
(2025.10.29 Vatican News Isabella H. de Carvalho)
教皇フランシスコは29日の水曜恒例一般謁見での講話で、ユダヤ教とカトリック教の関係の重要性、政治的な影響を排除することの必要性を強調、宗教が協力してより良い世界を築くことを訴えられた。
*非キリスト教宗教との関係に関する宣言『Nostra aetate』の意義
講話で教皇は、「第2バチカン公会議の非キリスト教宗教との関係に関する宣言『Nostra aetate(私たちの時代)』以来、歴代教皇は明確な言葉で反ユダヤ主義を非難してきました」とされ、「私もまた、福音そのものに基づき、教会が反ユダヤ主義を容認せず、これと戦うことを確認します」と言明された。
宗教間対話の重要性に焦点を当てたこの講話で、異なる信仰が共により良い世界を築くための道筋を示し、ユダヤ教とカトリックの関係の重要性も強調されたうえで、『Nostra aetate』発表から60年が経過する中で、「誤解や困難、対立があったことは否定できませんが、対話を継続させることを妨げることは、決してありませんでした」と指摘。
そして 「今日においても、政治的状況や一部の者による不正が、友情から我々をそらすことを許してはなりません。特にこれまでに大きな成果を上げてきたのですから」と述べられ、一般謁見に出席した異なる信仰の指導者や代表者に対し、感謝の意を表明した。
*ユダヤ教とカトリックの対話の60年
また教皇は、1965年の『Nostra aetate』公布以来「この60年間にユダヤ教とカトリックの対話で達成された全てを、今日私たちは感謝をもって振り返ることができます… これは人間の努力だけでなく、キリスト教の確信によれば、対話そのものである私たちの神の助けによるものです」と強調。
さらに、『Nostra aetate』の「最初の焦点は、ユダヤ世界に向けられていました… 教会史上初めて、キリスト教のユダヤ的ルーツに関する教義的論文が形作られ、聖書的・神学的レベルで後戻りできない転換点となったのです」とされ、この文書はカトリック教会のユダヤ的ルーツを強調し、「その信仰の始まりと選民としての地位は、すでに族長たち、モーセ、預言者たちの中に認められます… この文書は、いかなる時代においても、いかなる者によってもユダヤ人を対象としたあらゆる形態の反ユダヤ主義を非難しており、その根拠は、政治的理由ではなく、福音の霊的な愛によるものです」と語られた。
*宗教が協力できる分野は
教皇は続けて、この文書の公布から60年を経た今日、「異なる信仰が共に成し得ること」を思い起こされ、「答えは単純です。私たちは共に行動できるのです… 現代世界において、私たちの結束と友情、協力をこれまで以上に必要としています」と述べられた。そして、宗教が人々を結びつける分野として、「人間の苦しみを和らげ、私たちの共通の家である地球をケアすることへの貢献 」「真実、思いやり、和解、正義、平和を教えること」「あらゆる時代における人類への奉仕を再確認すること」、そして「神の名、宗教、対話そのものの悪用、ならびに宗教的原理主義や過激主義がもたらす危険に対して警戒すること」を挙げられた。
また教皇は、今日「AI(人工知能)の責任ある発展に向き合うことの重要性」を強調。「人間に代わる存在として構想されるなら、人間の無限の尊厳を深刻に侵害し、根本的な責任を無効化する恐れがあるからです」と述べられ、異なる宗教が協力し合えば、「技術の人間化、ひいてはその規制の指針となり、基本的人権を保護する上で計り知れない貢献ができるのです」と訴えられた。
*今日の希望の必要性
教皇はさらに、第二次世界大戦後、『Nostra aetate』が「出会い、尊重、精神的寛容の新たな地平」を開き、多くの人々に希望をもたらしたように、「戦争で荒廃させられ、自然環境が危機にある現在の世界で、私たちは、希望を再燃させるよう求められています…そして、宗教は平和は人間の心から始まることを教えます。個人の生活、家族、地域、学校、村、国、そして世界に希望を取り戻さねばなりませんが、その希望は宗教的信念、新たな世界が可能だという確信に根ざしているものです」と強調。
さらに、「私たち異なる宗教が力を合わせれば、すべてが可能となる。何ものも私たちを分断しないようにしましょう…そして、この友情と協力の精神を次世代にも伝えましょう。それが対話の真の礎だからです」と訴えられた。
そして、『Nostra aetate』は「他宗教の信徒を『よそ者』ではなく、真理への道程を共にする『旅の仲間」として迎え入れること、共通の人間性を認めつつ差異を尊重すること、あらゆる誠実な宗教的探求の中に、全被造物を包み込む唯一の神聖なる神秘の反映を見出すことを教えているのです」と述べられた。
*『Nostra aetate』―今日の教会の道しるべ
教皇レオは特にカトリック教会に向けて、「『Nostra aetate』は今もなお」その道を照らし続けています」とされ、「この宣言は、司教、聖職者、奉献生活者、信徒を含む全てのカトリック教徒に対し、他宗教の信徒との対話と協力に誠実に取り組むよう招いています。彼らの伝統に存在する善きもの、真実なもの、聖なるものを認め、促進するように、です… 今日では、世界のほぼ全ての都市に多様な文化的・宗教的背景を持つ人々が存在するため、これが一層重要です」と説かれた。
さらに、「『Nostra aetate』は、真の対話が愛に根ざしていることを想起させます。愛こそが平和、正義、和解の唯一の基盤であり、あらゆる形態の差別や迫害を断固として拒絶し、すべての人間の平等な尊厳を確言するものです」と続けられた。
教皇の今回の講話は、ヨハネ福音書に登場する「文化、性別、宗教の障壁」を乗り越えて井戸端でサマリアの女性と語られたイエスのエピソードに触発されたもので、「この出会いは、あらゆる境界を越えた神の臨在と、畏敬と謙遜をもって共に神を求める招きを示しています」と語られた教皇は、「これが、誠実さ、傾聴、相互の豊かさに基づく対話の真髄を明らかにしています… サマリアの女性は、霊と真実において実現される礼拝の新たな理解を見出したのです」と述べられた。
講話の最後に教皇は、「祈りは、私たちの態度、思考、言葉、行動を変容させる力を持ちます」とされ、参列者全員に黙祷の時間を取るよう呼びかけられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)