・暫定合意期限直前-共産党統制下の「中国天主愛国協会」参加拒否する”地下教会”神父逮捕(BW)

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意の期限が今月末に迫る中で、中国当局によるカトリック”地下教会”の司祭への弾圧が続いている。福建省の南東部、閩東(Mindong)教区の劉茂春( Liu Maochun)神父が9月1日、地元の警察に逮捕された。中国政府・共産党の管理・統制下にある中国天主愛国協会への加盟を拒否しているのが理由だ。

 劉神父が逮捕された時、彼は病院に入院している人を見舞いに行っている最中だった。神父は福安の拘置所に連行され、尋問を受けた。現地の情報筋によると、神父への尋問は数日にわたり、耳の側で大きな音をたてたり、終日、強い光を目に当てて、眠らせない、いわゆる”exhausting an eagle(ワシを憔悴させる)” 拷問にかけられた。「当局は、劉神父が法に従わず、”イデオロギー的に過激”だった、と主張している」という。

 劉神父逮捕の翌日、9月2日に今度は、やはり福建省の寧徳市公安局が、劉神父と同じ教区の朱瑠璃(Zhu Rutuan)神父の逮捕を命じ、中国天主愛国協会に参加するよう圧力をかけようとした。事前の警告を受けた朱神父は姿を隠したが、公安局の職員は現在、ハイテクの監視技術を駆使して彼を追っている。

 2018年9月に暫定合意がバチカンと中国の間に結ばれて以来、当局と教区司祭たちの緊張はむしろ高まっている。(注:国内の諸宗教の統制・管理を担当する)中国共産党は、党の管理・統制にしたがわず、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の聖職者、信徒に対する迫害を緩めず、中国天主愛国協会への加盟を強要し、従わない場合、あらゆる脅迫を行い、さらに逮捕、拘禁も繰り返している。

 バチカンは昨年、中国のカトリック教会の聖職者、信徒に対し、中国天主愛国協会への加盟を「良心的拒否」することを尊重する指針を出しているが、この指針は(注:共産党とその下部にある現地当局によって)無視されている。

 46歳の劉神父は福建省福安市の羅江地区にある元司教館、教区の郭靖(GuoXijin)補佐司教と共に宿舎にしている。神父は中国天主愛国協会への参加を拒否することで繰り返し、親族も巻き込む形で迫害を受けており、高齢の両親も神父を協会に参加させるよう、頻繁に圧力をかけられ、甥が経営していた旅行代理店は昨年、閉鎖されてしまった。

 関係者は「劉神父は、郭補佐司教の補佐役を務めている。当局は、協会への参加を拒否している郭補佐司教に同調している司祭たちを逮捕し、自分たちに従わせようとしています。そればかりか、教区の信徒幹部にも圧力をかけ、郭補佐司教を支持し続けるなら、お前の家を壊し、お前の子どもたちの仕事を失わせるぞ、と脅しています」と訴えた。

 福安市政府の内部関係者にがBitter Winterに明らかにしたところによると、劉神父の逮捕は、協会への参加を拒否した別の閩東(Mindong)教区の司祭、黄神父が拷問されたという情報を誰が漏らしたのか、を当局が捜査していることと関係している。当局は劉神父が、黄神父の拷問の情報を外国メディアと共有した人物の1人との疑いを持っている、という。

 現地のある信徒は、Bitter Winterの取材に対し、劉神父がWeChatに投稿し、「仮に私が中国天主愛国協会に参加するとしたら、それは当局の卑劣で悪質な戦術によるもので、私自身の意思ではありません」と言明したという。

 地方政府関係者がBitter Winterに語ったー「当局は協会への参加を拒否した聖職者を「極端な宗教的イデオロギーを持つ人物」と見なしている、それは、 神のみを信じ、中国共産党の指導を拒否しているからだ」。また情報筋によると、「”極端なイデオロギー”を持つ人物あるいは人々、または「愛の家」と呼ばれる特別な教化を受けている「謝教(xiejiao)」の会員のラベルを貼られた人々を拘留する計画がある」という。

 

 

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2020年9月29日