・Sr.阿部の「乃木坂の修道院から」㉑タイ北部の山奥の村で村民89人の洗礼式、アジアの仲間に福音を伝える使命を痛感した

 タイ北部メチェム県の山奥、最高峰ドイ•インタノン(2590m)の麓にカリアン民の村が点在しています。チェンマイから最高峰を超え、メチェムから更に北へ、ザブザブ川を渡り土埃を上げながら、やっと車の幅程の山間の道を5時間余、36世帯200人ほどのメヘナイ村があります。この村での忘れられない出来事をお話ししましょう。

 長崎コレジオ神学生の体験学習ボランティアの現地コーディネートのため、当地の神父さまと相談し、教会を建てるために毎年村にお世話と通訳で行っていました。大学の春休みを利用して2週間ほど、村人の家に泊まり寝食を共にし聖堂建設の手伝い。

 土台の土掘り、川から砂運び、石砕き、鉄筋を曲げて組んで…何から何まで手造りです。子供たちもバケツで水運びの手伝い、セメントをこねてバケツ・リレーでコンクリート流し… もちろん短期間で完成するはずはありませんが、ボランティアの労働力と村人総出で土台と柱、屋根の梁まで完成。

 夕方は子供たちと遊んで、楽しいひと時、オルティ(水浴び、つまりシャワー)して汗を流して皆で夕食「オメ」です。オ=食べる、メ=ご飯。覚えたカレアン語で結構心を通わせ、笑いが絶えない日々。

 その年は長崎コレジオの尾高修一神父さまが同伴され、毎日、日本語、タイ語、カリアン語を組合せて皆んな参加のミサを捧げました。日本語の説教は「難しい話しないでね」と言って私が通訳、村人の聖歌は本当に心が痺れ、たまらなく美しいでした。

 カトリック村のはずなのに、聖体拝領する人が少ないので、「告白したいの?」と聞いてみると、まだ洗礼を受けていないのです。司祭も何年も村を訪問していなくて、遠い町まで秘蹟を受けに出かける費用も無し。神父さまから了解をいただき、カテキスタの助太刀を呼んで、13 歳までが洗礼、14歳から洗礼初聖体の準備。聖歌の練習が響き渡り、村はみごとな信仰の学舎に。

 未完成の聖堂の床にビニールシートを敷き、屋根の梁越しの夜の星空の下で、洗礼式とミサが行われました。受洗者は何と89人!神父さまにカリアン語を練習してもらい、白い衣はないのでストラを肩に掛けながら、胸に付けた洗礼名と名前を呼び洗礼式、ミサの中で初聖体… 尾高神父さまは、説教の声が詰まるほどの感動。叙階してすぐに神学校に勤めたので洗礼を授けたのは初めてだったのです。

 式後は、大きな黒豚を屠って村中でご馳走してお祝い、村長さんは銀紙を巻いて作った剣の祝いの舞を披露、本当にうれしかったのですね。「生涯で一番うれしい日。村人たちの受洗、それも同じ顔をした日本人の神父さまから… 今までは西洋人の宣教師からでしたが」としみじみ語ってくれました。

 そのような村長さんの言葉を聞いて、私はハッと「アジアの仲間に福音を伝える使命」に気付かされました。そして、その時以来、私の意識に大きな展開がありました。気持ち心の視野が広がり、「イエスの極め難き福音の喜びの小径」を示されたように思いました。

 福音の味を噛み締め、口ずさみながら巡礼宣教人生を喜んで歩み続けたいと思います。聖母マリアの導きご保護を願いながら、共に前進しましょう。

(阿部羊子=あべ・ようこ=聖パウロ女子修道会会員)

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2026年1月31日