(2016.10.7 TABLET エレナ・カーチ)
聖フランシスコ・ザビエルが中国大陸沖の島で命を終えて400年経った今も、カトリック教会と中国との良好な関係の確立はイエズス会士たちの夢であり続けている。それは,教会史上初のイエズス会出身の教皇、フランシスコにとっての夢でもある―イエズス会中国管区の現管区長、ジョン・リー・フア師はTABLETとのインタビューで語った。
リー師は、10月にイエズス会本部で開かれた新総長選出のための総会に参加するため、ローマに滞在していたが、インタビューで、バチカンと中国政府の外交関係を打ち立てるための努力には多くの障害が最近でも見られているが、教皇フランシスコがこの夢を実現すると信じている、と述べた。
現在最大の問題になっているのは、教皇か中国政府がいずれが司教の最終的な任命権をもつかだ。だが、リー師の中国での布教活動上の関心はこれと大きく異なる。彼のイエズス会士としての仕事は、「中国の人々を理解し、友とし、彼らに仕えること」に全力を尽くすことだ、という。
彼が管区長を務める中国管区は、中国本土の他、香港、マカオ、台湾の170人のイエズス会士の活動を管轄する。青少年の教育を主体に、司牧、貧しい人々のための社会奉仕活動を行っているが、会士の半数は中国人、半数は世界30か国の出身だ。
リー師自身は1966年に台湾で三世代続くカトリック信者として生まれ、大学に入ってイエズス会の創立者、イグナチオ・ロヨラの霊性に触れて、兵役を務め、社会人となったあとで、入会し、司祭となった。フィリピンで神学生の育成指導に当たったあと、中国管区に配属され、2012年に管区長となった。
中国での会の活動は、他のカトリック修道会と同じように、現地の状況と中国政府の指示に沿って慎重に司牧を進める必要がある、という。地方の貧しい子供たちが学校に通えるように奨学金を、政府の許可を得て給付している。ハンセン病患者の生活・医療支援もしている。活動の狙いは、中国における貧富の格差、教育や地域格差の解消だ。「中国ではこうした格差が至るところにあります。市民社会における大きな格差は、怒りや憤りを醸成してしまいます。こうしたことは、中国政府も知っていると思う」と指摘している。
彼によれば、中国での社会活動はとてもうまくいっているが、会としては、地域の様々な集団、機関の間の対話を作り上げることで、さらに質を高めようとしている。「私たちは人々が話をする機会を作ろうとしています。政府の職員、社会活動家、貧しい人びと、そして私たちのような部外者の間でです。全員が一緒になって、現状を見て、何をどのようにしたらいいのかを考える。そのような対話を通して、全員が徐々にほかの視点から問題点をより良く理解するようになるのです」。
彼の大先輩のマテオ・リッチ(1552年~1610年)は中国での布教にあたって、他国の文化の前向きな側面を見出すという、フランシスコ・ザビエルの伝統を引き継いだ。「とても多くのイエズス会士が、失敗や知恵や経験を通して私たちに教訓を示してくれています。たくさんのイエズス会士が中国に来た。中国の人々に神を届けることが夢だったが、次第に、すでに神は中国にいる、ということを知るようになりました。中国の文化を通して、神を経験するだけで良かったのです。イエズス会士は今でも、東洋の知恵を西洋に紹介したいと思っています。わたしたち中国人イエズス会士は、中国の文化、哲学、そして知恵が教会全体を豊かにしてくれると信じています」。
リー師によれば、イエズス会士は今も中国に来ることに熱心で、若いイエズス会の学者の卵たちに中国文化を体験させる努力をしている。教皇フランシスコは、フランシスコ・ザビエルの先例を受けていると信じている。そして、「教皇は中国に夢を持っておられます。この問題に取り組むために具体的な歩みをしておられ、教皇の周りにいる人々も関係改善に働いています。東西はしばしば互を誤解している。教皇は対話を始めることに熱心ですが、当然ながら、中国に居る人々の中には、一歩踏み出すことに安全が保証されない、と心配する人もいます。ですが同時に、中国人カトリック信者は、教皇に信頼を置いています。わたしたちは、教皇が精霊に導かれて、中国と中国のカトリック教会のために良い決断をする、と信じています」と語った。
中国本土のカトリック信者の数は正確には分からないが、リー師によれば少なくとも800万人はいるといい、「教皇フランシスコの夢は、彼らの夢でもある」ということだ。
(翻訳・南條俊二=以上は、イギリスのイエズス会が発行する世界的に権威のあるカトリックニュース週刊誌TABLETの発行責任者の許可を得て、翻訳・掲載しています。TABLETのウエブサイトはhttp://www.thetablet.co.ukです。こちらもご覧下さい)