(2023.6.19 Bitter winter Ruth Ingram)
だが、英国医療評議会の倫理委員会によると、実際には、国際的な非難を受けないように数値を操作しただけで、臓器狩りは続けられており、 中国は、年間約9万件という臓器移植が、「数日から数週間の待ち」のテンポで進められ、10億ドル規模の世界最大の”臓器移植プログラム”が進んでいる。
亡命ウイグル人のエンベル・トフティ博士は、首都ウルムチで青年外科医だった1990年代に、腎臓が摘出されたと一目でわかるU字型の傷跡が残る3人の少年を6か月間にわたって診察し、 1995年には、生きている死刑囚から臓器を摘出するよう命じられたうえ、そのことを一切口外しないように言い渡された、という経験を明らかにしている。。
(左の写真はエンベル・トフティ博士。 ツイッターより)
また、Bitter Winterのインタビューに応じたウイグル難民のアイヌル氏は、1980年代のある夏、友人の娘が少女たちとともに村を出て中国の内陸部で働くことになったが、「6か月後に戻ってきました。そのうち3人の体には大きな傷跡があった。事情を聴くと、『 工場で働くには健康診断が必要だ、と言われて、診断を受けたが、気を失い、目が覚めたとき、自分たちに何が起こったのか全く分からなかった』と明かしてくれました」。だが、その後、2人が病気になり、死亡した時、医師が遺体を調べて、腎臓が摘出されていたこと分かった、という。
また、 2016 年に、新疆ウイグル自治区のすべてのウイグル人に「無料健康診断」が義務付けられ、生体認証のための虹彩スキャン、血液型検査、指紋採取、DNA 検査の提出が強制されるようになったが、 ウイグルの人権活動家は「中国内外の臓器需要に対応するために”健康診断”で集められたデータが利用されること」を懸念している。
また2019年6月には、世界の中国における臓器狩りへの非難を背景に、国際的な人権活動家たちの「中国における良心の囚人からの臓器狩りに対する独立法廷」が60ページにのぼる判決要旨を発表し、目撃証言や被害者の体験、医療専門家による調査などによって、中国では”必要”に応じて、臓器が入手可能であり、新疆ウイグル自治区のカシュガル空港には、摘出した臓器を移植者に速やかに運べるような特別な「緊急人体臓器搬送通路」が用意されていることなどが明らかにされ、世界に改めて衝撃が広がった。
ウイグル人に対する特別な危険行為は、韓国のテレビ放送「TV CHOSUN」の人気調査報道番組「Chosun’s Investigative Report 7」でも取り上げられている。同番組のプロデューサーは、韓国人の天津への”臓器観光”を取材中に、サウジアラビアの人々が、取材先の病院で国民が同じ病院で「halal organs(イスラム教で認められる臓器)」の移植を、国の費用負担で受けるために待機しているのを知った、という。(右の写真は「TV CHOSUN」の調査報道番組の一場面)腎臓の専門病院として名の高い北京同善堂中医医院が制作したビデオでは、敷地内のモスクやハラール・ レストランなど、アラブ患者向けの特別な施設についての説明もされている。
中国における臓器狩りに関する独立法廷は判決で、「中国では良心の囚人からの強制臓器収奪がかなりの期間にわたって行われ、非常に多くの犠牲者が出ている」と結論づけた。
法廷で証言したエンベル・トフティ博士は、2017年10月に台北で臓器狩りについて講演した後、台湾人から連絡を受け、「自分の弟から『腎臓の移植を受けるために天津に行った』と言われた」ことを知らされた。その台湾人は、「弟は、法輪功学習者の死の原因が自分にあるのではないか、と心配していたが、外科医から『現在は、すべての臓器が新疆から来ている』と説明を受け、安心した」としている。
その新疆ウイグル自治区の 収容所から生還したウイグル人の一人は、「収容所に入れられるとすぐ、徹底的な健康診断を受けさせられ、内容の分からない注射を打たれた。健康な収容者が定期的に失踪し、二度と戻ってこなかった」と語っており、 拘留中に死亡し、遺体を弔いたいとする親族などの希望が退けられている、との報告もあり、疑惑はさらに深まっている。
「極度の警戒」の対象とすることは、国連の委託を受けた独立専門家チームによって表明された。同チームは、民族的、言語的、または宗教的な少数派の収容者たちが、血液検査や、超音波やX線検査などの内臓検査を強制的に
受けさせられ、そうではない収容者と分けられている可能性がある、という「信頼できる証拠」を見つけた、と述べている。そして、調査の結果、そうした検査を受けた収容者たちは、移植をする”割り当て”のための”生体臓器データベース”に登録される、としている。
そのうえで、専門家チームは、「中国における強制臓器収奪は、さまざまな場所で、逮捕理由の説明や逮捕状の提示もされないまま逮捕・拘留される特定の民族的、言語的、宗教的な少数派がターゲットにされているようだ」と指摘、 「私たちは、囚人や被拘禁者が民族、宗教、思想信条によって差別的に扱われている、という報道を受け、深く憂慮している」としている。
北京政府の否定にもかかわらず、イーサン・ガットマン氏の2006年以来の調査は、最近では新疆ウイグル自治区アクスの”再教育キャンプ”の隣に大規模な火葬場を発見したこと(2021年12月のウイグル法廷報告書)を含め、大掛かりな強制臓器収奪が行われているとする証言に信憑性を与えるいくつかの「決定的な証拠」を提供している。
( 左の写真は、イーサン・ガットマン氏)。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)