・バチカン国務長官、中国との司教任命めぐる暫定合意、繰り返しの違反にも更新を希望(Crux)

Cardinal Pietro Parolin, left, poses for a photo with Bishop Joseph Shen Bin of Shanghai at a conference at the Pontifical Urban University in Rome on May 21, 2024. (Credit: Elise Ann Allen/Crux.)Vatican wants China deal to be renewed

(2024.5.22  Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ – バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿は21日、物議を醸している司教任命に関する中国との暫定合意について、バチカン、中国双方が「3度目の更新を希望している」ことを明らかにした。

 国務長官は21日にローマの大学で開かれた中国に関するシンポジウムの終了後、記者団に対して、「我々は皆、暫定合意が更新されることに関心を持っている」と語った。そして、合意が「いくつかの点で進展する可能性もある」と述べたが、詳細については触れなかった。

 中国における司教任命に関する暫定合意は、 2018年に結ばれ、期限を迎えた2020年秋以降、2年間の合意期間を2度更新した。合意の具体的内容は今に至るまで明らかにされていないが、中国当局が推薦する司教候補の中から教皇が選任する内容とされている。発効から約6年が経過しているにもかかわらず、まだ暫定的とされている。

 中国における信教の自由への懸念をめぐり、元香港司教のジョセフ・ゼン枢機卿が強く批判しているのをはじめ、広範な論争のもとになっている。これまで 中国当局によるいくつかの合意違反もあった。

 中国当局は2022年11月、バチカンの認識も承認もなしに、バチカンが認めていない江西教区の補佐司教にヨハネ彭偉照(ペン・ウェイシャオ)神父を任命した。彭司教は、暫定合意に先立つ2014年に教皇フランシスコによって教皇公認の渝江教区長に任命されたが、当局に認められていない”地下教会”の高位聖職者とみなされ、逮捕され、6か月間拘留された後、厳しい監視下で釈放される、という経緯をもつ。さらに、中国当局は昨年4月、再び暫定合意に違反し、海門教区長の沈斌(シェン・ビン)司教を、バチカンへの事前の通知や承認なしに、10年間空席だった上海教区長に異動させている。

 中国のカトリック教会は、過去数十年にわたり、政府・共産党が認める中国天主愛国協会(CPCA)が管理・運営する”公認教会”と、教皇に忠誠を誓い、中国政府・共産党の支配に服さない”地下教会”に分かれてきた。 2018年の暫定合意は、表向きには、この二つの教会を一つにすることを目的としていた。

 教皇は、中国当局の人事に3か月遅れて昨年7月に沈司教の転任を正式に受け入れ、これを発表したパロリン国務長官は教皇の中国駐在代表を任命する可能性を示唆していた。

 だが、 CPCA会長の沈司教が基調講演者を務めた21日のローマでのシンポジウムの終了後、 パロリン国務長官は記者団に対して、教皇代理を北京に置く可能性について、「予測するのは常に難しい」とする一方、 「たとえ、当面、教皇代理が置かれなかったとしても、私たちは、長期にわたって中国で安定した存在感を維持することを望んでいる… 重要なのは、関係を強化し、深めること。それが私たちの目標です。 形は違っても構いませんし、一つの方法に固執するわけではありません。 時間が経つにつれて関係が深まれば深まるほど、前進することを願っています」と述べた。

 また、「バチカンは、CPCAを正式に承認するかどうか」との記者団からの質問に対し、国務長官は、このことが「すべての中国の司教が含まれる」という意味で議論の対象となりうる、と述べつつ、「それはまだ検討中の課題です」と述べ、時期については明言を避けた。

 国務長官は、今回の上海での評議会開催100周年記念のシンポジウムからは「たとえそれが特別に難しく複雑な問題であっても、恐れずにこの議題に向き合い、忍耐強くあるべきだ」という意味でインスピレーションを受けた、とし、 「私たち全員が忍耐を必要としている。そして多くの希望を持つことも必要です」と述べ、 「すぐには実を結ばないように見えても、最終的には芽を出し、必ず少しずつ収穫をもたらしてくれる」と期待を表明した。

 

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2024年5月22日