本稿より有意義な本を紹介していきます。今回は、プリンストン大学博士課程修了、元名古屋大学理学部教授の素粒子理論物理学者、現在はカトリック終身助祭を務めておられる三田一郎氏の「科学者はなぜ神を信じるのか―
(講談社ブルーバックス)を紹介します。三田氏によると、国連の調査で、過去300年間で大きな業績を上げた科学者300人に聞いたところ、8~9割の科学者が神を信じていたそうです。なんと神を持ち出さずに宇宙論を創出した、名だたる無神論者と思われていたホーキング博士や、相対性理論を打ち立てたアインシュタインでさえ、神を信じていたというから驚きです。
最近、友人と話す機会があり、神のことを聞いたら「宇宙は偶然にできた」と言うので、大いに驚きました。しかし、この本によると、「私たちがこの宇宙に偶然存在している確率は、限りなくゼロに近いものの、この宇宙は莫大で、なにしろ何回実験できるかどうか見当がつかないため、私たちは偶然存在していることを否定できない」。別な本では、あの有名なシェークスピアの「ハムレット」でさえ、AIが何回も挑戦すれば同じ物語を作れる可能性はゼロではない、といいます。
そうだとしても、「この宇宙には科学法則があることは確か・・・科学法則はものではないので、偶然にはできません。宇宙創造の前には必然的に科学法則が存在したはずなのです。では科学法則は誰が創造したのでしょうか」と問い、筆者は、科学法則の創造者を「神」と定義し、「ルールが存在する、ということは、その創造者である神が存在するということだ」としています。
もう一つ、本の中のエピソードを紹介しましょう。枝から落ちるリンゴをみて万有引力を発見したニュートンですが、彼は極めて熱心なキリスト教徒で、生涯に書いた本の中で、宗教関係の本の方が多かったそうです。そんな彼の元に、無神論者の友人が訪ねて来ました。
部屋には機械職人に作らせた太陽と惑星が動く模型が置いてありました。開口一番、友人は言いました。「誰が作ったんだい、実に見事な模型ではないか」。ニュートンはしばらく黙っていましたが、再度促され、「それは誰かが作ったものではない。たまたまここにあるのさ」と答えると、友人は気色ばんで言います。「馬鹿にするもんじゃない。誰かが作ったに決まってるだろう」。ニュートンは言い返しました—「これは偉大な太陽系を模して作った単なる模型だ。この模型が、設計者も製作者もなく、ひとりでに出来た、と言っても、君は信じない。だが君は普段、本物の偉大な太陽系が、設計者も製作者もなく出現した、と言う。どうしたらそんな不統一な結論になるんだ」。それで友人は、創造主が存在することに納得したといいます。
この本では、コペルニクス、ガリレオ、ニュートンに始まって、量子力学を打ち立てた、錚々たる科学者が登場し、「神様はサイコロを振らない」で有名なアインシュタインとボーアとの論争など、宇宙論を述べながら、神様に関わる逸話を散りばめ、なぜ科学者は神を信じるのかと論じています。ペーパーバック版なので、読みやすい。一読をお勧めします。
横浜教区信徒 森川海守 (ホームページ https://mori27.com)