・「心を落ち着け、神の道を見極めようと祈り、黙想する姿に倣おう」菊地東京大司教の「神の母聖マリア主日」のメッセージ

 週刊大司教第107回 2023年1月1日 菊地東京大司教の「神の母聖マリア主日」のメッセージ

 新しい年、2023年が始まります。この3年間、わたしたちは感染症という大きな不安のうちに取り残され、まるで暗闇の中を手探りで歩いているかのような状況でした。加えて、東京教区にとっては姉妹教会であるミャンマーにおけるクーデターやその後の混乱、ロシアによるウクライナ侵攻とその後の戦争状態、さらには日本を含め世界各地での暴力的な蛮行の頻発。神が賜物として与えてくださった命に対する暴力が止むことはなく、あまつさえ暴力に対抗するためには暴力が必要だという機運まで高まってしまいました。暴力の結末は死であり、命の創造主である神への挑戦であることを、一年の初めに改めて強調したいと思います。

 主の御降誕から一週間、御言葉が人となられたその神秘を黙想し、神ご自身がその憐みと慈しみに基づいて自ら人となる、という積極的な行動を取られたことに感謝を捧げる私たちは、暦において新しい一年の始まりのこの日を、人となられた御言葉の母である聖母に捧げ、神の母聖マリアを記念します。

 ルカ福音は、「聞いたものは皆、羊飼いたちの話を不思議に思った」と簡潔に述べることで、驚くべき出来事に遭遇し、その意味を理解できずに翻弄され戸惑う人々の姿を伝えています。暗闇の中に輝く光を目の当たりにし、天使の声に導かれ聖家族のもとに到達したのですから、その驚きと困惑は想像に難くありません。

 しかし福音は、「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた」とも記します。神のお告げを受けた聖母マリアは、その人生において常に、神の導きに思いを巡らせ、識別に努められた、観想を深めるおとめであります。あふれる情報に振り回されながら現代社会に生きている私たちにとって、常に心を落ち着け、周囲に踊らされることなく、神の道を見極めようと祈り、黙想する聖母の姿は、倣うべき模範であります。

 教皇様は、世界平和の日にあたりメッセージを発表されています。コロナ後の世界の歩むべき道を見据えながら、連帯のうちに支え合って歩み続けることの必要性を説いておられます。私たちは、この新しい一年を、改めて連帯を深め、互いに耳を傾けあい、支えながら、聖霊の導く先を探し求めながら歩むときにしたいと思います。

(編集「カトリック・あい」)

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2023年1月1日