
(2026.1.13 Crux Staff) バチカン市国の最高上訴裁判所12日、バチカン国務省が絡む巨額の不動産取引損失事件の裁判でジョバンニ・アンジェロ・ベッチュ枢機卿ら9人の被告に金融犯罪の有罪判決が下された件について、再審を求める市国・検察当局の控訴を却下した。
検察側は、有罪判決が出ている金融犯罪と汚職行為が、実際には被告らを巻き込んだ陰謀の一部であったことを再論証するよう求めていた。 一方、ベッチュと他の6人の被告は有罪判決を不服として控訴しており、控訴審では刑罰の軽減、有罪判決の変更、あるいは有罪判決の完全な取り消しの是非が検討されることになる。
この事件は、ロンドンの高級住宅街にあった4億ドルの不動産取引に、バチカン国務省が手を付けたのがきっかけ。チェルシー地区の大手百貨店ハロッズが所有していた旧倉庫を購入し、高級マンションに改装しようと手に入れた。だが、最終的に1億6300万ドル(現在の相場換算で約260臆円)の損失を出して物件を売却し、この件から手を引いた。
取引が進行中だった当時、ベッチュは国務省の副長官(実質的に教皇の首席補佐官)を務めており、この多くの疑惑のある事件に深く関与している、と判断したバチカン検察当局は、バチカン市国裁判所に、ベッチュや国務省などの他の職員、顧問、そしてイタリア人金融業者2名を意図的にバチカンから資金を詐取した罪で起訴した。
これに対し、被告側は、損失をもたらした一連の拙劣な経営判断の責任がバチカン側にあると主張し、ピエトロ・パロリン国務長官や、ベッチュが列聖省長官だった時に副長官となったエドガー・ペーニャ・パラ大司教ら高官が自分たちに責任を負わせている、と反論したが、2023年に有罪判決が下された。
ベッチュら被告側の控訴審は、ローマ控訴院のアレハンドロ・アレジャーノ・セディージョ院長が率いる3人の裁判官で構成される合議体で審理されている。ベッチュは一貫して無実を主張し、現在もその立場を堅持している。
控訴審では、彼に対する訴因は「横領」と「詐欺」と表現されているが、第一審では、裁判官らは、事件となった取引からベッチュが個人的に利益を得た証拠はないと認めていた。また、ベッチュはさらに、二つの容疑で起訴されていた。一つは故郷サルデーニャ島で兄が運営する慈善団体への国務省からの資金移動、もう一つは自称”セキュリティコンサルタント”のセシリア・マローニャへの支払いだ。この支払いは「ジハード主義者にマリで拉致されたコロンビア人修道女の解放のため」とされていたが、少なくとも一部はマローニャの個人的な高級品購入に充てられていた。
国務省と使徒管財局(APSA、聖座の主権的資産管理機関)は本件で民事当事者として参加し、上訴段階でも形式上は関与を続けているが、第一審判決に対しては上訴しなかった。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)