(2016.8.26CRUXバチカン特派員 イネス・サン・マーチン)
教皇フランシスコが来年1月1日のカトリック教会が主導する「第50回世界平和の日」のメッセージのテーマとして「非暴力:平和を求める政治のひとつの形」を選んだ。
シリア、イラク、ウクライナの戦乱、コロンビアの60年におよぶ内戦など、世界中で多くの血が流され続け、中東、北アフリカ、そしてフィリピンなどで原理主義的な運動が起こり、テロ攻撃が終わりなく続く現実に対して、教皇フランシスコは26日、非暴力による対抗を訴えた。
教皇のこのテーマへの取り組みをまとめたバチカンの声明によると、非暴力は、「差別も区別もなく」全ての人の権利と平等の尊厳を守ることに基礎を置いた政治的手法として理解される時に、武器による紛争に打ち勝つことができる、としている。「このような観点から、力の権利ではなく、権利の力への認識を増すことが重要になってきている」。
これは、教皇フランシスコにとって「世界平和の日」の4回目のメッセージとなるが、ベトナム戦争下の1968年に教皇パウロ6世の呼びかけで始まった「世界平和の日」の創設50周年を迎えることから、特別な重要性をもつ。このメッセージは、世界のすべての政府に送られる予定で、バチカン外交の2017年の最優先事項を示すものとなる。
「暴力と平和は社会を建設する二つの相反する方法の原点」と声明は述べ、「暴力の温床の激増は、もっとも深刻で否定的な社会的結果を生む」が、「平和は、これと対照的に、肯定的な結果を生み出し、真の進歩の達成につながる」としている。
教皇フランシスコはしばしば、暴力と戦乱が世界に広がる現実を「third world war in pieces(分散化した第三次世界大戦)」と呼ぶ。現在続いているもっとも残酷な紛争、イラク、シリア、アフガニスタンそしてナイジェリアの4つに限ってみても、2015年に直接の戦闘だけで9万人に近い犠牲者が出ている。この数字には、安全な場所に行こうとしてなくなった人々も、紛争が原因の飢えや医療不足で命を落とした人々も含まれていない。
声明は、たとえ煩雑で実際的でない、と思われる場合でも、「さまざまな平和の交渉の道」をとるように求めている。そうすることで、非暴力は「熱意、暴力の道徳的拒否、障壁、破壊的衝動によるだけではなく、希望をもたらすような現実的な政治手法で成り立つ」と強調。また、「今後、来年1月1日より前に出されるメッセージの中で、教皇は、武力による戦いの代わりに、各国が「自国が他国に優越している」という意識を捨て、交渉を通して紛争を解決するよう訴える『希望の道』を示すことになるだろう」としている。
ただし、非暴力は「一国が、ほかの国々の悲惨な現状に無関心であり続けることを意味しない。武器の騒音よりも外交優先を認識することを意味するのだ」と声明は述べている。教皇が選んだ今年の世界平和の日のメッセージには「無関心に打ち勝ち、平和を勝ち取る」が含まれ、2015年は「もはや奴隷ではない。兄弟、姉妹だ」だった。今年のメッセージでは、教皇は世界で起きている多くの紛争を列挙する一方で、気候変動に関するパリ合意、宗教間対話、そして慈しみの特別聖年など、いくつかの希望の光も指摘していた。