない。公衆を保護するための適切な注意義務の履行です… こうした行為で信憑性のある告発を受けた人物を地域社会で自由な状態に置くことは、中立的な行為ではありません。無実の人々を危険に晒すからです」。

 

 イエズス会は2023年、ルプニクを「不服従」を理由に(告発された犯罪への罰ではなく)除名したが、この元イエズス会士は、母国で彼を司祭として受け入れる教区をすぐに見つけた。2020年にはローマ教皇庁の四旬節黙想会で説教した。説教者が受け得る最高の栄誉と広く認められているものだ。バチカンの秘密の調査委員会が密かに「第六戒に反する罪の共犯者を赦免」と判定した後でのことだった。つまり、何らかの不法な性的関係を持った人物に「秘跡的赦免」を与えたのだ。そして、その後、秘密の裁判官たちが秘密裏に破門を宣告し、また秘密裏に解除した。

 イエズス会はルプニクに秘密裏に制限を課したが、彼は公然とそれを無視した。かつての上司たちがそれを強制することを躊躇し、バチカンがこの件全体を秘密にしておきたい、としていると、”正しく”推測したからだ。彼は世界を駆け巡り、講演を行い、テープカットをし、称賛を集めた。

 ルプニクの信じがたいほど陰惨な物語のすべての恐ろしい紆余曲折を語るには一冊の本が必要だ。だがここでは、不名誉な元イエズス会士であるスロベニア人が、教皇フランシスコを含む数人の非常に高位の教会関係者による不可解な決定なしには可能ではなかったにせよ、「ほぼ逃げおおせるところだった」と述べるに留めよう。

*正義が行われるのが遅すぎる

 

 結局、フランシスコ教皇は、自身の「未成年者・弱者保護委員会」からの持続的な圧力と、世界的な激しい怒りに直面して、時効を放棄し、ルプニクに対する訴訟を進めることを決定した。これは2023年のことだった。事件が正式にバチカンに届けられてから4年以上(ローマや各地のイエズス会・バチカン関係者の間で疑惑が囁かれ始めてから数十年)、世間に明るみに出てから、ほぼ1年が経過していた。

 フランシスコ教皇が死去した時点でさえ、バチカンの教理省規律局は、事件を審理する裁判官の選定に苦慮していた。ルプニク裁判の5人の裁判官全員を選任した、とバチカンが発表したのは、ようやく先月、10月13日のことだった。

 被害者や支援者から「レイプ・アート(強姦芸術)」と頻繁に非難されるルプニクの作品の撤去を求める声が、被害者や支援者、スキャンダルに憤る信徒たちから続いている。

 「ルプニクの芸術作品への対応」という狭義の問題から一歩引いて見ると、関係者の間には、財務不正の疑いで告発されたジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチュ枢機卿に対する教皇フランシスコとバチカンの対応と、ルプニクが受けた扱いとの間に著しい不一致があることを指摘する声もある。

 フランシスコ教皇は、正式な起訴がされる前にベッチュ枢機卿をバチカン高官職から辞任させ、枢機卿としての権利を剥奪した。さらにバチカン市国の法律を改正し、同国内の刑事裁判所での裁判を可能にした。裁判でベッチュ枢機卿を有罪とされたが、彼は一貫して無罪を主張しており、現在も判決を不服として控訴中だ。バチカンは、いずれの過程においても裁判官を確保するのに何ら困難はなかったようだ。

 

*教皇は、正義の天秤をどう測ろうとしているのか

 教皇レオ14世は就任以来、週の初めをローマ郊外の別荘で過ごしており、月曜日にバチカンを離れ火曜日の夜に帰還することが多い。彼には考えるべきことが山積している。

 ルプニク事件の未解決問題—教会指導部が虐待と隠蔽の危機に対処できない根深い無力さの縮図と見なされることが多い—は、主にレオの前任者が「司法の天秤に指を挟むこと」を好んだ結果だ。

 外部から見れば、教会の指導者たち(少なくとも近年においては教皇を含む)は、金銭窃盗の疑いで告発された枢機卿を有罪とするためなら天をも動かす覚悟がある一方で、虐待加害者が決して裁かれないよう、足を引っ張るどころか、それ以上のことをいとわないように見える。

 レオ14世も、他のいかなる指導者も、同じ天秤に自らの指を置くことでこの問題を解決することはできない。

 要するに、教皇の記者たちへの答えがニュースになった理由は、ここにある。

 記者の一人、記録のために言えばEWTNニュースのマグダレナ・ウォリンスカ=レイディ―は、このように教皇に質問したのだ—「一部の虐待被害者や支援者たちは、ルプニク神父の芸術作品がバチカンを含む世界中の重要な教会や聖地に展示されていることが、彼らや多くの人々にとってトラウマであり、またスキャンダラスだ、と訴えています… 教会は、こうした芸術作品を覆い隠すか、あるいは撤去してもらいたい、という彼らの要望に、どのように敏感に対応できるでしょうか?」と。

*”ルプニク事件”の性的虐待犠牲者の忍耐は限界に達しつつある

 この質問に、教皇は、「確かに多くの場所で、被害を訴えた人々への配慮が必要だからこそ、(ルプニクの)作品は覆い隠されてきました( その一例がルルドの聖地だ。だが、バチカンを含む他の場所では、ルプニク作品が今も聖域を飾っている)。ウェブサイトからも削除されています」と答えた。これはバチカンのホーム・ページからルプニク作品が静かに消えたことを言っていると解釈される。

 続けて教皇は「新たな裁判が最近始まりました… (裁判官の任命も含めて)司法手続きには長い時間がかかります」と述べ、「始まったばかりのこの裁判が、関係者全員に明確さと正義をもたらすことを願っています」とした。

 ルプニク作品が存在する聖堂や礼拝堂の責任者が作品を覆い隠すか撤去したいと望むなら、それは彼らの判断だ。この一連の騒動がもたらす動揺と不祥事は、被害者だけでなく、多くの人にとって、確かに苛立たしいものだ。

 教皇は『贖いの母』礼拝堂のルプニク作品を覆うよう命じることもできたはずだ。しかし、そうした行為は必然的に、そして極めて当然ながら、注目を集める裁判に影響を与える意図でなされたものと解釈されるだろう。その裁判の結果に対して、彼は公式かつ実質的に中立を保たねばならないのだ。教皇の思いが”純白の雪”のように清らかであったとしても、その行為自体が世論に影響を与え、裁判官の判断力に少なからず影響を及ぼす可能性が高い。

 ルプニク事件において教皇レオが成し得る最も重要なことは、「正義が実行され、それが実行されたと認識されることを保証すること」だ。

 とはいえ、遅れた正義は正義とは言えず、ルプニク事件における正義の実行はすでに長すぎるほど遅れている。無数の聖職者による虐待の被害者たちにとって、忍耐は限界に達しつつある。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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