・違法資産売却で揺れるインドの大司教区にバチカンが厳正対処へ(CRUX)

(2018.6.23 Crux Editor  John L. Allen Jr.)

ローマ発―Cruxが入手したバチカンの文書で、インドのシリア=マラバル東方典礼教会におけるの問題を抱える大司教区に対して、教皇フランシスコが21日、使徒的管理者を指名したことが明らかになった。この文書は、このエルナクラム-アンガマリー大司教区における財政を巡るスキャンダルと管理運営の失敗だけでなく、補佐司教たちとジョージ・アレンチェリー枢機卿の対立を、バチカンが強く懸念していることを示している。

 シリア=マラバル東方典礼協会はインド最大の東方典礼カトリック教会で、同国内に30以上の教区、国外にも4つの教区をもし、信徒総数は500万人を超える。

 バチカンの東方教会省長官のレオナルド・サンドリ枢機卿が署名した一連の指示書は「聖座が深刻に受け止めているのは、本大司教区の財政状況だけでなく、教会内に生じている深刻な分裂・対立の状況についてである」とし、あて先は、使徒的管理者に指名されたヤコブ・マナトダト司教となっており、大司教区の危機的状況への対処のために同司教を指名したことの説明だけでなく、同東方典礼教会で伝統的に「総大司教」と呼ばれる73歳の大司教を、少なくとも一時的に、大司教区の運営・政策決定権を取り上げることを明確にしている。また、マナトダト司教は彼を補佐する司教委員会を作りことを認めるが、その機能は同司教への助言にとどめる、としている。

 またこの指示書は、大司教区の債務問題解決に取り組むようマナトダト司教に求め、必要なら大司教区の資産を売却して債務返済に充てること、大司教区の財務監査のために独立会計監査法人を雇うことを推奨。監査結果は、非公表とし、バチカンのみに報告するよう求めている。

 また文書は「教皇が求められているのは、個々人の責任を明確にし、従順の精神と聖職者としての感性を欠き、根拠のない訴えで教会一致を損なった人物を念頭に置いて作業を進めること、それによって、シリア=マラバル東方典礼教会を損なったスキャンダルの解消に寄与することです」とし、経過報告を毎月提出するよう求めている。

 アレンチェリー枢機卿は昨年、二人の上位聖職者と不動産業者とともに、複数の違法な不動産売却に関与し、1000万ドルを超える損害を出したとして訴えられた。関係者によると、問題の不動産売却は、市場価格を大きく下回る額でなされており、教会法と民法の両方に違反するものだが、ケララ州高等裁判所は同枢機卿に対する訴えを棄却している。枢機卿は2015年4月から2017年11月までに行われた土地取引を調査する委員会を設け、委員会は枢機卿が問題資産の譲渡について「完全に知って」おり、「関与」している、との判断を出している。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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2018年7月4日