漆原比呂志JLMM事務局長の「ともに生きるヒント」② 「途上国」から徹底して学ぶ

 私がJLMMから初めてカンボジアに派遣されたのは、1992年の春でした。この活動を続けて間もなく四半世紀になりますが、この間に世界の状況、特にアジア、日本の状況は、かなり変化しました。

 当初、私の心の中には、「海外で困っている人の役に立ちたい」という願いがあり、それは今も変わいません。でも、これまでの体験を通して、また時代の変化に伴って、「国際協力」への意識は変化してきたように思います。

 まず、国際協力のキャンペーンにありがちな「恵まれない人々に愛の手を差し出しましょう」といった部類の言葉には強い抵抗感があります。そもそも、「発展途上国」といわれる地域の人びとは「恵まれていない」のだろうか―という強い疑問。カンボジアでもフィリピンでもアフガニスタンでも、子どもたちの笑顔や大人たちの逞しさと優しさ、家族の絆、民族の誇り、人生の目的や夢など、現地の人びとと出会うとき、「恵まれてない」などとは、決して思えないのです。

 むしろ「先進国」と呼ばれてきた私たちが学ぶことの方がたくさんあります。「先進国」が追い求めてきた経済発展が、地球的規模の環境問題、紛争、人間疎外など様々な課題を引き起こし、何が幸せなのかを見失ったこの時代、私たちの現状は発展の到達点にもゴールにもなりえません。むしろこのような形の発展であれば立ち止まり、他の選択に向けていく必要があるはずです。そのためには、「発展途上国」といわれる人々から、私たちの方が生きる意味や知恵を学ばせてもらう必要がある、と確信してきました。

 そうなると、国際協力の現場で中心となっている概念、「技術を移転する」、「経済発展を促す」ということは、その時に求められ、大切なことではあります。けれども、それ自体については、非常に慎重に取り組んでいく必要があり、「国際協力」という関係の持ち方が本当に「ともに生きる」ための最良の手段なのか、について疑問を投げかけてもよいのではないかと思います。

 こちらに何か教えられることや与えられることが仮に無かったとしても、「徹底して学ぶ」ということでよいのかもしれない。その中で私たち自身の考え方、生き方が変わり、お互いに学び合うことこそが「ともに生きる」ことになる、と思うからです。

 (漆原比呂志=うるしばら・ひろし=日本カトリック信徒宣教者会(JLMM)事務局長)

***JLMMについて***

 JLMM は日本カトリック司教協議会公認団体、国際協力NGOセンター(JANIC)正会員で、主にアジア・太平洋地域にレイミッショナリー(信徒宣教者)を派遣しています。
派遣されるレイミッショナリーは、派遣地において関わる人々とともに喜びや悲しみを分かち合い、地域の人々に向けたこどもの教育、衛生教育、栄養改善、女性の自立支援などの活動を実施しています。
1982
年の設立以降、アジア・太平洋、アフリカ諸国16か国に100名以上のレイミッショナリーを派遣されました。現在はカンボジアと東ティモールに3名を派遣しています。

 JLMMでは毎年、派遣候補者を募集しています。賛助会員としてのご支援やご寄付をお願いいたします。またカンボジアスタディツアーやチャリティコンサートの企画、活動報告会やカンボジアハンディクラフト販売にご協力いただけるグループや教会を募集しております。事務局(jlmm@jade.dti.ne.jp)までお問い合わせください。

 

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