☩「『死の文化』でなく『命の文化』のために働こう!」ー教皇フランシスコがGOP28会議参加国へメッセージ

Cardinal Parolin delivers Pope Francis' message to COP28Cardinal Parolin delivers Pope Francis’ message to COP28  (AFP or licensors)

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で2日、教皇フランシスコのメッセージがバチカンの国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿によって読み上げられた。

 教皇は同会議への参加を予定していたが、健康上の理由で出席された。

 パロリン枢機卿によって代読されたメッセージで、教皇は「気候変動対策への具体的な取り組みは、未来のための急務」と訴えられた。

 メッセージの冒頭で、教皇は「残念ながら望んでいた形ではありませんが、私は皆さんと共にいます。なぜなら、今は急を要する時、皆の未来は現在の選択にかかっているからです… 被造物の破壊は神の冒涜です。最も貧しい人々をはじめとする人類に対する罪であり、気候変動は人間の命の尊厳に関わる地球的な社会問題だからです」と語られた。

 そして、「『命の文化』のために働くのか、それとも『死の文化』のためか。私たちは今、それに答えるよう求められています」とされ、「命を、未来を選びましょう! 大地のうめきに、貧しい人たちの叫びに、耳を傾け、若者の希望と子どもたちの夢を聞きましょう。彼らの未来が拒まれることがあってはなりません」と訴えられた。

 さらに、「生産と所有への野心は強迫観念となり、際限のない貪欲を生みながら、環境を抑制のきかない搾取の対象にしてしまった。狂った気候は、こうした全能の妄想を食い止める警告のように響いています」と述べ、自分たちの限界を謙虚さと勇気をもって認める必要を説かれた。

 深刻な問題になりつつある気候変動について、その責任を、多くの貧しい人々や、出生数に転嫁しようする試みに対し、「世界のおよそ半分を占める貧しい国々は、汚染物質の排出のわずか10%しか責任を負っていない。それよりも、先住民の置かれた状況や、森林破壊、飢餓や水・食糧危機、誘発された人口移動現象に見られるように、これらの人々は環境問題や気候変動の犠牲者なのです」と指摘。また、子どもの出生は「問題ではなく豊かさであり、命に敵対するものではなく、命そのもの」とされた。

 そして、すでに重い負債にあえぐ多くの国々の発展にペナルティーを科すべきでなく、他の多くの国に環境面での負債を持つ少数の国々の責任と影響に目を向け、「その環境にかかる負債に応じて、貧しい国々の財政上の負債を免除する適切な方法を見出すこと」を提案された。

 さらに、「環境・気候危機からの出口はどこにあるのか、それはこの会議が示すように、皆で行く道、『多国間主義』にあります… これほどにも多極化、かつ複雑化しつつある世界には、効果的な協力のための異なる枠組みが必要です」と強調。地球温暖化が、「多国間主義の冷却と、国際社会への高まる不信感、国家間の一つの家族としての認識の喪失のうちに進行していること」を憂慮された。

 「被造物への配慮は、同様に平和に対する配慮でもあります」とされた教皇は、この二つの課題の関連性を指摘。「イスラエルやパレスチナ、ウクライナ、そして世界の様々な地域で起きている紛争のために、人類はどれだけのエネルギーを浪費しているのでしょうか。人命を奪い、『私たちの共通の家』を破壊する兵器に、どれほど多くの資源が費やされているのでしょうか」と問いかけられ、「武器や軍備に使われる資金を使って飢餓撲滅のための世界基金を設立し、気候変動問題に取り組みながら、最貧国の持続可能な開発促進のために活動する」ことを提案された。

 「気候の変化は、政治的な変化の必要を示すもの」であり、「過去の図式である個別主義やナショナリズムの狭い路地から抜け出し、それに代わる『環境的回心』を可能にする共通のビジョンを受け入れるよう、求められ、「1992年にリオデジャネイロで気候変動との闘いが始まったとすれば、パリ協定はその新たな始まりです。今こそ、そのプロセスを再開し、具体的な希望のしるしをもたらす必要があります… 子どもたち、市民、国々、私たちの世界のためを願うだけでなく、もはや先延ばしにせず、実行に移すことが問われているのです」と訴えられた。

 最後に、教皇は、「2024年に、アッシジの聖フランシスコが被造物の賛歌である『太陽の賛歌』を作って800年を迎えること」に言及され、「からだ中の痛みに襲われ、視力も失った聖フランシスコが、暗い闇との闘いの後に、再び精神的に立ち上がり、兄弟姉妹である被造物たちのために神を称えようと望んだ、苦しみを賛美へと変える霊性」を振り返られ、祈りを込めて、「分裂を過去のものとして、力を合わせましょう。神の力をもって、共通の未来を輝くあけぼのに変えるために、戦争と環境破壊の闇から抜け出しましょう」と、COP28の各国代表、そして世界のすべての人に呼びかけられた。

(編集「カトリック・あい」)

 

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2023年12月2日