・カトリック長崎教区が、詐欺に絡む多額の損失発生を大司教名で認め、謝罪したが

(2020.9.25 カトリック・あい)

    カトリック長崎教区で、ずさんな資金管理体制のもとで詐欺に絡む2億3200万円の損失を発生させていることは今年6月、有力ネット・メディア「文春オンライン」で証拠書類とともに詳細に報じられていたが、肯定も否定もせず、”沈黙”を続けてきた同教区がこのほど、公式月刊新聞「カトリック教報」9月号の最終面全面に、教区長の高見三明・大司教名で「教区会計上の重大な不手際に関するお詫び」を掲載、事実として認め、教区の司祭、信徒に謝罪した。

 ただ、この謝罪文で高見大司教は「7年前に前教区会計が起こした重大な不手際のことで、信者の皆様に大変ご心配とご迷惑をおかけしました。すべては教区長としての私の責任です。心からお詫びします」としとしているものの、損失を生じさせた相手には「返済を要求し続ける」とするだけで、何ら刑事、民事的な法的措置をとる意思はなく、「前教区会計を始め、私と教区顧問、司祭団、それぞれが可能な限り修復に努めてまいる所存」と曖昧な表現に終始。

 別会計とはいえ、教区の年間予算の3分の1にも匹敵する巨額の支出が、教区長の承認なしに教区の会計担当一人でどうして可能だったのか、再発を防ぐために、具体的にどのような資金管理体制をとろうとしているのかについても、明確な説明がない。

 「お詫び」に添付された「これまでの経緯と今後の対応」を見ても、文集オンラインの詳細な報道とは、重要な細部でかなりの違いがあるが、報道に事実誤認があるのかどうかについても、資金の出所が「特別会計の(大浦天主堂の拝観料などを原資とする)『不動産取得資金』であり、信徒の献金や小教区互助基金などからではない」とした以外は、明確な説明がない。この箇所についても、教会建設のための資金が必要になった際、この特別会計が不足してしまったため、銀行借り入れに頼らざるを得なくなり、400万円強の利息を教区会計から払わざるを得なくなっことは認めている。

 だが、このようなことよりも、もっと大事なことは、このような不祥事が起き、それに対する対処も長期間にわたり適切さを欠き、結果として外部のマスコミにスクープされて、長崎教区のみならず、日本全体の教会関係者の間の動揺を招き、教会に対する信用を傷つけたことに対し、真摯に反省し、信用回復に努める真摯かつ具体的な対応が、この”謝罪文”によっても、明確には見えないことではなかろうか。

 6月26日の文春オンラインの報道では、この問題について前会計担当を横領や背任で訴えることで責任を明確にさせるべき、と弁護士と真剣に相談していた教区の幹部職員の女性が、今年2月に長崎大司教館で開かれた司祭研修会で、逆に糾弾され、急性ストレス性胃腸炎で入院する事態になったとされているが、これに対する、真偽も含めて説明もない。この女性は、聖職者による性的虐待問題の窓口でもあり、関係の信徒に大きなダメージを与えている。この報道の直前の6月21日に、長崎市内で開かれた「カトリック神父による性的虐待を許さない会」の発足式で、被害を訴えた長崎教区の女性信徒のケアにもあたっていた。この信徒は「私に寄り添い、”命綱”になってくれている職員を教会から追い出そうとしている」と嘆いている、というが、この問題に、大司教は何の対応も明らかにしていない。

 改めて言う。”言葉”や”紙”の上での反省や謝罪は、大きく損なわれた教会への信頼を回復するための、スタートラインに過ぎない。それが的確さを欠けば、それ以前だ。自身の責任の取り方も含め、信頼回復の具体的な方策を真摯に考え、立案し、広く説明し、実行されることを、日本のカトリック司教団の代表でもある高見大司教に、心から期待したい。

                                        (「カトリック・あい」南條俊二)

 

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 カトリック長崎教区月刊紙「カトリック教報」9月号に掲載された「長崎教区の皆様へ お詫びとご報告」の全文は以下の通り。

【教区会計上の重大な不手際に関するお詫び】

 このたびは、7年前に前教区会計が起こした重大な不手際のことで、信者の皆様に大変ご心配とご迷 惑をおかけしました。すべては教区長としての私の責任です。心からお詫びいたします。
2001年に前任者の島本要大司教様は教区費の刷新を実施され、世帯ごとの小教区維持費とは別に、各信徒は収入の . %を教区のために献げることになりました。そうすれば大浦天主堂の拝観料は教区の資金として貯蓄できると考えられました。しかし新しい制度の導入ということもあり想定通りにいかず、拝観料に依存する教区運営が今も続いています。

 教区にはもともと多額の資金はありませんでしたので、資金として貯蓄できると考えられました。しかし新しい制度の導入ということもあり想定通りにいかず、一部を堅実な資金運用に回すようになりました。

 しかし前教区会計は、教区のためとはいえ、本来聖職者が直接かかわるべきでない事業に、単独で、教区の特別会計の中から貴重な資金を投資と貸付に使ってしまいました。監督者としての私の責任を痛感しております。今後このようなことが二度と起こらないよう万全の対策を講じます。債務者には返済を要求し続けると同時に、前教区会計をはじめ、私と教区顧問、司祭団、それぞれが可能な限り修復に努めてまいる所存です。

 なお、今回の不祥事では、信徒の皆様の教区費や小教区互助基金などへの影響はございませんのでお知らせいたします。今後とも、信頼回復に努めてまいりますので、ご理解とご協力を引き続きよろしくお願いいたします。皆様にご心配おかけしましたことを重ねてお詫びいたします。

                                  カトリック長崎大司教区 大司教 ヨセフ 髙見 三明

 このたびは、ご報告にあります通り、私の軽率さがもたらした重大な結果により、主キリストと皆様の教会を傷つけ、不信と躓き、痛みと悲しみを招いてしまいましたことを深く反省し、心からお詫び申し上げます。

 今後は、決して十分ではないことを自覚しつつも、私にできる償いを命尽きるまで継続するほかありません。父と子と聖霊なる神のあわれみにおすがりし、皆様の教会に連なることをお許しください。このたびは、まことに申し訳ございませんでした。

                                  カトリック長崎大司教区 司祭 ミカエル 下窄 英知(前教区会計)

【これまでの経緯と今後の対応】

 2013年 7月、前教区会計は、知人のK氏の依頼を受け、大司教や顧問会の決裁を仰がず5千万円を貸し付け、 9月にはK氏が関与する事業に1 億円を投資しました。同月、再度依頼があり1億円の短期貸し付けを行いました。いずれも独断での決裁でした。

 これが問題の発端で、その後、前教区会計は数年にわたりK氏に貸し付けの返済を求めましたが応じず、これまでに 1800万円の返済があっただけです。結果として、貸付の不返済分と投資の損失を合計すると2億3200万円になります。

 現教区会計は、 本件の詳細を知ると弁護士に相談し、K氏に債務を認めさせる覚書を交わすなどして返済のために努力し続けてきましたが、結果的に回収できず今日に至っています。不手際を認識した時点で上長ならびに顧問会に報告すべきところを、かえって遅れてしまったというさらなる不手際について、職務に忠実でなかったと、前教区会計ならびに現教区会計も認めています。

 前教区会計の問題が顧問会に提示され たのは、2019年1月 14日でした。本会には前教区会計も出席し、説明、質疑応答が行われました。同月24 日に、再度臨時顧問会を開きましたが、その中で同席していた弁護士から業務上横領罪にあたる可能性があると指摘されましたので、顧問会としても自首を勧めました。これに応えて前教区会計は警察署に出頭しましたが、捜査されることはありませんでした。

 翌月の2月4日に開催された司祭研修会の中で本件を司祭団に説明しました。その後、教会法に基づく調査を教区裁判所に依頼し、報告を受け、制裁が決定され、役職の解任、トラピスト修道院での1か月の謹慎、他教区への一定期間(3年)の派遣、教区への返済義務などの制裁を科しました。現在、約500万円が前教区会計から特別会計に納入されています。

 過日(6月)、長崎教区の不祥事として文春オンラインにおいて「信徒の献金を消失させ、また佐々教会の建設資金が流用されたのではないか」との指摘がなされましたが、K氏への投資と貸し付けは、正確には特別会計の「不動産取得資金」(大浦天主堂拝観料の一部、 教区司祭遺贈金)から持ち出されたものです。決して信徒の献金や小教区互助基金などからではありません。教区会計の決算報告は、経常収支として教区報で毎年報告している通りで、信徒、 修道者、 司祭から納入していただいている教区費、 各種献金は、 経常収支の中に全額計上されています。

 ただし、佐々教会建設の資金が必要となったときに、銀行から借りざるを得なくなり、総額約438万円の利息を支払わなければならなくなったことは事実です。

 教区としては、問題の経緯を明らかにし、対処方法を確定するまでは教区内での公表を控えておりましたが、そこに至る前に、どのような経緯かは不明ですが、マスコミで公表されました。信者の皆様方には大変申し訳なく思っております。

 今後、顧問弁護士にも相談しながら、K氏への返済請求を継続して行うと同時に、髙見大司教と教区顧問、司祭団、それぞれが可能な限り欠損を補填するよう努めます。

 教区における会計のさらなる透明化を推し進めることをお約束し、今後は教区財産の管理を誠実に行うための体制づくりに一層努めてまいります。

 2020年8月15 日 カトリック長崎大司教区 司教総代理 中村倫明 本部事務局長 中濱敬司

長崎教区の信徒の皆様へ

 8月24日(月)13時から教区司祭集会、9月21日(月)11時から教区評議会総会において、この件に関する説明会が行われます。この集会と総会の参加対象者は、教区の司祭団ら(8/24)、各小教区の司祭と信徒の代表者ら(9/21)です。 ご質問などについて個々の対応はできかねますので、できれば文書をもって、所属 小教区か地区長司祭または教区本部事務局にファックスや郵送でお寄せください。

 教区本部事務局《この件に関する問い合わせ》 カトリック長崎大司教区本部事務局 電話 095-842-4450 FAX 095-842-4460

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2020年10月17日