(2017.7.13 Tablet サラ・マクドナルド)バチカンの前教理省長官、ミュラー枢機卿は先週、教皇フランシスコの使徒的勧告「Amoris Laetitia(家庭における)愛の喜び」をめぐる論争にウイーン大司教のシェーンボルン枢機卿らが‶介入〟したのは納得しがたい、と批判して物議をかもしている。
これに対して、13日、アイルランドで開かれた家族をテーマにしたシンポジウムに出席したシェーンボルン枢機卿が記者団の質問を受けて、「このような批判はまったく当を得ていない」と、ミュラー枢機卿をたしなめる発言をした。
ミュラー枢機卿は、Amoris Laetitiaで教皇が離婚・再婚者の聖体拝領を条件付きで現場の司祭の判断に委ねる方向を示唆したことに反発する4人の枢機卿が昨秋、教皇に判断基準を明確にするよう迫る非公開書簡を送り、回答がない、としてそれを公開したことを擁護。これに対して、シェーンボルン枢機卿ら教皇の判断を支持する枢機卿たちが、こうした行為は妥当性を欠くとの立場を示していた。
先週のミュラー枢機卿の批判発言はこれを受けたものだが、13日に会見したシェーンボルン枢機卿は「教皇に最も近い協力者であるべき枢機卿たちが、自分たちが教皇に送った書簡を公開したうえで、教皇に回答を迫り、圧力をかけようとしているのは、全く不都合な行為です」と改めて指摘したうえで、「もし教皇との会見を望むのなら、そうすればいいが、会見を求めたことを公けにはしないものです」とたしなめた。
また、Amoris Laetitiaをめぐる論争に関連して、「教会の教えによれば、正当な結婚は解消することができないし、教皇フランシスコがこの原則に疑問を持ったことは一度もありません。聖書、福音、イエスの教えだからです」としたうえで、「しかしながら、このように答えることが、私たちが日々の暮らしの中で対応すべき個々のケースや状況に対する答えになるわけではありません」と注意を促した。
そして、「現実の問題に対応するとき、私たちは識別をする必要がある、と教皇は明言してされ、『私たちは慎重・分別という徳をもって、現実をはっきりと見つめ、判断しなければならない』と言っておられます」と教皇の意向を説明した。
枢機卿はまた、教皇ヨハネ・パウロ2世の使徒的勧告「家庭-愛といのちの絆」を取り上げ、「ここにも『結婚と家族について、‶羊飼い〟はさまざまな異なる状況に対応した識別をしなければならならない』と記されています」と強調した。
さらに、Amoris Laetitiaの解釈をめぐる教会内部の対立にも触れ、この使徒的勧告の内容について、厳格な解釈をしようとする人々、曖昧な立場をとる人々、いずれも好ましくない、とし、「識別をもって対応することは、簡単でも容易でもありませんが、実りあるものにするために必要なことです」と強調した。
具体的な質問として、記者団から「終末期にある赤ちゃんへの対応」を聞かれた枢機卿は「英国の法律にコメントすることはできませんが、このケースでは考慮されなければならない原則は二つあります。一つは、すべての人の命は守られるべきであり、できるかぎり助けられなければならないこと。もう一つは、カトリック教会の教えの中に含まれますが、どの医者も思い切った治療や過剰な、あるいは異例の治療をする義務はないこと、です」としたうえで、「これは慎重にすべき重要な判断です。どれが過剰な治療になるのか、どれが命を守るという神聖な義務に従うことになるのか、判断はとても難しい」と率直に述べた。
また、過剰な治療が受け入れられなくなる時期について判断は、「ケースバイケースを基本として決定すべきでしょう」とし、ヨハネ・パウロ2世ご自身が「ある瞬間に生命維持装置を止め、この世を去る時が来る」と語られたことを明らかにし、「教皇は自然に従うことで、自分自身で決意することができたのです」と説明。その一方で、「判断を急ぐべきではありません。『思い切った治療』の識別は慎重にすべきです。慎重な識別のために一つひとつの要件を注意深く吟味しなければならない」と強調した。
(翻訳「カトリック・あい」田中典子、南條俊二)
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