・カトリック”地上教会”「共産党結党100周年」を祝うー”地下教会”は迫害、聖母被昇天の巡礼は禁止

(2021.8.17 カトリック・あい)

 中国では、7月1日の中国共産党結党100周年記念日に、政府・共産党の管理・監督を受け入れている中国天主教愛国協会に加盟するカトリック教会が全土で、この記念日を祝う行事を行った。だが、聖母を讃える巡礼を行なうことは禁じられた。3年前の中国との司教任命に関する暫定合意以後、中国政府・共産党の”地下教会”への締め付けはますますひどくなっている、と伝えられる。中国政府・共産党に”好意的”な姿勢を示し続けるバチカンの対中外交責任者、パロリン国務長官は、このような実態をどう見ているのだろうか。

 カトリックの有力メディア LiCAS.news.が、Catholic News Agencyが15日報じたとして伝えたところによると、中国の教会について20年にわたって取材しているAsiaNewsの編集長でミラノ外国宣教会のベルナルド・セルベラ神父は、CNSのインタビューに、北京教区の司教は、7月1日に、共産党結党100周年記念の習近平・国家主席の演説を視聴する集まりを司教館で主催し、江西省では40人の司祭、信徒が、記念シンポジウムに出席し、「習近平思想」を学習、中国天主教愛国協会のウエブサイトでは、湖北省のカトリック信徒たちが中国国旗掲揚と共産党結党100周年祝賀会を開いた、だが、「中国のカトリック教徒の聖地である上海市松江区佘山の聖母聖堂への巡礼は禁じられた」と語った。

*バチカン・中国暫定合意後の3年間で、”地下教会”への迫害は激化

 バチカンが2018年9月に中国との間で司教任命に関する暫定合意を結んで3年。中国政府・共産党の管理・監督を拒否し、教皇にのみ忠誠を誓う、いわゆる”地下教会”と、管理・監督下にある中国天主教愛国協会に加盟する”地上教会”との相違は拡大して来た。

 ”地下教会”の司祭、信徒にとって、日々の暮らしは「非常に厳しい」とセルベラ神父は語る。「女子修道院が破壊され、教会が閉鎖され、司祭たちが小教区から追い出され、神学を学ぶことを禁じられる神学校もあります…そして、逮捕されたり、自宅軟禁されたりする司教たちもいます」。

 ”地上教会”は、それに比べれば、”信教の自由”があるが、国家と共産党への”愛”を説教に取り入れることを求められ、カトリック教育について検閲の圧力をかけられるなどの問題に直面している。

 「中国で合法的に奉仕するカトリックの司祭は、中国共産党を支持することを約束する書類に署名する必要があり、奉仕は、18歳未満の未成年者が立ち入ることを許可されていない公認の礼拝所でのみ認められています」。そして、「何よりも、司祭たちは、中国共産党の栄光を称賛しなければならないのです」とセルヴェラ神父は語る。

  バチカンによると、2018年以来、中国当局との暫定合意の枠組みの下で中国全土で5人の司教が任命されました。セルベレラ神父によると、カトリック教会は中国で(信徒の数からいって)少なくとも40人の司教を任命する必要があるが、「私が見たところ、叙階され​​た司教たちは、すべて中国天主教愛国協会の会長または書記。つまり、彼らが中国政府・共産党に非常に近いことを意味します」。

*中国におけるカトリックの過去が消される

 中国共産党の100周年を前に、中国政府は4月にインターネット・アプリとホットラインを創設した。このホットラインを通じて、当局は、共産党の歴史についての説明に疑問を抱く人を報告するよう要求した。

 これは実際には、毛沢東の「大躍進」(1959年から1962年の間に2000万人以上が命を落とす大飢饉をもたらした集団農業計画)のような”不都合な真実”が、共産党の”歴史”を削除し、そのことに誰にも異議を唱えさせないことを意味している。そして同時に、1949年の中国における共産革命後の、カトリック教会のたどった道について、信徒たちが語り合うことを不可能にするものだーたとえば、共産党による中華人民共和国設立後の数年間、外国の影響を排除し、私立学校を国有化する政府の政策に従わないことを理由に、多くのカトリック教徒が検挙されたことなどである。

 教皇ピオ12世は1951年に回勅「Evangeliipraecones(福音の使者)」で、この苦しみを次のように語られている。

(注:1939年に着座したピオ12世は、着座直後に、中国に対する長年の方針を転換し、「中国の習慣はもはや迷信とは捉えず、祖先を尊重する名誉儀礼として、カトリック信徒に許可される」との声明を出した。これを契機に、中国のカトリック教会は20の新しい大司教区、79の司教区、38の使徒座司牧区とともに再び繁栄を取り戻したが、それも束の間、1949年には共産主義革命に飲み込まれた)

 「私たちは、忠実な修道女、宣教師、現地人の司祭、さらには司教の多くが、住まいから追い出され、所有物を台無しにされ、逮捕されたり、刑務所や強制収容所に投げ込まれたりしていることを知りました。または時には残酷に死ぬこともありました。なぜなら彼らは、自分の信仰に熱心に守ろうとしたからです。私たちの愛する子供たちの痛み、苦しみ、そして死について考えるとき、私たちの心は悲しみでいっぱいになります」。

 

Chinese Catholics attend Mass on Christmas Eve at a church in Beijing on Dec. 24, 2018. (Photo by Wang Zhao/AFP)

 昨年5月、河南省南陽教区の教区長だったヨゼフ・朱宝玉司教が亡くなった。中国共産党が上海で結党したのと同じ1921年生まれの98歳だった。

 1952年に司祭叙階された後、上海の聖母マリア聖堂への巡礼に信徒たちを連れて行ったとして逮捕捕、投獄。さらに、1981年には「反革命分子」として10年近く「強制労働による改造」を強制された。73歳で南陽教区の補佐司教に非公式叙階され、2002年11月に81歳で司教となった。

 迫害に断固として信仰を守り通す司教は、多くの信徒たちから尊敬されていたが、当局は司教の死を明らかにすることを避け、葬儀にも強い規制がかけられた。

 

*司祭召命と育成が妨げられている

 一人っ子政策を含むこれまでの中国共産党の政策は、中国の教会の人口統計に影響を及ぼし続けてきた。「現在、家族には子供が1人いますが、子供が年をとったときにどうすべきか(そして誰が彼の世話をするか)を考えねばならず、神学生にするのは困難です… 司祭の中には、『召命が減り続けている』と私に言う人もいます。しかも、召命に応えようとしても、中国政府・共産党が司祭叙階を認めないかも知れません」とセルベラ神父は言う。

 神父によると、7月に上海で5人が司祭叙階されるとことになっていたが、実際に叙階されたのは4人だった。残りの一人は、2016年にポーランドで開かれたカトリックの「世界青年の日」大会に参加したことを理由に、叙階が認められなかったのだ。

 「世界青年の日」に関しては以前にも、当局の介入があった。フィリピンのマニラで開かれた1995年の大会でのことだ。「中国からも若者たちが招待され、ミサを他国から来た若者たちと一緒にミサを捧げ、交流をしようとしました。ところが、彼らに同行した中国天主教愛国協会のメンバーが、他国の若者たちとの交流を妨げるあらゆる工作をしたのです。私は現場でそのことを目撃しました」。

 神学校での神学生教育は、中国当局が「外国の影響」を軽減しようと試みているもう1つの分野だ。セルベラ神父は語る。「中国に神学校がないのではなく、当局が直接、間接に神学校を”管理”しているために、神学生の教育が難しくなっています。例えば、カトリックの社会教説のいくつかの内容、カトリック教会のいくつかの教義は、教えることができません。(注・中国政府・共産党の指示を直接、間接に受けた)天主教愛国協会は、神学校でどの本を使えるか、使えないか、を指示します。神学校で教える外国人の数も減っています。ベネディクト16世教皇の時代に23人の外国人教授がいたある神学校には、今、外国人が3人しか残っていません」。

 またセルベラ神父は、「中国共産党、中国天主教愛国協会は、(注:世界のカトリック教会から離れた)独自の教会、精神を持たせようとしています。このことは、これから司祭叙階される人々を”カトリックの教えの普遍性と教会の豊かさ”から切り離すことになります」と強い懸念を示した。

上海の佘山の聖母聖堂の聖母子像(Wiki Commons)

*上海の聖母聖堂への巡礼禁止、上海の司教は自宅軟禁

 このような苦難の中にある中国のカトリック教徒を力づけたいと思う人たちに、セルベラ神父は彼らの為に祈ることの重要性を強調した。「中国では”新しいシルクロード”についてさかんに話されていますが、本当のシルクロードは、祈りの道、巡礼の道です。その道を歩むことで、中国をより良く変えることにつながるからです」。

 しかし、ベネディクト16世教皇が始められた毎年5月24日の「中国の教会のための祈りの日」に、肝心の中国の教会が祈りに参加していない。「この日は、中国では聖母マリアを讃える日でもあり、これまで、全国の何千人もの信徒たちが、上海・佘山の聖母聖堂に巡礼をしていたが、今年は、中国共産党が、数週間前に、巡礼禁止を通告したため、巡礼ができなくなった。

 地方当局は、その理由を新型コロナウイルス感染防止のため、と説明していたが、近くの遊園地や観光地は閉鎖されなったようだ。ウイルス感染が起きる前の2019年にも、政府・共産党は、管理・監督を拒む”地下教会”の信徒たちが聖母聖堂への巡礼団を組織するのを阻止する措置をとり、巡礼する際には中国国歌を歌うことを義務づけていた。

 また、上海では、Thaddeus Ma Daqin 司教が、2012年7月にバチカンと中国政府の承認を得て司教叙階されたが、その後、中国天主教愛国協会からの脱退を表明し、以後、自宅軟禁されている。

*共産党は、宗教が「心の自由」をもたらすのを恐れている

 こうした強硬姿勢を中国共産党がとるのは「宗教が、人々の心の自由をもたらすことを、恐れているからです。中国の大学生など若者たちは、キリスト教にとても関心があります。若者たちへの宗教教育をやめさせようとするのは、キリスト教の信仰をもつ若者たちが増えることの恐れからだと思います」彼らはカトリックとキリスト教、そしてプロテスタントのキリスト教にも非常に興味を持っています。 これが、中国政府が回心の増加を恐れているため、若者のための宗教教育をやめさせようとしている理由だと思う」と述べた。

セルベラ神父 Cervelleraは、6月にAsiaNewsの編集長としての任期を終了し、アジアのミラノ宣教会での宣教活動を継続すると発表しました。

「誰かが神との関係を発見するとすぐに、これは彼らを自由にし、自由に話し、自由に批判し、共産党が行うすべてのことをする義務を負わないようにします。 そして、これは共産党の恐れであり、人々は自由になることができる」と彼は言った。

© Copyright LiCAS.news. All rights reserved. Republication of this article without express permission from LiCAS.news is strictly prohibited. For republication rights, please contact us at: yourvoice@licas.news

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年8月17日