教皇、ラオスなど〝周辺地域〟中心に5名の枢機卿を新たに任命、日本はゼロ(CRUX)

  • (2017.5.21 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)フランシスコは21日の昼の祈りの終わりに、ご自身のトレードマークとなったやり方-熟練のバチカン評論家や最側近の人々の不意を突く形-で、新枢機卿5人を選任したことを明らかにした。教会の新たなプリンスたちの選任式は6月28日に行われ、聖ペトロ、聖パウロの祭日に当たる翌29日、教皇と5人のミサが行われる。これで、フランシスコが教皇に就任されて以来、新任した枢機卿は合計60人、うち49人が次期教皇の選挙権を持つことになる。

  • (論評)枢機卿は、カトリック教会における教皇の最高顧問で重要な案件について教皇を直接に補佐する「枢機卿団 」を構成するとともに、個々の枢機卿は、教会全体にかかわる日常的な職務について教皇を助ける。80歳未満の枢機卿は、次期教皇の選挙権をもつ。そのように教会にとって重要なポストに、今回も日本からは選ばれることはなかった。今回、信徒4万6000人のラオスからも枢機卿が誕生することになったが、日本では、2009年12月に白柳誠一枢機卿が帰天されて以来、7年半も枢機卿が選任されていない。アジアの主要国で枢機卿をもたないのは日本以外はバチカンと国交のない共産主義独裁の中国だけだろう。なぜそのような事態が続いているか、日本の教会指導部は信徒とともに、現在の日本社会が抱える悩み、苦しみと真摯に向き合い、対応しているのか、「貧しい人々のための貧しい教会」という教皇フランシスコの思いに応えているのか、真剣に反省する必要がある。(「カトリック・あい」代表、元読売新聞論説副委員長・南條俊二)

 

  •  5人の選任には、誰もが驚きを禁じ得なかったろう。彼らが世界の様々な地域から選ばれたという事実は「教会の普遍性、世界にあまねく広がる」ことを表している、と教皇は説明され、「私たちは、新しい枢機卿たちを聖ペトロと聖パウロの保護に委ねます」と述べ、「そうして、使徒たちの第一人者の取り次ぎにより、彼らは教会共同体の忠実な奉仕者となり、人々の使徒の取り次ぎにより、福音の喜びに満ちた伝え手となり、そして、証人と枢機卿団とともに、ローマ司教、世界教会の羊飼いとしての私の働きを強力に支えてくださるのです」と強調した。

     5人は、グレゴリオ・ローサ・チャヴェス(サンサルバドル補佐司教=エルサルバドル)、ジャン・ゼルボ(バマコ大司教=マリ)、アンデルス・アルボレリウス(ストックホルム司教=スウェーデン)、ファン・ホセ・オメリャ(バルセロナ大司教=スペイン)、ルイス‐マリ・マングカネクホン(パクセー使徒代理区管理者=ラオス)。全員が80歳未満で、次の教皇を選ぶ権利を持つ。5人のうち4人が、これまで枢機卿を出していなかったマリ、スウェーデン、エルサルバドル、そしてラオスから選ばれたことに、世界の〝周辺地域〟を大切にしたい、という教皇の思いが込められている。

  •  エルサルバドルからは、上席のホセ・ルイス・エスコバル名目大司教を飛ばして、シャベス補佐司教を枢機卿に選んだ。同様のことはすでに三度なされているが、伝統的なしきたりを超えようとする教皇の意思が反映されている。シャベス補佐司教は、1980年にミサ中に殺害されたオスカル・ロメロ大司教の親密な協力者だった。ロメロ大司教の列福に先立って、司教はバチカン放送の番組で、「大司教は、フランシスコが求めておられる司牧の模範、教会・・貧しい人々のための貧しい教会の模範です」と語っていた。

  •  一般に教皇が枢機卿を指名する際、自らの後継者候補としてだけでなく、助言者として選任する。枢機卿選任が現在のポストからの異動を意味することはないが、バチカンの省、評議会などの責任者に任じられ、バチカン通いを求められることになる。選任は、教皇が教会に求めている行き方も示している。フランシスコの治世では、これまで信徒が少なく、見過ごされていた地域から、枢機卿が新任されるケースが目立つ。これは、教皇が、教会は周辺地域に目を注ぎ、中心に持ってくる必要がある、と考えているからだ。

  •  教皇就任後、フランシスコは2014年に19人の新枢機卿を指名し、うち16人は教皇選挙権を持つ80歳未満だった。この時、ハイチから選んだのは、首都教区のポルトープランスでなく、レス・カイエスの教区長であり、カリブ地域で影響力のあるキューバ、プエルトリコ、ドミニカ共和国からは選ばなかった。同じ年に、教皇はブルキナファソ、アイボリーコースト両国からも枢機卿を指名した。一方で、これまで伝統的に枢機卿を出していた教区を、枢機卿選任から外すこともしている。米国ではロサンゼルス、フィラデルフィア、イタリアではチューリン、ヴェニスがそうだ。

  •  今回枢機卿に選任されることになったマンカネコウン師の出身地ラオスは共産党支配のもとにあり、カトリック教徒は少数派だ。信徒数は4万6000人で、人口の1パーセントにも満たない。国内には教区は存在せず、使徒代理区があるのみで、17人の司祭が67の小教区を担当している。また、20人の修道士、93人の修道女が活動しているといわれる。国教として仏教が定められ、四つの使徒代理区うち二つを担当する司教たちは「宗教活動が制約され、困難な状態がしばしば起きている」と訴えている。

  • (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

    ・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

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2017年5月22日