☩「紛争や分裂を乗り越え、平和と兄弟愛の道のりを急ぐように」教皇が復活祭”Urbi et Orbi”とメッセージ

(2023.4.9  バチカン放送)

 2023年度の復活祭を迎えた9日、教皇フランシスコは、聖ペトロ広場で復活の主日のミサを捧げられ、ローマと世界に向け、「Urbi et Orbi(ローマへ、そして世界へ)」と復活祭メッセージを送られた。

「Urbi et Orbi」で教皇は、主のご復活の喜びを全世界に告げながら、復活されたイエスがもたらす希望をすべての人々と、特に病者や、貧しい人々、お年寄り、試練や苦労を抱えた人々と分かち合われた。

 復活されたイエスと最初に出会った婦人たち、マグダラのマリア、そしてイエスの復活を告げられたペトロとヨハネの喜びに満ちた走り、エマオで一緒になった旅人がイエスだと分かった弟子たちは、時を移さず出発した。

 教皇は、彼らの足取りを思い起こしながら、「主の復活によって、彼らの歩みは早まり、走りとなる。それは、その歩みの目的地、その運命の意味するもの、すなわちイエス・キリストを見たから。そして、私たちも、世の希望であるキリストとの出会いのために急ぐよう招かれているのです。人間関係の信頼、また民族や国家間の相互の信頼を取り戻すため、紛争や分裂を乗り越え、貧しい人に心を開き、平和と兄弟愛の道のりを進むために急がなくてはなりません」と訴えられた。

 そして、「復活の主が、ウクライナにおける戦争をはじめ、世界のすべての紛争を終結させるために、全ての国際共同体の心を開いてくださるように」と祈られた。

 また、エルサレムや、シリア、レバノンなど中東地域、チュニジア、エチオピア、南スーダン、コンゴ民主共和国、ブルキナファソ、マリ、モザンビーク、ナイジェリアなどアフリカ地域、ハイチやニカラグアなど中南米、またアジアではミャンマーの現状に目を向けられ、「紛争や、暴力、テロリズム、社会・経済的危機、社会的分裂や緊張のあるところに、平和と和解、安定がもたらされるように」と、復活されたキリストの光と希望を願われた。

 さらに教皇は、人々の希望の再生、歩みの継続のために主に信頼を寄せながら、「命の主が私たちの歩みを励まし、復活の日の夕方、弟子たちに言われた『あなたがたに平和があるように』(ヨハネ福音書20章19節、21節)という言葉を、私たちにも繰り返さしてくださるように」と祈られた。

 教皇はまた、「Urbi et Orbi」とともに、以下の復活祭のメッセージをおくられた。

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 親愛なる兄弟姉妹の皆さん、主のご復活のお喜びを申し上げます。

 今日、私たちは、私たちの命の主であるイエス・キリストが、世界の「復活であり、命」(ヨハネ福音書11章25節参照)であることを宣言します。ギリシャ語の「パスカ」は「過越」を意味します。それは、イエスにおいて、死から命へ、罪から恵みへ、恐れから信頼へ、悲嘆から交わりへと、人類の決定的な過ぎ越しがなされたからです。時と歴史の主である方において、心からの喜びをもって、皆さんに申し上げたいと思います。復活祭おめでとうございます。

 親愛なる兄弟姉妹の皆さん、復活祭が皆さん一人ひとりにとって、特に病者や、貧しい人、お年寄り、試練や苦労を抱えた人たちにとって、苦悩から慰めへの過越となりますように。私たちは独りではありません。生きておられる方、イエスが永遠にわたしたちと一緒におられます。教会と世界に喜びがありますように。今日、私たちの希望はもう死の壁に砕けることはなく、主が私たちに命への橋を開いてくださったからです。兄弟姉妹の皆さん、そうです、主の復活は世界の運命を変えました。そして今日、私たちは、純粋な恵みのゆえに、歴史上、最も重要で素晴らしい日を喜び祝うのです。

 東方教会が宣言するように、キリストは復活されました、真に復活されました。この「真に」という言葉は、希望がまぼろしではなく、真実であることを告げています。キリストの復活から、希望に裏付けられた人類の歩みはその足取りを早めました。それをキリストの復活の最初の証人たちの例が示しています。

 福音書は、主の復活の日に「弟子たちに知らせるために走って行った」(マタイ福音書28章8節)婦人たちの良い意味で急ぐ様子を語っています。そして、マグダラのマリアが「シモン・ペトロのところへ走って行った」(ヨハネ同20章2節)後、イエスの墓へ向かうため、ヨハネとペトロの「二人は一緒に走った」(同20章4節)とあります。

 そして、同じ日の夜、エマオへの途上でイエスと出会った二人の弟子は「時を移さず出発し」(ルカ同24章33節)、主の復活によって燃やされた抑えきれない喜びを胸に、暗い上り坂を何キロも急いで進んで行きました。その同じ喜びのために、ペトロもガリラヤ湖畔で復活したイエスを見た時、仲間たちと舟の上に留まっていることができず、すぐに水に飛び込み、イエスのところに急いで泳いで行きました(ヨハネ同21章7節)。

 つまり、主の復活により、歩みは早まり、「走り」となります。なぜなら人類はその歩みの目的地、その運命の意味するもの、すなわちイエス・キリストを見たからです。そして、世の希望であるキリストとの出会いのために、急ぐように招かれているからなのです。

 私たちもまた、相互の信頼、すなわち人間関係の信頼、また民族や国家間の信頼の歩みにおいて成長を早めなくてはなりません。主の復活の喜ばしい知らせがもたらす驚きに、闇を照らす光に、心をまかせましょう。世界はその闇の暗さに何度も覆われています。

 紛争や分裂を乗り越え、貧しい人に心を開き、平和と兄弟愛の道のりを進むために急ぎましょう。戦争や貧困から逃げる人々に支えと受け入れを提供する国々をはじめ、多くの国から届く希望の具体的なしるしのために喜びましょう。

 しかし、歩みの途中にはまだ多くのつまずきの石があります。それらは復活の主へと急ぐ私たちの道のりを険しく困難にするものです。復活された主に、私たちの祈りを上げましょう。あなたに会いに急ぐ私たちを助けてください。私たちが心を開けるように助けてください、と。

 愛するウクライナ国民を平和への歩みにおいて助けてください。復活の主の光をロシアの人々に広げてください。戦争のために負傷した人、家族を失った人をなぐさめてください。捕虜の人たちが家族のもとに無事に帰ることができますように。

 復活の主が、この戦争を、また、まだ平和を待つシリアをはじめ、世界各地で血を流すすべての紛争を終結させるために、国際社会全体の心を開いてくださいますように。トルコとシリアの大地震の被災者たちを支えてください。家族、友人を失った人々、家を無くした人々のために祈りましょう。これらの人々が神のなぐさめと、国々という「家族」の助けを得ることができますように。

 主よ、今日この日、あなたの復活の最初の証人であるエルサレムを託します。ここ数日の攻撃を非常に憂慮しています。それは、イスラエルとパレスチナ間の対話再開に必要かつ期待される、相互の信頼と尊重を脅かすものです。聖都と聖地全域を平和が統治しますように。

 主よ、いまだ安定と一致を模索するレバノンを助けてください。分裂を克服し、すべての市民が国の共通善のために働くことができますように。

 チュニジアの愛する人々、特に若者たちと社会・経済問題のために苦しむ人々を忘れないでください。人々が希望を失うことなく、平和と兄弟愛の未来を築くために協力し合うことができますように。

 何年もの間、深刻な社会・政治・人道的危機に苦しむハイチに、あなたの眼差しを向けてください。国民を苦しめる多くの問題に最終的な解決を求める政治責任者と国際共同体の努力を支えてください。

 エチオピアと、南スーダンでの、平和と和解のプロセスを確かなものにしてください。コンゴ民主共和国における暴力を止めてください。

 主よ、ニカラグア、そしてエリトリアのように、今日、特殊な状況の中で復活祭を祝っているキリスト教共同体を支え、自らの信仰を自由に公に宣言することを妨げられた人々を心に留めてください。ブルキナファソ、マリ、モザンビーク、ナイジェリアをはじめとする、国際テロリズムの犠牲者たちになぐさめを与えてください。

 ミャンマーが平和への道を歩むことを助け、苦しむロヒンギャの人々が正義を見出せるよう、責任者たちの心を照らしてください。

 難民たち、国外に追放された人々、政治的理由で収監されている人々、移民たち、中でも最も弱い立場にある人たち、また飢えや貧困に苦しむ人々、麻薬や人身取引、あらゆる形の隷属の犠牲者たちをなぐさめてください。主よ、いかなる人も差別されず、尊厳を侵害されることがないよう、国々の責任者たちに啓示を与えてください。人権と民主主義の完全な尊重を通して、これらの社会的な傷をいやし、市民の共通善だけを常に求め、安全と、対話に必要な条件、平和的共存を保証することができますように。

 兄弟姉妹の皆さん、私たちも歩むことへの意欲を取り戻し、希望の鼓動を早め、天国の美しさを前もって味わいましょう。今日、私たちを失望させることのない善である方と出会うために、善において邁進するエネルギーを汲み取りましょう。古代の教父が記しているように、「最も大きな罪は、主の復活の力を信じないこと」(シリアの聖イサク)であるなら、今日、私たちは信じます―「そうです。私たちは確信します。キリストは真に復活されました」と。

 主イエスよ、あなたを信じます。あなたと共に希望が再び生まれ、歩み続けることができると信じます。命の主よ、私たちの歩みを励ましてください。そして、復活の日の夕方、弟子たちに言われた「あなたがたに平和があるように」(ヨハネ福音書20章19、21節)という言葉を、私たちにも繰り返してくださいますように。

 Vatican Newsによる「Urbi et Orbi」の内容は以下の通り。

 *Bridge to life

In his Easter message, Pope Francis began first by announcing the joyous message of this day when we proclaim that Christ is risen.

In Jesus, the passage of humanity from death to life, sin to grace, fear to confidence and desolation to communion has been made, the Pope declared, wishing everyone a Happy Easter.

In particular, he greeted the sick, the poor, the elderly and all those suffering that they may experience the passage from affliction to consolation. He called on everyone to remember and rejoice that “the Lord has built us a bridge to life” in defeating death, making it for us “the most important and beautiful day of history.”

* “Christ is risen; He is truly risen!”

The Pope explained how the word “truly” in the Easter proclamation underscores that the Lord’s resurrection is a reality, not just wishful thinking. And this means that humanity’s journey has a sure footing in hope and therefore can move forward with confidence in facing the many challenges now and ahead.

Recalling the example of the first disciples, witnesses of the resurrection, the Pope described how they all hurried to tell others this good news. Humanity is called today as well “to make haste” to meet Jesus Christ, the goal of our journey and hope of the world.

“May we too make haste to progress on a journey of reciprocal trust: trust among individuals, peoples and nations,” he said. “May we allow ourselves to experience amazement at the joyful proclamation of Easter, at the light that illumines the darkness and the gloom in which, all too often, our world finds itself enveloped.”

“May we too make haste to progress on a journey of reciprocal trust: trust among individuals, peoples and nations.”

Looking at the urgent efforts needed to resolve conflicts and divisions and pursue paths of peace and fraternity, the Pope praised those who are doing all they can to offer assistance and welcome to people fleeing war and poverty. He asked that the Lord may open all our hearts to do the same.

*Light of Easter on Ukraine and Russia

The Pope prayed for peace for the “beloved Ukrainian people” and that the light of Easter may shine on the people of Russia.

May the Lord “comfort the wounded and all who have lost loved ones due to the war,” he continued, and may prisoners return home and the entire international community strive to end war globally.

The Pope spoke of Syria, still awaiting peace, and earthquake victims there and in neighboring Turkey where our continued solidarity is needed.

*Healing the divisions

Remembering the holy city of Jerusalem, the Pope prayed for a resumption of dialogue between Israelis and Palestinians, so that peace may prevail. He prayed for help to Lebanon as it struggles to regain stability and unity.

He mentioned Tunisia as well, praying that the young and those suffering from social and economic hardship may not lose hope and find ways to build a future of peace and fraternity.

*Peace and reconciliation

The Pope asked for help for Haiti where social and economic hardship still weigh heavily on the people struggling for a way out of their many challenges.

May the Lord support peace and reconciliation efforts in Ethiopia and in South Sudan, and the Democratic Republic of the Congo, he recalled. And he prayed for consolation for victims of international terrorism, especially in Burkina Faso, Mali, Mozambique and Nigeria.

Pope Francis recalled Christian communities celebrating Easter in Nicaragua and Eritrea, praying for them and for all citizens that they may be able to freely and publicly profess their faith.

The Pope then mentioned Myanmar that peace may prevail and enlighten the hearts of leaders so that “deeply-afflicted Rohingya may encounter justice.”

Respect for human dignity

May the Lord give comfort to refugees, deportees, political prisoners and migrants, the Pope prayed, especially the most vulnerable.

And may we all help the victims of hunger, drug abuse, human trafficking and all other forms of slavery, he added, as we ask the Lord to inspire the leaders of nations to assure respect for human dignity so these social wounds may be healed.

“Brothers, sisters, may we rediscover the enjoyment of the journey, quicken the heartbeat of hope and experience a foretaste of the beauty of heaven! Today, let us summon the energy to advance in goodness towards Goodness itself, which never disappoints…May you, the Lord of life, encourage us on our journey and repeat to us, as you did to the disciples on the evening of Easter: ‘Peace be with you!’”

(編集「カトリック・あい」)

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2023年4月10日