Archbishop Víctor Manuel Fernández
(2023.7.1 Vatican News)
教皇フランシスコは1日、教理や未成年者保護などを担当する教理省の長官をルイス・フランシスコ・ラダリア・フェレール枢機卿からビクトル・マヌエル・フェルナンデス大司教に交替させる人事を発令されるとともに、新長官あてに書簡を送られた。
書簡の中で、教皇は、新長官に「非常に価値ある任務を託します」とされたうえで、長官としての主たる任務は「私たちの希望に根拠を与えるために、信仰を源とする教えを守ること」であり、「誤りを指摘したり、断罪したりする”敵役”を務めることではありません」と強調された。
フェルナンデス新長官は、教皇庁聖書委員会の委員長も兼務する予定で、正式就任は9月中旬になる。新長官は61歳、教皇庁立アルゼンチン・カトリック大学長、アルゼンチン神学協会長などを務め、教皇がブエノスアイレス大司教だったころから現在に至るまで、神学の分野での補佐役を務め、使徒的勧告「福音の喜び」などの執筆にも貢献し、教皇の信任も厚い。
書簡で教皇は、教理省は過去において、「時として、(その役務が)教理面での間違いや問題のある手法の追求に傾斜していた」と指摘され、新長官として、「これまでとはきわめて異なる仕事に指導力を発揮する」ことを期待している、と述べられた。
*教理省にとって重要な「未成年者の保護」の役割
そして、未成年者保護に特化した部門が教理省内に置かれたことを強調され、新長官に対して、「キリスト教の信仰を守る」という教理省の主たる目的を個人的にも、直接的にも固守するよう求められた。さらに、福音宣教において信仰を伝えることに強い勢いを与え、特に科学の進歩と社会の発展によって起される様々な問題に直面する中で、その光が、存在の意味を理解するための規範となるようにすることを願われた。
*人類にとって前例のない状況の中で世界の人々の対話ができるように
また教皇は、福音のメッセージを新たな形で宣言するよう促され、教理省が福音宣教の道具となり、人類史上前例のない事態が起きている中で、カトリック教会が世界の人々と対話できるように助けることを求められた。
続けて、教会は、掲示された御言葉の解釈と心理の理解において成長する必要があり、その際、一つの決まった表現の仕方だけを押し付けないようにすることが大事である、と指摘。「 尊敬と愛によって育まれる調和のとれた成長は、いかなる”管理メカニズム”よりも効果的にキリスト教の教義を保つことにつながります」と述べられた。
*”机上の神学”や冷酷で厳格な論理に満足しない神学者が必要だ
さらに教皇は、”机上の神学”やすべてを支配しようとする冷酷で厳格な論理に満足しない神学者が求められている、とされ、「 私たちに必要とされている神学は、神の無限の力、そして特に神の慈悲に究極的な疑問を投げかける、いかなる神学的な概念を不適切とみなす根源的な規範を大切にする必要があります。 私たちに必要とされている考え方は、人々を愛し、赦し、救い、自由にし、前進させ、彼らに兄弟姉妹愛に満ちた奉仕を促す神を提示することです」と説かれた。
そのうえで教皇は、新長官に対して、最も素晴らしく、偉大で、魅力的で、同時に最も必要とされる本質に焦点を当てた意向を勇気をもって言明するよう求められると同時に、中心的な課題を二次的なもので覆い隠することが無いよう、警告された。
書簡の最後に、教皇は新長官に、教理省や教皇庁の他省の諸文が十分な神学的裏付けを持ち、カトリック教会の長年にわたる教えの豊かな蓄積と調和していることを常に確認し、同時に、近年の教導権を受け入れることを求められた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)