・バチカン裁判所がバチカン銀行の前幹部二人に有罪判決(CRUX)

( 2018.2.6 Crux Editor  John L. Allen Jr.)

ローマ発―教皇フランシスコの下で進められているバチカンの財政・金融改革に関して、今後に大きな意味を持つと思われる進展があった。バチカン銀行(IOR)の前幹部二人に対し、バチカン市国裁判所が6000万ドルの損害をもたらす不正な資金管理を行ったとして有罪判決を下したのだ。

 二人の有罪判決は、IORの6日夜の短い声明発表で確認された。声明は有罪となった二人の指名に触れていないが、前事務局長のパオロ・チプリアーニ被告と前事務局長補佐のマッシモ・トゥーリ被告であることは、イタリア司教協議会の機関紙を含むメディアで広く明らかにされている。

 声明は「判決は、2014年9月のIORによる民事賠償責任訴訟に対するものであり、2013年中期以前にIORが行った金融投資の上の責任のある行為についても包括的な取り調べも判断資料となっている」としている。二人の被告は、2013年7月、教皇フランシスコの就任から間もなくIORを退職しており、ともに、管理運用の失敗の責任を問われ、捜査と裁判が続けられていた。

 今回の判決より先に、ローマの裁判所は2017年2月に二人を資金洗浄取締法に違反として禁固4か月10日と罰金6000ドルの有罪判決を下していた。この案件には、14万ドル、5万7000ドル、11万9000ドルの三つの預金運用に関する重要情報をJPモルガンに伝えていなかったことも含まれていた。

 先月末に結審した二人に対するバチカンでの別の裁判で、検察官は、イタリアの資金洗浄取締法に違反する2010年の二つの資金取引に関して、チプリアーニ被告に禁固一年、トゥーリ被告に禁固10か月のそれぞれ有罪とすることを求めていた。

 前教皇のベネディクト16世の治世以来、欧州の資金洗浄取り締まり規範の順守が教皇にとっての最優先事項の一つとなっている。具体的には、バチカン内部の財政・金融改革とバチカン銀行が高潔な金融機関として世界的な”ホワイト・リスト”に載ることだ。それに失敗すれば、バチカンとの資金取引リスクを懸念する取引相手から手数料の引き上げを求められるなど、資金の管理・運用コストの上昇を余儀なくされ、現実世界での大きな負担を抱えることになりうる。

 このため、ベネディクト16世は闇の資金取引に巻き込まれるのを避けるため、資金洗浄取り締まり規則の運用強化を図る狙いでバチカンに”金融情報庁”を設置し、現在の教皇フランシスコのもとで、さらに機能が強化、拡大されている。前教皇はまた、欧州評議会の資金洗浄監視局の定期検査を受けることを決めている。

 またイタリア中央銀行は2010年に、同国の主要銀行各行に対して、資金洗浄取り締まり規範の順守に懸念があるとして、IORとの取引を中止するよう指示し、2011年には、IORを”非EU銀行”とし、バチカンに対して、その銀行業務の一部を一時的に他国に移すように命じた。さらに2013年1月から2月にかけて、同様の懸念を理由としてバチカン市国におけるクレジット・カードとATMの使用を凍結し、一時的にバチカンを”現金経済”とする措置をとった。

 これら一連の措置は、教皇フランシスコと顧問たちが資金洗浄の締め出しに最善の努力をするとして、イタリア中央銀行の説得に努めた結果、2014年1月に解除された。だが、昨年11月に、チプリアーニ被告とつながりのあるIORの別の幹部職員、ジウリオ・マッティエッティ副事務局長が解任され、保安部門の担当者によってバチカンの施設から退去されられる、という事件が起きている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年2月10日