・北朝鮮、米朝会談後も脅威 、中国の軍事進出に安保上の強い懸念-18年版防衛白書 

(2018.8.28 産経ニュース)

 小野寺五典(いつのり)防衛相は28日の閣議で、平成30年版防衛白書を報告、了承された。北朝鮮の核・ミサイルについて「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と明記。前年の「新たな段階の脅威」から表現を強めた。不透明な軍拡や海洋進出を継続する中国に関しても「日本を含む地域・国際社会の安全保障上の強い懸念」と批判した。

 白書は、6月の米朝首脳会談で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が完全非核化に向けた意思を文書で約束したことについて「意義は大きい」とする一方、北朝鮮が日本全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」数百発を実戦配備している現状などを指摘。「米朝首脳会談後の現在においても北朝鮮の核・ミサイルの脅威についての基本的な認識に変化はない」と強調した。

 さらに、弾道ミサイルについて(1)長射程化(2)飽和攻撃(3)奇襲攻撃(4)発射形態の多様化-を企図していると分析。「米国に対する戦略的抑止力を確保したと過信・誤認した場合、軍事的挑発行為の増加・重大化につながる」と予測した。

 中国については「力を背景とした現状変更の試みなど、高圧的ともいえる対応を継続させている」と指摘。定例化しつつある尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海空域での訓練は「質的に向上しており、実践的な統合運用能力の構築に向けた動きもみられる」と警鐘を鳴らした。

 また、中国政府が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」について、中国軍が「後ろ盾」の役割を担っている可能性に言及。インド洋諸国での影響力拡大に懸念を示した。不測の衝突を回避する防衛当局間の「海空連絡メカニズム」が5月に運用開始で合意したことにも触れた。

 対ロシアでは、北方領土への地対艦ミサイル配備や択捉(えとろふ)島の民間空港の軍民共用化などを列挙。日米関係は、安全保障関連法に基づき、自衛隊が平時から米軍などを守る「武器等防護」を米艦艇と米航空機に実施したと初めて記した。

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2018年8月29日