・「中国における信教の自由は一段と悪化している」ー米・国際信教の自由委員会2024報告書

  USCIRF(The United States Commission on International Religious Freedom=国際信教の自由・米国委員会)が6日付けで、世界の信教の自由の状況に関する年次報告書2024を発表した。同委員会は、米国の1998 年国際宗教自由法 (IRFA) をもとに設けられた超党派の米国連邦政府委員会で、委員は大統領と両政党の議会指導者によって任命されている。

 報告書には、Bitter Winterを信頼できる情報源として、特に中国やパキスタン、ロシアなどについての信教の自由の現状を把握するために使用している。報告書の中国の状況に関する記述では、「2023 に中国における信教の自由の状況は悪化した」と結論付け、「(中国政府・共産党が推進している)『宗教の中国化』とは、宗教を中国文化に適応させることではなく、すべての主要な宗教団体が中国共産党(CCP)とそのイデオロギーと政策に従うことを要求するもの」であり、「宗教の経典や教義を変更して、CCPの解釈に一致させるなど、中国共産党のマルクス主義的な宗教解釈に従うことを宗教団体に要求している」と述べている。

 そして具体的には、「当局は、キリスト教の教会やイスラム教のモスクの建築上の特徴を『外国のもの』とみなし、破壊し、あるいは改築を強制」し、「新疆ウイグル自治区とチベット自治区の宗教的少数民族地域では、文化的なアイデンティティと信教の自由を脅かす(”漢民族”との)同化強制を伴うものとなっている」と続けている。

 さらに報告書は、新疆ウイグル自治区では、「習近平・主席は個人としても『弾圧政策を強化し、新疆ウイグル自治区における”イスラム教の中国化”を継続する』と誓った。 当局はウイグル族の拘束、拘留を続け、拘留中に重篤な状態になった人や、拘留中あるいは釈放直後に死亡した人もいた」と述べ、「当局は、ウイグル人を刑務所内外での強制労働にさらし続け、彼らの行動を厳しく監視し、ラマダン中のウイグル族の断食を禁止する一方、新疆ウイグル地区を観光地として”再ブランド化”した。 新疆ウイグル自治区外では、かつては『共産党政権に友好的である』として宗教活動が容認されていた回族イスラム教徒に対しても規制が強化されている、と指摘している。

 またチベット自治区の状況について報告書は、「当局はチベット仏教徒に対する監視と治安措置を強化し、彼らの平和的な宗教活動を制限し、活動に参加したり、ダライ・ラマの肖像画や教えを所持したりしたことを理由に、逮捕、拘留し、『政治的再教育収容所』に入れている。 チベット仏教の僧侶の中には獄中で亡くなった人もいる」と述べ、「中国政府は、チベット人の子供100万人を親から引き離し、国営の寄宿学校に入れて強制同化させた。 一部の地方自治体は、親がチベット人の子供たちに宗教を教えることを禁止した。 政府はチベット僧侶の叙階を管理し、ダライ・ラマの生まれ変わりに干渉し、後継者を任命する意図を繰り返し表明した」としている。

 報告書はまた、「政府は2023年9月に宗教活動会場の管理に関する新たな措置を実施し、信教の自由をさらに制限した」とし、「2018年のバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意の結果は、引き続き中国のカトリック教徒にとってマイナスに見える」と指摘している。

 プロテスタントの家庭教会のキリスト教徒に対する迫害も激化しており、「 政府は家庭教会に対する全国的な弾圧を継続し、治安と刑事の罪で独立したプロテスタントを拘束、逮捕し、判決を下した。 当局は秘密拘置所や刑務所に拘留されているキリスト教徒を拷問した」と述べ、さらに、「新興宗教の活動は最も厳しい弾圧を受けた。政府は法輪功と全能神教会に対する迫害を続け、しばしば中国刑法第300条に基づく『反カルト』条項を適用。 2023年だけで、法輪功関係者は、迫害による6514件の嫌がらせと逮捕、1190件の懲役刑、209件の死亡を記録した。 中国全土で当局は数千人の全能神教会信者を逮捕、拷問しており、そのうちの何人かは虐待により死亡したと伝えられている」としている。

 報告書はまた、中国政府・共産党の海外における組織的な「悪影響」を非難。 「ウイグル族、香港の民主活動家、中国で迫害され、亡命した信者など、中国政府・共産党が『脅威』とみなす人々を黙らせるために、物理的、デジタル的、心理的な幅広い戦術を用いて、国境を越えた抑圧の”洗練された包括的な戦い”を進めている」と強く非難している。

 USCIRFは引き続き、米国政府と外交に対し、中国だけでなく「特に懸念される」他の国々における宗教や信仰の自由への攻撃を精力的に非難するよう勧告していく。そのリストには、アメリカ大陸ではキューバ、 ニカラグア。 USCIRF は重要な機能を果たしており、その有益な効果は米国を超えて広がっています。 また、資金を打ち切られるか、さらには排除されることを望んでいる敵もいる。 それには信教の自由を守るすべての友人たちの支援が必要です。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

The cover of the 2024 report.

*報告書全文(英語)は2024 Annual Report.pdf (uscirf.gov)をクリックすればお読みになれます。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年5月8日