ジミー・ライ氏の”香港国家安全維持法裁判”の判決を待つ人々(2025.12.15、香港・西九龍裁判所前で=写真提供:チャ・ロンヘイ/AP)
香港発—中国政府への批判を続けた元香港メディアの大物で民主派のジミー・ライ氏が15日、香港・西九龍裁判所から香港国家安全維持法違反で有罪判決を受けた。量刑はこれから決められるが終身刑となる可能性もある。
判決を聞いたライ氏は唇を噛み締め、家族に向かってうなずいた後、警備員に法廷から連れ出された。ライ氏の妻と息子、そして香港カトリック教会の元教区長、陳日君(ジョセフ・ゼン)枢機卿が傍聴席から見守ったが、”現役”の香港教区長、スティーブン周枢機卿らの姿はなかった。
(「カトリック・あい」追加=国際人権団体は今回の判決を強く非難、米英の首脳も重大な関心を示している。17日付けの読売新聞朝刊によると、トランプ米大統領は「非常に残念だ」と述べ、習・中国主席に釈放を要請していたことを明らかにし、ルビオ国務長官も声明で「言論の自由を守ろうとする人々を沈黙させるために法律を使っている」と強く非難、「人道的見地から触法を強く求める」と述べた。だが、教区開設80周年を祝う行事を続けている香港のカトリック教会からは何のコメントも出されていない。)
今回の判決は、中国政府・共産党の外交関係にとっても試練となる。ドナルド・トランプ米大統領は、この件について中国に対して問題提起したことを明らかにし、キア・スターマー英首相は、「英国籍のライ氏の釈放を確実にすることを英政府の優先課題としている」と述べた。
15日の判決で、香港政府が選任した3人の裁判官は、78歳のカトリック信者であるライ氏に対し、「外国勢力と結託して国家安全を脅かし、反逆的な記事の出版を謀議するという、香港国家安全維持法違反行為をした」として、検察側の主張を全面的に認め、有罪を言い渡した。ライ氏は、検察側の主張する全ての罪状について無罪を主張していた。
ライ氏は2020年8月、2019年の大規模な反政府デモを受けて中国政府が制定した香港国家安全維持法に違反したとして逮捕された。5年間の拘禁期間の大半を独房で過ごしたライ氏は、既に複数の軽微な罪で有罪判決を受けており、15日、出廷した際、衰弱し痩せ細った様子が見られた。
陪審員なしで行われたライ氏の裁判は、1997年に中国に返還された旧英国植民地における報道の自由と司法の独立のバロメーターとして、米国、英国、欧州連合(EU)、政治オブザーバーらから注視されていた。
裁判長はライ氏が「長年、北京に対する陰謀を企てていた」と述べた
855ページに及ぶ判決文を読み上げたトー・エスター裁判官は、ライ氏が「香港市民を支援する」という口実で、中国政府打倒を米国に「絶えず要請」していた、と指摘した。
ライ氏の弁護団は裁判で、香港国家安全維持法施行前には(外国の関係者たちに)制裁を求めたが、法順守のため要求を取り下げている(ので法違反には当たらない)、と主張していたが、裁判長は、ライ氏が中国共産党政権を不安定化させる意図を「より控えめな形で継続した」と、これを退けた。
さらに、ライ氏が「陰謀の首謀者であること、また本人の証言が時に矛盾し信頼性に欠けること」を認定したとし、「証拠から合理的に推測できる唯一の結論は、国家安全維持法施行の前後を問わず、本人の唯一の意図は、中国と香港の人々を犠牲にしてでも、与党である共産党の転覆を図ることだった…これが陰謀と分離主義的な出版物の究極の目的だった」と断定した。
ライ氏は終身刑の可能性も
現在は廃刊となった民主化支持紙「アップル・デイリー」の創業者であるライ氏の量刑は、後日、言い渡されるとされているが、共謀罪の最高刑は終身刑だ。ライ氏の減刑を求める公判は、新年の来月12日に開始かれる予定とされている。香港政府と中国政府を厳しく批判していた「アップル・デイリー」は、警察が編集部を捜索し、上級記者らを逮捕、当局が資産を凍結したため、2021年に閉鎖、廃刊を余儀なくされた。
156日間にわたるライ氏の裁判で、検察側は、ライ氏が「アップル・デイリー」の上級幹部らと共謀し、外国勢力に香港や中国に対する制裁や封鎖、その他の敵対的活動を要請した、と非難。さらに、2019年7月の抗議活動最盛期に同氏がマイク・ペンス前米副大統領やマイク・ポンペオ前国務長官と会談した事実を挙げ、ライ氏が実際にこうした要請を行った、と主張した。また、「アップル・デイリー」の記事を含む161点の出版物や、ソーシャルメディアの投稿、テキストメッセージを証拠として法廷に提出した。
これに対して、ライ氏は52日間にわたり、これに反論する証言を続け、2020年6月に国家安全維持法が施行された後は外国に(香港や中国に対する)制裁を求めていない、したがって同法に違反した事実はない、と主張した。また、ライ氏の弁護団は表現の自由(を侵すような検察側の主張は認められない)と主張した。
長期裁判で懸念される健康状態
裁判が進むにつれ、ライの健康状態は悪化しているようだ。8月には、ライ氏の弁護団が法廷で、彼が動悸を訴えている、と述べた。15日の判決後、パン・ロバート弁護士は、「弁護団は、判決文の内容を精査しているが、ライ氏の精神状態は良好だ」と説明。判決前、娘のクレア氏はAP通信に対し、「父は衰弱しており、爪や歯が抜け落ちている… 数か月にわたって感染症に苦しみ、慢性的な腰痛、糖尿病、心臓疾患、高血圧にも悩まされています。精神的には頑強ですが、体は衰えている」と訴えた。
香港政府は、ライ氏が心臓の問題を訴えたのを受けた健康診断で「異常は見つからなかった」と発表。今月に入り、「ライ氏に提供された医療サービスは適切だった」と付け加えた。また、香港警察の国家保安部、リー・スティーブ警視長は、ライ氏の健康悪化に関する情報を否定した。
判決後、香港政府のリー・ジョン行政長官は、ライ氏が「国家の根本的利益を損なった。その意図は悪質だ」と改めて批判し、スティーブ警視長も「ライ氏の有罪判決は正義が実現した証しだ」と言明。北京では中国外務省の郭家驊報道官が、「特定の国々」による「香港司法への誹謗中傷に中国が断固反対する。香港の法制度を尊重すべきだ」と批判した。
15日の夜明け前、数十人の住民が法廷席を確保するため裁判所外に列を作った。元アップルデイリー社員の張(タン)氏は「午前5時にここに来ました。ライ氏の健康状態に関する報道を受けてその様子を知りたいと思った」とし、「判決日は、先週金曜日に発表されたばかり。裁判所が手続きが急いでいる、と感じる。少なくともこの事件は、間もなく終結するでしょう」と述べた。
国際メディア監視団体「国境なき記者団」やアムネスティ・インターナショナルを含む人権団体は、15日の有罪判決を批判。「国境なき記者団」のティボー・ブルタン事務局長は「裁判にかけられたのは個人ではなく、報道の自由そのものだ。この判決によって、それは粉砕された」と強く非難した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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