・Sr.阿部のバンコク通信 ㊲入れ墨だらけの外国の青年が隣に座って…

    タイ国は近隣諸国に陸路で繋がり、首都バンコクは世界の中継分岐点。国家成長戦略として観光政策を打ち出してから60余年、都心は諸国の人々が往来する国際銀座、高層ビルが立ち並ぶ大都会です。谷間には問題の渦、悲しみと苦しみ、でも喜びと希望もいっぱいです。

 先日、トンロー街の道端の椅子に掛けて、友人と人を待っていました。約束の時間になっても姿が見えないので、友人は席を立ち、角まで探しに… 空いた私の隣の席に、入れ替わり誰かが座りました。上半身裸で刺青だらけ、短パン姿の背の高い20代半ばの外国の青年でした。

 じっと私を見つめ、絞り出す様な声で“心が壊れた“と英語で。見る見る目の周りが赤くなり、大粒の涙がポトポト、手で心が壊れた仕草と小さく十字架の印をしながら…。私は肩に手をかけ、師イエス様の慈しみが染み込むように祈りの気を、そしていつも使っている大粒のオリーブの種のロザリオを「マリア様が助けてくださる、大丈夫」と渡しました。大きな図体で子供の様に泣いている目、美しく澄んでいました。

 友人が刺青の青年を見て「一筋違えた場所で待ち、あのベンチに座らなければ出会えなかったのよね。私の席に座っちゃって!シスターのロザリオ、立ち止まってじっとに見てましたよ」と友人。

 今日も予想もしない神の摂理が、何気ない事を通して確かに働いている、壊れた青年の心に神の愛しみ溢れるほどにと合掌。 Deo gratias!

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2019年11月4日