(2017.2.17 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)。
教皇庁・法文評議会 (教会一般法の正統な解釈をつかさどる機関)議長の フランチェスコ・コッコパルメリオ枢機卿 がこのほど、バチカン担当記者を集めて記者会見を行った。それは、カフカ的(切迫した恐怖感のある)記者会見だった。教会法のトップである枢機卿が、教皇フランシスコの家庭生活に関する使徒的勧告「愛の喜び」について書いた冊子をまとめ、発刊することを発表するのが、会見の目的だった。
記者たちは、離婚し、再婚した人々が聖体拝領できるか、について「愛の喜び」でははっきりしない、明確にしてほしい、と批判を込めて教皇に要求した4人の枢機卿たちの質問状に対する、バチカンの”回答″ではないか、と予想していた。記者たちが会見場にやってきた時、コッコパルメリオ枢機卿の姿はなかった。そして、冊子は、枢機卿たちの質問状に対するバチカンの答えでもなければ、ローマ教皇庁の正式文書でもない、と記者たちは説明されたのだった。だが、その冊子はバチカンの公式出版社から出版され、ローマの司祭マウリツオ・グロンキ教授によって、バチカン放送などで紹介されたものだった。
コッコパルメリオ枢機卿が出席できなかったのは「スケジュールが重なり、列聖省の会議に出席しければならなかったからだ」と説明を受けた。
反フランシスコ教皇のポスターが貼られたり、バチカンを揶揄する新聞に教皇を嘲笑する記事が掲載されたりして、ローマで緊張が高まる中で、今、教会に必要とされるのは、「愛の喜び」をめぐる教会内部の対立に終止符を打つ”奇跡”だ。
枢機卿たちは今、フランシスコ教皇を擁護しようと踏み出した。コッコパルメリオ枢機卿の冊子の重要な点は、再婚者に聖体拝領を許そうという教皇の姿勢を支持することだ。だが、一方で、「再婚は姦通」であり、聖体拝領を認めるような動きは教会の結婚に関する教えに反する、として、反対する枢機卿や司教たちがいる。そうした中で、コッコパルメリオ枢機卿はこの冊子で「再婚した離婚者たちも、彼らが状況を変えることができず、再婚した伴侶との間に子供がいるなら、秘跡を受けることが許される」と、はっきりと述べている。
彼のバチカンでの仕事は教会法の解釈だから、その見解は重要な意味を持つ。この冊子は、9人の枢機卿からなる教皇顧問団が教皇フランシスコへの全面支持を宣言し、特に重要なことだが、教皇の’教導権’、つまり教皇の教義への権限を支持する、と誓約した翌日に発行された。
教皇の枢機卿顧問団がそのような声明を出す必要を感じたという事実は、現在教皇が受けているプレッシャーの大きさを物語ってもいる。「我々は劇的なことを望んでいたわけではなく、教皇を支持しているということを。我々から繰り返し述べるべき時期だったということだ。教会内で議論があるのは、当たり前のことだ。議論があり、緊張があり、いつもこんな風だ」と顧問団のメンバーのラインハルト・マルクス枢機卿は語ったが、「今、カトリック教徒が教皇に対し、“忠誠”を示すことが必要なのです」と付け加えた。
問題は、離婚経験者に聖体拝領をさせてよいかどうか、というまさに議論の中心点で、司教たちが同意できていない、ということだ。アルゼンチン,マルタ、ドイツの司教たちは「よい」とする一方で、ポーランド、米国、カナダでは、反対の声がある。多くの国の司教たちは、無言でその問題の決着を待っている。そして、教皇は今週、「司教や司祭の間で、’亀裂’が生じている。それは、処置しないと、より大きな問題に発展しかねない」と述べている。カトリック教会内部の亀裂は、今、ビンの外にあふれようとしているのだ。.
(翻訳・岡山康子)
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