☩「若者たちとお年寄りの実り豊かな対話が求められている」-教皇、インタビュー集で

ローマ発―"使い捨て社会"の中で切り捨てられている若者たちとお年寄りたちに、教皇フランシスコが実り多い、前向きな対話を促し、slap the modern world(現代世界に平手打ちを食らわそう)とされている-教皇の新たなインタビュー集が刊行され、このほどその発表会見をしたイタリア司教協議会のヌンツィオ・ガランティーノ司教が語った。「この本の読者がまず驚くのは、若者たちと高齢者たちの止まることのない、実り豊かな対話を思わせる、この二つの世代の強い結びつきを、教皇が強調されていることです」。

 新たに刊行され本は「God is Young」というタイトルで、イタリアの著作家でジャーナリストのトマス・レオンチーニ氏が教皇と「若者たち」について交わした対話をまとめたもので、ちょうど、秋のシノドス(世界司教会議)準備のための世界の若者たちによる会合がローマで開かれたタイミングで発売された。

 刊行発表会見で、ガランティーノ司教は「教皇が言われるように、シノドスは、信者も信者でない者も、すべての若者に奉仕するものと考えたい。カトリック教会として、私たちは少しばかり、心と感覚で若返る必要があります」と語った。

 高齢者を支援する Community of St. Egidio の企画推進の責任者を務めるジャンカルロ・ペンザ氏は「この本の画期的な提案は、祖父と孫の対話の開始」だと言い、このことを「the slap philosophy(平手打ちの哲学)」と呼んでいる。「現代の若者は、教皇は言われるように、出生率がとくに先進国で低下し、若者とお年寄りの出会いの機会がめったにないような"根のない社会"で育っている」とも語った。

 教皇は、この本で、新約聖書の使徒言行録を引用して、シノドスを前に下準備会合のためにローマに集まった若者たちにも語ったことを述べている-若者たちは、老いた人々が見た夢の"預言者"となるだろう、と。

 二つの世代の予期しない、あまり耳にしたことのない共同作業は、現代社会の中で、ペンザ氏によれば、"文化的な平手打ち"をもたらす、という。氏は「この本は"ベルゴリオ教授"の偉大な作品と言えるでしょう」「彼の長い教員生活は教育への情熱をもたらし、若い人々の世話をする特別な能力を育てました」とし、教皇が最新の研究や統計分析を超えた若者理解の展望を示している、と評価している。

 ガランティーノ司教によれば、この本の第一の主題は、教皇が力を入れようとする「高齢者と若者の関係」だが、ほかにも重要なテーマが四つある、という。教皇は「"親の世代"を迂回」しており、若者たちは常に守られ、保護されてねばならない、とは考えていない、と言い、学校で何があろうと子供たちを守り、彼らの欠点に盲目な多くの親たちを実例として挙げた。

 さらに、この本で教皇が示されている「自分が老いていくのを受け入れず、永遠に若くあり続けたいと望む大人たち」に関する啓蒙的で、容赦のない現状分析を挙げ、「教皇は、『子供のように振る舞いたがる大人たちが多すぎる』と言われているが、そのような振る舞いは悪魔の戯言です」と言う。教皇はこの本で、「大人がどうやって子供と競えるのか、理解できません」と語っている。

 また、教皇は大人による過ち-教会における過ちも含めて-にも触れ、彼らは自分たちが価値を置く世界-消費主義、ゴシップ、誤った市場システム、傷められる地球など―から離れることがなかった、とも指摘している。「教会にもそうなった責任があります。しばしば"葬式"のように受け取られ、人を引き付ける魅力に欠けていました」と司教は付け加えた。

 本の最後に、教皇はまた、政治的なリーダーシップの重要性について語っている。「統治は私たち一人ひとりに奉仕するものです。誰一人忘れることなく」と強調し、リーダーにとって最悪の過ち、あるいは罪とは何か、とのレオンチーニ氏に問いに対しては「最悪は"自分自身を破壊する"こと。次に"愚かであることを認識しない”ことです」と答えている。

 そして司教は「この80歳の人物は、私たちすべてに、ひたすら、ともに歩むように働きかけている」と述べ、この本が読者に伝えようとしているのは「若い人々の心を理解するのに、歳は重要ではない」こと、とした。彼によれは、教皇は"使い古した政治的に正確な手立て"を超え、信仰を眠らせ、霊的な空洞状態にある人々の心に直接訴えかける言葉とコミュニケーションを使っている、と言う。「彼は、私たちの目を覚まし続けておられます。例外なしの教理を心配して信念を曲げることはされません。私たちを理解させる、特に福音を私たちのものにすることのできる対話のスタイルをとり続けています」と強調する。

 また、レオンチーニ氏はこの記者会見で、彼が教皇と交わした対話の経験から、教皇のコミュニケーションのなさり方を考察し、自分が教皇に「あなたが最も恐れておられるのは何ですか」と聞いた時に、教皇が「それは、愛されていない、ことです」とお答えになったことを思い返した。そして、さらに「そのような恐れを、どのようにして乗り越えるのですか」と質問したところ、教皇はこうお答えになったという。「真実を求めることで乗り越えた、と思います。もし人々が、私の本当の姿を愛してくださったら、私は愛されないことが決してないでしょう」。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 ・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

 

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年3月31日