(2021.6.5 カトリック・あい)
「国連生態系回復の10年」が5日の「世界環境デー」から始まった。教皇は開始に当たって、この取り組みの中心となる国連環境計画(UNEP)と国連食糧農業機関(FAO)にメッセージをおくられ、「全世界で生態系の破壊を食い止め、生態系回復への関心を高めることが、人類の『共通の家』へのいたわりとなること」へ期待を表明された。
メッセージで教皇は「環境をめぐる今日の状況は、被造物を責任をもって守り、長い間破壊し搾取した自然を取り戻すことを急務となっていることを示しています」とされ、「それができなければ、私たちが依存している基礎そのものが破壊され、水害や飢餓など、現在だけでなく、未来の世代に深刻な影響を与えることになります」と訴えられた。
そして、私たちが取り組むべき課題として、長期の計画を通して、自然への配慮と、貧しい人々に対する正義、社会における取り組み、内的な平和といったものの不可分性を明らかにし、あらゆるレベルでのエコロジー的な調和を回復する「統合的エコロジーの推進」と強く求められた。
さらに、緊急の課題として、特に「新型コロナウイルスによる世界的大感染の早期終息」と「地球温暖化防止」を挙げられ、11月に英グラスゴーで開かれる国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が、環境対策と意識向上を通して、生態系回復に貢献することを希望された。
教皇は、「生態系の荒廃は、経済の機能不全の明白な結果」とされ、「経済の意味と、その目的についての新たな深い考察」が求められていると説かれ、「破壊された自然を取り戻すことは、第一に、私たち自身を取り戻すこと。私たちが『回復の世代』として正しい役割を果たせるように願われた。
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「国連生態系回復の10年」(2021-2030)」は、2019年3月の国連総会で実施が決定していた。2030年までに、気候危機との闘い、食料安全保障と水供給、そして生物多様性の保全の強化における効果ある対策として、劣化あるいは破壊された生態系の回復を促進することを目指している。
UNEPの発表によると、陸上生態系や海洋生態系の劣化によって世界32億人の健康・生活水準が低下し、世界のGDPの10%に相当する生態系サービスが損なわれている。国連は2030年までに劣化した土地を3,500万ヘクタール回復させる「ボン・チャレンジ」を進めており、これにより9兆米ドル相当の生態系サービスを生み出し、13Gtから26Gtの二酸化炭素を大気から固定することが可能になる、という。だが、ボン・チャレンジの下で、現在、57ヶ国政府や国際機関、NGO等が合計1,700万ヘクタールの回復を表明しているが、3,500万ヘクタールには遠い。 5日から始まった「生態系回復の10年」で、世界各国、国際機関の協力を強化、促する。