・「香港で起きている真実はー基本的人権の破壊だ」ーカトリック人権活動家が訴え

 ロジャース氏は、香港の人権問題の専門家、英国保守党の人権委員会の共同創設者、副会長。「Christian Solidarity Worldwide」東アジアチームのリーダー、「Hong Kong Watch」の創設者、会長でもあり、現在の香港危機について多くの情報発信を続けている。

 

問: 香港は中国の国家安全法導入で、どのように変わるでしょうか?

答:新しい国家安全法は、香港市民の基本的な自由を事実上破壊するでしょう。 いわゆる”転覆” “離脱” として”外国の政治勢力との共謀”を犯罪として取り締まる… 香港の人々が外国の議員や人権団体、メディアに話をすることは犯罪、ということになり、抗議する権利を否定し、報道の自由と宗教の自由を脅かし、香港の「独立」についての平和的に議論することも犯罪にされてしまう。

 どの国と地域には国民の安全を守る権利がありますが、国家安全法は、香港の基本法が市民に約束する普通選挙権の行使なしに香港に適用される、非常に危険なものであり、市民的及び政治的権利に関する国際規約の署名者としての香港の義務と、香港返還に関する中英共同宣言で定めた中国の義務に対する重大な違反です。

 

問:中国の外相は、米英の香港での「干渉」を止めるために国家安全法が必要だ、と説明しています。「干渉」は本当に存在するのでしょうか?この法律の真の狙いは何ですか?

答:ロジャース:外相が言うような「干渉」はありません。これは、中国共産党(CCP)が使う典型的で、都合のいい宣伝文句です。英国は、中英共同宣言、国連に提出し国際条約、および国際社会で表明した香港の自治と自由を監視および擁護する、正当な、道徳的、法的義務を負っています。香港市民が明確に表明している基本的自由の堅持と普通選挙権は約束されたものであり、守られるべきものなのです。この法律の真の狙いは、反対する意見を抑え込み、中国共産党の香港支配を強化し、香港を中国の”もう一つの都市”にすることです。

問:香港の学生や民権派の人々は抗議行動を続けられるでしょうか? 彼らは希望を無くしてしまうのでしょうか?

答:新しい法律の発表後、先週の日曜日に、何千人もの人々が抗議しました。抗議が止まる可能性は非常に低いと思います。 香港人たちは自分たちの自由を守る決心をしており、抗議活動は増えると思います。希望を失った人もいますが、多くの人は本当に私たちが考えられないほどの強い決意をしているのです。

 

問:一部の評論家などは、香港の特別な経済的地位を、米国が取り消したら、習近平の思うつぼに嵌まってしまうだろう、彼の狙いは、香港を貧しくし、香港にある主要な金融機関を中国ほんとに移すことにある、と見ていますが?

答:習近平がそうすることにはリスクがあり、香港から特別な地位を奪うことは最後の手段と言えるでしょうが、彼のテーブルに載せているのは間違いありません。香港が自治権を失い、「一国二制度」が終焉し、中国の”もう一つ都市”になった場合、高度な自治権のもとに確立された香港の特別な経済的地位の正当性はどうなるのか。ここで考えるべきは、「HongKong Watchi]がレポート「Why Hong Kong Matters」で主張しているように、世界の主要金融センターとしての香港が、中国経済と国際社会にとって非常に重要であるということです。

 

問:香港のこのような状況に、米国と他の民主主義国は何ができるでしょうか?

答:まず、香港返還の共同宣言に署名し、自国の香港支配の歴史に起因する明確な道義的責任を負う英国が、米国およびその他の国々、機関とともに、グローバルな対応の先頭に立つことが重要です。香港の自由を擁護するために、世界の指導者が明確に、一貫して、繰り返し、しっかりと発言することが不可欠です。英国の最後の香港総督だったクリス・パッテン氏が、5月25日付けの英経済紙Financial Timesで主張したように、英国は先進7か国(G7)やその他の国際的な場で、この問題を積極的に取り上げるべきです。

 第二に、英国は、志を同じくする国々がグローバルな対応を調整するための場を形成する必要があります-英国、欧州諸国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そして、日本、韓国、インドネシアなどのアジア太平洋地域の民主主義の国々とです。

 第三に、各国は中国政府と香港政府、および人権侵害に責任を負う警察当局の個々の人物に対してマグニツキー方式の制裁を課すことを検討する必要があります。

 (注:米国は2012年12月、、ロシアの人権弁護士セルゲイ・マグニツキー(Sergei Magnitsky)氏獄死事件などの人権侵害に対して、関与したと判断する人々を個別に制裁する「セルゲイ・マグニツキー法(Sergei Magnitsky Act)」を施行、同氏の死に関与したとされるロシアの検察官、捜査官、税務官、判事らの実名を公表するとともに、米国への渡航禁止、米国内資産を財務省の制裁措置下に置いた。)

 第四に、英国は他の国々とともに、香港返還の中英共同宣言の明確な違反に対処するために、法的または外交的手段による必要な措置を検討する必要があります。

 第五に、英国と他国政府は協力して、香港の活動家が危険にさらされた場合に避難できる場を提供する必要があります。先週末に、世界の200名以上の国会議員、25か国の地位の高い政治家および政府職員が出した声明を、国際社会は重視する必要があります。

 

問:香港市民を支援するNGOの役割は何ですか?

答:私たちの役割は、世界各国の政策立案者、国会議員、メディア、学者、一般大衆に対して、基本的な人権と自由のための闘いにおいて香港市民を支援するよう提唱し、声を挙げ、情報提供し、人々を動かすことです。私たちは、ここ数週間に、支援活動を強化しており、www.hongkongwatch.orgで多くの情報を発信しています。そして、国際社会が行動を起こすように働きかけを続けます。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日5言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

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2020年5月29日