☩「 パレスチナとイスラエルの共存が実現しますように!」教皇、「平和の祈り」10周年イベントで

(2024.6.7 Vatican News  Deborah Castellano Lubov )

    教皇フランシスコは7日、イスラエルとパレスチナの当時の指導者らとともにバチカン庭園で行われた「平和への祈り」の10周年を8日に迎えるにあたって、「聖地での戦争が終わるよう毎日祈っている」こと、「戦争で問題を解決できると考えるのは欺瞞だ」という確固たる信念を改めて表明された。

 

*「紛争当事者が、平和と統一への道を速やかに見つけられるように」

 

 「私は毎日、この戦争が終わりを迎えることを祈っています…」-教皇は7日夜、10年前にバチカン庭園で行われた歴史的な「平和への祈り」を記念するイベントで語られた。イベントには、ラビ・アルベルト・フナロ、イタリア・イスラム文化センター事務局長のアブデラ・レドゥアン、そしてイスラエルとパレスチナ両国の聖座駐在大使たちが参加。教皇は、当時のイスラエルのシモン・ペレス大統領、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス大統領、コンスタンティノープル総主教バルトロメオス1世が植えたオリーブの木の下で、「国家の指導者と紛争当事者が、平和と統一への道を見つけられるように」と主に祈るよう求められた。

 さらに教皇は、「パレスチナ国とイスラエル国が共存し、敵意と憎しみの壁を打ち破り、永続的な平和を実現するために、私たち全員が努力し、力を尽くさねばなりません。私たちは皆、エルサレムを大切にしなければなりません。そうすれば、エルサレムは国際的に保証された特別な地位によって保護され、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒の兄弟愛の出会いの街となるでしょう」とされ、「私たち全員が、パレスチナ国とイスラエル国が共存できる永続的な平和を実現するために努力し、全力を尽くさなければなりません」と繰り返された。

 

 

*「私たちも、出会いに、対話に、交渉に『イエス』と言おう」

 

 そして、「出会いには『イエス』、紛争には『ノー』と言う勇気が必要です。対話には『イエス』、暴力には『ノー』。交渉には『イエス』、敵対行為には『ノー』と言う勇気が必要です」と強調された。「悲劇的な紛争が続くこの時代に、平和な世界を築くという新たな決意が必要です」とされた教皇は、「すべての信者と善意の人々」に、「平和を夢見ることをやめず、平和の関係を築くことをやめないようにしましょう!」と訴えられた。

 また教皇は、「『戦争が問題を解決し、平和をもたらす』という考えは、自分を欺いているだけです」と批判、「今日支配的になっている『紛争、暴力、崩壊は社会の正常な機能の一部だ』と主張するイデオロギーを警戒し、批判的立場をとる必要があります」と忠告。パレスチナとイスラエルの両国が「共存」できる永続的な平和のために努力するよう、全ての人々に訴え、全ての関係者に「エルサレムを大切にし、国際的に保証された特別な地位によって守られ、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒の兄弟的な出会いの街となるようにすることを呼びかけられた。

*「ガザでの瓦礫から武器をなくし、流血を一刻も早く止めよ」

 

 教皇は、イスラエルとパレスチナで苦しんでいるすべての人々、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒のことを思い、ガザでの大虐殺を終わらせ、イスラエル人人質を解放するための停戦を求める訴えを改めて表明された。「ガザの瓦礫の中から、武器をなくすという決断がされることがいかに緊急であるかを私は考えます… そしてイスラエル人人質の家族… できるだけ早く解放してほしい」と求められた。

 また、パレスチナの人々の保護を求め、彼らが「必要な人道支援をすべて受けられるように」、また戦闘により避難を余儀なくされた無数の人々の家ができるだけ早く再建され、「平和のうちに元の場所に戻れるように」と求められた。

*「『新しい日』への希望を持ち続けよう」

 教皇は、涙と苦しみの中で「新しい日の到来を望み続け、平和な世界の夜明けをもたらすよう努めているパレスチナ人とイスラエル人」に特別な形で寄り添いを示され、主が慈悲深く、このイベントに集まった人々の祈りに耳を傾け、平和の賜物を授けてくださるよう祈られた。

 「平和は書面による合意や人間的、政治的妥協によってのみ実現されるものではありません。そうではなく、回心することから生まれ、私たち一人ひとりが神の愛に出会い、感動したときに生まれるのです。神の愛は、私たちの利己心を消し去り、偏見を打ち砕き、友情、友愛、相互連帯の味と喜びを与えてくれます。神自身がまず私たちの心を武装解除し、親切で、思いやりがあり、慈悲深いものにしない限り、平和はあり得ません」と強調された。

*「10年前の『平和の祈り』を改めて捧げよう!}

 平和を夢見ることは、「人類がひとつの家族の一員であるという予期せぬ喜びを与えてくれます」と語られた教皇は、ヴェローナへの司牧訪問中に、イスラエル人とパレスチナ人の父親たちが皆の前で抱き合ったときの喜びを思い起され、「イスラエルとパレスチナに必要なのは、平和の抱擁です!」と訴えられた。そして、イベントの出席者に対し、国家の指導者と紛争当事者が平和と統一への道を見い出せるよう、主の執り成しを願るように呼びかけられ、10年前の祈願で唱えられた以下の祈りを暗唱するよう求められた。

Prayer for Peace (英語公式訳)

8 June 2014

“Lord God of peace, hear our prayer!
We have tried so many times
and over so many years
to resolve our conflicts by our own powers and by the force of our arms.
How many moments of hostility and darkness have we experienced;
how much blood has been shed;
how many lives have been shattered;
how many hopes have been buried…
But our efforts have been in vain.
Now, Lord, come to our aid!
Grant us peace, teach us peace; guide our steps in the way of peace.
Open our eyes and our hearts,
and give us the courage to say: “Never again war!”;
“With war, everything is lost”.
Instil in our hearts the courage to take concrete steps to achieve peace.
Lord, God of Abraham, God of the Prophets, God of Love,
you created us and you call us to live as brothers and sisters.
Give us the strength daily to be instruments of peace;
enable us to see everyone who crosses our path as our brother or sister.
Make us sensitive to the plea of our citizens
who entreat us to turn our weapons of war into implements of peace,
our trepidation into confident trust,
and our quarreling into forgiveness.
Keep alive within us the flame of hope,
so that with patience and perseverance
we may opt for dialogue and reconciliation.
In this way may peace triumph at last,
and may the words “division”, “hatred” and “war”
be banished from the heart of every man and woman.
Lord, defuse the violence of our tongues and our hands.
Renew our hearts and minds,
so that the word which always brings us together will be “brother”,
and our way of life will always be that of: Shalom, Peace, Salaam!
Amen.”

「平和の祈り」(日本語「カトリック・あい」仮訳)

平和の神である主よ、私たちの祈りをお聞きください!

 私たちは、自分たちの力と武力で紛争を解決しようと、何度も何年も試みてきました。

 私たちはどれほど多くの敵意と暗闇を経験し、どれほど多くの血が流され、どれほど多くの命が砕かれ、どれほど多くの希望が葬り去られたことでしょう… しかし、私たちの努力は無駄でした。

 今、主よ、私たちを助けに来てください! 私たちに平和を与え、平和を教え、平和の道へと歩みを導いてください。 私たちの目と心を開き、 「二度と戦争は起こしてはならない!」と言う勇気を与えてください。 「戦争があれば、すべてが失われる」と。 平和を達成するために具体的な一歩を踏み出す勇気を私たちの心に植え付けてください。

アブラハムの神、預言者の神、愛の神である主よ、あなたは私たちを創造し、兄弟姉妹として生きるよう呼びかけておられます。

 平和の道具となる力を日々与えてください。 私たちの道を渡るすべての人を兄弟姉妹として見ることができるようにしてください。戦争の武器を平和の道具に、不安を確信に、争いを許しに変えるよう懇願する国民の嘆願に、私たちが敏感になれるようにしてください。忍耐と根気強さで対話と和解を選べるよう、私たちの中に希望の炎を灯し続けてください。

 こうして平和がついには勝利し、あらゆる人々の心から「分裂」「憎しみ」「戦争」という言葉が消え去りますように。主よ、私たちの舌と手の暴力を鎮めてください。私たちの心と精神を新たにしてください。

 そうすれば、私たちをいつも結びつける言葉は「兄弟」となり、私たちの生き方はいつも「シャローム、平和、サラーム!」となるでしょう。アーメン。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年6月8日