(評論)千葉寺教会と西千葉教会の統合の背景にある課題―小さな”告知“で済むものか?

*11年ぶり、菊地大司教になって初の小教区統合、削減

 

 カトリックの千葉寺教会と西千葉教会の統合開始のミサが今年の待降節第一主日(12月1日)に西千葉教会で行われる、という〝告知“が、6月号の東京教区ニュースの3ページ目の下段に教区事務局長名の小さなコラムでなされた。

 二つの教会の関係者はともかく、多くの教区信徒にとって初耳のこの統合で、東京教区の小教区は現在の76から75に減る。東京教区の小教区は最近では、2016年にそれ以前の74から75に、2017年に76に増えていたが、削減は、2013年にそれまでの75から74となって以来11年ぶり、菊地大司教が2017年12月に就任して初めてとなることは、「カトリック・あい」の既報の通りだ。

 止めようもなく進む司祭の高齢化、減少に小教区の再編も含めて具体的にどう対応するか―ここ20年、いや30年以上にわたり、日本の教会、そして、その中心となる東京教区にとって、最大と言っていい課題であり続けている。そうした視点から見て、今回の二つの小教区の合併・統合は「たまたま」とか「個別の事情」では済まされない、教区の全信徒、司祭に説明する必要がある、と言えるのではないだろうか。

 

*故岡田大司教は20余年前に「宣教協力体」への小教区再編成計画、3年で断念

 前東京教区長の故岡田大司教は2000年9月に着座当初から、司祭の高齢化、減少を深刻に受け止め、対処策の一つとして、小教区レベル、ブロックレベルそして教区レベルに至る広範な信者の議論のうえで、2年半後の2003年2月に「カトリック東京大司教区 宣教協力体のための指針」を発表し、「東京教区では小教区再編成の最初の段階として、2003年復活祭(4月20日)から宣教協力体を発足させることになりました」と言明。76の小教区を22の宣教協力体に分け、これまでの小教区を「聖堂共同体」として、再編統合を進めようとした。

 だが、わずか3年後の2006年3月に「カトリック東京大司教区 宣教協力体の今後について」という文書を出し、「宣教協力体を発足させ… 丸3年が過ぎようとしていますが… 小教区を越えた信徒・司祭の交流と協力が…ほとんど交流や協力が進まなかった協力体もあり…小教区間で交流や協力はできても、共通の「宣教課題」を見いだすことが困難だと感じられた宣教協力体も多かったようです。当初、宣教協力体が一つの小教区になることを目指すと謳いましたが、今の時点ではこの方針通りにはいかないと感じていますと」断念を表明。

 さらに「この3年間で、予期せぬ速さで司祭の高齢化・働ける司祭の減少が進み、司祭の定住しない聖堂共同体の数が増えました。このことを考えるとき、司祭間の協力の新たな可能性(「共同宣教司牧」など)をもう一度真剣に検討する必要もあると考えられます」とも述べたが、その後、全く具体的な検討は進まず、課題は構想断念から11年予後の2017年12月に新教区長に就任した菊地大司教に引き継がれた。

 

*空白の20年、菊地大司教は「新宣教司牧方針」で「宣教協力体」の見直しを約束したが…

 

 菊地大司教は2020年12月に、就任前から信徒の間で出されていた「宣教協力体」の抜本見直しを求める声などを受けて、2年にわたる教区の司祭、信徒の意見を聞いたうえで2020年12月に「新宣教司牧方針」を発表。その中で、「宣教する共同体」、「交わりの共同体」、「すべてのいのちを大切にする共同体」を宣教司牧方針の三本の柱とし、「宣教する共同体」をめざす具体的取り組みとして、「宣教司牧評議会の活性化」「小教区運営に関する規約基本要綱の作成」「宣教協力体の意義と目的を明確にし、現状に見あった宣教協力体へと再編成」の実施を約束した。

 しかし、その後3年半を経過するも、宣教協力体の抜本見直しも、これと関連した小教区運営規約基本要綱の作成もいまだに果たされていない。つまり、前教区長が言明しながら3年で断念した、司祭の高齢化、減少への対処策としての「小教区の再編統合を目指す宣教協力体」構想に変わるものが、18年たっても何ら提示できていない。

 

*司祭の高齢化、減少が加速、東京の教区司祭は2000年末の83人から2022年末に69人、小教区数下回る

 

 そうしている間にも、故岡田大司教が「小教区再編成を前提とした宣教協力体」の実施を断念した際に「予期せぬ速さで司祭の高齢化・働ける司祭の減少が進み、司祭の定住しない聖堂共同体の数が増える」事態は、一段と加速している。

 日本のカトリック教会の司祭数は、中央協議会の「カトリック現勢」をもとに、2000年末現在と最新の2022年末現在を比べると、1719人(うち教区司祭517人)から1292人(475人)に25%(8%)減少だが、東京教区も414人から317人に23%減、修道会の司祭を除き、教区司祭だけでは83人から14%減の69人にまで減っている。単純に言えば、教区司祭の数が76ある小教区の数を下回った、ということだ。

 

*修道会に大きく依存するも、一人の主任司祭が三つの小教区を兼務する事態に

 実際には、日本最多の信徒数1万7000人強をもつ麹町教会(聖イグナチオ教会)はイエズス会が運営し、ほかにも田園調布教会(フランシスコ会)、吉祥寺教会(神言会)、碑文谷教会(サレジオ会)、上野毛教会(カルメル会)、渋谷教会(ドミニコ会)など、大きな教会で修道会の宣教師が主任司祭を務めていることでカバーされてはいるものの、その修道会も会員の減少、高齢化の波をかぶっている。

 しかも、教区司祭の69人(2022年末現在)の中には高齢者、あるいは本来ならゆっくり療養すべき病気を抱えている方もおり、さらに、「信徒に不適切な行為」を働いて謹慎処分を受けたり、麻薬取引に関与した疑いで一か月近く逮捕・勾留(弁護士の働きもあって期限前に釈放、不起訴となったが)されたりする、司祭としての適格を疑われる者もいることを考えると、司祭としてまともに奉仕することのできる数は極めて限られるとみていい。実際、今年4月の教区司祭人事では、7人の神父が二つ以上の教会の主任司祭兼務、うち3人は三つの教会の主任司祭兼務を命じられている。

 

*東京教区信徒は外国人流入などで増えているが、主日のミサ参加者は20年余の間に半減

 

 信徒数は同じ期間に全国合計で43万5944人から4.5%減の41万6315人。東京教区は8万4733人から9万2001人と8.6%増えているが、主日のミサ参加者は2万2105人から1万322人に半減しており、事実上、急速に教会離れが進んでいるとみることもできる。新型コロナの影響もあるかも知れないが、この減り方は尋常ではない。

 それならなおさら、主任司祭が先頭に立って、信徒と共に、現代社会の人々の悩みに応え、人々を惹きつける努力を重ねるが必要があるし、一人の司祭に二つの小教区、さらには三つの小教区の主任を兼務させるのは、そのような努力を妨げることにならないか。

*司祭高齢化、減少に具体的、計画的な対応策が急務

 社会人も含めて若い信徒司祭を希望するような教会環境づくりを前提として、修道会との連携、ベトナムなどアジアの国の教会との連携による組織的、制度的な小教区への司祭受け入れ、それと並行した小教区の再編など、総合的な戦略を立て、全司祭・信徒に明示し、共に協力して具体的に取り組んでいくことが喫緊の課題だ。

 今回の千葉寺、西千葉の小教区合併のようにあたかも「個別の問題」として、十分な説明もなく、「教区ニュース」の小さなコラムに載せる、あるいは、教区人事として複数の小教区の主任司祭を兼務させるのでは、課題の先送りとなり、その間にも事態を深刻化させることになる、というのは杞憂だろうか。

 

*新たな教会、新たな小教区を司祭、信徒が全力で作った経験からー小教区削減の重さ

 

 筆者は、1970年代の終わり、首都圏のある教区の新興住宅地でカトリック幼稚園の小さな講堂を借りて主日のミサをしていた分教会に所属していた。若い夫婦や子供たちが毎日曜あふれかえり、「きちんとミサに与れる自分の教会が欲しい」との強い声に押される形で、司祭と当時30代から40代の私たち信徒有志で教会建設委員会を結成し、それぞれ週日は仕事で多忙な日々をおくりつつ、わずかに残された週末の家族と過ごす時間を犠牲にして、用地の確保、金策、そして聖堂建設へと駆け回った。

 手元資金はほとんどゼロ。分教会に所属していた75世帯が子育てやローン返済で苦しい家計の中で一世帯平均で当時の金で20万円から30万円以上の負担を約束し、それを元手に、司教を説き伏せて資金援助と融資を引き出し、教区南部の教会をまわって資金協力を仰ぎ、大手銀行幹部や自動車メーカーから多額の景品をいただいて盛大なバザーも開いた。そして、約2年後、そうした司祭、信徒挙げての物心両面で一体となった努力の結晶として聖堂が出来上がり、正規の小教区が実現したのだった。

 このような形で聖堂を作り、新たな小教区を発足させた経験をもつ司祭や信徒が、今、東京教区の現役の中にいるとは思われないし、彼らは新たな聖堂を作り、小教区を作ることの重さも喜びも実感することがないかもしれない。では、失う場合はどうだろう。

 それにしても、「教区ニュース」6月号での教区事務局長(本来なら大司教が説明すべき事柄だが)による二つの小教区の合併、一つの小教区の廃止の”告示“は、何度読み直しても、あまりにも軽すぎるように思われてならない。読者の皆さんはどのように受け止めておられるのだろうか。

(「カトリック・あい」代表・南條俊二)

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2024年6月7日