(2018.10.23 バチカン放送)
教皇フランシスコは23日、「若者シノドス」の関連行事としてバチカン近くのアウグスチノ教父学研究所で行われた「時の知恵」-若者と高齢者による対話集会-に参加された。
世界各国の若者たちとお年寄りが参加したこの集会で、教皇は双方の代表から質問を受け、それぞれに答えられた。
教会系の支援施設でボランティアとして働く若い女性が「偽物や作り物の関係があふれる今日、真の人間関係を築くにはどうしたらいいでしょうか」と質問したのに対して、教皇は「感情を消してしまう現代の文化に抵抗し、真の人間関係を築くには、手を差し伸べて抱擁する、歩きながら自分自身を開く、奉仕する、リスクを冒すーが必要です」と答えられ、さらに、「競争心や利害関係、偽善や軽蔑など、自分をその場に留まらせてしまうものを捨てること。そして、自ら進んで手を差し伸べ、腕を広げて、相手を受け入れることが、人間関係を成熟させます」と話された。
結婚43年の夫婦は「これまで子どもや孫に熱心に信仰教育を施してきましたが、それでも、若い人たちは信仰や教会から遠ざかる傾向があるのですが」と悩みを打ち明けた。教皇は、「家族の言語」というべきものを通して「生活上の具体的な態度の中で、子や孫に信仰の証しを伝えることが必要」とされ、「多くの愛と、優しさ、理解、忍耐を持つように」と助言、息子の回心を、涙の中に祈り求め続けた聖モニカを模範として示された。
この集会には、米国の映画監督マーティン・スコセッシ氏も参加。ニューヨークの下町で育った同監督は「両親や教会のおかげで信仰に接することができた一方で、外では多くの悪を目の当たりにし、教会の説く真理と、道端の現実の相違に苦しみました」と青少年時代を振り返った。また「様々なメディアを通して悪が氾濫する世界を見、善を信じることが難しい現代、こうした嵐の中で若い人たちが信仰を保つために、大人や教会は何ができるでしょうか」と問いかけた。
これを受ける形で、教皇は、人間の尊厳を傷つける多くの悪や暴力の存在に触れつつ、それでも「『残虐な行為や暴力は間違っている』と若者たちに伝えることが必要です」と強調された。そして、「固くなった心を開くには、泣く恵みを求めなければなりません」とし、「イエスも人々のために涙を流されたように、人間として、キリスト者として、人間の尊厳を破壊する行為を前に、涙を流すことが求められます」と話された。
(編集「カトリック・あい」)