「あなた方は、神の今日、教会の今日・・・教会にはあなた方が必要です。あなた方の参加で、教会はその使命を十分に果たすことができるのです」。
今年六月下旬に開かれたバチカン主催の国際若者フォーラム。世界百か国以上から集まった約二百五十人の若者たち に、教皇フランシスコはこのように呼びかけました。
【使徒的勧告「福音の喜び」を皮切りに】
若者の司牧と教会活動への若者の参加の推進―フランシスコは二〇一三年三月の教皇就任以来これまで、一貫して主要課題として取り組んでこられました。
まず、教皇就任八か月後に出された最初の使徒的勧告「福音の喜び」。ご自身の信仰、福音宣教の基本的立場を明確にされ、現代のカトリック教徒、教会のあるべき基本的スタンスを示される中で、教会の課題の一つとして若者に対する司牧を採り上げ、次のように訴えておられます。
「若者は人類の新たな動きの担い手であり、私たちの未来を拓く存在・・・現在の教会の仕組みでは、若者の抱える不安、欲求、問題、傷に対する答えを彼らが得られないことが多い。若者に対する司牧は、社会の変化の荒波を受け止め、取り組みを発展させねばなりません・・・」(105項から108項参照)
翌二〇一四年と二〇一五年と異例の二年連続の世界代表司教会議(シノドス)で、若者の司牧と不即不離の関係にある「家庭をめぐる諸問題と教会の対応」をテーマに議論を深め、その成果をもとに、二〇一六年四月に使徒的勧告「Amoris Laetitia(家庭における)愛の喜び」を発表。世界の家庭をめぐる現状とあるべき姿を具体的に示され、人間社会における役割の重要性を強調されました。
【若者シノドスと使徒的勧告「Christus vivit」】
この延長上で、二〇一八年十月に招集されたのが 「世界と教会の未来のカギを握る若者、その信仰と召命の識別」をテーマとしたシノドス。その成果をもとに今年四月に使徒的勧告「Christus vivit(仮訳:キリストは生きておられる)」を出されたのです。
この使徒的勧告は、九章から成り、日本語の概要は、筆者が主宰するカトリック・ネット・マガジン「カトリック・あい」 (注①) で6月から掲載中です。カトリック中央協議会は全文翻訳を9月初めに『キリストは生きている』というタイトルで出版しましたが、内容はもちろん、勧告が出たこともご存じない方が少なくないようなので、改めて概要を説明します。
【「あなたが“生きる”ことを望まれる」】
教皇は勧告の冒頭で、若者たちに次のように呼びかけます。
「キリストは生きておられます。キリストは私たちの希望、この世界で最も美しい若さです。キリストが触れる全てのものは、若返り、新たにされ、命にあふれます。ですから、私は最初に、一人ひとりの若いキリスト者にこの言葉を差し上げたい。『キリストは生きておられ、あなたが生きることを望まれる』」。
そして本文の第一章「神の御言葉は若者について何を言っているか?」では、イエスが「あなたがたの中で一番偉い人は、一番若い者のようになりなさい」と言われる一方で、「若い人たち、長老に従いなさい」と説いておられることを指摘します。
第二章「イエス・キリストは常に若い」では、イエスご自身の青年時代に着目し、「若いイエスと家族や人々との関係」を考えることが青少年司牧に役立つ、とされ、若いイエスに倣って「、「教会が過去に留まることなく、自由であること」を願われます。
第三章「あなたがたは、神の現在である」では「若者たちは未来だけでなく、まさに今、現在を生きている」。それゆえに「若者たちに耳を傾け、若者たちが置かれた様々な状況を知ることが大切」と強調。
第四章「すべての若者への偉大な知らせ」では、若者に告げるべき「三つの偉大な真理」として①.「神はあなたを愛しておられる」②「キリストはあなたを救う」③「キリストは生きておられる!」を示されます。
第五章「青年期の道のり」では、福音に照らされた若者たちがどのように青年期を過ごすべきかを考え、「人生をただ眺めていないで、不安や恐れに負けず、生きる」ように促し、自分を成長させるために常にイエスとつながり、他の人に心を開くように勧めます。
第六章「ルーツをもった若者」では、「ルーツを持たずして未来はありえず、世代間の断絶は世界によい結果をもたらさない」という確信を示します。
第七章「若者の司牧」で、「社会・文化的な変化に絶えずさらされ、時に青年たちの不安に回答を与えられない若者の司牧」の現状を認めたうえで、若者たち自身が「主役となり、司牧者らの指導のもとに、創造的で大胆な新しい道を切り開いていく」ことを希望。
カトリックの教育者たちには、「若者たちの自由を尊重しながら寄り添い、裁くのでなく、耳を傾けることが大切」と注意されます。
第八章「召命」では、神が一人ひとりに望まれる計画に触れ、結婚し、家庭を持つことを恐れないよう若者たちを励ますとともに、神に奉献する生き方も重視し、「神の呼びかけを知り、従うことは、あなたの人生を満ち満てるものにする」とその意義を説きます。
最終章の第九章「識別」では、自分の召命を見つけるために必要な「孤独と沈黙」に触れ、「若者たちの召命への歩みを助ける者」に求められるのは、「注意深く耳を傾ける力」「誘惑と恵み、真理と偽りの違いを見極める力」「本当に相手が行いたいもの、到達したいものを知る力」だとしています。
【スマホの功罪、難民、性的虐待問題も】
勧告は若者たちを取り巻く現代社会の問題と必要な対応などについて、二百九十九項目にわたって詳細に語られており、理解と実践には、全文をお読みになることをお勧めします。 (注②)
例えば、スマホに象徴される「デジタルの世界」に言及した箇所では、「コミュニケーションの新たな方法」の創出、「独自の情報の循環」の促進、ウエブとソーシャル・ネットワークは「若い人々を関与させる、確立した場」の提供など、メリットがある反面、「孤独、巧みな操作、搾取、暴力、”闇サイト”の極端なケースに至る場となり得る・・・。デジタルの世界には巨大な経済的利益が存在」し、そこでは「良心と民主的な道筋を操るメカニズムを作り出す」危険がある、と警告します。
これ以外にも、移民・難民問題や、聖職者による性的虐待問題などに言及し、教会の若者司牧、若者自身が行動指針を具体的に立てていくうえで、数多くの示唆がされています。
教皇は使徒的勧告発表の直後、受難の主日(枝の主日)の正午の祈りの中で、すべての若者たちに対して、「勧告の中に、あなた方の人生、あなた方の信仰と兄弟たちへの奉仕を成長させる旅の、実り多い手がかりを見つけることができます」と、勧告を人生の指針として活用することを求め、世界の教会がそれを支援するよう強く訴えられました。
【勧告受け、世界各地で取り組みが始まった】
このような教皇の強い思いを受けた動きは既に米国はじめ多くの国で始まっています。
ごく最新では今年七月末から、この使徒的勧告をテーマにした神学者と若者たちの初の全米会合が、全米司教協議会の支援の下に開かれ、教皇フランシスコの歩みに付き従い、「一致と若者たちとの絆を深める方向に全米の教会を突き動かす機会」を作りました。
国際的な若者たちの集まりも、今年六月のバチカン主催の国際若者フォーラムに続いて、八月初めにローマで欧州二十か国以上、五千人の男女スカウトが 「Euromoot 2019 」を開き、ボスニア・ヘルツェゴビナで世界各国から五万人以上が参加して “Follow me”をテーマに若者フェスティバルが、さらに、これと前後して、キューバでは同国司教協議会主催で「全国青年の日大会」が開かれるなど、若者参加の教会を目指す動きが盛り上がっています。
【日本の教会は教皇の思いに応えているか?】
日本の教会はどうでしょう。このような教皇の若者への期待と思いの強さと対照的なのが、日本の教会、司教団の関心の薄さのように思われます。勧告のもとになった昨秋の若者シノドスには日本からも司教が参加していますが、ご本人からも司教団からも、何の報告も一般信徒にはされていません。
先の国際若者フォーラムに日本から参加した山田真人・NPO法人せいぼ理事長は「カトリック・あい」への寄稿の中で、「多くの国の若者たちとの交流を通じ、世界の国々と日本の教区の状況を比べて考えることができた」としたうえで、「日本では、第二バチカン公会議以降のシノドスの意義や、教区単位での具体的な実行などについて、考える機会が少なかったように思う」と率直に反省し、反省を今後の活動に生かすことに意欲を示しました。
昨年十一月に韓国・ソウル郊外で開かれた日韓司教交流会では、事前にビデオ収録した両国の若者の希望が放映されています。
日本の「カトリック青年連絡協議会」がまとめた日本の司教団への希望は①外国人信徒の交流を深めるための支援②青年の集まり、活動への司教たちの積極的な参加、意見交換 ③青年の活動拠点の確保④若者の信仰養成の指針、ビジョンの提示―でした。
残念ながら、こうした若者たちの意欲や希望を、日本の司教団として真剣に受け止め、具体的な行動を始めた、という話は、まだ、聞いたことがない。むしろ、教区を超えた活動では、彼らの方が先行しているようです。
【教区を超えた活動で若者たちが先行】
中央協議会の青少年委員会は九九八年に解散し、日本の教会としての青年に対する取り組みの体制が消滅しました。その逆境にもめげず、「教区を超えた支援の枠組みを残そう」と、札幌、東京、横浜、京都、鹿児島の五教区の青年や担当司祭有志が協力し、に「カトリック青年連絡協議会」を発足させたのは、二〇〇〇年のことでした。
今では、先の五教区に広島、名古屋、大阪の三教区の仲間が加わり、毎回百名以上が参加する教区持ち回りの全国青年の集い「NWM(ネットワークミーティング)」年二回開催をはじめ、各地の集いの広報や情報共有、企画のノウハウの共有、他教区に移る青年の信仰生活の支援や、カリタスジャパンなどカトリック団体との連携にも取り組んでいます。
来年五月には、箱根の富士箱根ランドを会場に、教皇の意を受けた「世界青年の日」日本版を開く予定です。
教会の現在と未来へ、若者たちの活躍に大きな期待をかける教皇が間もなく訪日される見通しになっていますが、日本の教会は、そのリーダーである司教団は、教皇訪日を前に、そして訪日後に、何ができるのか、何をすべきかー。若者たちとともに真剣に考え、歩むことが強く望まれます。
(「カトリック・あい」南條俊二)=発売中の「カトリック生活」10月号の教皇来日特集に掲載しています)
使徒的勧告「Christus vivit」の全文は、英独仏など主要国語版が公表されており、英語版は次のアドレスでご覧になれます。
http://w2.vatican.va/content/francesco/en/apost_exhortations/documents/papa-Francesco_esortazione-ap_20190325_christus-vivit.html
(2019.9.20 カトリック・あい)
教皇フランシスコが11月下旬に来日されるが、教皇の側近、アントニオ・スパダロ師(La Civilta Cattolica編集長、イエズス会士)がその準備のため来日、19日に上智大学で「教皇フランシスコによる慈しみの地政学」をテーマに講演した。ご本人と主催者・上智大学の了解を得て、以下にその講演の内容を掲載します。
(文責「カトリック・あい」南條俊二)
・・・・・・・・・・・・
教皇フランシスコはその言動で、いつも人々を驚かせます。ですから、日本においでになった時に、どのようなお話をなさるのか、実際には”蓋を開けて”みないと分からないのですが、何回か教皇の海外訪問に同行し、身近に接してきた私の経験をもとに、お話ししたいと思います。私の話が、教皇の訪日の思い、意義を理解していただく一助となることを期待してお話を始めます。
*教皇フランシスコの外国訪問は常に「慈しみの旅」
まず、この講演のテーマ「教皇フランシスコの慈しみの地政学」です。教皇は今年1月の在バチカンの各国外交団への新年あいさつで「慈しみ」という言葉を8回使われました。昨年になさった外国司牧訪問は「慈しみ」の旅でした。旅の根底にあるものは「慈しみ」。それが教皇の地政学のビジョンとも言えます。教皇にとって、それは抽象的な概念ではありません。人々の生活の中にある神の心そのものなのです。
フランシスコが2013年春に教皇になられて、最初に私とのインタビューに応じてくださったのですが、お話の中で印象的だったのは「教会は”野戦病院”」という言葉でした。教皇はその後、教会のあり方を表現する際に、この言葉を何度もお使いになっていますが、この時が初めてでした-教会は野戦病院であり、野戦病院でなければ、教会ではないーと。もちろんその背景には、「慈しみ」があるのです。
*その実践の具体例は数多い
具体的に、教皇が「慈しみの地政学」をどのように実践されて来たのか、具体的に振り返ってみましょう。
まず、内戦が激化したシリアへの対応です。教皇は、2013年9月1日の「お告げの祈り」の中で、同月7日を「シリアと中東地域、全世界の平和のための断食と祈りの日」とすることを宣言。バチカンでの参加者10万人を超える祈りの集会で教皇は「暴力と戦争は決して平和をもたらさない」と訴えました。和平への働きかけは世界の宗教指導者たちにとどまらず、各国指導者にも書簡などで和平での努力を呼びかけ、さらに教皇の意を体したバチカン国務省が各国大使を集めて、対話と和解、分裂回避を目指すバチカンの外交方針を示すなど、具体的な取り組みが進められました。
次に中国です。教皇フランシスコは、2013年春の就任以来、バチカンが国交を持っていない中国との関係改善に意欲を示しておられます。教皇は2017年にミャンマー、バングラデシュを訪問され、そこでも中国の国際社会における役割の重要性を認識されました。教皇は語っておられますー中国は世界の大国。平和を求めるなら、中国の役割を考える必要がある、と。
ちょうど一年前、バチカンと中国政府が中国国内の司教任命について暫定合意しましたが、これ自体は司牧的。中国国内での司牧についての希望のメッセージですが、「到達点」ではなく、「出発点」です。これがそのまま、中国の信徒たちの環境が改善される、という保証はまだありませんが、バチカンと中国との関係改善は可能です。
中南米では、キューバと米国の関係改善に努めています。バチカンのパロリン国務長官は、バチカンが歴史を書き換えることはないが、”前進”させることを希望する、と語っています。武力紛争が長期化していたコロンビアにも紛争終結の努力を訴えられ、2016年6月に政府と左翼ゲリラ、コロンビア革命軍(FARC)が武力紛争終結の最終合意文書に署名に至りました。
深刻なミャンマーのロヒンギア難民の問題に対しても教皇は継続的な関わりを表明されており、ミャンマー、バングラデシュ訪問の際、バングラデシュの難民キャンプに生活しているときと会われました。私はその場に居合わせたのですが、教皇は涙を浮かべて彼らの訴えをお聞きになりました。とても感動的な瞬間でした。
教皇は、”世界を、政治とモラルの混同や、絶対的な善と悪で二分して見るのを嫌われます。世界は(注:善悪がはっきりした)”ハリウッド映画”ではない。常にいろいろな利害が対立し、ひしめき合っている。そうした中で、行動している人と会い、ソフトパワーを発揮して、善のために互いに努力するーそれが教皇のお考えです。
*原理主義的思考、カオスへの恐れを解消する「地政学」
教皇の考えておられる「地政学」は、原理主義的発想、カオスへの恐れを解消しようとするものです。「宗教イコール原理主義」の立場をとりません。宗教間の衝突、文明間の衝突とは関係しません。「カオスがある」と思うだけで、分断が起き、政治と宗教がくっついてしまう。政治的な成功に必要なのは、人々の間にカオスを増幅させ、煽動し、ありもしない恐怖を与えることだ、と言う人がいますが、教皇はこうした考えに反対します。平和を非暴力によって追求する、恐怖を与えるような言葉を使わない、という立場を明確にされています。
イスラム系のテロリストたちに、教皇は「彼らは可哀そうな犯罪者だ」と言われます。彼らを糾弾する一方で、”共感”を示されます。教皇は、2014年5月の聖地巡礼中にイエスがヨハネから洗礼を受けたとされるベタニアでなさった説教で、「テロリストたちは”放蕩息子”です。悪魔の化身ではありません」とも語っておられます。味方だけでなく、敵も愛する、ということです。
カトリックは、政治的な権力を保証する存在ではありません。ローマ帝国を継承するのはキリスト教会だ、という誘いに教皇は乗りません。錆びた鎧を脱ぎ、真の力―統合する力-を神に戻すこと。統合する力こそ、神のユニークさなのです。教皇は、米国の司教団とお会いになった時、十字架を世俗的な闘争の”横断幕”に、政治的な利益のために、使ってはならない、と言われました。教会の役割は、終末論から未来を見据え、神の国に向かって、正義と平和にこの世を導くことにある、と教皇は考えます。
*西欧のリーダーシップ喪失の危機に対し、アジアは多様性の中で若いエネルギーに溢れている
キリスト教を奉じていた西欧でリーダーシップの危機が起きる一方、アジアでは宗教的、精神的価値観が生き生きとしています。多様な文化、宗教。地政学的、人口動態的にも多様性に富み、様々な矛盾が存在する一方で、若いエネルギーに溢れている。フィリピンや東チモールを除いて、アジアでは、カトリック教徒は少数派。無数の宗教的伝統がひしめいている。仏教、キリスト教、イスラム教に、古くからの民俗信仰が交わっています。そうしたアジアの国々へ、宣教師たちが、現地の文化の中に入っていきました。
*教皇の”野戦病院外交”は”傷”に触れる癒しの行為
先の話に戻りますが、教皇が外国訪問でなさっているのは、”野戦病院外交”です。傷ついた人々、その象徴としての場所に触れ、癒すー抽象的でなく、具体的です。聖地巡礼でも、エルサレムの嘆きの壁に顔をお付けになった、それは癒しの行為でした。ナチのユダヤ人大量殺戮の現場となったアウシュヴィッツを訪れた時も、処刑の場所の壁に無言で手を触れられ、2017年末に武装集団による襲撃で多くの死者を出したカイロ郊外のコプト教会でも同様のことをなさいました。
キリストがなさったように、「傷」を癒し、人々を隔てている「壁」を「橋」に変える努力を行動で示し続けておられるのです。
今、地球上のあちこちで小型の”第三次世界大戦”が起きています。平和と正義が揺らいでいる。移民・難民、社会の中でのけ者にされた人々、その背景にアフリカの砂漠化進行なども要因になっている。コロンビアの場合もそうですが、不正、貧困の問題を無視しては和平を達成することはできません。「統合」を基礎に平和を作らねば、新たな紛争を生む。「共通善」を世界に広げることで、平和を実現していくーシンプル過ぎるかもしれませんが、それが「地政学的に慈しみを考える」ことにつながるのです。
*訪日のテーマ「すべてのいのちを守る」、教皇の願いは「命の福音」を伝えること
教皇フランシスコの今回の訪日のテーマは「すべてのいのちを守る」です。経済、環境の問題、津波や地震など自然災害、原発事故など、さまざまな課題を抱える日本に、キリストが伝えようとした「命の福音」を伝えたい、というのが教皇の願いです。核不拡散の戦いも重要です。日本人は平和の大切さをよく理解しておられます。
昨年11月にバチカンのギャラガー外務局長が 2018年ギャラハー・バチカン外務局長が来日した際も、そのことを強調され、教皇は一昨年の末に、長崎原爆被災直後に米国の従軍カメラマンが撮った「焼き場に立つ少年」の写真を複製し、裏に「戦争がもたらすもの」と題する小文を署名入りで印刷したカードをお配りになりました。広島、長崎訪問では、原爆犠牲者たちのために祈り、所有も含めた核兵器の廃絶を改めて訴えられる見通しで、来年に予定する国連での核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議での前向きの議論を促すことが期待されます。
教皇が司祭叙階した時から、ずっと日本での宣教を希望されていたことはよく知られています。健康上の理由から果たすことはできませんでしたが、16世紀にイエズス会士、フランシスコ・ザビエルが日本にキリスト教を伝えて以来、数々の迫害に耐え、司祭がいなくなっても、信徒たちが教えを伝え続けたことに、強い感銘を受けておられました。
教皇だけでなく、多くのイエズス会士にとって日本は魅力的な国であり続けました。そして、イエズス会日本管区からこの半世紀の間に、アルペ、ニコラスの二人のイエズス会のトップ、総長を輩出しています。上智大学の理事長、学長として大学教育に貢献され、グレゴリアン大学学長、そしてヨハネ・パウロ二世教皇に乞われてバチカンの教育次官・大司教になられたピタウ神父もおられます。
「神は、時速3マイル歩かれる」と言われます。それは、人が歩く場合の普通の速さ。つまり、神は、私たちの歩幅に合わせて、寄り添ってくださる、のです。速やかにすべての結果を出すことはできませんが、目標に向かって着実に歩むのを神は支えてくださるのです。そのような心で、「地政学的な観点」から教皇をお迎えし、見守っていただきたいと思います。
教皇フランシスコの11月来日がようやく正式発表されましたが、精神面も含めて準備の期間はあとわずかです。具体的な準備に携わっておられる方々はご苦労様ですが、私たちに何ができるでしょうか。
菊地・東京大司教が先日、教皇が10月を「福音宣教のための特別月間」と定められたのに合わせて、福音宣教への新たな熱意を教会内に生み出すような、個々の信徒のためのいくつかの提案をされています。
それは ①10月中の主日のミサの共同祈願に意向を加える
②教皇フランシスコの著作、メッセージなどを分かち合う
③「世界宣教の日」(10月20日)のカテドラルでの晩の祈り(午後5時)を聖体礼拝を伴う晩の祈りとする
④東京教区にゆかりのある信仰の先輩と出会う巡礼 ⑤アジアの教会同士で祈り合うプログラムへの参加、などです。
このうち②教皇フランシスコの著作、メッセージなどを分かち合うーのための、若干の材料をご紹介します。
まず、この「カトリック・あい」のご活用をお勧めします。「カトリック・あい」は2016年10月に創刊しましたが、その狙いの一つが「日本になかなか十分に届いていない教皇のメッセージを、可能な限りタイミングよく、きちんと届けること」でした。具体的に言えば、教皇が毎週、主日の正午の祈りの中でなさっている説教、そして水曜の一般謁見の際の講話を、ほぼ同時に、全訳あるいは抄訳として掲載することを創刊以来続けています。
また、教皇の出されている使徒的勧告、シノドスの動きなども時機を失することなく、”新鮮”さを失わないように、速やかに、できるだけわかりやすく、正確な日本語訳、概要を掲載することに努めています。これらは、創刊時から現在までのものを、全て検索してお読みになることができますので、すでに目を通されておられる方も含めて、是非、お役立ていただければ、と思います。
タイミング、と言えば、まさに9月13日の教皇来日の正式発表の直前、10日に「カトリック生活」(ドン・ボスコ社)の10月号が発行されました。「新しい時代を築く教皇フランシスコ」をテーマにした特集がされています。記事は「新しい時代の教皇」(阿部仲麻呂)「教皇の祈りの世界ネットワーク」(柳田敏洋)「教会の現在と未来へー教皇の若者に対する強い期待」(南條俊二)「教皇のダイナミズム」(戸口民也)など。サンパウロなどキリスト教系の書店で一冊200円+消費税で販売中です。
また、教皇就任直後に出版され、「教皇の今を理解するために必携の書」と好評を博し、現在も大手書店に置かれている「教皇フランシスコの挑戦-闇から光へ」(ポール・バレリー著、南條俊二訳)も、10月初旬に新装版として出版される予定です。本文は初版と変わりませんが、訳者あとがきで、教皇が就任されてから現在までの軌跡、問題、展望などを追加執筆しています。改めてお役立ていただければ幸いです。
11月に教皇をお迎えする心の準備を進めましょう。教皇フランシスコが健康で、活力あふれる旅をなさることができますように!
(「カトリック・あい」南條俊二)
(2019.10.24改定 カトリック中央協議会ニュース)
教皇フランシスコ訪日に向けて、特設サイトよりオフィシャルテーマソングが公開されました。
このテーマソングは、今回の来日テーマ「すべてのいのちを守るため 〜 PROTECT ALL LIFE 〜」の基となった、フランシスコ教皇の回勅『ラウダート・シ』(2015年発表)巻末に収められている「被造物とともにささげるキリスト者の祈り」から、着想を得て、制作されたものです。
当テーマソングは各会場で、BGMとして使用されるほか、東京や長崎で実施されるミサ等においてフランシスコ教皇に向けて披露される予定です。
このたび、ミュージックビデオと振付ビデオの2種類を公開いたしました。第266代教皇フランシスコの来日を前に、ぜひともご覧ください。
※カラオケバージョンも追加されています。(2019.10.24)
PROTECT ALL LIFE 〜時のしるし〜
VIDEO
オフィシャルテーマソング
VIDEO
オフィシャルテーマソング カラオケ
VIDEO
オフィシャルテーマソング 振付
VIDEO
オフィシャルテーマソング Instrumental
(2019.10.2 VaticanNews)
バチカン報道局は2日、32回目の海外訪問となる教皇フランシスコの11月19日から26日にかけてのタイ、日本訪問の詳細な日程を発表した。日本訪問の日程は以下の通り。
*2019 年 11 月 23 日(土)=バンコク-東京=09:30バンコク発・ 空路東京へ⇒17:40 東京国際空港(羽田空港)到着・歓迎式 ⇒ ローマ教皇庁大使館・司教との集い、教皇の講話
*2019 年 11 月 24 日(日)=東京-長崎-広島-東京=07:00 航空機にて長崎へ⇒09:20 長崎空港 到着⇒ 長崎爆心地公園・教皇の核兵器に関するメッセージ⇒日本二十六聖人殉教者への表敬・ 西坂公園・殉教の記念碑にて・教皇のメッセージ、教皇の挨拶、「お告げの祈り」⇒長崎大司教館・ 昼食⇒ 長崎県営野球場・ミサ、 教皇の説教⇒16:35 空路広島へ⇒17:45 広島空港 到着⇒広島平和記念公園・平和のための集い、 教皇のメッセージ⇒20:25 空路東京へ⇒22:10 羽田空港 到着
*2019 年 11 月 25 日(月)=東京=“ベルサール半蔵門”・東日本大震災被災者との集い、 教皇の講話⇒ 皇居・天皇陛下と御会見⇒ 東京カテドラル聖マリア大聖堂・青年との集い、教皇の講話⇒教皇庁大使館・教皇随行団と昼食 ⇒東京ドーム・ミサ、教皇の説教⇒首相官邸・安部首相と会談 、要人および外交団等との集い、 教皇の講話
*2019 年 11 月 26 日(火)=東京-ローマ=上智大学クルトゥルハイム聖堂・イエズス会員とのミサ⇒イエズス会 SJ ハウス・イエズス会員と朝食、病気・高齢の司祭を訪問 ⇒上智大学・訪問、教皇の講話⇒東京国際空港(羽田空港)・別れの式 ⇒11:35 空路ローマへ⇒17:15 ローマ(フィウミチーノ空港)到着
(バチカン放送)
教皇の日本到着は11月23日(土)の夕方。4日間にわたる訪日期間を通じて、教皇は東京を滞在の拠点としながら、訪問2日目の11月24日に長崎と広島に赴かれる。
*2019年11月23日(土)バンコクから東京へ*
教皇は、タイの首都バンコクを、現地時間の午前9時半、日本に向け出発され、日本時間の同日17時半過ぎ、東京の羽田空港に到着。同空港で教皇は歓迎式に臨まれる。この後、教皇は都内のローマ教皇庁大使館で、日本のカトリック司教団とお会いになる。
*2019年11月24日(日)東京から長崎、広島へ*
早朝、教皇は空路で長崎に向かわれる。午前9時過ぎに長崎空港に到着後、平和公園の「原爆落下中心地公園」で核兵器をめぐりメッセージを述べられる。続いて、西坂公園の日本二十六聖人の記念碑を訪れ、殉教者にオマージュを捧げる。ここで教皇は挨拶を述べ、お告げの祈りを唱えられる。次いで、教皇はビッグNスタジアム(長崎県営野球場)でミサを司式、説教を行われる。
同日16時半頃、教皇は長崎を後にし、空路で広島へ。広島には18時前の到着を予定している。教皇は、広島市内の平和記念公園で平和のための集いを行い、この中でメッセージを述べられる。同日夜、教皇は空路で東京に戻られる。
*2019年11月25日(月)東京*
この一日、教皇は都内で様々な行事を予定している。午前中、教皇は東日本大震災被災者との集いをベルサール半蔵門で行い、この席で言葉をおくられる。教皇は皇居を訪問され、天皇陛下との会見に臨まれる。続いて、東京カテドラル聖マリア大聖堂での青年との集いを開催、講話を持たれる。
午後、教皇は、東京ドームでミサを司式、この中で説教を行われる。この後、教皇は官邸を訪問し、首相と会談。同じく官邸で開かれる要人および駐日外交団らとの集いで、教皇は講話を行われる。
*2019年11月26 日(火)東京からローマへ*
早朝、教皇は上智大学のクルトゥルハイム礼拝堂で、イエズス会員らと私的にミサを捧げられる。次いで、イエズス会SJハウスで、イエズス会員と朝食、病気や高齢の司祭を見舞われる。この後、教皇は上智大学を訪問される。
教皇は、最後の公式行事である、羽田空港での送別式を経て、同日午前11半過ぎ、日本を後にし、ローマへの帰路につかれる。教皇は、ローマに現地時間同日17時過ぎに到着の予定。
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一方、日本訪問に先立ち、2019年11月20日から23日まで行われるタイ訪問では、教皇は首都バンコクにおいて数多くの行事を持たれる。教皇のタイ訪問の日程は以下の通り。
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*2019年11月19日(火)ローマからバンコクへ*
イタリア時間19時、教皇はタイの首都バンコクに向けて、ローマから特別機で出発される。
*2019年11月20日(水)ローマからバンコクへ*
現地時間正午過ぎ、教皇はバンコクの空軍基地に到着。同基地で歓迎式に臨まれる。
*2019年11月21日(木)バンコク*
バンコクのタイ政府首相府で、歓迎式典。首相府内で、教皇は首相との会見、同国各界代表・駐在外交団との集いを行われる。ワット・ラーチャボピット寺に、仏教の最高指導者を訪問。セントルイス病院で、医療関係者との出会いや、患者や障害者へのお見舞いを行われる。アンポーン宮殿に、ワチラロンコン国王(ラーマ10世)を訪問。そして、教皇は、国立競技場でミサを司式される
**2019年11月22日(金)バンコク*
教皇は、バンコク市内の小教区、セント・ピーター教会で、タイの司祭、修道者、神学生、カテキスタとの集いを行われる。福者ニコラス・ブンカード・キトバムラングの巡礼聖堂で、教皇は、タイの司教団およびアジア司教協議会連盟関係司教らとの出会いを行われるほか、隣接の会場でイエズス会の会員らと私的な集いを持たれる。続いて、教皇はチュラロンコン大学で、キリスト教の諸教会や諸宗教の指導者らとの集いに参加される。この後、教皇は、バンコクのカテドラル、アサンプション大聖堂で、若者たちとミサを捧げられる。
*2019年11月23日(土)バンコクから東京へ*
教皇はバンコクの空軍基地で送別式に臨み、日本訪問のため、午前9時半、東京に向け出発される。