◎教皇 連続講話「使徒的熱意について」⑰豪州で現地の教育に尽くした聖メアリー・マッキロップに学ぶ

教皇フランシスコ 2023年6月28日の一般謁見 バチカン・聖ペトロ広場教皇フランシスコ 2023年6月28日の一般謁見 バチカン・聖ペトロ広場  (VATICAN MEDIA Divisione Foto)

(2023.6.28  バチカン放送)

 教皇フランシスコは28日、バチカンの聖ペトロ広場で水曜恒例の一般謁見を行われ、「使徒的熱意について」をテーマとした連続講話を再開された。一般謁見は、教皇が手術のため入院された7日以来、3週間ぶり。また、7月1か月の謁見休止期間に入る前の最後の謁見となった。

 連続講話で教皇は、2010年に列聖されたオーストラリア生まれで初めての聖人、メアリー・マッキロップ修道女(1842-1909)を取り上げられ、聖ヨセフ聖心修道会を創立し、オーストラリアの地で、恵まれない人々の教育に尽くした生涯を振り返えられた。

 連続講話の要旨は次のとおり。

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 様々な時代と場所で使徒的熱意を模範的に証しした人々を取り上げるこのカテケーシスで、今日はオセアニアに目を向けましょう。オセアニアに欧州からの多くの移民たちによって伝えられたキリスト教信仰は、根を張り、豊かな実りをもたらしました。その実りの間に、聖ヨセフ聖心修道会を創立し、恵まれない人々の知識教育・宗教教育に尽くした、聖メアリー・マッキロップ修道女(1842-1909)がいます。

 メアリー・マッキロップは、メルボルンのスコットランド系移民の家庭に生まれました。早くから、言葉だけでなく、特に神の現存に変容された生き方を通して、神に仕え、神を証しする召命を感じていました。また、復活されたイエスと出会い、そこから弟子たちにそれを告げるようにとイエス自身から派遣されたマグダラのマリアのように、彼女自身も福音を宣べ伝え、人々を生ける神との出会いに導くように召されていることを確信していました。

 時代のしるしを賢明に読み取りながら、メアリー・マッキロップは、「自分にとって、召命を生きる最良の方法は、若い人たちへの教育を通してだ」と知りました。それぞれの聖人は神が計画された独自の使命に召されていますが、メアリー・マッキロップは、カトリック教育が一つの福音宣教の形であることを認識し、召命は、学校の創立を通して実現されていったのです。

 メアリー・マッキロップの福音への熱意は、特に貧しい人々や疎外された人々への世話に表されました。重要なことは、恵まれない人々、見捨てられた人々は聖性への道における主役であり、聖人たちは何らかの形でこれらの人々に人生を捧げる、ということ。貧しい人々への奉仕のために、メアリー・マッキロップは、他の人たちが行こうとしない場所、行くことができない場所に、自ら赴きました。1866年3月19日、聖ヨセフの祭日、彼女はオーストラリア南部の小さな町に最初の学校を開きます。そして、彼女と仲間たちによって、オーストラリアとニュージーランドの農村地帯に次々と学校が創立されていきました。

 メアリー・マッキロップは、教育の目的は、個人、また共同体の一員としての統合的な成長にあると確信していました。それは、教育を受ける一人ひとりに知恵と忍耐と愛を要求するものです。教育とは、頭を考えでいっぱいにすることではなく、生徒の人間的・霊的成長の歩みに寄り添い、励ますことにある、と。

 貧しい人々の間で福音を宣教するというメアリー・マッキロップの情熱は、アデレードに開いた、見捨てられた高齢者や若い女性を受け入れる「御摂理の家」をはじめとする、様々な事業につながっていきました。彼女はあらゆる状況において神の御摂理に信頼していました。使徒職にまつわる様々な不安や困難は尽きることなく、後には健康問題も重なりましたが、彼女は十字架も使命の一部として忍耐をもって受け入れ、常に落ち着いていました。

 十字架称賛の祝日に、メアリーは仲間の修道女に「長い年月を通して、十字架を愛することを学びました」と語っています。試練や暗い日々において反対や拒絶が喜びをかき消そうとする時も、彼女は屈することはありませんでした。主が「災いのパンと苦しみの水」(イザヤ書30章20節)を与えられる時も、主ご自身が彼女の叫びに答え、彼女を恵みで包んでくださることを疑いませんでした。

 聖メアリー・マッキロップの宣教的使徒職、当時の教会の必要に対するその創造的な回答、若者たちの統合的育成への努力が、今日、急速に変化する社会において福音のパン種になるよう召されている私たちにも、霊感を与えてくれることを、また、若者たちの善とより人間的で希望ある未来のために、彼女の模範と取次ぎが、保護者や、教育者、カテキスタたちの日ごろの仕事を支えてくれることを祈りましょう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年6月29日