・AIで、国内で異論が表面化する前に潰す、海外へ中国の”物語”を効果的に宣伝ー中国共産党が”デジタル統制”の新段階へ移行(Bitter Winter)

Xi Jinping speaks at the 23rd collective study session. Screenshot.

( 2025.12.5 Bitter Winter  胡子墨)

(Xi Jinping speaks at the 23rd collective study session. Screenshot.)

 中国共産党中央政治局が11月28日、第23回集団学習会を開催した。表向きは「インターネット生態系のガバナンス強化」について議論したことになっており、CCTV(中国中央テレビ)が報じた公式発表も、「秩序」「指導」「国際協力」といったおなじみの専門用語で表現されてた。

 だが、この官僚的な表現の下には、冷徹な指令が潜んでいる。党はAI(人工知能)を”フロンティア産業”から習体制存続のための「基盤条件」へと格上げしたのだ。中国のサイバー弾圧を分析するインドの専門家、マノジ・ケワルラマニ氏は習近平・中国共産党主席のこの学習会での演説を「極めて重要」と評している。

 28日の学習会では、習主席が、中国におけるデジタル独裁主義の次段階に向けた包括的戦略を明らかにした。AIは「監視ツール」かつ「プロパガンダ増幅装置」として統治に組み込まれる。

 習主席は、「オンライン環境の統治は、国家の発展・安全保障及び人民の核心的利益に関わる『サイバー強国』建設における重要任務」と強調。先見性・精密性・体系性・協調性を備えた統治メカニズムの改善を強く指示した。この表現は「事後対応型検閲」から「予測制御」への転換を示唆したものだ。AIには、党幹部たちが「世論をより深く理解する」ことを可能にし、異論が表面化する前に予測する役割が明示的に課せられている。

 党は「機先を制する抑圧」のための体制を構築しようとしているのだ。国家インターネット情報弁公室と治安機関には、キーワードのフィルタリングだけでなく、人々の感情の傾向をマッピングし、「危険因子」を特定し、抗議行動へ転化する前に”中和”する「AI駆動型の監視体制」の整備を加速することが期待されている。

 習氏の「利益の連鎖を断つ」という呼びかけも新たな試みだ。党指導部は現在、「インターネット上の混乱」―噂、”センセーショナル”な報道、反体制的意見―を「イデオロギー型」ではなく「利益追求型」と位置付け、「利益の連鎖」を「産業チェーン」と同一視することで、デジタルコンテンツの経済的基盤への取り締まりを表明している。「インフルエンサー管理」や「トラフィック最適化」を担うMCN(マルチチャンネル・ネットワーク)は、より厳格な指導が必要、と明示的に指摘された。

 政治的正しさよりも繋がりを優先するプラットフォーム・アルゴリズムは、「不安定化の要因」と見なされている。党が標的としているのは個人だけでなく、注目度から利益を得る「企業収益化」という生態系全体であり、バイラル性(情報やコンテンツがウイルスのように人から人へ、SNSなどを介して爆発的かつ急速に拡散していく)のビジネスモデルを事実上犯罪化している。

 この方針は「政治的・経済的統制の融合」を体現しており、オンライン上の独立した声を支える利益誘導の仕組みを解体するものだ。

 中国政法大学の石建中教授は党中央政治局会議の模様を報告した。同教授の報告は、党が「抑圧」を「学術的正当性の衣で覆い隠す手法」浮き彫りにした。インターネット統治を法制度の精緻化問題と位置付けることで、自らの指令を権威主義的ではなく技術官僚的なものとして提示しているのだ。

 習氏は国際サイバー空間に関する発言で、学習会での演説を締めくくった。

 中国は「国際ルール策定に積極的に参加し、各国と手を携えてサイバー犯罪と闘い、サイバー空間における運命共同体の構築を推進すべきだ」と訴えたが、真の重点は「中国の”物語”を効果的に発信すること」に置かれていた。「グローバルなコミュニケーションプラットフォームを構築する能力を強化するように」と促し、インターネットを活用して中国の声を世界に広め、「信頼でき、愛され、尊敬されるイメージ」を投影すべきだ、と強調した。実際には、国内ではAIを活用して異論を抑圧し、国際的にはプロパガンダを増幅させていくのだ。

 今回の学習会は、党のデジタル統制へのアプローチが明確に進化したことを示している。党は規制を超えて、AIを統治に全面的に統合する段階へと移行している。これは「予測型検閲」、「アルゴリズムによる抑圧」、「利益追求型エコシステムの解体」、そして「海外へのプロパガンダ拡大」を意味します。

 中国国内の人々にとって、このメッセージは明白だ。「異論は沈黙させられるだけでなく、息づく前に予測され、消し去られる」のだ。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
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2025年12月7日