オーストラリアでも多くの聖職者などによる性的虐待明らかに(Crux)

(2017.2.6 Crux バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)オーストラリアの幼児性的虐待への制度的対応に関する委員会が6日発表した報告書で、1980年から2015年の間に同国の1000以上のカトリックの組織・施設で4400人の子供たちが性的虐待を受けていたことが明らかになった。

 委員会の法律顧問を務めるゲイル・ファーネス氏は発表会見で、被害者が虐待された時点の平均年齢は女子が10.5歳、男子が11.5歳であり、全オーストラリアの司祭の7パーセントが1950年から2010年までの間に性的虐待を働いたとして告訴されていることを明らかにした。この比率は米国よりも高い。米国の場合、全米司教団の委託調査、ジョン・レイ報告で1950年から2000年までの間に性的虐待で訴えられた司祭の比率は全司祭の4%だった。さらに、ファーネス氏は、バチカンが2014年7月にオーストラリアの司祭たちが関係する記録書類の引き渡しを「要求された書類の提示は不可能だし不適切」との理由で拒否した、と言明した。

 アンソニー・フィッシャー・シドニー大司教は6日、ビデオを通じて、委員会の指摘を確認し、「恥ずかしく、悲しい。全オーストラリアで、1950年以降で、384人の教区司祭、188人の修道会司祭、597人の修道会ブラザー、そして96人の修道女が子供たちに性的虐待をしたと訴えられているようです」と語り、指摘された数字に異議を唱えるつもりのないことを明らかにした。

 報告書では、聖職者以外にも、性的虐待をしたものが、一般信徒の教会関係で働いている者543人、教会とのかかわりが不明な者72人いると指摘している。これはカトリック教会の司祭、修道士、修道女、そして一般信徒の合わせて約2000人が加害者となっていることを意味する。ただし、フィッシャー大司教によれば、報告書の数字は法的に有罪と判断されたものとまだ判断されていないもの、教会内部の調査で立証されたものと調査なしに教会が認めたものの区別がされていない。ジョン・レイ報告では、米国で4392人の司祭が11000件の訴えを起こされていた。

 また報告書では、教会の組織・施設別に見た性的虐待者の数は、 the St. John of God Brothers in Australia関係が全体の40パーセントを占め、the Salesians, the Christian Brothers,  the Marist Brothersの関係が20パーセントだ。

 フィッシャー大司教は「これほど多くの方を損なったこれまでの過ちに、カトリック教会は申し訳なく思っており、私自身も申し訳ないと思っています」「司祭、修道士、一般信徒の多くは同じ気持ちです。お恥ずかしい限りです」と謝罪した。

 委員会ではこれまで4年間に、公聴会を49回開き、このうち19回は教会関係の性的虐待についてだった。現在始まろうとしている16回目の公聴会・審査は個別具体的な案件についてではなく、より基本的な問題、何が「教会における歴史的な子供たちに対する性的虐待とそれに適切に対処できなかった」ことの原因だったのか、この問題に、「仕組み、政策、文化、司祭職と宗教的使命の識別、布教活動の仕方と監督の見直し」によって対応するために、教会はこれまで何をし、これから何をしようとしているのか、を明確にすることを目標にしている。

 報告書によれば、性的虐待の件数は1970年以降は減少しているが、大司教は「子供たちの安全、教会で子供たちが安心していられるような環境が確かに作られるまで満足しません」と語り、2度とこのようなことを起こさないためのあらゆる対策を実施する責任があることを自覚している、と強調した。

 また、現在、バチカンの経済省長官を務めるジョージ・ペル枢機卿は、教会関係者による性的虐待を隠蔽した疑いについてオーストラリアのカトリック教会の最高責任者として証言をする立場にあり、これまでローマにおいても含めて3回の審査を受けているが、これまでのところ責任を問われてはいない。

 オーストラリア・カトリック司教協議会会長のデニス・ハート・メルボルン大司教は2日に文書の形で声明を出し、大司教区の信徒たちに、公聴会は「難しく、動揺を覚える時」になるだろう、とし、「性的虐待がもたらした心の傷と痛みに深く思いを寄せ、私はカトリック教会を代表して、改めて謝罪をします」「性的虐待の犠牲となった方々に及ぼした損害を申し訳なく思います。教皇フランシスコが最近おっしゃったように、『私たちを恥じ入らせるのは罪』なのです」と教会内外の人々すべてに謝罪を表した。

 カトリック教会に対する審査への対応をまとめる立場にあるTruth Justice and Healing Councilのフランシス・サリバン会長は 報告書の発表を受けて、報告書で示されたデータは子供たちを守るべき教会の「数多くの過ち」を示したもの、と指摘し、こう語った。「このような数字は衝撃的です。悲劇であり、弁護する余地のないものです」「データの大部分は、本来、世話をし、守ってくれるはずの者から被害をうけた子供を代弁しています」。

 オーストラリアAP通信が6日報じたところによると、ビクトリア警察本部は、ジョージ・ペル枢機卿に対する性的虐待の訴えを調べている捜査官の収集した訴訟準備書面が検察の再調査に戻された。同通信は「これは、昨年10月に3人の捜査官がローマに行き、ペル枢機卿を尋問して以来、枢機卿の案件捜査に関する最大の進展だ」としながら、「ペル枢機卿が訴因について有罪という判断は検察からはない。捜査は継続中だ」とも述べている。

(翻訳・南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年2月9日