・ゼレンスキー大統領が3度目のバチカン訪問、教皇フランシスコ、国務長官と会談

教皇フランシスコ、ウクライナのゼレンスキー大統領と 2024年10月11日 バチカン宮殿  (VATICAN MEDIA Divisione Foto)

(2024.10.11 バチカン放送)

 教皇フランシスコが11日、ウクライナのゼレンスキー大統領をバチカン宮殿に迎えられ、35分の個人的会談をされた。

 会談後後に、行われた贈り物の交換では、教皇から、平和をテーマにしたブロンズ製のレリーフ作品や、カトリック教会の今年度「世界平和の日」のメッセージなど教皇文書、ウクライナ東方カトリック教会の歴史や殉教者について書かれた本「真理のために迫害を受けて、鉄のカーテンの裏のウクライナのギリシャ典礼カトリック教会」などが贈られた。

 大統領からは、「ブチャの虐殺、マリチカの物語」と題された油絵が贈られた。この作品では、マリチカという架空の少女の目を通してブチャの虐殺が描かれている。

 教皇との出会いに続き、大統領は同日、バチカンのパロリン国務長官、ギャラガー外務局長とも会談。ウクライナにおける戦争の情勢と人道的状況を中心テーマに、停戦への道のりや、それに伴う安定した平和についても話し合われた。ウクライナでの宗教活動をめぐるいくつかの問題についても検討された。

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 ゼレンスキー大統領のバチカン訪問は、2020年を最初に、ウクライナ戦争勃発から1年4か月後の2023年5月、そして今回で3度目。さらに今年6月、イタリア南部プーリアで開催された先進7カ国首脳会議(G7)の会場、ボルゴ・エニャツィアで、大統領とお会いになったほか、電話による会談を持たれた。

 また、教皇は昨年6月、ボローニャ大司教・イタリア司教協議会会長マッテオ・ズッピ枢機卿を特使としてウクライナに派遣。バチカンの国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿も、今年7月のウクライナ訪問で大統領と会見している。

(編集「カトリック・あい」)

2024年10月11日

(評論)世界の”周辺地域”への愛、そして”同盟者”…ー教皇フランシスコ、21人の新枢機卿を指名

(2024.10.6   Crux  Senior Correspondent   Elise Ann Allen)

    教皇フランシスコは6日、世界中から21人の新しい枢機卿を指名した。教皇の世界の”周辺地域”への愛と主要な”同盟者”に報いる、という意思表示を改めてしている。

 10月6日のアンジェラスの演説で、教皇は「12月8日には、新しい枢機卿の創設のための会議が開催される」と発表した。12月8日は、教会暦では無原罪の御宿りの祝日であり、ローマではクリスマスシーズンの始まりと広く見なされている。教皇は、主日の正午の祈りの中で新枢機卿指名を発表する際、彼の選択の普遍性を強調。「その起源は、地上のすべての人々に神の慈悲深い愛を告げ続ける教会の普遍性を表しています」と述べた。

 ラドクリフは現在、教皇の10月2日から27日まで開催される、シノダリティ(共働性)に関する世界代表司教会議の霊的指導を担当している。教皇が新枢機卿に指名したのは、ラドクリフを含む自身の主要な”同盟者”だ。総合人間開発省の移民および難民問題担当の次官であるファビオ・バッジョ神父、。そして、教皇旅行の手配を担当しているインドのモンシニョール・ジョージ・クーヴァカド。リマのカルロス・カスティージョ大司教は、ペルーに本拠を置くSodalitium Christianae Vitae(SCV)をめぐるスキャンダルの影響を乗り越えるという困難な任務を負っており、現在バチカンが調査中だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年10月7日

・教皇フランシスコ、菊地大司教ら21名を新たな枢機卿に任命すると発表

File photo of consistory for the creation of new CardinalsFile photo of consistory for the creation of new Cardinals  (REUTERS)

   教皇フランシスコが6日、新たな枢機卿として、菊地・東京大司教ら21名を新たな枢機卿として任命することを発表された。任命式は12月8日に予定している。

 任命式は、シノダリティ(共働性)をテーマに今開かれている世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会第2会期の終了後の12月8日、2025年の「希望の巡礼」の聖年を前にして行われる予定。

 新枢機卿となる菊地功・大司教は1958年11月1日、岩手県宮古市生まれ。南山大学文学部神学科卒。1986年に神言会員として司祭叙階。同年から1994年までアフリカ・ガーナに宣教師として派遣。帰国後は、カトリック名古屋教区の神学生要請担当、1999年から神言会日本管区長、2004年9月に新潟司教に叙階。2017年12月に9代目の東京大司教に着座。2022年2月から日本カトリック司教協議会会長、2023年5月から国際カリタス総裁。現在、アジア司教協議会連盟の事務局長も兼務している。

 なお、今回の枢機卿の新規任命により、日本の教会の枢機卿は前田・大阪大司教と二人となる。また日本に新たな枢機卿が誕生するのは6年ぶりで、7人目。東京教区では白柳・枢機卿以来25年ぶり3人目となる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(以下はバチカン放送)

 また新枢機卿21名のうち、教皇選挙の投票権を持つ80歳未満は20名、投票権を持たない80歳以上は99歳のアンジェロ・アチェルビ大司教のみ。

 80歳未満21名の出身地を大陸・地域別に見ると、欧州10名(イタリア4名、セルビア、フランス、ベルギー、リトアニア、ウクライナ、英国、各1名)、アジア4名(日本、フィリピン、インドネシア、インド、各1名)、アフリカ1名(コートジボワール)、北米1名(カナダ)、南米5名(ペルー、アルゼンチン、エクアドル、チリ、ブラジル、各1名)。

 12月8日に行われる新枢機卿の任命式後の枢機卿の総数は256人、うち教皇選挙の投票権を持つ80歳未満は141人、投票権を持たない80歳以上は115人となる見込み。

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 新規に任命される枢機卿21人の年齢、国と肩書は以下の通り。 -アンジェロ・アチェルビ大司教(99)、教皇大使(イタリア)
 -カルロス・グスタボ・カスティージョ・マッタソリオ大司教(74)、リマ大司教(ペルー)
 -ビンセンテ・ボカリク・イグリク大司教(72)、サンティアゴ・デル・エステロ大司教、アルゼンチン首位司教(アルゼンチン、聖ビンセンシオの宣教会)
 -カブレラ・ヘラルド・カブレラ・ヘレラ大司教(68)、グアヤキル大司教(エクアドル、フランシスコ会)
 -フェルナンド・ナタリオ・チョマリー・ガリブ大司教(67)、サンティアゴ・デ・チレ大司教(チリ)
 -菊地功大司教(65)、東京大司教(日本、神言会)
 -パブロ・ビルヒリオ・シオンコ・ダビド司教(65)、カローカン司教(フィリピン)
 -ラディスラウ・ネメット大司教(68)、ベオグラード−スメデレヴォ大司教(セルビア、神言会)
 -ジャイメ・シュペングラー大司教(64)、ボルト・アレグレ大司教(ブラジル、フランシスコ会)
 -イグナス・ベッシ・ドグボ大司教(63)、アビジャン大司教(コートジボワール)
 -ジャン・ポール・ベスコ大司教(62)、アルジェ大司教(フランス、ドミニコ会)
 -パスカリス・ブルーノ・シュクル大司教(62)、ボゴール大司教(インドネシア、フランシスコ会)
 -ドミニク・ジョゼフ・マチュー大司教(61)、テヘラン–イスファハン大司教(ベルギー、フランシスコ会)
 -ロベルト・レポレ大司教(57)、トリノ大司教(イタリア)
 -バルダッサーレ・レイナ大司教(53)、ローマ教区教皇代理司教(イタリア)
 -フランシス・レオ大司教(53)、トロント大司教(カナダ)
 -ロランダス・マクリクカス大司教(52)、教皇直属聖堂サンタ・マリア・マッジョーレ協働主席司祭(リトアニア)
 -ミコラ・ビチョク司教(44)、ウクライナ人のためのメルボルン・セント・ピーター・アンド・ポール教区(ウクライナ、レデンプトール会)
 -ティモシー・ピーター・ジョゼフ・ラドクリフ神父(79)、神学者(英国、ドミニコ会)
 -ファビオ・バッジョ神父(59)、教皇庁総合的人間開発省・移民難民部門・次局長(イタリア、聖カルロ宣教会)
 -ジョージ・ジェイコブ・クーバカド神父(51)、教皇庁国務省・教皇司牧訪問責任者(インド)・・・・・・・・・

(編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年10月6日

・「ローマ教区の地区割り再編し、中心部と周辺部をよりよく統合」-教皇が自発教令

Basilica Santa Maria in TrastevereBasilica Santa Maria in Trastevere  (Viacheslav Lopatin)

 

 

*数を超えて:霊的体験の深さ

 

 教皇フランシスコがかねてから述べている「時間は空間よりも大きい」という指摘は、「来年2025年の聖年の準備は巡礼者の数だけに焦点を当てるのではなく、歴史、美、そして一体感をより深く育むことに焦点を当てるべきであることを意味している。

 教皇は、「聖年の扉は、世界中の巡礼者を迎える機会となる以前に、ローマ人自身の巡礼の目的地であるべきです」と強く訴え、聖フィリップ・ネリの道をたどる「マリアの冠」や「七つの教会の散歩道」、地下墓地への訪問、11月のヴェラーノ墓地、無原罪懐胎の祭日のためのスペイン広場、クリスマスのサンタ・マリア・マッジョーレ教会の聖なるゆりかご、聖週間の四旬節の教会、聖なる階段、サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ、そして5月と10月に発見される多くのマリアの象徴など、巡礼の例を挙げた。

 

 

*「弱者に気を遣えばうほど、私たちは、もっと美しくなる」

 

 教皇はまた、美の概念についても考察され、「美が世界を救うのは、教会が美を救うことができる場合のみ」と主張され、「偽りの進歩」の名の下に、美をイデオロギー的に操作したり、消費財に貶めたりすることに対して警告された。

 そして、母性の比喩に戻り、「ローマの歴史的中心部だけでなく、ローマの街全体が教会の母性的なケアの現れ」とされたうえで、「弱さは、私たちが注意を払う必要があるもう 1 つの美の表現… 弱い人々をケアすればするほど、私たちは、もっと美しくなります」とされ、真の福音主義精神でローマを、特に歴史的中心部で恵まれない人々のニーズに応える街にしてくれた多くのボランティアや労働者に感謝。最も弱い人々への奉仕に献身するさまざまな組織や同胞団を称え、教区に対して、彼らの努力を「認識し、拡大し、支援する」よう奨励された。

 

 

*教会における「領地」は交わりに対する罪

 

 最後に、教皇は教会内の分裂の問題に触れ、「教区の統一を強化する代わりに、対立を助長するような”サブカルチャー”への所属を増やすことは意味がありません… 教会に”領土分割”を起こす”領地”があってはなりません」と訴えられた。

 「教区を孤立した小宇宙に縮小したり、教会共同体が別々のサブカルチャーとして行動することを許したりすることは、私の見解では、教会の交わりに対する罪です。教区の統一を促進するのではなく、違いを強調することにエネルギーを費やす教会運動にも当てはまること」とされ、「ローマは、ローマ人であろうとなかろうと、すべての人が『くつろぎ』を感じ、巡礼者として歓迎される『一つの大きな家』なのです」であると強調された。

 さらに、教会の「シノドスのダイナミズム」が教区内で受け入れられ、育まれ、団結の精神が促進され、『分離と対立の壁』を築く選良主義と利己主義の衝動を拒否し、”橋”を開放して教会の交わりを強化し、すべての人が個人的にも集団的にもキリストと彼の教会のみに属するように」促された。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2024年10月5日

・バチカンの国務長官が、ロシアの人権委員とビデオ協議、人権の保護への尽力を要請

Cardinal Pietro Parolin

 

2024年9月19日

・「高齢を押しての長期訪問は『父としての寄り添い』」-9月2日からの教皇、東南アジア・オセアニア歴訪を前にタグレ枢機卿

(2024.8.27  バチカン放送)

 教皇フランシスコが9月2日から12日間にわたり東南アジアとオセアニアの4か国を訪問されるが、バチカン福音宣教省のタグレ副長官(初期宣教担当)・枢機卿が27日、バチカンの公式メディアFIDESと会見。教皇のご訪問の意図などについて語った。

 教皇が訪問を予定されているのは、インドネシア(9月3日‐6日)、パプアニューギニア(9月6日‐9日)、東ティモール(9月9日‐11日)、シンガポール(9月11日‐13日)。

 タグレ副長官は、高齢の教皇がご自身の在位中で最も長い今回の外国訪問を決意されたことについて、「4か国訪問は当初、2020年に予定されていたが、新型コロナウイルスの世界的大感染が起きたため、凍結されていた。教皇がこの訪問を復活させられたことに、驚きと、教皇が日頃、離れた地域の人々に示しておられる『父としての寄り添い』を感じます」と語り、高齢の教皇が体力的に負担のあるこの長旅を決意されたのは、「ご自分がこのような旅に耐えられる、ということを誇示されるためではなく、主の招きに対する謙遜、使命への従順を表すもの」と説明した。

 また、今回の東南アジア・オセアニア4か国訪問によって、「教皇が西方よりも、東方を優先していることが確認された」との見方があることに対しては、「教皇が特定の大陸や地方を好んでおられる、というのは誤りです。教皇はこの訪問に続いて、9月末にはルクセンブルグとベルギーへの訪問を予定しています」とし、これまでも教皇が欧州の多くの国や地域を訪れておられることを指摘しつつ、「教皇はご自身の司牧訪問を通して、あらゆる状況にあるカトリック信者たちを励まそうとされているのです」と強調した。

 さらに、「アジアは、世界人口の大きな部分を占めていますが、貧困層の割合も大きく、キリスト者たちはまさに『貧しい人々の中』にいます。貧しい人々がイエスとその福音に惹きつけられていることを、教皇はご存じです」と語った。

 「教皇の訪問先のキリスト教共同体は、全教会と何を分かち合えるか」という質問には、「ほとんどの訪問国でカトリック信者は少数派で、”小さな群れ”ではありますが、小さな教会は、これらの国、地域のとっての”学び舎”となり得るのです」と答えた。

(編集「カトリック・あい」)

2024年8月29日

・「福音を人々にもたらす素晴らしさと責任を確信する機会に」-バチカン福音宣教省副長官が「2025年聖年」について語る

(2024.8.23 バチカン放送)

 バチカン福音宣教省のサルヴァトーレ・フィジケッラ副長官(世界宣教部門担当)が23日、イタリア・リミニで開かれた交流イベントで「聖年2025」と題されたパネルディスカッションに参加、その意義を語った。

 副長官は、教皇フランシスコが勅書『スペス・ノン・コンフンディト』で布告した2025年の聖年がもたらすものを「希望」と「赦し」の二つの観点から説明。

 まず、この勅書の表題『スペス・ノン・コンフンディト』が、使徒聖パウロの「(神の栄光に与る)希望が失望に終わることはありません」(ローマの信徒への手紙5章5節)という言葉から取られている、としたうえで、2025年の聖年のテーマが「希望の巡礼者」であることに注意を向け、「希望なしでは、人生の本質をつかみ取ることはできません。『信仰』と『愛』と共に、キリスト教信者の生き方を表す『希望』は、キリスト教生活の本質だからです」と語った。

 そして、「聖年のメッセージの特徴は、『希望』そのものに、『与え、捧げ、参加し、希望の具体的なしるしとなる力』を一致させることにあります」と述べ、特に日常的に暴力が見られる現代においては、「希望をもって全教会と人類が歩む必要があり、それゆえに私たちは皆、巡礼者なのです」と強調した。

 また、「赦し」について、副長官は、「聖年とは、私たちに与えられた偉大な赦しの告知です」とし、免償は神の賜物であり、そこには売り買いするものは何もありません。神の赦しの経験は獲得するものではなく、歩みを通して恵みとして与えられるもの」と述べ、さらに、「教皇フランシスコの聖年の勅書にあるように、赦しは過去を変えることはできませんが、未来をより良く生きることを助けてくれます」と語り、「聖年が、教会にとって福音を皆にもたらすことの素晴らしさと責任を確信する機会」となることを希望した。

(編集「カトリック・あい」=聖書の日本語訳は「聖書協会・共同訳」を使用)

2024年8月24日

・2025年元旦「世界平和の日」のテーマは「私たちの過ちをお赦しください。私たちにあなたの平和をお与えください」

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(2024.8.8 Vatican News   Christopher Wells)

 教皇フランシスコは、2025年1月1日のカトリック教会「世界平和の日」のテーマを「Forgive us our trespasses: grant us your peace(私たちの過ちをお赦しください。私たちにあなたの平和をお与えください)」とお決めになった。

 バチカン総合人間開発省が8日発表したもので、同省は声明で「真の平和は、個人、地域、国際のあらゆるレベルでの真の回心によってのみ実現する」と説明。「平和」は紛争の終結によってのみでなく、「傷が癒され、各人の尊厳が認められる新しい現実からも生まれる」と述べている。

 カトリック教会の「世界平和の日」は、毎年1月1日の聖母マリアの祭日に祝われる。1967年に聖パウロ6世教皇によって制定されて以来、歴代の教皇はこの日を機会に、国連、人権、外交、経済などのテーマを扱ったメッセージで、教皇の見解を述べてきた。。

 教皇フランシスコが選ばれた2025年の「世界平和の日」のテーマ「私たちの過ちをお赦しください。平和をお与えください」は、2025年の聖年に関する聖書と教会の理解に一致する。声明は、このテーマは教皇の回勅「Laudato sí 」と「Fratelli tutti(兄弟の皆さん)」、そして、聖年の中心にある「希望と赦し」に基礎を置いており、「聖年は、他者を非難するのではなく、和解と平和をもたらすよう求める回心の時」と説明。

 さらに、「『罪の赦し』と『負債の帳消し』という聖年の伝統に内在する希望に照らして、今日、人類を苦しめている紛争と社会的悪の現実を考えれば、教父たちのこの点に関する考察と合わせて、必要とされている精神的、社会的、経済的、環境的、文化的変化につながる具体的な原則が浮かび上がる」と指摘している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年8月9日

・バチカンが、 パリ五輪開会式の”いくつかの場面”に悲しみを表明

(2024.8.3 Vatican News)

 教皇庁は3日、7月26日に行われたパリ・オリンピックの開会式をめぐり声明を発表。「パリ・オリンピックの開会式のいくつかの場面(certain scenes)に悲しみを覚えるとともに、ここ数日上げられていた、多くのキリスト教信者や他の宗教の信者にもたらした不快感を嘆く声に加わらざるを得ない」と述べた。

 また、「全世界が共通の価値観のもとに一致して集う信望ある催しにおいて、多くの人々の宗教的信念を嘲笑するような暗示はあってはならないはず」と言明。最後に、「表現の自由は、当然問題にすべきものではない」としながらも、表現の自由にも「他者の尊重においては限界がある」と強調した。

 パリ・オリンピックの開会式では、女装したダンサーらが並んだ様子が、キリストと弟子を描いたレオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」の構図に似ていたことから、「キリスト教を嘲弄している」などとして、世界中から批判が上がっているが、バチカンはこれまで沈黙を保っていた。

 バチカンの声明全文の英語公式訳は以下の通り。

 The Holy See was saddened by certain scenes during the opening ceremony of the Paris Olympic Games and can only join the voices that have been raised in recent days to deplore the offence caused to many Christians and believers of other religions.

 At a prestigious event where the whole world comes together to share common values, there should be no allusions ridiculing the religious convictions of many people.

 The freedom of expression, which is clearly not called into question here, is limited by respect for others.

(編集「カトリック・あい」)

2024年8月4日

(評論)「対話は忍耐強く、平和的に行われる」-教皇 パウロ6世の回勅『Ecclesiam suam(彼の教会)』から60年(Vatican News)

教皇聖パウロ6世教皇聖パウロ6世 

(2024.8.2 Vatican News   Andrea Tornielli)

 教皇聖パウロ6世の回勅『エクレジアム・スアム(彼の教会)』を発表されてから8月6日で60年になる。

 「対話は高ぶらず、相手を刺激したり、感情を害するものであってはなりません。対話の権威とは、話す真理、あふれる愛、示す模範のために内在するものであり、命じたり、押し付けるものではありません。それは乱暴な方法を避け、忍耐強く、寛大に、平和的に行われるものです」。

 教皇パウロ6世は、60年前の8月6日に発表された最初の回勅『エクレジアム・スアム』でこのように述べておられる。

 同教皇の書簡のたぐいまれな今日性を察するには、このわずかな言葉で足りる。パウロ6世はこの回勅を、教皇に選出されて一年あまりの、第二バチカン公会議が開かれている中で、全文を自筆で記した。

 北イタリア・ブレーシャ出身の教皇は、「救いの対話」を「イエスの使命」と定義している。そして、イエスは「これを受け入れるようにと、力づくで強制することはされませんでした。それは驚くべき愛の求めでした。この要求を向けられた者にとってそれは恐ろしい責任を成したとしても、それに愛で応えるか、拒むかを自由に委ねられました」と語られた。

 それは、「この対話を始める側の清廉さ、尊敬、共感、善良さ」を浮かび上がらせ、「決めつけや、常に攻撃的な議論、意味のない体裁だけの会話」を退ける関係を表すものだった。私たちは、このアプローチが、ありとあらゆることを裁き、軽蔑的な表現を用い、自分が存在するために「敵」を必要とするような人たちの、現在の「デジタル上のやりとりに特徴づけられるアプローチ」とかけ離れていることに気づかざるを得ないだろう。

 パウロ6世にとって、福音宣教と同化された対話は、相手の回心をただちに求めることを目標にしていない。ただし、回心とは常に「神の恵みの業」であり、宣教者の叡智ある論法のおかげではないが…  この対話は「自分の救いを、『他者のそれを求めることと、もはや切り離すことができない』と感じる人の精神」を前提としている。つまり、「自分一人だけが救われるということはできない」ということである。同時に「純粋さ」を守り、汚染を防ぐために、囲いを上げたり、世から隔離された要塞に閉じこもっても、やはり救われることはないのだ。

 対話は「真理と愛、知性と愛の一致です」。それは、「福音を伝えるためには、この世とその時代に順応することが必要だ」と信じる者のアイデンティティーを無にすることではない。また、一方で、他者を上から見下ろすような、隔たりを作るために、アイデンティティーをことさらに強調することでもない。

 パウロ6世は言われる―「教会は、自分が置かれ、生きている世界との対話に、向かわなければなりません。教会は言葉となり、メッセージを発し、会話をすべきです」。なぜなら「回心以前に、いや回心のために、教会は世界に近づき、話しかけることが必要だからです… 世界はそうすること以外には救われません」。

 パウロ6世のこの回勅は、冒頭の言葉からすでに、私たちが生きている時代のための、他の貴重な示唆をも含んでいる。回勅のタイトルが『エクレジアム・スアム』、すなわち「彼の教会」とあるように、教会は「彼」、創立者イエス・キリストのものなのだ。それは、私たちの手で築いたものでも、私たちの手柄によるものでもない。教会が及ぼす力は、市場調査や、机上で研究されたキャンペーン、視聴率や、動員率によらない。教会は、大きなイベントや、メディアによるプロモーション、インフルエンサー的な作戦ができるから存在するわけではない。

 教会は、多くの「貧しいキリストたち」や、赦された罪人たちの日常の証しを通して、救いの出会いの素晴らしさを輝かせ、希望の地平をもたらすために世にある。教会は、すべての人にイエスの眼差しと交差する機会を与えるために世に存在するのだ。

(翻訳「バチカン放送」、編集「カトリック・あい」)

2024年8月3日

・バチカン財政、2023年決算で赤字の増加は抑えられたが、長期的な悪化に懸念(CRUX)

(2024.7.29 Crux Staff)

 ローマ発 – イタリアのマスコミによるバチカンの財政状況に関する新たな分析結果には、バチカン財政にとって良いニュースと悪いニュースの両方が混在しており、膨れ上がる赤字を抑える取り組みが比較的成功している一方で、回復不可能に見える長期的な悪化も示唆している。

 イタリアで最も広く読まれている日刊紙La Repubblicaが26日付けで報道したバチカンの最新の財務データによると、バチカンの年間運営赤字は、2023年に約540万ドル(約8億2000万円)増加と、増え方が過去数年よりも低くなった。これは、支出削減とバチカンの資産価値の評価を市場の水準に修正したことによるもの、と同紙は説明している。支出削減策には、雇用と契約に関する新たな制限、商業的に賃貸されているバチカンの資産の一部で徴収される家賃の引き上げや、その他の資産の売却に向けた取り組みなどが含まれている。

 同紙の記事は、ドイツのラインハルト・マルクス枢機卿が率いるバチカンの財務評議会がこのほど承認した、2023年の財務諸表をもとにしたもので、2023年の赤字は9000万ドル(約140億円)を超え、収入は12億5000万ドル(約1910億円)、支出は13億4000万(約2050億円)だった。収入は3000万ドル(約46億円)増えたが、インフレの影響で支出は3600万ドル(約55億円)と収入を上回る増え方となった。

 La Repubblicaによると、教皇の慈善活動を支援する聖ペトロ使徒座献金など教皇基金による収入は2023年に5250万ドル(約80億3000万円)ドルに上り、前年の4720万ドル(約72億2000万円)を上回った。だが、この基金の献金による純利益は、2023年にバチカンを財政支援するために約9800万ドル(約150億円)が引き出されたことで相殺された。

 さらに、基金からの収入の長期的な傾向は明らかに下降している。Repubblicaの分析によると、募金は2015年から2019年にかけて全体で23%減少しており、さらに減少する見込みだ。この減少は、ロンドンの高級百貨店ハロッズの元倉庫の4億ドル(約610億円)の買収が中止され、イタリアのアンジェロ・ベッチウ枢機卿を含む9桁の詐欺罪で有罪判決を受けたなどの金融スキャンダルに関連している可能性がある。教皇基金は、現教皇の人気に関する”国民投票”と見なされることもあるため、教皇フランシスコをめぐるさまざまな論争も影響している可能性がある。

聖ペトロ使徒座献金が、富裕国の信者減少を主因に減り続けている

 しかし、もっと根本的な点として、ほとんどの評論家は、聖ペトロ使徒座献金など教皇基金の収入の大半が裕福な国々から来ていることが、減少の主因だと考えている。裕福な国々では、カトリック教徒の人口が減り続けており、したがってカトリック教徒の献金も何十年も減少を続けている。

 労働力の高齢化と年金債務の増大という将来にわたる問題を考えると、バチカン財政の収入の減少は、バチカンの財務関係者にとって特に心配なことだ。また、世界中から持ち込まれる仕事と複雑さが急速に増加している中で、歳出コストの上昇と収入の減少は、最終的にバチカンは職員を削減するか、職員給与を削減するか、あるいはその両方を余儀なくされる可能性がある、と懸念されている。

 バチカンの財務評議会が承認したとされる財務諸表は、教皇庁に関するもので、バチカン市国政府(バチカン美術館からの収入など、物理的な領土の管理に責任を持つ)とバチカン銀行(IOR)の両方が除外されている。IORは2023年に3320万ドル(約50億8000万円)の収入をあげ、59億ドル(約9000億円)の顧客からの預かり資産を持っているが、今後数年間、市国またはIORからの収入がバチカンの広範な赤字を相殺するのに十分である可能性は低い、と考えられており、現時点では損失がどのように維持されるかは不明だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年7月30日

・パロリン国務長官、キーウでゼレンスキー大統領と会見、教皇の寄り添いと和平への努力を強調

(2024.7.23 バチカン放送)

 ウクライナを訪問中のバチカンの国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿が23日、キーウでゼレンスキー大統領と会見した。バチカンの国務省によると、パロリン枢機卿はこの会見で、「教皇の寄り添いと、苦しむウクライナのために正しい恒久の平和を見出す努力」を強調した。

 ゼレンスキー大統領が教皇特使を迎えるのは、昨年6月、ボローニャ大司教でイタリア司教協議会会長のマッテオ・ズッピ枢機卿のウクライナ訪問時以来となる。一方、教皇フランシスコは、今年6月14日、人工知能(AI)をめぐりスピーチを行うために、イタリア・プーリアで開催された先進7カ国首脳会議に招かれた際、会場でゼレンスキー大統領と個人会談を行なっている。

パロリン枢機卿、キーウの小児科病院を訪問

 ウクライナ訪問中のバチカン国務長官パロリン枢機卿は23日、今月8日のロシアのミサイル攻撃で深刻な被害を受けたキーウの小児科病院を訪れた。

 パロリン枢機卿が訪問したオーマトディト小児病院は、ウクライナの小児科専門施設として最も大きいものであるが、今月8日のロシアのミサイル攻撃で、医師1名を含む2人の死者、子ども8人を含む50人の負傷者を出した。また、施設の破壊で、当時627人いた患者のうち、94人はキーウの他の病院に移された。

 パロリン枢機卿は、ビクトル・リャシュコ保健相と病院関係者の説明を受けながら、同病院を訪問。病院の外部では、攻撃による深刻な被害を前に足を止めていた。

 病院内では、同枢機卿は入院中の子どもたちや両親らを励まし、医師をはじめ医療関係者に感謝の言葉を述べた。また、病院責任者らと、バチカンが運営するバンビーノ・ジェズ小児科病院との協力について話し合ったという。

 同日、パロリン枢機卿は、キーウ市内の聖ソフィア大聖堂への訪問も行った。

パロリン枢機卿、ウクライナ・ベルディチェフの聖母巡礼聖堂でミサ

  ウクライナを訪問中のバチカン国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿は21日、ベルディチェフの聖母巡礼聖堂でミサをとり行なった。

 カルメル山の聖母に捧げたベルディチェフの巡礼聖堂は、ウクライナのカトリック共同体の精神的拠り所の一つとなっている。

 教皇フランシスコの特使として、パロリン枢機卿が司式したこのミサは、同国のラテン典礼のカトリック信者たちがこのたび行った巡礼行事を締めくくるものとなった。このミサは巡礼聖堂の内部で捧げられたが、聖堂の外でも多くの巡礼者がミサに与り、共に平和を熱心に祈った。

 パロリン枢機卿はミサ中の説教で、悪がまさるかのように見え、戦争がもたらす恐怖、多くの犠牲者と大規模な破壊がもたらす苦しみが信仰を危機に陥れ、もはや祈る力さえない時でも、決して神における信頼と希望を失わないように、と信者らを励ました。

 また、十字架につけられたキリストを見つめるように招いた同枢機卿は、罪が勝利し、神の救いの計画は失敗に思われたまさにその時、復活の輝ける朝日が光を放った、と述べ、たとえ復活の地平線を見出すことが容易ではなくても、最後に勝利を見るのは死ではない、と強調した。

 終わりに同枢機卿は、子どもと若者たちが平和で確かな未来を持ち、家庭が愛の炉床となり、お年寄りと病者が苦しみの中で慰められ、祖国を防衛する人たちが悪から守られ、戦争捕虜が家族のもとに帰り、犠牲者たちが天国に迎え入れられるようにと、聖母の取り次ぎを信者たちと祈った。

(編集「カトリック・あい」)

2024年7月25日

・バチカンで「巨額の不動産不正取引裁判」に勝った検察官、ロンドンでの裁判で”逆襲”も警戒必要

(2024.7.7  Crux  Editor  John L. Allen Jr.)

 ローマ – 古典的なホラー映画には、「死んだと思われた悪役が、ナイフやチェーンソーによる復讐のために戻ってくる」という、”どんでん返し”がある。必要なのは、恐怖の瞬間が終わったと気を抜かず、次の衝撃に備えること。

 そしてそれは、バチカンの高位聖職者が関与するロンドンを舞台にした巨額不正疑惑を追及するバチカンの主任検察官アレッサンドロ・ディディが学びつつある教訓だ。

 ディディはこの間に取った行動について厳しい批判も受けているが、勝利は勝利であり、少なくとも”試練”は終わったように見える。だが問題は、勝利の”予選通過者”が、名実ともに「ピュロス」(多大の犠牲を払ってローマに勝利した古代ギリシャの王)になることができるかどうかだ。

 ロンドンの事件では、現在、少なくとも4つの追加の判決が保留されており、その成り行き次第で、全面勝利とはいかなくなる可能性がある。まず、バチカンの裁判で有罪判決を受けた被告の一人であるイタリアの金融家ラファエレ・ミンシオーネが起こした民事訴訟だ。現在、ロンドンの高等法院で審理されている。ロンドンの高級住宅街チェルシーにある大手百貨店ハロッズが所有していた倉庫を4億ドル(現在の為替相場で換算して約620億円)で購入し、高級マンションに改装する計画を、バチカンの国務省に最初に助言したのはミンシオーネだ。

 ミンシオーネは、バチカン国務省が約1億4000万ドルと推定される損失を出してこの不動産を売却した取引で、ロンドンの高等法院が、彼が「誠実に行動した」との判断を下すことを望んでいる。そうなった場合、風評被害に対する金銭的補償をバチカンに請求する可能性もある。

 

 今週、ペーニャ・パラ総務局長はこの事件で証言するためにロンドンに来て、ミンシオーネの代理人であるチャールズ・サメック弁護士の尋問に直面する。尋問は、バチカンの裁判で有罪判決を受けたアンジェロ・ベッチュ大司教の後任である総務局長がロンドンの取引でミンシオーネの代わりを務めたもう一人のイタリア人実業家、ジャンルイジ・トルツィとのやり取りに焦点が当てられそうだ。

 この際、英国の法廷はこれまでロンドン事件に関して、バチカンに必ずしも友好的ではなかったことを想起する必要がある。2021年3月、ロンドンの刑事法院のトニー・バウムガートナー判事は、「バチカンの提出書類は非開示と虚偽の陳述に満ちており、ぞっとする」と強く批判したうえで、「バチカンはトルツィが犯罪行為で有罪であると信じる合理的な根拠を示さなかった」と結論付けた。

 

 ディディはロンドンの裁判の結果を待っているが、彼はまた、現実世界にも影響を与える可能性のある、より知的で学術的な別の面での課題にも直面している。

 2021年にこの事件のバチカンでの裁判が始まって以来、多くの法律家や法学者が、「基本的な適正手続きの保護が侵害されている」という主張を含め、正当性に異議を唱えてきた。そして、手続きの冒頭で教皇フランシスコから出された4つの有名な「詔勅」、つまり法令が、検察側に有利な”デッキ”を積み上げた、と主張している。

 

 このような根強い批判の中で、ディディは最近、「Annali di Diritto Vaticano(バチカン法の年代記)」のページで長い弁護をせざるを得ない、と感じるようになった。そして、先週、ボローニャ大学の教会法と民法の専門家、バチカンの立法文書評議会の顧問であり、イタリア政府の「宗教の自由と宗教団体との合意に関する委員会」の委員長のジェラルディーナ・ボニから痛烈な非難を浴びた。

 4日付けのローマの新聞「Il Messaggero」に掲載されたインタビューで、ボニは、「詔勅は予備調査のみに関係しており、裁判の完全性を損なうものではない」とするディディの主張を強く批判。「捜査と裁判は密接に関連しており、捜査中に行われる活動は、関係者の基本的な保障を侵害できない… この原則は自然法と教会法の両方に基づいている」と主張し、「バチカンの刑事司法制度の欠陥が是正されない限り、その評決がイタリア国家によって承認されず、欧州人権裁判所による制裁に直面するリスクがある」と警告している。

 

 ディディが直面する可能性のある”第3の評決”は、現在バチカンのローマ控訴院で進められている「世紀の裁判」における有罪判決の再審理だ。被告側は有罪判決に異議を唱えただけでなく、ディディ自身も判決を不服として控訴し、被告が「詐欺を成し遂げるために組織的かつ承知の上で行動した」という彼の主張を裁判所は十分に支持していない、と主張している。(裁判官は昨年12月に結論の要約を発表したが、評決の全文は秋までに完成しない見通しだ)。

 バチカンの有罪判決が覆されることはないが、ベッチュは5月にドイツの新聞「Die Zeit」のインタビューで、そのような結果を希望する、と述べている。現実には、バチカンの控訴院が法廷の認定を脇に置くことは稀であり、ましてや、これほど世界の注目を浴びている事件の場合はなおさらだが、ディディは自分の法理論の評価を求める結果となったことを後悔することになるかもしれないし、たとえ判決自体が覆されなくても、検察の行き過ぎを批判される可能性がある。

 

 この裁判に関連して、バチカンのリベロ・ミローネ元監査室長が2017年にベッチュと当時のバチカン憲兵隊長、ドメニコ・ジアーニからの圧力で辞任を余儀なくされたことについて、約1000万ドルの損害賠償を求めているという”奇妙”な案件もある。

 ミローネは1月にバチカンの法廷での最初の訴訟で敗訴し、先週の4日、バチカン控訴院は、彼の控訴を取り下げるかどうかを検討するために簡単な審理を開いた。裁判官が訴訟手続きを拒否した場合、ミローネは、現在、ケビン・ファレル枢機卿が率いるバチカン市国最高裁判所に上訴する選択肢を持つことになる。

 ディディは、ミローネの主張が最初に提起された時、「時効によって禁止されるべきである」と主張して反対し、監査室長在任中に他のバチカン職員をスパイした疑いで告発すると警告している。(ミローネは、「バチカンとの契約や雇用慣行に関するイタリアの公文書を監査室が調査するのを手伝わせるために、イタリアの調査会社ファルコを雇っただけで、違法な監視とは無関係だ」と主張している。)

 ミローネがバチカンの法廷から満足を得る可能性は低いかもしれないが、ディディの事件への関与は、ディディの動機と戦術の両方が疑問視する新たな”戦線”を開くかもしれない。

 公平を期すために言っておくと、ローマのベテラン弁護士であるディディは、この仕事を引き受けた時、この仕事が危険であることを知っていたに違いない。だから、バチカンが過去最大の刑事裁判で勝てるとは想像していなかったろうが、それでもなお、「”戦い”に勝っても、”戦争”には負けるリスク」を負ってもいるのだ。

2024年7月8日

・教理省、教皇と第二バチカン公会議の正当性を拒否した元駐米大使のヴィガノ大司教に破門判決

(2024.7.5  バチカン放送)

 バチカンの教理省が5日、元駐米大使のカルロ・マリア・ヴィガノ大司教に対して、教皇と第二バチカン公会議の教えの正当性と権威を拒否する主張を繰り返している、として、破門の判決を下し、本人に伝えた。

 ヴィガノ大司教は、「シズマ」(教会の分裂)を招く態度をとっていると告発され、教理省はその教会法上の裁判の判決を下す会議を4日に開いた。会議では、大司教の公的な主張が「教皇を承認し従うこと、教会のメンバーとの交わり、第二バチカン公会議の教えの正当性と権威を拒否する」ものであり、「シズマに相当する罪と認められた」と結論した。。

 大司教は、ここ数年、教皇と第二バチカン公会議の正当性を認めない主張を繰り返していた。破門制裁を受けた者は、感謝の祭儀やその他の秘跡の執行、秘跡の受領、準秘跡を授けること、他の典礼祭儀の挙行、これらの祭儀への積極的参加、教会の職務、任務等の執行、統治行為などが禁止される。破門は、悔い改めへと招くもので、”薬”としての処罰であり、その人が再び交わりへと戻ることを常に待つもの、とされている。(編集「カトリック・あい」)
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 長年バチカンで働いてきたヴィガノ大司教は、2018年8月にダブリンで開かれ世界家族会議で初めて世界的な”悪名”を馳せた。

 この月に大司教は、教皇フランシスコのアイルランド訪問の最終日に合わせて、同国で多くの聖職者が性的虐待問題を起こし、教会に対する不信感が高まっていたのを背景に、11ページの「証言」を発表。未成年者への性的虐待と成人神学生への性的嫌がらせで告発された元枢機卿のセオドア・マカリックの犯罪を、教皇が隠蔽したと非難し、「教皇は、マカリックに対する告発を知りながら、本人の聖職や旅行に対する制限を緩和した」と主張。教皇の引責辞任を求めた。また、バチカン内に”同性愛文化”が広がっている、 とも主張した。

 それ以来、大司教は、教皇フランシスコの「教義上の異端や権力の乱用」を問う公開書簡を一貫して発表し続け、また、第2バチカン公会議が決定した教会改革や典礼改革の多くを拒否し、その決定を受けた伝統的なラテン語ミサを制限する教皇の決定を批判した。

 駐米大使に任命される前、ヴィガノ大司教はバチカン市国の次官として勤務していた際に、同市国の過剰支出や管理不行き届きを暴露しようとしてローマで波紋を呼び、内部告発者としての評判を得たが、一方で、多くのバチカン内部関係者から、「一緒に仕事をするのが難しい、気難しい性格」の持ち主と見られていた。

 大司教は教理省から6月20日に出頭を求められた直後、「現時点ではカトリック教会において法的身分を有しておらず、同会の聖職者は、教会において適法に使徒職を果たすことが出来ない」と教理省が判断する、伝統主義の聖ピオ十世会(SSPX)の会員になった、との噂があったが、SSPXは、「大司教の発言は、本会の創設者が破門にされた行為を超えている」として大司教と距離を置く立場を表明している。

 SSPXは6月24日の声明で、教皇フランシスコが教皇に選出された際に「同意の欠陥」があった、と述べた大司教の声明について、「大司教によれば、ベルゴリオ枢機卿は教皇職を実際とは異なるものとみなし、完全に同意することなく教皇職を受け入れたが、この誤りにより、彼の受け入れは無効となった。したがって、フランシスコの教皇職は”仮の地位”となるだろう」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
 Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.
2024年7月6日

・9月2日からの教皇、東南アジア・オセアニア4カ国訪問の詳細日程発表

教皇フランシスコの東南アジア・オセアニア4カ国(インドネシア、パプアニューギニア、東ティモール、シンガポール)訪問の各ロゴ教皇フランシスコの東南アジア・オセアニア4カ国(インドネシア、パプアニューギニア、東ティモール、シンガポール)訪問の各ロゴ 

(2024.7.5  バチカン放送)

 教皇フランシスコが9月に予定される東南アジア・オセアニア4カ国訪問の詳しい日程が5日、発表された。9月2日(月)から13日(金)まで、各国元首とカトリック教会からの招待に応え、インドネシア、パプアニューギニア、東ティモール、シンガポールを司牧訪問される。

 この歴訪の行程は次のとおり。

【インドネシア(9月3日‐6日)】

 2日(月=ローマから、最初の訪問地、インドネシアのジャカルタに向け出発=3日(火)スカルノ・ハッタ国際空港に到着。空港で歓迎式=4日(水)ジャカルタ市内の大統領官邸(ムルデカ宮殿)で歓迎式典、大統領への表敬、インドネシア各界代表および駐在外交団と会見。ローマ教皇庁大使館で、イエズス会関係者との私的な集い。カテドラルで同国の教会関係者との出会い。若者の家「グラ・ペムダ」でスコラス・オクレンテスの青年たちと交流=5日(木)ジャカルタ市内のモスクで諸宗教代表と会見。インドネシア司教協議会本部で、奉仕活動の支援を受けている人々との出会い。ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアムでミサ=6日(金)スカルノ・ハッタ国際空港で送別式、次の訪問国パプアニューギニアのポートモレスビーへ。

【パプアニューギニア(9月6日‐9日)】

 6日(金)教皇、パプアニューギニアのポートモレスビー・ジャクソン国際空港に到着。空港で歓迎式=7日(土)ポートモレスビー市内のガバメントハウスに総督を表敬訪問。国際会議場APECハウスでパプアニューギニアの各界代表及び駐在外交団との会見。カリタス・テクニカル・セカンダリースクールで子どもたちとの出会い。扶助者聖母巡礼聖堂でパプアニューギニアおよびソロモン諸島の教会関係者との集い=8日(日)ポートモレスビーのローマ教皇庁大使館で首相と会見。サー・ジョン・ギーズ・スタジアムでミサ。ポートモレスビーからバニモへ。バニモのカテドラルで同教区の信者たちとの出会い。学校で宣教師たちと私的な集い。再びポートモレスビーへ=9日(月)ポートモレスビーのサー・ジョン・ギーズ・スタジアムで若者たちのとの集い。ジャクソン国際空港で送別式。東ティモールのディリへ。

【東ティモール(9月9日‐11日)】

 9日(月)教皇、東ティモール・ディリのプレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港到着。空港で歓迎式。ディリ市内の大統領官邸で歓迎式典、大統領への表敬、東ティモール各界代表および駐在外交団と会見=10日(月)ディリ市内の学校で障害児との出会い。カテドラルで教会関係者との集い。ローマ教皇庁大使館でイエズス会関係者と私的にお会いに。タシ・トルの広場でミサ=11日(火)ディリのコンベンションセンターで若者たちとの出会い。プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港で送別式。シンガポールへ。

【シンガポール(9月11日‐13日)】

 11日(月)教皇、シンガポール・チャンギ国際空港到着。空港で歓迎式。黙想センターでイエズス会関係者と私的な集い=12日(火)国会議事堂で歓迎式典。大統領への表敬。首相と会見。シンガポール国立大学・文化センターで各界代表および駐在外交団と会見。競技場シンガポール・スポーツ・ハブでミサ=13日(水)カトリック系施設に高齢者と病者を訪問。カトリック・ジュニア・カレッジで諸宗教の若者たちとの出会い。チャンギ国際空港での送別式を経て、ローマへの帰途に。

2024年7月6日