(評論)「中国の掃除ロボットを買うと、自宅が”北京”に監視される!?」(Bitter Winter)

(2026.4.6  Bitter Winter    )

 ある事件が、中国製のロボット掃除機が定期的にデータを収集し、本国に送信している可能性があることを示した。

 以前は、「家庭における最大の脅威」といえば、ソファの下に溜まったホコリの塊くらいだった。”単純な時代”だった。

 しかし今や、グローバルな製造網と中国共産党の創意工夫のおかげで、これまで家庭において控えめな役割をしていた掃除ロボットが、野心的な存在へと変貌を遂げている。家電製品に偽装した、Wi-Fi対応でカメラを装備した、「家中を徘徊する偵察ドローン」になったのだ。

 最新の”事件”は先月、あるスペインの最新技術オタクが、中国製ロボット掃除機で”実験”を試みたことから始まった。日本のソニーのプレイステーションのコントローラーを使って、まるで小型戦車のように、その掃除機を操縦することに成功した。

 これは面白い試みだったが、その後、彼は、そうとは知らずに、世界中の何千台もの同様の中国製ロボット掃除機のデバイスへのアクセスを解除してしまった。突然、その掃除機で自分のリビングをきれいにしているだけでなく、24か国に住む見知らぬ人々の家の間取りを”探索”することになったのだ。

 つまり、このロボット掃除機は床を掃除するだけでなく、データも収集していたことが判明したのだ。ライブカメラ映像、屋内マップ、デバイスID、バッテリー残量、そしてどの諜報機関も喜ぶほどのメタデータだ。掃除機の利用者がそれとは知らず、まるで「どうぞお入りください。私たちはスパイされています」と書かれたネオンサインを掲げて玄関のドアを開け放っているようなものだ。

 製造元である中国の企業DJI(深圳大疆創新科技有限公司)—中国軍向けのドローンを製造する防衛関連企業でもある—は、「すべてが誤解だ」と主張し、すぐに問題箇所を”修正”した。当然のことだ。一般市民を安心させるために、軍とつながりのある企業が、「本来知られてはならないバックドアは、おそらくもう閉じている」と発表することほど効果的なものはない。

 だが、この”事件”は、1台の「問題のある」掃除機で終わるわけではない。中国は、世界で最も有名な掃除ロボット「ルンバ」のメーカー「iRobot」を買収した。「ルンバ」は、世界中の600万世帯以上で利用されている。その、長年にわたり欧米の家庭の”地図”を作成してきた「ルンバ」のメーカーが、今や中国の支配下にあるのだ。

 もし北京当局が、あなたの家にカーペットがいくつあるか知ろうと思ったら、そのデータはおそらくすでにクラウドに保存されているだろう。その影響は衝撃的だ。あなたの掃除機が自分の家の間取りを知っているだけでなく、あなたの顔、ペット、家具、そして「先週から放置されている恥ずかしい洗濯物の山」まで認識してしまう未来を想像してみてほしい。

 高解像度のカメラがあれば、掃除機は机のそばを通り過ぎるときに、さりげなくあなたの作業中のパソコン画面を覗き見ることができるだろう。マイクがあれば、「ゴミ出しの当番を巡る口論」を盗み聞きすることもできる。3Dスキャン機能があれば、リビングルームの建築用設計図を作成することさえ可能だ。そして、これらすべてのデータは、”親切”にも、そして黙って、中国のサーバーにアップロードされてしまうのだ。

 このような”未来像”を「偏執的な妄想」と一蹴する人もいる。一方で「無制限の戦争」と呼ぶ者もいる。現実には、現代の家庭は、すでに「監視の楽園」になっている。スマートスピーカーは耳を澄ませ、スマートテレビは監視し、スマート冷蔵庫は食習慣を評価する。北京に監視情報を報告するスマート掃除機が加わることは、家庭内の恥ずかしい光景を覗かれるのは、単に次に進むための論理的な段階に過ぎない。

 多くの西側諸国は、これらのデバイスを両手を広げて歓迎し、セキュリティ対策の施されていないWi-Fiネットワークを提供してきた。その結果、何百万もの家庭が、知らず知らずのうちに世界最大のインテリアデザイン情報アーカイブの作成に”協力”している可能性がある。どこかのデータセンターでは、アルゴリズムがあなたの下着を十分に頻繁に洗っているかどうかを評価しているかもしれない。

 私たちがプライバシーを失うのは、劇的なサイバー攻撃やハリウッド映画のようなハッキングシーンに描かれているようなものではない。人々が指一本動かさずに床をきれいにしたいと願うところから、始まる。中国共産党は政府や企業に潜入する必要がない。必要なのは、掃除機を売ることだけだったのだ。

 今夜、あなたのロボットが部屋の中を無邪気に「ブーン」と音を立てて動き回る時、思い出してほしい。それは吸い取るべきホコリを探しているのではなく、秘密を探しているのかもしれない。あるいはもっと悪いことに、あなたの見栄えの悪い”角度”を探しているのかもしれない…

 安らかにお眠りなさい。掃除機が見ていますよ。

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    *筆者のマッシモ・イントロヴィーネ(1955年6月14日、ローマ生まれ)は、教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ著名なイタリアの宗教社会学者。新興宗教運動を研究する学者たちの国際ネットワークである「新興宗教研究センター(CESNUR)」の創設者兼代表を務め、宗教社会学の分野で約70冊の著書と100本以上の論文を執筆している。『イタリアの宗教百科事典』の主要な執筆者。『Interdisciplinary Journal of Research on Religion』の編集委員およびカリフォルニア大学出版局の『Nova Religio』の運営委員を務めている。 2011年1月5日から12月31日まで、彼は欧州安全保障協力機構(OSCE)の「人種差別、外国人排斥、および差別(特にキリスト教徒や他宗教の信徒に対する差別)との闘い」の代表。イタリア外務省が世界規模での宗教の自由に関する問題を監視するために設置した「宗教の自由観測所」の議長も2012年から2015年まで務めた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載している。

 

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2026年4月7日