(2022.3.2 Vatican News Christopher Wells)
教皇フランシスコは2日の水曜一般謁見で、先週始められた「老年の意味と価値について」をテーマにした連続講話をお続けになり、今回は、「象徴と機会としての長寿」について考察された。
バチカン放送まとめによる講話の要旨は次のとおり。
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聖書に見られる始祖たちの系図で、私たちは彼らの非常な長寿に驚かされます。その中には数世紀にわたる長寿も記されています。父祖たちの、子をもうけた後に続く長い人生は、彼らとその子孫たちが世紀を超え、共に生きていく姿を意味しています。
このような世紀を刻みつつ流れる時間は、長寿と子孫との関係に象徴的な意味を与えています。それは、「人間の命の継承は、ゆっくりとした長いプロセスを必要とする」と言っているかのようです。そして、その長いプロセスの間に、様々な経験を読み解き、人生の神秘に照らし合わせるためには、異なる世代の間の支え合いを欠かすことが出来ません。
私たちの人生のあらゆる段階を、あまりにも早く駆け抜けようとすることは、個々の経験を表面的で「味わいのない」ものにしてしまいます。人生のそれぞれの段階には、適度な「熟成」が必要です。長く生きることは、こうした人生のステップを、急がずに味わうことを可能にしてくれます。
歳を取ると、「ゆっくりしたリズムで生きる」ことを余儀なくされますが、それは「無気力」とは異なります。そして、このゆっくりしたリズムは、「スピードに対する強迫観念」から解放された「人生の意味」に目を開かせるのです。ゆっくりしたリズムで生きる高齢者との触れ合いを失うことは、そうした人生の意味に触れる可能性を閉ざしてしまいます。
このような視点から、7月の最後の日曜日に「祖父母と高齢者のための世界祈願日」が設けられています。子どもたちと高齢者、若者と高齢者という世代間の絆は、全ての人の人間性を豊かなものにしてくれるでしょう。木が根から力を汲み取るように、若者が祖父母という根とのつながりを持ち、世代間の対話を持つことは重要です。
今日、人の寿命は、これまでになく長くなっっています。それは、様々な世代間の絆を育てる機会を与えてくれるのです。人生の意味は、誕生から死に至るまでのすべてにあります。すべての世代と対話し、愛情ある関係を育てることで、人は豊かに成熟するのです。私たちがすべての世代との調和、対話のシンフォニーを見出せるよう、神が助けて下さいますように。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)